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多様体とチャート

2026年10月22日11分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第1章 座標と多様体
目次
  1. 球面は1枚の座標で覆えない
  2. 立体射影
  3. チャートとアトラス、多様体の定義
  4. 座標近傍の張り合わせ
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第1章 §1.2 ★★★ 1枚の座標で覆えない空間を、座標の張り合わせとして扱う。多様体の定義そのもの

球面は1枚の座標で覆えない

単位球面を S2={(x,y,z)∈R3:x2+y2+z2=1}S^2=\{(x,y,z)\in\mathbb{R}^3: x^2+y^2+z^2=1\} と書く。球座標の角 (θ,φ)(\theta,\varphi) は球面の座標の候補だが、北極と南極では φ\varphi が決まらない。また、φ=0\varphi=0 と φ=2π\varphi=2\pi が同じ点を指すので、方位角の範囲をどこかで切る必要がある。

うまく工夫すれば、球面全体を1枚の座標で表せるかもしれない。しかし次の定理が示すように、それはできない。定理を述べるために、部分集合 M⊂RNM\subset\mathbb{R}^N の上の座標を正確に定める。

定義 1.5(座標(チャート))

M⊂RNM\subset\mathbb{R}^N とする。RN\mathbb{R}^N の開集合との共通部分として書ける部分集合を、MM の開集合と呼ぶ。次の条件を満たす組 (U,ϕ)(U,\phi) を、MM のチャート(座標近傍)と呼ぶ。

  1. UU は MM の開集合である。
  2. 像 ϕ(U)\phi(U) は Rn\mathbb{R}^n の開集合である。
  3. ϕ ⁣:U→ϕ(U)\phi\colon U\to\phi(U) は同相写像(連続な全単射で、逆写像も連続なもの)である。

ϕ(q)\phi(q) の成分を、点 qq の座標と呼ぶ。

定理 1.6(球面は1枚のチャートで覆えない ★★)

U=S2U=S^2 となるチャート (U,ϕ)(U,\phi) は存在しない。

証明

そのようなチャートがあったとし、W=ϕ(S2)W=\phi(S^2) とおく。チャートの定義から、WW は R2\mathbb{R}^2 の空でない開集合である。

S2S^2 は R3\mathbb{R}^3 の有界な閉集合なので、Heine–Borel の定理によりコンパクトである。コンパクト集合の連続写像による像はコンパクトなので、WW もコンパクトで、したがって R2\mathbb{R}^2 の有界な閉集合である。

WW は R2\mathbb{R}^2 の中で開集合でもあり閉集合でもある。R2\mathbb{R}^2 は連結なので、開集合でもあり閉集合でもある部分集合は、空集合か全体に限られる。よって W=R2W=\mathbb{R}^2 となり、WW が有界であることに反する。

証明で使った性質は「コンパクトであること」だけである。したがって、円 S1S^1・トーラス・RN\mathbb{R}^N の有界な閉集合になっている回転行列の全体など、コンパクトな空間はどれも1枚のチャートでは覆えない。

立体射影

球面を2枚のチャートで覆う方法を作る。北極 N=(0,0,1)N=(0,0,1) と、球面上の別の点 q=(x,y,z)q=(x,y,z) を結ぶ直線を考える。この直線が赤道面 z=0z=0 と交わる点を (u,v,0)(u,v,0) とする。この対応 q↦(u,v)q\mapsto(u,v) を北極からの立体射影と呼ぶ(図 1.3)。

直線は N+t(q−N)=(tx, ty, 1+t(z−1))N+t(q-N)=(tx,\,ty,\,1+t(z-1)) と書ける。第3成分が0になるのは t=1/(1−z)t=1/(1-z) のときなので、立体射影は次のようになる。

ϕN(x,y,z)=(u,v)=(x1−z, y1−z)(1.8)\phi_N(x,y,z)=(u,v)=\left(\frac{x}{1-z},\ \frac{y}{1-z}\right)\tag{1.8}

逆写像を求める。ρ2=u2+v2\rho^2=u^2+v^2 とおくと、x2+y2=1−z2x^2+y^2=1-z^2 から

ρ2=x2+y2(1−z)2=(1−z)(1+z)(1−z)2=1+z1−z\rho^2=\frac{x^2+y^2}{(1-z)^2}=\frac{(1-z)(1+z)}{(1-z)^2}=\frac{1+z}{1-z}

となる。これを zz について解き、x=u(1−z), y=v(1−z)x=u(1-z),\ y=v(1-z) に入れると次を得る。

ϕN−1(u,v)=(2uρ2+1, 2vρ2+1, ρ2−1ρ2+1)(1.9)\phi_N^{-1}(u,v)=\left(\frac{2u}{\rho^2+1},\ \frac{2v}{\rho^2+1},\ \frac{\rho^2-1}{\rho^2+1}\right)\tag{1.9}

右辺の3成分の2乗の和は (4ρ2+(ρ2−1)2)/(ρ2+1)2=1\bigl(4\rho^2+(\rho^2-1)^2\bigr)/(\rho^2+1)^2=1 で、確かに球面上にある。

(1.8) と (1.9) はどちらも連続なので、ϕN\phi_N は北極を除いた球面から R2\mathbb{R}^2 全体への同相写像である。同じように、南極 S=(0,0,−1)S=(0,0,-1) からの立体射影を

ϕS(x,y,z)=(u′,v′)=(x1+z, y1+z)(1.10)\phi_S(x,y,z)=(u',v')=\left(\frac{x}{1+z},\ \frac{y}{1+z}\right)\tag{1.10}

で定める。2枚のチャート (S2∖{N},ϕN)(S^2\setminus\{N\},\phi_N) と (S2∖{S},ϕS)(S^2\setminus\{S\},\phi_S) で球面全体が覆われる。

図

図 1.3 立体射影の断面(y=0y=0)。北極 NN と点 qq を結ぶ直線が赤道面と交わる位置が qq の座標 uu である。北半球の点 q′q' は遠くへ写り、NN に近づくほど無限遠へ行く。破線は南極 SS からの射影で、qq の座標 u′u' は uu′=1u u'=1 を満たす。

2枚のチャートが重なる範囲は、両極を除いた S2∖{N,S}S^2\setminus\{N,S\} である。そこでは (u′,v′)=1−z1+z(u,v)(u',v')=\frac{1-z}{1+z}(u,v) で、1−z1+z=1/ρ2\frac{1-z}{1+z}=1/\rho^2 なので、座標変換は

(u′,v′)=(uu2+v2, vu2+v2)((u,v)≠(0,0))(1.11)(u',v')=\left(\frac{u}{u^2+v^2},\ \frac{v}{u^2+v^2}\right)\qquad\bigl((u,v)\neq(0,0)\bigr)\tag{1.11}

となる。原点を除けば、これは滑らかで、逆写像も同じ形の滑らかな写像である。

チャートとアトラス、多様体の定義

球面の例から、一般の定義を取り出す。いくつかのチャートで全体を覆い、チャートの重なりでは座標変換が滑らかであることを要求する。

定義 1.7(アトラスと多様体)

集合 MM の上の組 (Ua,ϕa)(U_a,\phi_a) の族を考える。これが次の2条件を満たすとき、nn 次元のアトラスと呼ぶ。

  1. ϕa ⁣:Ua→ϕa(Ua)\phi_a\colon U_a\to\phi_a(U_a) は全単射である。像 ϕa(Ua)\phi_a(U_a) は Rn\mathbb{R}^n の開集合である。UaU_a を全部合わせると MM になる。
  2. 重なりの像 ϕa(Ua∩Ub)\phi_a(U_a\cap U_b) は開集合である。座標変換 ϕb∘ϕa−1\phi_b\circ\phi_a^{-1} は、そこで滑らかである。

アトラスを1つ定めた集合を nn 次元の滑らかな多様体と呼ぶ。2つのアトラスを合わせたものもアトラスになるとき、2つのアトラスは同じ多様体を定めるとみなす。

最後の約束により、もとのアトラスと滑らかにつながるチャートはいつでも付け足してよい。物理で「都合のよい座標を選ぶ」という操作は、この意味でアトラスにチャートを1枚足すことにあたる。

注意

  • 次元 nn はチャートによらない。座標変換とその逆はどちらも滑らかなので、(1.5) から Jacobi 行列は逆行列を持つ。逆行列を持つ行列は正方行列なので、どのチャートも同じ nn を持つ。
  • 正式な定義では、MM に位相を入れ、Hausdorff であること(異なる2点を交わらない開集合で分けられること)と、可算個のチャートで覆えることも要求する。RN\mathbb{R}^N の部分集合として与えた多様体は、この2つを自動的に満たす。
  • 定義 1.5 のチャートは同相写像であった。抽象的な多様体では、チャートを通して Rn\mathbb{R}^n の開集合の位相を移し、MM の位相を定める。

座標近傍の張り合わせ

多様体の定義には、MM がどこかの RN\mathbb{R}^N に入っていることは含まれていない。定義には、チャートの像になる Rn\mathbb{R}^n の開集合と、重なりでの座標変換しか使っていない。逆に、Rn\mathbb{R}^n の開集合をいくつか用意し、重なりで同一視する規則を与えれば、多様体を組み立てられる。

球面はその例である。2枚の平面を用意し、座標をそれぞれ (u,v)(u,v) と (u′,v′)(u',v') とする。原点以外の点を (1.11) で同一視すると、片方の平面の原点はもう一方の平面の無限遠にあたり、全体は球面になる。R3\mathbb{R}^3 を一度も使わずに、球面を2枚の座標近傍の張り合わせとして作れたことになる。

トーラスも同じように作れる。正方形 [0,2π]×[0,2π][0,2\pi]\times[0,2\pi] の左右の辺を同じ向きに貼り、上下の辺も同じ向きに貼ったものがトーラスである(§1.3 の図 1.4)。チャートは、貼り目をずらした4枚の開いた正方形で作る(各成分の範囲を (0,2π)(0,2\pi) か (−π,π)(-\pi,\pi) に選ぶ)。

すべての座標変換の Jacobi 行列式が正になるようにアトラスを選べるとき、多様体は向き付け可能であるという。立体射影の座標変換 (1.11) の Jacobi 行列式は負になるが、片方のチャートの v′v' の符号を変えれば正にできる(例題 1.2)。Möbius の帯は向き付けできない多様体の例である(ここでは証明しない)。向きは第12章で微分形式の積分を定義するときに必要になる。

例題 1.2 立体射影の座標変換と向き ★★

オリジナル立体射影の座標変換 (1.11) について次に答えよ。

  1. Jacobi 行列式を求め、それが負であることを示せ。
  2. 南極からのチャートの代わりに (u~,v~)=(u′,−v′)(\tilde u,\tilde v)=(u',-v') を使うと、Jacobi 行列式が正になることを示せ。
  3. 複素数 w=u+iv, w~=u~+iv~w=u+\mathrm{i} v,\ \tilde w=\tilde u+\mathrm{i}\tilde v を使うと、(2) の座標変換が w~=1/w\tilde w=1/w と書けることを示せ。
解答

(1) ρ2=u2+v2\rho^2=u^2+v^2 とおく。商の微分から

∂u′∂u=ρ2−2u2ρ4=v2−u2ρ4,∂u′∂v=∂v′∂u=−2uvρ4,∂v′∂v=u2−v2ρ4\frac{\partial u'}{\partial u}=\frac{\rho^2-2u^2}{\rho^4}=\frac{v^2-u^2}{\rho^4},\qquad \frac{\partial u'}{\partial v}=\frac{\partial v'}{\partial u}=-\frac{2uv}{\rho^4},\qquad \frac{\partial v'}{\partial v}=\frac{u^2-v^2}{\rho^4}

を得る。行列式は

det⁡J=(v2−u2)(u2−v2)−4u2v2ρ8=−(u2+v2)2ρ8=−1ρ4\det J=\frac{(v^2-u^2)(u^2-v^2)-4u^2v^2}{\rho^8}=-\frac{(u^2+v^2)^2}{\rho^8}=-\frac{1}{\rho^4}

で、原点以外のすべての点で負である。

(2) v~=−v′\tilde v=-v' とすると、Jacobi 行列の第2行の符号だけが変わる。行列式は行の符号の反転で符号を変えるので、det⁡=+1/ρ4>0\det=+1/\rho^4>0 となる。このアトラスでは両方の重なりで行列式が正なので、球面は向き付け可能である。

(3) 次のように計算できる。

1w=wˉ∣w∣2=u−ivu2+v2=u′−iv′=u~+iv~=w~\frac1w=\frac{\bar w}{\left\vert w\right\vert ^2}=\frac{u-\mathrm{i} v}{u^2+v^2}=u'-\mathrm{i} v'=\tilde u+\mathrm{i}\tilde v=\tilde w

1/w1/w は原点以外で正則な関数なので、Cauchy–Riemann の関係式から Jacobi 行列式は ∣dw~/dw∣2=1/ρ4\left\vert \mathrm{d}\tilde w/\mathrm{d} w\right\vert ^2=1/\rho^4 になり、(2) と一致する。

確認テスト

オリジナル

  1. 1.2-1 円 S1={x2+y2=1}S^1=\{x^2+y^2=1\} に、角度の2枚のチャートを置く。1枚目は点 (−1,0)(-1,0) を除いた範囲の角 θ∈(−π,π)\theta\in(-\pi,\pi) とする。2枚目は点 (1,0)(1,0) を除いた範囲の角 θ′∈(0,2π)\theta'\in(0,2\pi) とする。重なりを求め、そこでの座標変換を書け。
  2. 1.2-2 円の北極からの立体射影を u=x/(1−y)u=x/(1-y)、南極からの立体射影を u′=x/(1+y)u'=x/(1+y) とする。逆写像 u↦(x,y)u\mapsto(x,y) を求め、重なりで u′=1/uu'=1/u となることを示せ。
  3. 1.2-3 球面の2つの半分に、次の2枚のチャートを置く。

ϕ1(x,y,z)=(x,y)(z>0),ϕ2(x,y,z)=(y,z)(x>0)\phi_1(x,y,z)=(x,y)\quad(z>0),\qquad \phi_2(x,y,z)=(y,z)\quad(x>0)

重なりでの座標変換 ϕ2∘ϕ1−1\phi_2\circ\phi_1^{-1} を書き、その Jacobi 行列式を求めよ。4. 1.2-4 xzxz 平面の円 (x−2)2+z2=1(x-2)^2+z^2=1 を考える。この円を zz 軸のまわりに回してできるトーラスは、1枚のチャートでは覆えないことを示せ。

木下の勉強ステータス

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