場の量子論入門 第5部 第5章 §5.5.3 ★★ スピン和の結果と、実験室系での断面積
スピンと偏極について平均・和を取る計算は、第4章と同じ手順(スピン和をトレースに直し、トレース公式で展開する)で進む。ただし振幅が2項あるので、∣M∣2 には交差項が現れ、最大で8個の γ 行列を含むトレースが必要になる。計算は長いが機械的であり、結果は次のようにまとまる。
∣M∣2=2e4[p⋅kp⋅k′+p⋅k′p⋅k+2m2(p⋅k1−p⋅k′1)+m4(p⋅k1−p⋅k′1)2]
(電子スピンについて始状態は平均・終状態は和、光子偏極について始状態は平均・終状態は和を取った量)。4つの項の構造を読んでおく。第1・第2項は s チャネルと u チャネルの分母の比であり、質量ゼロの極限でも残る。第3・第4項は電子質量による補正であり、1/(p⋅k)−1/(p⋅k′) という組み合わせでしか入らない。
実験室系(入射前の電子が静止)で書き直す。p⋅k=mω、p⋅k′=mω′ であり、前節の Compton 関係 1/ω′−1/ω=(1−cosθ)/m を使うと
p⋅k1−p⋅k′1=m1(ω1−ω′1)=−m21−cosθ
となる。これを代入すると、質量補正の2項は
−2(1−cosθ)+(1−cosθ)2=(1−cosθ)[(1−cosθ)−2]=−(1−cos2θ)=−sin2θ
とまとまり
∣M∣2=2e4[ωω′+ω′ω−sin2θ]
という簡潔な形になる。実験室系での2体散乱の断面積は
dΩdσ=64π2m21(ωω′)2∣M∣2
であり(第3部 第5章の一般公式を、標的静止・光子入射の場合に書き下したもの。(ω′/ω)2 は終状態の位相空間を立体角で書き直すときの Jacobi 因子である)、代入するとKlein–Nishina の公式
dΩdσ=2m2α2(ωω′)2[ωω′+ω′ω−sin2θ],ωω′=1+(ω/m)(1−cosθ)1
を得る。ω/m が大きくなるほど ω′/ω が小さくなり、前方(θ 小)に散乱が集中する。全断面積も ω の増大とともに減少する。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com