電磁気学入門 第3章 §3.2 ★★ 電荷と電位の線形な関係を係数の行列にまとめ、その対称性とエネルギーを導く
1つの導体と2つの導体の容量
孤立した導体に電荷 Q を与えると、電位 V(無限遠を基準とする)が決まる。電荷を λ 倍したときは、面密度もすべて λ 倍した配置が「導体の表面で電位一定」の条件を満たす。このとき電位も λ 倍になる。一意性定理(定理 3.2)によりこれが唯一の解なので、Q と V は比例する。比例係数
C=VQ(3.5)
を導体の電気容量(キャパシタンス)と呼ぶ。単位は C/V=F(ファラッド)である。容量は導体の形と大きさだけで決まり、電荷にも電位にもよらない。
例として、半径 a の導体球では V=Q/(4πε0a) なので、容量は
C=4πε0a
である。ε0 の単位が F/m であるのは、容量が真空の誘電率と長さの積の形をとるからである。
2つの導体に +Q と −Q を与えたものをコンデンサー(キャパシター)と呼ぶ。2つの導体の電位差を V とすると、同じ線形性から Q=CV と書ける。この比例係数をコンデンサーの容量と呼ぶ。
例題 3.3 同心球コンデンサーと地球の容量 ★★
オリジナル半径 a の導体球を、内半径 b(>a) の薄い導体の球殻が同心に囲む。内球に +Q、球殻に −Q を与える。
- 容量 C を求めよ。
- 次の2つの極限で、容量がそれぞれ何に近づくかを調べよ。(a) b→∞。(b) b=a+d で d≪a。
- 地球を半径 R=6.37×106m の孤立した導体球とみなし、容量を求めよ。
解答
- a<r<b では、球対称性と Gauss の法則から E=4πε0r2Qr^ である。電位差は
V=ϕ(a)−ϕ(b)=∫ab4πε0r2Qdr=4πε0Q(a1−b1)=4πε0Qabb−a
なので、C=Q/V=b−a4πε0ab である。2. 2つの極限を順に見る。
- (a) b→∞ では ab/(b−a)→a となる。よって C→4πε0a で、孤立した球の容量に戻る。
- (b) b=a+d、d≪a の場合を考える。球の面積を S=4πa2 と書くと
b−aab=da(a+d)≃da2,C≃d4πa2ε0=dε0S
となる。これは面積 S、間隔 d の平行板コンデンサーの容量に一致する。間隔が半径より十分小さいと、曲がった極板も局所的には平行な板とみなせるからである。3. 数値を入れると
C=4πε0R=4π×8.854×10−12×6.37×106F=7.09×10−4F
で、約 710μF である。地球ほど大きな導体でも容量は1ファラッドよりはるかに小さい。このことから、ファラッドが非常に大きな単位であることが分かる。
電位係数と容量係数
導体が N 個あるときは、電荷と電位の関係は行列になる。導体 j にだけ単位電荷を与え、ほかの導体の電荷をゼロにしたときを考える。このときの導体 i の電位を pij と書く。重ね合わせにより、一般の電荷 Q1,…,QN に対して
Vi=j=1∑NpijQj(3.6)
が成り立つ。ここで重ね合わせを使ってよいのは、各導体の表面で電位一定という条件と全電荷の条件がどちらも線形であり、定理 3.2 から解が1つに決まるからである。pij を電位係数と呼ぶ。行列 (pij) は正則であり(下で示すエネルギーの正値性から従う)、逆行列を (cij) と書くと
Qi=j=1∑NcijVj(3.7)
である。cii を容量係数、cij(i=j) を誘導係数と呼ぶ(まとめて容量係数と呼ぶこともある)。
係数の意味は次のとおりである。導体 j だけを電位 1 にし、ほかをすべて接地する。そのとき導体 i に現れる電荷が cij である。
導体系の静電エネルギーを求める。W=21∫ρϕdV の電荷は導体の表面だけにあり、各表面で ϕ=Vi が一定なので
W=21i∑QiVi=21i,j∑pijQiQj=21i,j∑cijViVj(3.8)
となる。場の形 W=2ε0∫∣E∣2dV は、電荷が1つでもゼロでなければ正である。よって2次形式 ∑pijQiQj は正定値である。正定値な行列は正則であり、逆行列 (cij) も正定値になる。
定理 3.5(Green の相反定理と係数の対称性 ★★)
同じ導体系の2つの状態を考える。
- (i) 状態1:電荷 Qi、電位 Vi。
- (ii) 状態2:電荷 Qi′、電位 Vi′。
この2つについて
i∑QiVi′=i∑Qi′Vi(3.9)
が成り立つ。したがって pij=pji、cij=cji である。
証明
一般の電荷分布 ρ と ρ′ を考える。ρ′ の作る電位
ϕ′(r)=4πε01∫∣r−r′∣ρ′(r′)dV′
を使うと
∫ρϕ′dV=4πε01∬∣r−r′∣ρ(r)ρ′(r′)dVdV′
となる。右辺は2つの分布を入れ替えても変わらないので
∫ρϕ′dV=∫ρ′ϕdV
である。導体系では電荷は導体の表面にだけあり、表面 Si の上で ϕ′=Vi′ が一定である。よって左辺は
i∑Vi′∮SiσdS=i∑QiVi′
になる。右辺も同様に ∑iQi′Vi になり、(3.9) を得る。
電位係数の対称性を示すため、次の2つの状態をとる。
- 状態1:導体 j だけに電荷 1 をもたせる。
- 状態2:導体 i だけに電荷 1 をもたせる。
(3.9) の左辺は Vj′=pji、右辺は Vi=pij なので、両者は等しい。対称行列の逆行列は対称なので cij=cji である。
この対称性は、直観だけでは予想しにくい内容を含む。小さな導体1と大きな導体2が離れて置かれているとき、「導体2に単位電荷を与えたときの導体1の電位」と「導体1に単位電荷を与えたときの導体2の電位」は、導体の形や大きさがまったく違っても等しい。
命題 3.6(容量係数の符号)
次の3つが成り立つ。
- (i) cii>0。
- (ii) cij≤0 (i=j)。
- (iii) ∑jcij≥0。
証明
導体 j の電位を 1、ほかの導体の電位を 0 にした状態を考える。導体の外の電位 ϕ は、電荷の無い領域で ∇2ϕ=0 を満たす。境界の値は 0(ほかの導体と無限遠)か 1(導体 j)なので、補題 3.3 により外の領域で 0≤ϕ≤1 である。
- (i) 導体 j の電荷は正。導体 j の表面では ϕ が最大値 1 をとるので、外向きの法線方向に電位は増えない。よって σ=−ε0∂ϕ/∂n≥0 で、cjj=Qj≥0 である。ϕ は無限遠で 0 なので恒等的に 1 ではありえず、等号は成り立たない。
- (ii) ほかの導体の電荷は負かゼロ。ほかの導体 i の表面では電位が最小値 0 をとるので、∂ϕ/∂n≥0 である。よって σ≤0 となり、cij=Qi≤0 である。
- (iii) 全電荷は負でない。全電荷 ∑iQi=∑icij は、全体を囲む大きな球面での Gauss の法則から電場の流束で表せる。遠方の電位は
ϕ≃4πε0r∑iQi
で、しかも ϕ≥0 なので、全電荷は負でない。対称性 cij=cji から ∑jcij≥0 も成り立つ。
コンデンサーの容量を係数で書く
2つの導体に +Q,−Q を与えると、(3.6) から
V1−V2=(p11−p21)Q−(p12−p22)Q=(p11+p22−2p12)Q
となるので
C=p11+p22−2p121
である。分母は2次形式 ∑pijQiQj に (Q1,Q2)=(1,−1) を入れたものなので正である。よって容量が正であることが保証される。
確認テスト
オリジナル
- 3.2-1 孤立した導体の容量が、導体の電荷にも電位にもよらず形だけで決まる理由を1文で説明せよ。
- 3.2-2 半径 a の導体の円柱を、内半径 b の導体の円筒が同軸に囲む。長さは L≫b で、端の影響は無視する。単位長さあたりの容量を求めよ。また、a=0.50mm、b=2.0mm、間が真空のときの値を pF/m で求めよ。
- 3.2-3 半径 a の導体球(導体1)を、半径 b(>a) の薄い導体の球殻(導体2)が同心に囲む。電位係数 pij と容量係数 cij をすべて求めよ。命題 3.6 の3つの不等式が成り立つことを確かめ、c11+c21=0 となる理由を説明せよ。
- 3.2-4 前問の pij を注意の箱の式 C=1/(p11+p22−2p12) に入れ、例題 3.3 の容量と一致することを示せ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com