電磁気学入門 第4章 §4.3 ★★ 境界で E の接線成分と D の法線成分が連続になり、電気力線は境界で折れ曲がる
境界条件の導出
2つの誘電体(誘電率 ε1 と ε2)が面で接している。境界面の単位法線 n を、媒質1から媒質2へ向けてとる。境界面には自由電荷が面密度 σf で載っていてもよいとする。
法線成分:境界面を挟む薄い円筒(底面積 ΔS、高さ h→0)に (4.10) を使う。側面の寄与は h→0 で消え、上下の底面だけが残るので
(D2−D1)⋅nΔS=σfΔS.
接線成分:境界面を挟む細長い長方形(長さ ℓ、幅 h→0)をとる。その周りで、∇×E=0 と Stokes の定理から ∮E⋅dl=0 が成り立つ。幅が0の極限では長い2辺だけが残る。境界面に沿った任意の単位ベクトルを t として
(E2−E1)⋅tℓ=0.
定理 4.5(誘電体の境界条件 ★★★)
D2n−D1n=σf,E2t=E1t.(4.17)
電位で書くと、ϕ は境界で連続で、ε1∂n∂ϕ1−ε2∂n∂ϕ2=σf である。自由電荷が無い境界では、境界に現れる分極電荷は
σb=−(P2−P1)⋅n(4.18)
である。
証明
(4.17) は上の2つの式である。電位が連続であることは、接線成分の連続性を境界に沿って積分すれば分かる(境界で電位が跳ぶと、境界を横切る向きの電場が無限大になる)。電位の式は Dn=−ε∂ϕ/∂n を代入したものである。
(4.18) は (4.8) から得られる。
- 媒質1の表面の外向き法線は n なので、そこには P1⋅n の分極電荷が載る。
- 媒質2の表面の外向き法線は −n なので、そこには −P2⋅n が載る。
両者を足すと (4.18) になる。これは、自由電荷が無いときの真空の Gauss の法則 ε0(E2n−E1n)=σb と、D2n=D1n を組み合わせた結果とも一致する。
電気力線の屈折
自由電荷の無い境界で、媒質1の電場が法線と角 θ1 をなし、媒質2の電場が法線と角 θ2 をなすとする。(4.17) から
E1sinθ1=E2sinθ2,ε1E1cosθ1=ε2E2cosθ2
が成り立つ。1番目の式を2番目の式で割ると
tanθ2tanθ1=ε2ε1(4.19)
を得る。誘電率の大きい媒質の中では、電場の法線成分が小さくなり接線成分は変わらない。よって電気力線は法線から離れる向きに曲がる(図 4.3)。電場の大きさも変わり、誘電率の大きい側の方が小さい。
(4.19) は光の屈折の Snell の法則とは別の式で、静電場に対してだけ成り立つ。第9章では、電磁波に対して同じ境界条件(4.17) から Snell の法則と Fresnel の式を導く。

図 4.3 誘電体の境界での電気力線の屈折。ε2/ε1=3、θ1=35∘ のとき、tanθ2=3tanθ1 から θ2≈64.5∘。誘電率の大きい媒質の中で、電気力線は法線から離れる。
境界値問題
誘電体の境界がある静電場の問題は、各媒質の中で Laplace 方程式 ∇2ϕ=0(自由電荷の無い所)を解き、境界で (4.17) の2条件をつなぐ問題になる。
第2章 §2.3 の一意性の証明は、各領域の解をこの2条件でつないだ場合にもそのまま適用できる。実際、2つの解の差 ψ について、次の積分を部分積分する。
∫ε∣∇ψ∣2dV
境界の寄与は ε∂ψ/∂n の連続性で打ち消し合う。したがって、条件をすべて満たす解を1つ見つければ、それが答えである。第3章の変数分離と鏡像法が、そのまま使える。
例題 4.4 一様な電場の中の誘電体球 ★★★
オリジナル一様な電場 E0=E0z^ の中に、誘電体球を置く。球の半径は a、比誘電率は εr である。
球の内部と外部の電位を求め、内部の電場が一様であることを示せ。さらに、球の外の電場が、原点に置いた双極子の電場と一様な電場の和になることを示し、その双極子モーメントを求めよ。
解答
遠方では ϕ→−E0rcosθ で、境界条件に現れる角度の依存性は cosθ=P1(cosθ) だけである。そこで第3章 §3.4 の解の l=1 の項だけを使って
ϕin=−Arcosθ,ϕout=−E0rcosθ+r2Bcosθ
とおく(内部は原点で有限)。r=a での2つの境界条件は
電位の連続: −Aa=−E0a+a2B,Dr の連続: −ε0εr∂r∂ϕin=−ε0∂r∂ϕout ⟺ εrA=E0+a32B.
1番目の式から B/a3=E0−A である。これを2番目に入れると εrA=E0+2E0−2A、すなわち
A=εr+23E0,B=εr+2εr−1a3E0.
内部の電位は ϕin=−Az なので、内部の電場は一様で
Ein=εr+23E0(4.20)
である。εr>1 なので ∣Ein∣<E0 で、球の中の電場は外の電場より弱い。外部の第2項は、(4.2) と比べて
p=4πε0Bz^=4πε0εr+2εr−1a3E0
の双極子の電位である。
検算として、§4.1 の結果と照らし合わせる。内部の分極は
P=ε0(εr−1)Ein=3ε0εr+2εr−1E0
で一様である。例題 4.1 より、一様に分極した球は内部に −P/(3ε0) の電場をつくる。外部には双極子 34πa3P の電場をつくる。内部では
E0−3ε0P=E0−εr+2εr−1E0=εr+23E0
となり、外部の双極子 34πa3P も上の p と一致する。εr→∞ の極限では、次のようになる。
Ein→0,p→4πε0a3E0
これは第3章 §3.4 の一様な電場の中の導体球の結果である。
例題 4.5 誘電体の平面の前の点電荷 ★★
オリジナルz<0 を比誘電率 εr の誘電体が満たし、残りの半空間は真空である。点 (0,0,d) に点電荷 q を置く。
電位を次の形で表す。境界条件から q′、q′′ を決めよ。
- 真空側:点電荷の電位と、鏡像点 (0,0,−d) に置いた電荷 q′ の電位の和。
- 誘電体側:点電荷と同じ位置に置いた電荷 q′′ の電位。点電荷からの距離を R1 として、次の形をとる。
4πε0εrR1q′′
2. 点電荷に働く力を求め、εr→∞ の極限が導体平面の場合に一致することを確かめよ。
解答
- 点電荷からの距離を R1、鏡像点からの距離を R2 とする。
ϕ1=4πε01(R1q+R2q′) (z>0),ϕ2=4πε0εr1R1q′′ (z<0).
境界 z=0 の上では R1=R2=:R である。電位の連続から
q+q′=εrq′′.
次に Dz の連続を使う。境界の上で
∂zR11=R3d,∂zR21=−R3d
なので
−ε0∂z∂ϕ1=−4πR3(q−q′)d,−ε0εr∂z∂ϕ2=−4πR3q′′d,
これが境界の全体(すべての R)で等しいことから q−q′=q′′ である。2式を連立するとq+q′=(q−q′)/εr、すなわち
q′=−εr+1εr−1q,q′′=εr+12εrq.
2つの式は各領域で Laplace 方程式(q の位置を除く)と境界条件をすべて満たすので、一意性によりこれが解である。2. 真空側の電場のうち、点電荷自身の電場を除いた部分は鏡像電荷の電場である。よって点電荷に働く力は
F=4πε0(2d)2qq′z^=−εr+1εr−116πε0d2q2z^
で、電荷の符号によらず誘電体へ引き寄せられる。εr→∞ では q′→−q となる。このとき力は −q2/(16πε0d2)z^ になる。これは第3章 §3.3 の導体平面の鏡像法の結果に一致する。
確認テスト
オリジナル
- 4.3-1 真空から比誘電率3の誘電体へ、電気力線が法線と 45∘ の角で入る(境界に自由電荷は無い)。誘電体の中で電気力線が法線となす角を求めよ。
- 4.3-2 内半径 a、外半径 b の同心球コンデンサーを、境界を赤道面として2種類の誘電体で満たす。上半分の誘電率は ε1、下半分の誘電率は ε2 である。両領域で E=(K/r2)r^ と同じ形の電場が境界条件を満たすことを確かめ、容量を求めよ。
- 4.3-3 例題 4.4 の誘電体球の表面の分極電荷密度 σb(θ) を求めよ。
- 4.3-4 比誘電率 εr の誘電体が全空間を満たし、遠方で一様な電場 E0 がある。そこに半径 a の球形の空洞(真空)をあける。空洞の中の電場を求めよ。
- 4.3-5 境界条件 (4.17) を使って、自由電荷の無い誘電体の境界で、電束密度の接線成分がどう変わるかを ε1、ε2 で表せ。
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