場の量子論入門 第7部 第4章 §7.4.3 ★★★ 第3部 で規則として与えた (−1) が、ここで導かれる
第3部 の Feynman 則には「閉じたフェルミオンループごとに (−1) を掛ける」という規則があった。経路積分では、この符号は二通りの見方で理解できる。
見方 1:縮約の並べ替え。
相互作用が ψˉΓψ の形をしているとき、n 個の頂点を含む閉じたループを作るにはψ(z1)ψˉ(z2), ψ(z2)ψˉ(z3), …, ψ(zn)ψˉ(z1) という縮約を行う。最初の n−1 個は隣り合う場どうしなので符号を出さないが、最後の ψ(zn) と ψˉ(z1) は間に 2(n−1) 個の場を挟んでおり、一方をもう一方の隣まで移す際に一度だけ余分な入れ替えが必要になる。結果として、ループを一周閉じる操作は必ず奇数回の入れ替えを含み、全体で (−1) が残る。開いたフェルミオン線(外線に繋がる線)では最後の閉じ操作が無いので、この符号は出ない。
見方 2:行列式の位置。
外場 Aμ の中の Dirac 場を積分すると、前節の結果から
∫DψˉDψ ei∫ψˉ(i∂−m−A)ψ=det(i∂−m−A)
となる。同じ形の積分をボゾン場について行えば det−1 が出る。行列式の対数を取るとlndet=Trln であり、
lndet(i∂−m−A)=lndet(i∂−m)+Trln(1−SFA)=定数−n=1∑∞n1Tr[(SFA)n]
と展開できる。Tr[(SFA)n] は伝播関数 n 本と頂点 n 個からなる閉じたループそのものである。ボゾンなら det−1 から出発するので同じ展開の全体符号が逆になる。つまり、フェルミオンループの (−1) は「行列式が分子に来るか分母に来るか」の反映である。そしてその違いは、Grassmann 積分が通常の積分と逆向きに働くという、前節の代数的事実だけから来ている。
スピン統計定理の経路積分版
第4部 では、スピン統計定理を「反交換関係を課さないと Hamiltonian が下に有界にならない」という形で示した。経路積分の言葉では同じ内容が、「半整数スピンの場を可換な変数で積分すると、行列式が分母に来て符号や正値性が壊れる」という形で現れる。どちらの言葉でも、統計と場の性質の結び付きは選択ではなく強制である。
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