場の量子論入門 第5部 第6章 §5.6.1 ★★ 静的な外場は運動量だけを与え、エネルギーを与えない
最後に、電子が重い原子核の Coulomb 場で散乱される過程を扱う。原子核が十分重ければ反跳を無視でき、原子核を「静的な外場」として扱える(外場近似)。この単純化のおかげで、スピンが断面積に与える効果を Rutherford の古典公式と直接比べられる。得られる Mott の公式は、原子核の電荷分布を測る実験(電子散乱)の出発点になる。
原子核(電荷 +Ze、質量無限大)が作るスカラーポテンシャルは
Acl0(x)=4π∣x∣Ze,Acl=0
である。相互作用項 −eψˉγμψAμ のうち Aμ を量子場でなくこの古典場で置き換えると、1次の摂動で振幅
iM=−ieuˉ(p′)γ0u(p)A~0(q),q=p′−p
が得られる。A~0 は外場の空間 Fourier 変換である。外場が時間に依存しないので、散乱でエネルギーは変わらず(∣p′∣=∣p∣、弾性散乱)、運動量だけが q だけ変わる。Fourier 変換は
A~0(q)=∫d3xe−iq⋅x4π∣x∣Ze=∣q∣2Ze
である(例題 5.6.1)。静的外場による弾性散乱の断面積は
dΩdσ=16π21∣M∣2
で与えられる(入射流束と終状態の位相空間を書き下すと、相対論的規格化のもとでこの形になる)。
例題 6.1(遮蔽 Coulomb ポテンシャルの Fourier 変換 ★★)
オリジナルV(x)=4π∣x∣Zee−μ∣x∣ の Fourier 変換が ∣q∣2+μ2Ze となることを示し、μ→0 の極限を取れ。
解答
r=∣x∣ とし、q を極軸に取る。角度積分を先に行う。
∫d3xe−iq⋅xf(r)=2π∫0∞drr2f(r)∫−11dce−iqrc=q4π∫0∞drrf(r)sin(qr)
である(q=∣q∣、∫−11e−iqrcdc=2sin(qr)/(qr) を使った)。f(r)=4πrZee−μr を入れると
V~(q)=q4π⋅4πZe∫0∞dre−μrsin(qr)=qZe⋅μ2+q2q=q2+μ2Ze.
途中の積分は ∫0∞e−μrsin(qr)dr=q/(μ2+q2) である。μ→0 とすると V~=Ze/q2 となり、本文の式を得る。
遮蔽の長さ 1/μ を有限に保ったまま計算し、最後に μ→0 とするのは、純粋な Coulomb ポテンシャルの Fourier 積分が原点近傍で条件収束しかしないための処方である。物理的にも、原子核の電荷は原子の電子雲で遮蔽されており、μ は遮蔽の逆長さに対応する。■
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com