場の量子論入門 第5部 第1章 §5.1.4 ★★★ Fμν は共変微分の交換子。Maxwell 項の形が決まる
ここまでで Aμ は導入されたが、Aμ 自身が時空を伝わるための運動項がまだない。運動項は、Aμ の微分を含み、Lorentz 不変で、局所ゲージ変換のもとで不変でなければならない。そのような量を作る材料が、共変微分どうしの交換子である。任意の場 ψ に対して
[Dμ,Dν]ψ=ie(∂μAν−∂νAμ)ψ
が成り立つ(例題 5.1.3 )。微分演算子どうしの交換子であるにもかかわらず、右辺には微分が残らず、掛け算の演算子になっている点が要点である。そこで
Fμν≡ie1[Dμ,Dν]=∂μAν−∂νAμ
と定義する。Fμν を場の強さ(field strength)と呼ぶ。Dμψ が ψ と同じ位相因子で変換するので、[Dμ,Dν]ψ も同じ位相因子で変換し、したがって Fμν 自身は位相因子を持たない。すなわち Fμν はゲージ不変である。直接確かめても
Fμν→∂μ(Aν+e1∂να)−∂ν(Aμ+e1∂μα)=Fμν
であり、∂μ∂να の対称性から余分な項が消える。成分を書けばF0i=−Ei、Fij=−εijkBk であり、Fμν は電場と磁場を1つのテンソルにまとめたものである。
ゲージ不変で Lorentz 不変、かつ質量次元が4以下(くりこみ可能性の要請。第6部)という条件で Fμν から作れる項は、FμνFμν とεμνρσFμνFρσ の2つしかない。後者は全微分であり運動方程式に寄与しないので落とす(空間反転で符号を変えるため、パリティを保つ理論ではそもそも許されないという言い方もできる)。残るのは
LA=−41FμνFμν
であり、係数 −1/4 は LA=21(E2−B2) という標準的な規格化に対応する。こうして QED の Lagrangian 密度
LQED=ψˉ(iD−m)ψ−41FμνFμν=ψˉ(i∂−m)ψ−41FμνFμν−eψˉγμψAμ
が完成する。Aμ についての Euler–Lagrange 方程式は
∂μFμν=eψˉγνψ
であり、右辺を電流と読めば Maxwell 方程式の非斉次な組(Gauss の法則と Ampère–Maxwell の法則)である。斉次な組(∇⋅B=0 と Faraday の法則)は Fμν=∂μAν−∂νAμ という表示から恒等的に従う(Bianchi 恒等式)。電磁気学で経験則として与えられていた Maxwell 方程式が、ここでは局所 U(1) 不変性の要求から導かれた。
例題 1.3(共変微分の交換子)
オリジナル[Dμ,Dν]ψ=ieFμνψ を示せ。ただし Dμ=∂μ+ieAμ、Fμν=∂μAν−∂νAμ とする。
解答
交換子は演算子どうしの関係なので、必ず場 ψ に作用させて計算する。
DμDνψ=(∂μ+ieAμ)(∂νψ+ieAνψ)=∂μ∂νψ+ie(∂μAν)ψ+ieAν∂μψ+ieAμ∂νψ−e2AμAνψ.
第2項は微分が Aν に当たった分(Leibniz 則)である。μ と ν を入れ替えた式を引くと、∂μ∂νψ は対称なので消え、ieAν∂μψ+ieAμ∂νψ も対称なので消え、−e2AμAνψ も対称なので消える。残るのは
[Dμ,Dν]ψ=ie(∂μAν−∂νAμ)ψ=ieFμνψ
だけである。微分演算子が消え、掛け算の演算子だけが残ったことが本質である。この事実によってFμν は「場」として扱える量になり、これを使って運動項が組める。
なお、U(1) では Aμ が数(可換)なので −e2AμAν が対称になって消えたが、Aμ が行列(非可換)ならこの項は残る。それが第 5.1.6 節の主題である。■
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com