場の量子論入門 第5部 第5章 §5.5.4 ★★ 低エネルギー極限で古典論に一致する。数値まで確かめる
ω≪m では ω′/ω→1 となり、Klein–Nishina は
dΩdσ ⟶ 2m2α2(2−sin2θ)=2m2α2(1+cos2θ)
になる。立体角で積分すると
σT=3m28πα2=6.652×10−25cm2
であり(検算 検算スクリプト。Klein–Nishina を ω→0 で数値積分した値と10−4 以内で一致する)、これがThomson 断面積である。0.665 バーンにあたる。
この値は古典電磁気学でも得られる。振動する電場 E の中に置かれた自由電子はr¨=(−e/m)E で加速され、加速度を持つ電荷は Larmor の公式にしたがって放射する。入射エネルギー流束で割ると σ=38πre2 が出る。ここで
re=mα=2.818 fm
は古典電子半径である(検算済み)。実際 38πre2=38πm2α2 で上の式と一致する。角度分布 1+cos2θ も、無偏光の入射光に対する双極子放射の角度分布そのものである。量子論が古典論を再現するのは、光子1個のエネルギー ω が電子の静止質量 m に比べて無視できて、電子の反跳(Compton シフト)が無視できる領域だからである。
ω が m に近づくと Klein–Nishina は Thomson から下にずれる。この差は実測されており、QED の初期の検証の1つになった。
例題 5.3(Thomson 断面積の積分と数値 ★★)
オリジナルdΩdσ=2m2α2(1+cos2θ) を立体角で積分してσ=3m28πα2 を示し、cm2 の単位に換算せよ。
解答
dΩ=2πdcosθ(方位角対称)だから、c=cosθ と置いて
σ=2m2α2⋅2π∫−11(1+c2)dc=m2πα2[c+3c3]−11=m2πα2⋅38=3m28πα2.
数値を入れる。自然単位の逆質量を長さに直すには ℏc=0.1973GeV⋅fm を使う。m=0.511×10−3GeV だから 1/m=0.1973/0.511×10−3fm =386.2fm であり、これは電子の Compton 波長 3.862×10−13m である。よって
σT=38π(137.0361)2(386.2 fm)2=6.652×10−25 cm2
となる(1fm2=10−26cm2)。同じ値を古典電子半径で書けば38πre2、re=2.818fm である。α2 という小さな因子と、1/m2 という「電子の Compton 波長の2乗」の積として断面積の大きさが決まっている。■
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com