場の量子論入門 第7部 第2章 §7.2.2 ★★★ 経路積分から Feynman 伝播関数が出る。この部で最も基本的な計算
自由スカラー場 L0=21(∂μϕ)2−21m2ϕ2 について Z0[J] を計算する。まず作用を部分積分して、場が二か所に現れる形にまとめる。表面項は無限遠で場が消えるとして落とすと
S0=∫d4x[21(∂μϕ)(∂μϕ)−21m2ϕ2]=−21∫d4x ϕ(x)(□+m2)ϕ(x)
となる(□=∂μ∂μ)。これは有限次元の −21xTAx に対応する形であり、経路積分は多重 Gauss 積分になる。まず有限次元で手を動かしておく。
例題 2.1(有限次元のガウス積分)
オリジナル実対称正定値行列 A(n×n)と実ベクトル b に対して
I(b)=∫Rndnu exp(−21uTAu+bTu)=detA(2π)n/2 exp(21bTA−1b)
を示せ。
解答
指数の肩を平方完成する。u=v+A−1b と置くと、A が対称なので
−21uTAu+bTu=−21vTAv+21bTA−1b.
平行移動なので dnu=dnv であり、第 2 項は v に依らず外に出る。残った積分はA を直交行列 O で対角化して(A=OTΛO、Λ=diag(λ1,…,λn))、w=Ov と変数変換すれば(detO=1 なので測度は不変)
∫dnv e−21vTAv=k=1∏n∫dwke−λkwk2/2=k=1∏nλk2π=detA(2π)n/2.
最後に detA=∏λk を使った。以上を合わせて主張を得る。この式の構造が経路積分のすべての Gauss 計算の原型である。b に依存する部分は 21bTA−1b、つまり「源を逆行列で結んだ形」であり、逆行列 A−1 が伝播関数の役を果たす。なお A の逆行列が存在しない(零固有値がある)ときにこの公式が破れることは、第 5 章でゲージ場の経路積分が発散する理由と同じである。
場の場合も同じ手順で進む。A に対応するのは微分演算子 i(□+m2) であり、その逆にあたるのがFeynman 伝播関数である。第2部 の規約に合わせて
DF(x−y)=∫(2π)4d4p p2−m2+iεie−ip⋅(x−y)
と定義しておく。この DF は
(□+m2)DF(x−y)=−iδ4(x−y)
を満たす(微分すると −p2+m2 が下り、分母と約せて −i∫(2π)4d4pe−ip(x−y) になる)。
例題 2.2(自由場の生成汎関数)
オリジナル
Z0[J]=∫Dϕ exp{i∫d4x[−21ϕ(□+m2)ϕ+Jϕ]}
を実行し、Z0[J]=Z0[0]exp[−21∫d4xd4yJ(x)DF(x−y)J(y)] を示せ。
解答
例題 2.1 と同じく平方完成する。まず J を打ち消す配位 ϕc を、(□+m2)ϕc(x)=J(x) の解として取る。DF の満たす方程式から
ϕc(x)=i∫d4y DF(x−y)J(y)
と書ける(実際 (□+m2)ϕc=i⋅(−i)J=J)。ϕ=ϕc+η と置いて指数の肩を展開すると
−21(ϕc+η)(□+m2)(ϕc+η)+J(ϕc+η)=−21ϕc(□+m2)ϕc−η(□+m2)ϕc−21η(□+m2)η+Jϕc+Jη=−21ϕcJ−ηJ−21η(□+m2)η+Jϕc+Jη = 21Jϕc−21η(□+m2)η.
途中で (□+m2)ϕc=J と、∫ϕc(□+m2)η=∫η(□+m2)ϕc(2 回の部分積分)を使った。η の項は J を含まないので、その積分は J に依らない定数 Z0[0] を与える。残るのは
Z0[J]=Z0[0]exp[2i∫d4x J(x)ϕc(x)]=Z0[0]exp[2i⋅i∫d4xd4y J(x)DF(x−y)J(y)],
つまり
Z0[J]=Z0[0]exp[−21∫d4xd4y J(x)DF(x−y)J(y)].
例題 2.1 の 21bTA−1b が、そのまま −21∫JDFJ に対応している。
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