場の量子論入門 第6部 第1章 §6.1.2 ★★ 発散の強さを図を描かずに数える。くりこみ可能性の判定はここから出る。
定義 (表面的発散次数)
ある Feynman 図のすべてのループ運動量を一斉に λ 倍したとき、積分(測度と被積分関数の両方を含む)が全体として λD のように振る舞うなら、D をその図の表面的発散次数(superficial degree of divergence)と呼ぶ。
数え方は単純である。ループ1つにつき測度が d4k で +4、スカラー場・ゲージ場の内線は伝播関数が 1/k2 なので1本につき −2、フェルミオンの内線は 1/k なので1本につき −1 を与える。したがって
D=4L−2Ib−If
である(Ib はボゾンの内線数、If はフェルミオンの内線数)。D>0 なら冪発散、D=0 なら対数発散、D<0 なら少なくとも表面的には収束する。
「表面的」と断るのは、D<0 でも図の一部分(部分図)が発散していれば全体は発散するからである。逆に D≥0 でも、対称性のために発散が打ち消えて有限になることがある(次節の真空偏極がその例である)。D は必要な情報を全部与えるわけではないが、発散の分類にはこれで足りる。
この式を外線の本数と結合定数の質量次元で書き直すと、理論の性格が一目で分かる形になる。内線・頂点・外線の関係を使って書き換えると、4次元では
D=4−Eb−23Ef−i∑Vi[gi](6.1.4)
となる。ここで Eb,Ef は外線のボゾン数・フェルミオン数、Vi は i 番目の相互作用項の頂点の個数、[gi] はその結合定数の質量次元である(質量次元の勘定は第1部 第5章)。
式 (6.1.4) の最後の項が理論の運命を決める。
くりこみ可能性の判定
- すべての [gi]>0:頂点を増やすほど D が下がる。発散する図は有限個しかない(超くりこみ可能)。4次元の ϕ3 理論がこれにあたる。
- すべての [gi]≥0 で、0 のものがある:D は頂点の個数に依らない。発散する振幅の種類は外線の本数だけで決まるので有限種類だが、各種類は全次数で発散し続ける(くりこみ可能)。ϕ4 理論と QED がこれにあたる。
- [gi]<0 のものがある:頂点を増やすほど D が上がる。十分高次に行けば任意の外線数の振幅が発散する(くりこみ可能でない)。Fermi の4フェルミオン相互作用([GF]=−2)と重力([GN]=−2)がこれにあたる。
くりこみ可能な理論では、発散する振幅の種類が有限個なので、有限個のパラメータを測定で決め直せばすべての発散を吸収できる見込みが立つ。この見込みが実際に全次数で成り立つことが「くりこみ可能性」の内容であり、証明はこの部の範囲を超える(BPHZ の定理と呼ばれる)。ここでは1ループの範囲で、その仕組みが具体的にどう働くかを見ることに集中する。
例題 1.1(表面的発散次数を数える)
オリジナルϕ4 理論(4次元、L=21(∂μϕ)2−21m2ϕ2−4!λϕ4)について、以下を求めよ。
- (1) 式 (6.1.2) の図(外線4本、ループ1本、内線2本)の D を、D=4L−2Ib−If から直接求めよ。
- (2) 外線が E 本の任意の図の D を式 (6.1.4) から求め、発散する振幅の種類を列挙せよ。
- (3) 同じ理論に 6!gϕ6 という項を加えたとき、外線4本の振幅の D がϕ6 頂点の個数 V6 にどう依存するかを求めよ。
解答
(1) L=1、Ib=2、If=0 なのでD=4⋅1−2⋅2−0=0。対数発散である。実際、第1.1節で見たとおり被積分関数は 1/k4 で落ち、∫dk/k となる。
(2) ϕ4 の結合定数の質量次元は [λ]=0 である([L]=4、[ϕ]=1 なので[λ]+4=4)。よって式 (6.1.4) は D=4−E となり、頂点の個数に依らない。D≥0 となるのは E≤4 で、ϕ→−ϕ の対称性から外線が奇数本の振幅は消えるから、発散するのは
- E=2(自己エネルギー):D=2、2次発散
- E=4(4点関数):D=0、対数発散
の2種類だけである。摂動の何次に行ってもこの2種類しか発散しない。
(3) [g] は [g]+6=4 から [g]=−2。式 (6.1.4) で E=4、[λ]=0、[g]=−2 とすると
D=4−4−V4⋅0−V6⋅(−2)=2V6.
ϕ6 頂点を1つ使うごとに発散が2次ずつ強くなる。ϕ6 項を含む理論はくりこみ可能でない。
例題 1.2(結合定数の質量次元からくりこみ可能性を判定する)
オリジナル4次元時空で、次の各相互作用項の結合定数の質量次元を求め、その理論がくりこみ可能かどうかを判定せよ。場の質量次元は [ϕ]=1、[ψ]=3/2、[Aμ]=1、[hμν]=1 を使ってよい。
- (1) 湯川結合 −gψˉψϕ
- (2) QED の相互作用 −eψˉγμψAμ
- (3) Fermi の4フェルミオン相互作用 −GF(ψˉΓψ)(ψˉΓψ)
- (4) 重力の最低次の結合 −κhμνTμν(Tμν はエネルギー運動量テンソルで [Tμν]=4)
解答
どの場合も、Lagrangian 密度の質量次元が4であること(作用 S=∫d4xL が無次元であることから従う)を使って結合定数の次元を決める。
(1) [g]+23+23+1=4 より [g]=0。くりこみ可能である。
(2) [e]+23+23+1=4 より [e]=0。くりこみ可能である。これはα=e2/4π が無次元であることと整合する。
(3) [GF]+4⋅23=4 より [GF]=−2。負なので、くりこみ可能でない。GF が質量の −2 乗の次元を持つことは、この理論が「あるエネルギースケールまでしか使えない」ことを含意している(第6章で定量化する)。
(4) [κ]+1+4=4 より [κ]=−1。負なので、くりこみ可能でない。実際κ∼1/MPl であり、Planck 質量が理論の適用限界を与える。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com