場の量子論入門 第5部 第4章 §5.4.2 ★★ ∣M∣2 を2つのトレースの積に変える
実験では、始状態のスピンは(偏極していない限り)どの向きも等確率で現れ、終状態のスピンは測らないことが多い。そこで始状態のスピンについて平均し、終状態のスピンについて和を取った量
∣M∣2=41s,s′∑r,r′∑∣M∣2
を計算する。1/4 は電子2状態と陽電子2状態の平均である。
∣M∣2=MM∗ を書くために、複素共役の取り方を整理しておく。[vˉ(p′)γμu(p)] は1つの複素数であり、その複素共役は
[vˉγμu]∗=[vˉγμu]†=u†γμ†γ0†v=u†γ0γμv=uˉγμv
である。途中で γ0†=γ0、(γ0)2=1、γμ†=γ0γμγ0 を使った。この関係は「スピノル挟みの複素共役は左右を入れ替えるだけ」と覚えてよい。
これを使うと
∣M∣2=4s2e4≡Aμν (電子側)s,s′∑[vˉ(p′)γμu(p)][uˉ(p)γνv(p′)]≡Bμν (ミューオン側)r,r′∑[uˉ(k)γμv(k′)][vˉ(k′)γνu(k)]
と、電子側とミューオン側の2つの因子に分かれる。それぞれをスピノルの完全性関係
s∑us(p)uˉs(p)=p+m,s∑vs(p)vˉs(p)=p−m
(第4部 第2章)を使って行列のトレースに直す。スピノル添字を明示して並べ替えると、それぞれが1本の行列の積の対角和になるからである。電子側は me→0 として
Aμν=Tr[p′γμpγν],Bμν=Tr[(k+m)γμ(k′−m)γν]
となる。スピン和がトレースに化けるこの一手が、Dirac 場の計算を機械的にする鍵である。
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