場の量子論入門 第7部 第6章 §7.6.1 ★★ 符号を丁寧に追う。ポテンシャルの符号が変わるのが要点
第 2 章で、真空を選び出すために時間を複素平面上でわずかに傾けた。この章では回転を最後まで実行する。t=−iτ と完全に虚軸へ回すと、振動する重み eiS は実の減衰する重み e−SE に変わり、経路積分は統計力学の分配関数そのものになる。統計力学の基礎(分配関数など)を知っている読者なら、対応関係は既に知っている量どうしの辞書として読める。
例題 6.1(Wick 回転)
オリジナル1 自由度の作用 S=∫dt[2mx˙2−V(x)] に t=−iτ を代入し、eiS=e−SE となる Euclid 作用 SE を求めよ。
解答
t=−iτ より dt=−idτ、また
x˙=dtdx=dτdxdtdτ=idτdx⟹2mx˙2=−2m(dτdx)2.
これらを代入すると
iS=i∫(−idτ)[−2m(dτdx)2−V(x)]=∫dτ[−2m(dτdx)2−V(x)]=−∫dτ[2m(dτdx)2+V(x)].
したがって
SE=∫dτ[2m(dτdx)2+V(x)],eiS=e−SE.
運動項とポテンシャル項の相対符号が反転して、SE は正定値な量(V≥0 のとき)になる。実時間の Lagrangian が「運動エネルギーからポテンシャルを引いたもの」だったのに対し、Euclid の被積分関数は「運動エネルギーとポテンシャルの和」であり、形はエネルギーに似ている。この符号反転は、虚時間では粒子が逆さまのポテンシャル −V の中を運動することと同じであり、トンネル効果を古典的な経路(インスタントン)として扱えるようになる理由でもある。
場の理論でも同じである。x0=−ix4 と置くと計量 diag(+,−,−,−) は−diag(+,+,+,+) に変わり、スカラー場の Euclid 作用は
SE=∫d4xE [21(∂Eϕ)2+21m2ϕ2+U(ϕ)]
となる。重み e−SE は正の実数であり、SE が下に有界であれば積分は収束する。実時間の経路積分が振動積分であって収束の意味付けが難しいのに対し、Euclid 版は(少なくとも形式的には)確率測度として扱える。この違いが後の数値計算を可能にする。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com