電磁気学入門 第4章 §4.4 ★★ エネルギー密度は 21E⋅D。誘電体に働く力は、エネルギーの変化から求める
エネルギーの式
第2章 §2.4 では、真空中の電荷分布の静電エネルギーを W=2ε0∫E2dV と書いた。誘電体があるときは、分極電荷も電場をつくるが、分極電荷を外から自由に出し入れすることはできない。外から操作できるのは自由電荷だけなので、誘電体を含む系のエネルギーは、自由電荷を少しずつ運び込むのに要する仕事として定義する。
電位 ϕ の状態に、自由電荷 δρf を無限遠からゆっくり運び込む仕事は
δW=∫ϕδρfdV
である。δρf=∇⋅δD を代入し、∇⋅(ϕδD)=∇ϕ⋅δD+ϕ∇⋅δD を使うと
δW=∫∇⋅(ϕδD)dV−∫∇ϕ⋅δDdV=∫E⋅δDdV
となる。第1項は発散定理で無限遠の面積分に直した。電荷分布が有界なら ϕδD∼r−3 が面積 r2 より速く減るので、この項は 0 になる。
線形誘電体では D=εE で、誘電率が状態によらない。よって
E⋅δD=εE⋅δE=δ(21E⋅D)
である。電荷を 0 から最終の値まで運び込んだ全体の仕事を足し合わせると、次の結果を得る。
定理 4.6(線形誘電体を含む系の静電エネルギー ★★★)
W=21∫E⋅DdV=21∫εE2dV.(4.21)
21E⋅D と 2ε0E2 の差
(4.21) の被積分関数は2つの項に分けられる。
21E⋅D=2ε0E2+21E⋅P
第1項は電場そのもののエネルギーで、第2項は分子を分極させるために蓄えたエネルギーである。
例えば電子分極の模型では、電子の雲がばね定数 k のばねで原子核に結ばれ、qx の双極子をつくるとする。つり合い kx=qE から
p=qx=kq2E,α=kq2
で、ばねのエネルギーは
21kx2=21αp2=21pE
となる。数密度 n を掛けると 21P⋅E になり、第2項と一致する。
導体と線形誘電体からなる系では、(4.21) は各導体の電荷 Qi と電位 Vi で
W=21i∑QiVi
と書ける(確認テスト 4.4-4)。コンデンサー1つなら W=21QV=2CQ2=21CV2 である。
エネルギーから力を求める
誘電体に働く力を、分極電荷に働く Coulomb 力を足し合わせて直接求めるのは難しい。分極電荷の分布が、電場が決まってはじめて決まるからである。
代わりに、誘電体をわずかに動かしたときのエネルギーの変化から力を求める(仮想仕事の方法)。誘電体の位置を表す座標 x を考える。電場が誘電体に、この座標の向きの力 F を及ぼすとする。
電荷を一定に保つ場合:導体を電池から切り離しておくと、誘電体を dx 動かしても電荷は変わらない。外部からエネルギーが入らないので、電場がした仕事 Fdx の分だけ静電エネルギーが減る。
F=−∂x∂WQ.(4.22)
電位を一定に保つ場合:導体を電池につないでおくと、誘電体を動かしたとき電荷が dQi だけ流れ込む。このとき電池は ∑VidQi の仕事をする。エネルギーの収支と、電位一定でのエネルギーの変化は
∑VidQidW=dW+Fdx,=21∑VidQi(Vi が一定)
である。したがって Fdx=21∑VidQi=dW、すなわち
F=+∂x∂WV(4.23)
となる。電池が供給したエネルギーの半分が静電エネルギーの増加に、残りの半分が力学的な仕事になる。
2つの式の符号は逆だが、同じ配置に対しては同じ力になる。コンデンサー1つで確かめる。容量が C(x) のとき
−∂x∂(2CQ2)Q=2C2Q2dxdC=21V2dxdC,∂x∂(21CV2)V=21V2dxdC
で、両者は一致する。力は誘電体と導体の配置で決まり、電池がつながっているかどうかにはよらない。どちらの式を使うかは、計算の都合で選べばよい。
F=21V2dxdC.(4.24)

図 4.4 平行平板コンデンサー(極板の長さ L、奥行き w、間隔 d)に、比誘電率 εr の板を x だけ差し込んだ状態。板は極板の間へ引き込まれる。力の源は極板の端の漏れ電場で、極板の間の一様な電場は板の進む向きに成分を持たない。
一様な電場は板を引き込まない
図 4.4 の極板の間の一様な電場は極板に垂直で、板の進む向き(x 方向)の成分を持たない。それでも板が引き込まれる理由は、極板の端に漏れ出した電場が x 方向の成分を持ち、板の先端付近の分極電荷を引くことにある。
漏れ電場の形を求めるのは難しいが、(4.24) を使えば、その計算をせずに正しい力を求めることができる。エネルギーの変化を計算するときに使う C(x) は、板が十分奥まで入り、端の領域の形が x によらない状態で求めた式でよい。x が変わっても端の領域の寄与は一定で、dC/dx に現れないからである。
誘電体の中の力の密度と、小さな誘電体に働く力
(4.21) から、誘電率が場所によって変わる物質に働く力の密度を求める。自由電荷を固定したまま、物質を変位 δs(r) だけ動かすと、各点の誘電率が δε=−δs⋅∇ε だけ変わる(物質の密度は変わらないとする)。W=21∫D2/εdV の変化は
δW=∫εD⋅δDdV−21∫ε2D2δεdV.
第1項は、自由電荷を固定しているので消える。
∫E⋅δDdV=∫ϕ∇⋅δDdV=∫ϕδρfdV=0
残るのは第2項で
δW=−21∫E2δεdV=21∫E2∇ε⋅δsdV
である。電荷を固定した場合の (4.22) と同じく、力の密度 f がする仕事 ∫f⋅δsdV は、エネルギーの減少に等しい。よって
f=−21E2∇ε(4.25)
を得る。力は誘電率が減る向きに働く。誘電体の表面では ∇ε が表面に垂直に集中し、誘電体の内側を向くので、表面には誘電体を真空の側へ引き出す向きの力が働く。
大きさが場の変化の長さより十分小さい誘電体(分極率 α)に働く力は、もっと簡単に求まる。誘起された双極子 p=αE のエネルギーは、次の2つの和である。
- 外場の中の双極子のエネルギー −p⋅E=−αE2。
- 分極を保つために蓄えたエネルギー 21αE2(上の ideabox)。
よって
U=−21αE2,F=−∇U=21α∇(E2)(4.26)
となる。分極率は正なので、小さな誘電体は電場の強い所へ引き寄せられる。こすった下敷きに紙片が引き寄せられるのはこの力による。
例題 4.6 コンデンサーの間を上る液体 ★★
オリジナル間隔 d の2枚の平行な極板(奥行き w)を鉛直に立てる。下端を絶縁性の液体に浸し、電圧 V をかける。液体の比誘電率は εr、密度は ρm である。
- 液面が極板の間でもとの液面より h だけ上がってつり合うとする。h を求めよ(表面張力は無視する)。
- 次の値で h を求めよ。
εr=3.0,ρm=9.0×102kg/m3,V=1.0×103V,d=1.0mm,g=9.81m/s2
3. 同じ結果を、力の密度 (4.25) から液面に働く圧力として導け。
解答
- 極板間で液体が占める高さを y とすると、容量は液体の部分と空気の部分の並列接続で、y に依存する部分は
C(y)=dε0w[εry+(ℓ−y)]
(ℓ は極板の高さ)である。(4.24) より、液体を引き上げる力は
F=21V2dydC=2dε0(εr−1)wV2
で、y によらない。これが、もとの液面より上に持ち上げられた液体の重さ ρmghwd とつり合うので
h=2ρmgd2ε0(εr−1)V2.
2. h=2(9.0×102)(9.81)(1.0×10−6)(8.854×10−12)(2.0)(1.0×106)m=1.0×10−3m、つまり約 1mm 上がる。3. 極板間の電場は液体の中でも外でも E=V/d で、液面に平行である(接線成分の連続から、液面の上下で等しい)。液面を鉛直に横切る向きに (4.25) を積分すると、液面の単位面積に働く上向きの力(圧力)は
pe=∫(−21E2∂y∂ε)dy=21E2(εr−1)ε0
である。下から上へ誘電率が ε0εr から ε0 へ減るので、力は上向きである。数値は 21(1.0×106)2(2.0)(8.854×10−12)Pa=8.85Pa である。これが液柱の圧力とつり合う条件
21ε0(εr−1)d2V2=ρmgh
は 1 の結果と同じ式である。液柱の圧力は ρmgh=(9.0×102)(9.81)(1.0×10−3)Pa=8.8Pa で、確かに一致する。
確認テスト
オリジナル
- 4.4-1 電池につないだままの平行平板コンデンサーに誘電体の板を差し込む。静電エネルギーは増えるか減るか。電池から切り離してから差し込む場合はどうか。
- 4.4-2 容量 C0=100pF のコンデンサーに Q=1.0×10−8C を与えて電池から切り離す。その後、極板間を比誘電率 4.0 の誘電体で完全に満たす。はじめと終わりの静電エネルギー、電圧、電場が誘電体にした仕事を求めよ。
- 4.4-3 点電荷 q から距離 r の所に、小さな誘電体球がある。球の半径は b (≪r)、比誘電率は εr である。球に働く力を求めよ。球の分極率には例題 4.4 の結果を使ってよい。
- 4.4-4 導体 i=1,2,… と、自由電荷を持たない線形誘電体からなる系を考える。各導体の電荷を Qi、電位を Vi とする。次の式を示せ。
W=21∫E⋅DdV=21i∑QiVi
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com