場の量子論入門 第6部 第3章 §6.3.4 ★★ 有限個のパラメータで全次数の発散が吸収されること、そして残る任意性の正体。
くりこみ可能な理論では、必要なカウンター項の種類が有限個である。ϕ4 理論ではδZ,δm,δλ の3つ、QED では光子場・電子場・質量・頂点に対応するδ3,δ2,δm,δ1 の4つで、しかも Ward 恒等式が δ1=δ2 を要求するので独立なのは3つである。摂動の何次に行っても新しい種類のカウンター項は要らない。だから、有限個の測定値(QED なら電子質量と微細構造定数の2つ)を入力すれば、残りのすべての量が予言になる。
一方、カウンター項の有限部分をどう選ぶかには任意性が残る。この選び方をくりこみスキームと呼ぶ。代表的なものは次の2つである。
- 質量殻スキーム(on-shell):物理的質量を伝播関数の極、電荷をq2→0 での Thomson 散乱の値で定義する。実験と直結するので、QED の低エネルギー計算ではこれを使う。
- MS スキーム:1/ϵ−γE+ln4π だけを引き、残りは μ に依存させたままにする。計算が簡単で、質量が無視できる高エネルギー領域や QCD で標準的に使われる。
スキームが違えば λ や α という記号の値そのものが違う。したがって「αs(MZ) の値」を引用するときは、どのスキームでの値かを指定しなければ意味が定まらない。一方、断面積のような測定量は、同じ次数まで一貫して計算する限りスキームに依らない。有限次数で打ち切った場合には高次項の分だけスキーム依存性が残るが、その大きさは打ち切った次数の項と同じオーダーであり、計算の不確かさの見積もりに使われる。
例題 3.3(スキーム依存性が物理量から落ちること)
オリジナル例題 3.2 の2つのスキームで定義した結合定数を λMS、λsym とする。1ループの精度で両者の関係を求め、任意の運動学点でのM が同じ値になることを確かめよ。
解答
例題 3.2 の (1) と (2) を比べると、同じ M に対して
λsym=λMS+32π23λMS2∫01dxlnμ2Δ0(x)+O(λ3)
の関係がある(δλ の差がそのまま結合定数の定義の差になる)。
MS で書いた振幅は
M=−λMS−32π2λMS2∫01dxc∑lnμ2Δc
である。ここに上の関係を代入して λsym で書き直すと、O(λ2) の精度で
M=−λsym−32π2λsym2∫01dxc∑lnΔ0Δc
となる。μ が消え、対数の中身が2つの運動学点の比になっている点に注意する。λsym を対称点での測定から決めれば、他の点での M が予言される。MS から出発しても同じ予言に到達する。
なお λ2 の係数の中で λMS と λsym を入れ替えたことによる誤差は O(λ3) であり、1ループの精度では無視してよい。これが「有限次数ではスキーム依存性が高次の分だけ残る」という主張の具体形である。
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