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物理に出る多様体

2026年10月22日10分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第1章 座標と多様体
目次
  1. 配位空間
  2. 振り子は円
  3. 二重振り子はトーラス
  4. 剛体の向きは回転の全体
  5. 熱力学の状態空間
  6. 確認テスト
  7. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第1章 §1.3 ★★★ 物理の系の配位空間と状態空間は多様体であり、物理の座標はそのチャートである

配位空間

力学の系が取りうる位置の全体を、その系の配位空間と呼ぶ。配位空間が nn 次元の多様体なら、系の自由度は nn である。一般化座標 q1,…,qnq^1,\dots,q^n は、そのチャートの座標にあたる。配位空間を Rn\mathbb{R}^n と決めてかかると、次の例のように、同じ位置を別の位置として数えたり、どの座標でも表せない位置が現れたりする。

振り子は円

支点のまわりに平面内で振れる単振り子の位置は、おもりの位置で決まり、それは半径 ll の円 S1S^1 上にある。振れの角は座標として便利だが、角 θ\theta と θ+2π\theta+2\pi は同じ位置を指す。θ∈(−π,π)\theta\in(-\pi,\pi) は真上の位置を含まないので、円全体を覆うには確認テスト 1.2-1 のように2枚のチャートが必要である。配位空間を R\mathbb{R} とすると、1回転して戻った振り子を別の状態として数えてしまう。

二重振り子はトーラス

平面内の二重振り子の位置は、2本の棒の角 θ1,θ2\theta_1,\theta_2 で決まる(図 1.4 の左)。それぞれが円 S1S^1 の点なので、配位空間は2つの円の直積 T2=S1×S1T^2=S^1\times S^1、すなわちトーラスである。(θ1,θ2)(\theta_1,\theta_2) の正方形 [0,2π]2[0,2\pi]^2 の向かい合う辺を貼り合わせると、図の右のドーナツの面になる。トーラスと球面はどちらもコンパクトな2次元多様体だが、同じ多様体ではない(両者は第15章の Euler 標数で区別できる)。

図

図 1.4 二重振り子の配位空間。左:2本の棒の角 θ1,θ2\theta_1,\theta_2。中央:(θ1,θ2)(\theta_1,\theta_2) の正方形で、同じ印の辺どうしを矢印の向きに貼る。右:貼った結果のトーラス。青の小さな輪は θ1\theta_1 を固定して θ2\theta_2 を1周させた曲線、赤の大きな輪は θ2\theta_2 を固定して θ1\theta_1 を1周させた曲線にあたる。

剛体の向きは回転の全体

1点を固定した剛体の位置は、基準の向きからどれだけ回転したかで決まる。回転は行列式が1の直交行列 RR で表されるので、配位空間は次の集合である。

SO(3)={R∈R3×3:RTR=I, det⁡R=1}(1.12)SO(3)=\{R\in\mathbb{R}^{3\times3}: R^{\mathsf T}R=I,\ \det R=1\}\tag{1.12}

これは R9\mathbb{R}^9 の部分集合で、§1.4 の例題 1.5 で3次元の多様体であることを示す。各列の長さが1なので有界で、条件が連続関数の等式なので閉集合でもあり、定理 1.6 と同じ理由で1枚のチャートでは覆えない。

SO(3)SO(3) のチャートとしてよく使われるものが Euler 角 (φ,θ,ψ)(\varphi,\theta,\psi) である。しかし θ=0\theta=0 では回転が φ+ψ\varphi+\psi だけで決まり、Jacobi 行列の階数が下がってチャートにならない(確認テスト 1.3-2)。これは「ジンバルロック」として知られる現象である。1枚のチャートで覆えないので、3つの角で全体を表そうとすれば、どこかにこのような点が必ずできる。

空間を自由に動く剛体の配位空間は、重心の位置と向きの組 R3×SO(3)\mathbb{R}^3\times SO(3) で、6次元である。

例題 1.3 回転ベクトルのチャートと境界の同一視 ★

オリジナル単位ベクトル n\bm n を軸に角 α\alpha だけ回す回転は、次の Rodrigues の公式で表される。

R(α,n)=I+sin⁡α K+(1−cos⁡α)K2,K=(0−n3n2n30−n1−n2n10)R(\alpha,\bm n)=I+\sin\alpha\,K+(1-\cos\alpha)K^2,\qquad K=\begin{pmatrix}0&-n_3&n_2\\ n_3&0&-n_1\\ -n_2&n_1&0\end{pmatrix}

ここで Kx=n×xK\bm x=\bm n\times\bm x である。

  1. R(π,n)=R(π,−n)R(\pi,\bm n)=R(\pi,-\bm n) を示せ。
  2. 回転を回転ベクトル αn\alpha\bm n(0≤α≤π0\le\alpha\le\pi)で表すとき、回転の全体がどんな形の空間になるかを述べよ。
解答

(1) 軸の向きを反対にすると、KK は −K-K に変わる。一方、K2K^2 は変わらない。α=π\alpha=\pi では、正弦の値が0なので KK の1次の項が消える。

R(π,n)=I+2K2R(\pi,\bm n)=I+2K^2

したがって R(π,n)=R(π,−n)R(\pi,\bm n)=R(\pi,-\bm n) である。

たとえば n=(0,0,1)\bm n=(0,0,1) のとき、I+2K2=diag(−1,−1,1)I+2K^2=\mathrm{diag}(-1,-1,1) となる。これは第3軸のまわりの半回転で、どちら向きに回しても同じ結果になる。

(2) 回転ベクトル αn\alpha\bm n は、半径 π\pi の閉球の点である。α<π\alpha<\pi の範囲では、回転と回転ベクトルは1対1に対応し、開球 ∣αn∣<π\left\vert \alpha\bm n\right\vert <\pi が1枚のチャートになる。表面 α=π\alpha=\pi の上では、(1) から向かい合う2点 ±πn\pm\pi\bm n が同じ回転を表す。したがって SO(3)SO(3) は、半径 π\pi の閉球の表面で向かい合う点を同一視した空間で、これは3次元の実射影空間と同じ形である(ここでは主張だけを述べる)。

熱力学の状態空間

物質量を固定した1成分の単純な流体を考える。平衡状態は2つの量で決まり、平衡状態の全体は2次元の多様体 M\mathcal M をなす。(S,V)(S,V) や (T,V)(T,V) などの組は、どれもこの多様体のチャートの候補である。

これらは同じ点(同じ平衡状態)に別の数の組を割り当てる。たとえば (S,V)(S,V) から (T,V)(T,V) への座標変換は、温度をエントロピーと体積の関数として表す状態方程式で書ける。その Jacobi 行列式は、VV の行と列の成分が自明なので、偏微分1つになる。

∂(T,V)∂(S,V)=det⁡((∂T/∂S)V(∂T/∂V)S01)=(∂T∂S)V=TCV(1.13)\frac{\partial(T,V)}{\partial(S,V)} =\det\begin{pmatrix}(\partial T/\partial S)_V & (\partial T/\partial V)_S\\ 0 & 1\end{pmatrix} =\left(\frac{\partial T}{\partial S}\right)_V=\frac{T}{C_V}\tag{1.13}

最後の等号は定積熱容量の定義 CV=T(∂S/∂T)VC_V=T(\partial S/\partial T)_V と、逆関数の微分から従う。

熱的に安定な系では CV>0C_V>0 なので (1.13) は正である。逆関数定理により、(T,V)(T,V) は (S,V)(S,V) と同じ向きの正当なチャートになる。熱力学の添字 (∂U/∂V)S(\partial U/\partial V)_S と (∂U/∂V)T(\partial U/\partial V)_T の違いは、どちらのチャートで偏微分するかの違いで、第2章 §2.2 で接ベクトルの言葉で読み直す。

チャートになれない組

組 (T,P)(T,P) は液体と気体が共存する範囲でチャートにならない。共存線の上では温度と圧力を決めても、液体と気体の割合が決まらず、点が1つに定まらないからである。Jacobi 行列式で見ると、∂(T,P)/∂(S,V)=(∂P/∂V)T T/CV\partial(T,P)/\partial(S,V)=(\partial P/\partial V)_T\,T/C_V で、共存の範囲では (∂P/∂V)T=0(\partial P/\partial V)_T=0 なので0になる。

熱力学の状態空間には、点どうしの距離や角を測る自然な規則(計量)が無い。状態を (S,V)(S,V) の平面に描くと直交座標のように見えるが、2本の軸が直交するという主張には意味が無い。この点は第5章 §5.5 で扱う。

例題 1.4 理想気体のチャートの取り替え ★★

オリジナル物質量 nn の単原子理想気体のエントロピーは、基準の状態 (T0,V0,S0)(T_0,V_0,S_0) を使って次のように書ける。

S=32nRln⁡TT0+nRln⁡VV0+S0S=\tfrac32nR\ln\frac{T}{T_0}+nR\ln\frac{V}{V_0}+S_0

  1. (S,V)(S,V) から (T,V)(T,V) への座標変換を書き、その Jacobi 行列式を求めよ。結果が (1.13) の T/CVT/C_V に一致することを確かめよ。
  2. n=1 moln=1\ \mathrm{mol}、T=300 KT=300\ \mathrm{K} の状態で、Jacobi 行列式の値を求めよ。体積を一定に保ってエントロピーを 1 J/K1\ \mathrm{J/K} 増やしたときの温度の変化を、線形近似と厳密な式の両方で求めよ。気体定数は R=8.314 J/(mol K)R=8.314\ \mathrm{J/(mol\,K)} とする。
解答

(1) SS の式を TT について解くと次のようになる。

T(S,V)=T0(V0V)2/3exp⁡ ⁣(2(S−S0)3nR)T(S,V)=T_0\left(\frac{V_0}{V}\right)^{2/3}\exp\!\left(\frac{2(S-S_0)}{3nR}\right)

体積を固定して SS で微分すると、(∂T/∂S)V=2T/(3nR)(\partial T/\partial S)_V=2T/(3nR) を得る。単原子理想気体では CV=32nRC_V=\frac32nR なので、(1.13) から Jacobi 行列式は T/CVT/C_V に等しい。これは正なので、2つのチャートは同じ向きである。

(2) CV=32×8.314=12.47 J/KC_V=\frac32\times8.314=12.47\ \mathrm{J/K} なので、Jacobi 行列式は次の値になる。

TCV=30012.47=24.06 K2/J\frac{T}{C_V}=\frac{300}{12.47}=24.06\ \mathrm{K^2/J}

線形近似では、ΔS=1 J/K\Delta S=1\ \mathrm{J/K} に対する温度の変化は 24.06 K24.06\ \mathrm{K} である。厳密には T=300exp⁡(1/12.47)=325.05 KT=300\exp\bigl(1/12.47\bigr)=325.05\ \mathrm{K} で、変化は 25.05 K25.05\ \mathrm{K} になる。差の約 1 K は、温度がエントロピーの指数関数であることから生じる2次の項である。

確認テスト

オリジナル

  1. 1.3-1 次の系の配位空間を多様体として答え、その次元を書け。

    • (a) 長さ ll の軽い棒の先におもりをつけ、支点のまわりに自由に回れるようにした球面振り子。
    • (b) 平面内の三重振り子。
    • (c) 長さ ll の軽い棒でつながれた、空間内の2つの質点。
    • (d) 空間を自由に運動する剛体。
  2. 1.3-2 Euler 角を次で定める。

R(φ,θ,ψ)=Rz(φ) Rx(θ) Rz(ψ)R(\varphi,\theta,\psi)=R_z(\varphi)\,R_x(\theta)\,R_z(\psi)

ここで RzR_z は第3軸、RxR_x は第1軸のまわりの回転である。θ=0\theta=0 では回転が φ+ψ\varphi+\psi だけで決まることを示せ。そこで写像 (φ,θ,ψ)↦R(\varphi,\theta,\psi)\mapsto R の Jacobi 行列の階数が3より小さいことを示せ。3. 1.3-3 理想気体 PV=nRTPV=nRT について、Jacobi 行列式 ∂(T,P)/∂(S,V)\partial(T,P)/\partial(S,V) を求めよ。答えは温度・圧力・体積・定積熱容量で表せ。(T,P)(T,P) が理想気体の状態空間のチャートになるかどうかを答えよ。4. 1.3-4 内部エネルギー U(S,V)U(S,V) について T=(∂U/∂S)VT=(\partial U/\partial S)_V が成り立つ。(S,V)(S,V) から (U,V)(U,V) への座標変換の Jacobi 行列式が、温度に等しいことを示せ。温度が正の範囲で (U,V)(U,V) がチャートになることを説明せよ。

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