場の量子論入門 第6部 第3章 §6.3.2 ★★ 完全伝播関数の極の留数を1に揃える操作。Z の物理的意味も押さえる。
自己エネルギー −iΣ(p2) を1粒子既約な図(内線を1本切っても2つに分かれない図)の和として定義すると、完全伝播関数は幾何級数の和として
iG(p)=p2−m02−Σ(p2)i
と書ける。物理的質量 m はこの分母が消える点、すなわち
m2−m02−Σ(m2)=0(6.3.3)
で定義される。極の近傍で分母を展開すると
p2−m02−Σ(p2)≃(p2−m2)[1−Σ′(m2)]
となるので
iG(p)≃p2−m2iZ,Z=1−Σ′(m2)1(6.3.5)
である。Z を場のくりこみ定数と呼ぶ。
Z の物理的な意味は、場の演算子 ϕ0 が真空から1粒子状態を作る振幅の2乗である。自由場では ⟨p∣ϕ0(0)∣0⟩=1 だが、相互作用があると ϕ0 は多粒子状態も作るので、1粒子状態への重なりは1より小さくなる。Z はその割合を表す。くりこまれた場を
ϕr=Z−1/2ϕ0
と定義すると、ϕr の伝播関数は極での留数がちょうど1になる。
例題 3.1(Z が極の留数であることの確認)
オリジナル式 (6.3.5) を、Σ(p2) を物理的質量のまわりで展開することによって導け。また Σ(p2)=a+bp2(a,b は定数)という単純な場合に、m2 と Z をm02,a,b で表せ。
解答
Σ を p2=m2 のまわりで展開するとΣ(p2)=Σ(m2)+(p2−m2)Σ′(m2)+O((p2−m2)2) である。これを分母に入れ、式 (6.3.3) で m02+Σ(m2)=m2 を使うと
p2−m02−Σ(p2)=p2−m2−(p2−m2)Σ′(m2)+O((p2−m2)2)=(p2−m2)[1−Σ′(m2)]+⋯
となる。したがって極の近くで iG(p)≃iZ/(p2−m2)、Z=1/[1−Σ′(m2)] を得る。
Σ(p2)=a+bp2 の場合、式 (6.3.3) は m2−m02−a−bm2=0 なので
m2=1−bm02+a.
また Σ′(p2)=b(p2 に依らない)なので
Z=1−b1.
a は質量だけをずらし、b は質量と規格化の両方に入ることが読み取れる。第1.4節で述べた「p に依らない発散は質量くりこみだけで済み、p2 に比例する発散は場のくりこみを要求する」という主張が、この対応関係として現れている。
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