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Faraday の法則

2026年10月15日23分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第7章 電磁誘導
目次
  1. 起電力と磁束
  2. 運動起電力
  3. 誘導起電力と Faraday の法則
  4. 同じ法則の2つの顔
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

電磁気学入門 第7章 §7.1 ★★★ 起電力は回路を貫く磁束の減少率に等しい。導体が動く場合も磁場が変わる場合も同じ式になる

第2章から第6章までは、電荷も電流も時間的に変わらない場合を扱った。そこでは電場と磁場は別々の方程式に従い、静電場は ∇×E=0\nabla\times\bm{E}=\bm{0} を満たす保存力の場、静磁場は ∇⋅B=0\nabla\cdot\bm{B}=0 と Ampère の法則に従う場として、互いに独立に求めることができた。

1831年に M. Faraday は、コイルを貫く磁束を変えるとコイルに電流が流れることを発見した。磁石をコイルに近づけても、コイルを磁石に近づけても、隣のコイルの電流を入り切りしても電流が流れる。この現象を電磁誘導と呼ぶ。電磁誘導によって、電場と磁場は初めて1つの方程式で結ばれる。

この章の目標は4つある。

  1. §7.1 では、回路に電流を流そうとする働きを起電力として定義し、起電力が回路を貫く磁束の時間変化で決まるという Faraday の法則を導く。導体が磁場の中を動くときの起電力(運動起電力)は Lorentz 力から導ける。磁場そのものが時間変化するときの起電力(誘導起電力)は Lorentz 力からは出てこず、∇×E=−∂B/∂t\nabla\times\bm{E}=-\partial\bm{B}/\partial t という新しい法則を要求する。この2つが同じ式で書けることの意味も考える。
  2. §7.2 では、回路の電流と、それがほかの回路や自分自身を貫く磁束の比例係数として、相互インダクタンスと自己インダクタンスを定義し、相互インダクタンスが対称であること(Neumann の公式)を示す。
  3. §7.3 では、電流を流すのに要する仕事から磁場のエネルギー12LI2\frac12LI^2 と、そのエネルギー密度 B2/(2μ0)B^2/(2\mu_0) を導き、エネルギーから力を求める。
  4. §7.4 では、インダクタンスを含む回路の方程式を立て、RL・LC・RLC 回路の過渡現象を解く。

前の章から借りる結果は次のとおりである。第5章の静磁場の基本法則と、電荷 qq に働く Lorentz 力

F=q(E+v×B),∇⋅B=0,∇×B=μ0J,B=∇×A,(7.1)\bm{F}=q(\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B}),\qquad \nabla\cdot\bm{B}=0,\qquad \nabla\times\bm{B}=\mu_0\bm{J},\qquad \bm{B}=\nabla\times\bm{A},\tag{7.1}

を使う。ベクトルポテンシャルは Coulomb ゲージ ∇⋅A=0\nabla\cdot\bm{A}=0 で

A(r)=μ04π∫J(r′)∣r−r′∣ dV′,A(r)=μ0I4π∮dl′∣r−r′∣(細い導線の回路)(7.2)\bm{A}(\bm{r})=\frac{\mu_0}{4\pi}\int\frac{\bm{J}(\bm{r}')}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }\,\mathrm{d} V',\qquad \bm{A}(\bm{r})=\frac{\mu_0 I}{4\pi}\oint\frac{\mathrm{d}\bm{l}'}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }\quad(\text{細い導線の回路})\tag{7.2}

と書ける(第5章 §5.4)。具体例では次の4つを使う。

  • 単位長さあたり nn 回巻いた長いソレノイドの内部の一様な磁場(外部は 0):B=μ0nIB=\mu_0nI。
  • 直線電流から距離 ss の磁場:B=μ0I/(2πs)B=\mu_0I/(2\pi s)。
  • 半径 bb の円電流の軸上の磁場:

Bz(z)=μ0Ib22(b2+z2)3/2.(7.3)B_z(z)=\frac{\mu_0Ib^2}{2(b^2+z^2)^{3/2}} .\tag{7.3}

  • 磁気双極子 μ\bm{\mu} のベクトルポテンシャル(第5章 §5.5):A=μ04πμ×rr3\bm{A}=\frac{\mu_0}{4\pi}\frac{\bm{\mu}\times\bm{r}}{r^3}。

第1章 §1.2 の Stokes の定理と発散定理、第2章 §2.4 の静電エネルギー、第4章 §4.4 の仮想仕事による力の求め方も使う。

この章の結果は、第8章で Maxwell 方程式の1本 ∇×E=−∂B/∂t\nabla\times\bm{E}=-\partial\bm{B}/\partial t として変位電流と並び、電磁場のエネルギー保存則の磁場の部分 B2/(2μ0)B^2/(2\mu_0) になる。第9章では電磁波の伝播の式の半分に、第10章では「動く磁石と止まった導体」の問題として特殊相対論の出発点になる。

起電力と磁束

回路に電流が流れ続けるには、電荷を回路に沿って一周させる働きが要る。静電場 E\bm{E} は ∮E⋅dl=0\oint\bm{E}\cdot\mathrm{d}\bm{l}=0 を満たすので、静電場だけでは電荷を一周させることはできず、電池のような静電場以外の力が必要になる。そこで次の量を定義する。

定義 7.1(起電力)

閉じた回路 CC に沿って、そこにある電荷に働く単位電荷あたりの力を f=F/q\bm{f}=\bm{F}/q とする。

E=∮Cf⋅dl(7.4)\mathcal E=\oint_C\bm{f}\cdot\mathrm{d}\bm{l}\tag{7.4}

を、回路 CC の向きに沿った起電力と呼ぶ。単位は V\mathrm V である。

起電力は名前に「力」を含むが、力ではなく、単位電荷を回路に沿って一周させたときに力がする仕事である。抵抗 RR の回路では、起電力と電流は E=RI\mathcal E=RI で結ばれる(第5章 §5.1 の Ohm の法則を回路に沿って積分したもの)。

回路 CC を縁とする曲面 SS を1つ選ぶ。SS の法線の向きは、CC の向きと右ねじの関係になるようにとる(第1章 §1.2 の Stokes の定理の約束)。

Φ=∫SB⋅dS(7.5)\Phi=\int_S\bm{B}\cdot\mathrm{d}\bm{S}\tag{7.5}

を、CC を貫く磁束と呼ぶ。単位は Wb=T⋅m2\mathrm{Wb}=\mathrm{T\cdot m^2} である。

この値は CC を縁とする曲面の選び方によらない。同じ縁を持つ2つの曲面 S1S_1 と S2S_2 を合わせると閉曲面になる。発散定理と ∇⋅B=0\nabla\cdot\bm{B}=0 から、その閉曲面を貫く全磁束は 0 である。2つの面の法線を両方とも CC と右ねじの向きにとると、閉曲面の外向きの法線とは片方だけ逆向きになるので

∫S1B⋅dS−∫S2B⋅dS=0\int_{S_1}\bm{B}\cdot\mathrm{d}\bm{S}-\int_{S_2}\bm{B}\cdot\mathrm{d}\bm{S}=0

となる。ベクトルポテンシャルを使えば、Stokes の定理から

Φ=∫S(∇×A)⋅dS=∮CA⋅dl(7.6)\Phi=\int_S(\nabla\times\bm{A})\cdot\mathrm{d}\bm{S}=\oint_C\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{l}\tag{7.6}

とも書ける。この形では曲面が式から消えているので、曲面によらないことが一目で分かる。

運動起電力

まず、磁場は時間変化せず、回路が動く場合を考える。

図 7.1 のように、一様な磁場 B=Bez\bm{B}=B\bm{e}_z の中に、平行な2本のレールを xyxy 面内に置く。レールの間隔は ll である。その上に導体棒を渡して xx 方向に速さ vv で動かす。棒の中の電荷 qq は棒と一緒に速度 vexv\bm{e}_x で動くので、次の Lorentz 力を受ける。

qv×B=qvB ex×ez=−qvB ey.q\bm{v}\times\bm{B}=qvB\,\bm{e}_x\times\bm{e}_z=-qvB\,\bm{e}_y .

回路をレールと棒と左端の抵抗でつくり、向きを zz 軸に対して右ねじ(上から見て反時計回り)にとる。棒の上では回路の向きが +ey+\bm{e}_y なので、起電力は

E=∫棒(v×B)⋅dl=−vBl.\mathcal E=\int_{\text{棒}}(\bm{v}\times\bm{B})\cdot\mathrm{d}\bm{l}=-vBl .

レールと抵抗は静止しているので、そこでは v×B=0\bm{v}\times\bm{B}=\bm{0} である。一方、棒の位置を xx とすると、回路を貫く磁束とその変化率は

Φ=Blx,dΦdt=Blv\Phi=Blx,\qquad \frac{d \Phi}{d t}=Blv

である。したがって

E=−dΦdt(7.7)\mathcal E=-\frac{d \Phi}{d t}\tag{7.7}

が成り立つ。

図

図 7.1 一様な磁場(紙面の裏から表へ向かう、⊙\odot)の中のレールと導体棒。棒の中の電荷は v×B\bm{v}\times\bm{B} の力を受け、回路を上から見て時計回りの向きに電流が流れる。回路の向き(反時計回り)に沿った起電力は −vBl-vBl である。

符号の意味を確かめておく。E<0\mathcal E<0 なので、電流は回路の向きと逆、つまり上から見て時計回りに流れる。この電流が回路の内側につくる磁場は −ez-\bm{e}_z 向きで、回路を貫く磁束の増加を打ち消す向きである。

この関係は一様な磁場と長方形の回路に限らない。磁場が時間変化しない(∂B/∂t=0\partial\bm{B}/\partial t=\bm{0})とき、任意の形の回路が任意に動き、変形する場合について示す。

命題 7.2(運動起電力と磁束の変化)

静磁場 B(r)\bm{B}(\bm{r}) の中で閉曲線 C(t)C(t) が動くとする。曲線上の点 r\bm{r} の速度を v(r,t)\bm{v}(\bm{r},t) とする。C(t)C(t) を貫く磁束を Φ(t)\Phi(t) とすると

Emot≔∮C(t)(v×B)⋅dl=−dΦdt.(7.8)\mathcal E_{\mathrm{mot}}\coloneqq\oint_{C(t)}(\bm{v}\times\bm{B})\cdot\mathrm{d}\bm{l}=-\frac{d \Phi}{d t}.\tag{7.8}

証明

2つの時刻の曲面 S(t)S(t) と S(t+dt)S(t+\mathrm{d} t) を考える。この2つを、曲線が dt\mathrm{d} t の間に掃く細い帯 Σ\Sigma でつなぐと、閉曲面ができる。∇⋅B=0\nabla\cdot\bm{B}=0 と発散定理から、この閉曲面を外向きに貫く磁束は 0 である。

2つの面の法線を CC と右ねじの向きにとる。閉曲面の外向き法線は、後の曲面 S(t+dt)S(t+\mathrm{d} t) では同じ向き、前の曲面では逆向きになる(帯は前の曲面から法線の向きへ進む側にあるとして図を描くとよい。逆の側でも以下の符号は変わらない)。

帯の面素は平行四辺形である。その2辺は、曲線の線素 dl\mathrm{d}\bm{l} と、その点が動く変位 v dt\bm{v}\,\mathrm{d} t である。その外向きの面積ベクトルは dl×v dt\mathrm{d}\bm{l}\times\bm{v}\,\mathrm{d} t である。(確かめ方:CC を上から見て反時計回りの円とし、法線の向きに動かすと、dl×v\mathrm{d}\bm{l}\times\bm{v} は円の外へ向く。)したがって

Φ(t+dt)−Φ(t)+∮CB⋅(dl×v) dt=0.\Phi(t+\mathrm{d} t)-\Phi(t)+\oint_C\bm{B}\cdot(\mathrm{d}\bm{l}\times\bm{v})\,\mathrm{d} t=0 .

スカラー三重積の巡回 B⋅(dl×v)=dl⋅(v×B)\bm{B}\cdot(\mathrm{d}\bm{l}\times\bm{v})=\mathrm{d}\bm{l}\cdot(\bm{v}\times\bm{B}) を使って dt\mathrm{d} t で割ると

dΦdt=−∮C(v×B)⋅dl\frac{d \Phi}{d t}=-\oint_C(\bm{v}\times\bm{B})\cdot\mathrm{d}\bm{l}

となり、(7.8) を得る。

ここで v\bm{v} は回路を構成する導体の速度である。導体の中の電荷は導体に沿って流れる速度 u\bm{u} も持つ。しかし u∥dl\bm{u}\parallel\mathrm{d}\bm{l} なので (u×B)⋅dl=0(\bm{u}\times\bm{B})\cdot\mathrm{d}\bm{l}=0 となり、起電力には入らない。

運動起電力については、エネルギーの勘定に注意が要る。磁場の力 qv×Bq\bm{v}\times\bm{B} は電荷の速度に垂直なので、仕事をしない。抵抗で発生する熱のエネルギーは、棒を動かし続けるために外から加える力の仕事で賄われている。

棒に電流 II が流れると、棒は磁場から Il×BI\bm{l}\times\bm{B} の力(第5章 §5.2)を受け、この力は運動を妨げる向きを持つ。棒を一定の速さで動かすために外力がする仕事率は、抵抗で発生する Joule 熱にちょうど等しい。

IBl⋅v=I∣E∣=RI2.IBl\cdot v=I\left\vert \mathcal E\right\vert =RI^2 .

磁場は外力の仕事を電流の仕事へ受け渡す役割を持つが、自分ではエネルギーを出し入れしない。

誘導起電力と Faraday の法則

次に、回路は静止していて、磁場が時間変化する場合を考える。たとえば、静止したコイルに磁石を近づける場合である。導体は動かないので v=0\bm{v}=\bm{0} で、Lorentz 力の磁場の部分は電荷に力を及ぼさない。

それでも実験では電流が流れ、その起電力は、磁石を止めてコイルを同じ相対速度で動かした場合と同じで、(7.7) と同じく −dΦ/dt-\mathrm{d}\Phi/\mathrm{d} t になる。静止した電荷を動かせるのは電場だけなので、この実験は、磁場が時間変化すると、そこに静電場ではない電場が生じることを示している。

定理 7.3(Faraday の電磁誘導の法則 ★★★)

静止した任意の閉曲線 CC と、それを縁とする曲面 SS について

∮CE⋅dl=−ddt∫SB⋅dS.(7.9)\oint_C\bm{E}\cdot\mathrm{d}\bm{l}=-\frac{d }{d t}\int_S\bm{B}\cdot\mathrm{d}\bm{S} .\tag{7.9}

これは次の微分形と同値である。

∇×E=−∂B∂t.(7.10)\nabla\times\bm{E}=-\frac{\partial \bm{B}}{\partial t}.\tag{7.10}

証明

積分形 (7.9) は実験法則として認める。微分形との同値性を示す。曲線と曲面は静止しているので、時間微分は積分の中へ入り ∂B/∂t\partial\bm{B}/\partial t になる。左辺に Stokes の定理を使うと、

∫S(∇×E+∂B∂t)⋅dS=0\int_S\Bigl(\nabla\times\bm{E}+\frac{\partial \bm{B}}{\partial t}\Bigr)\cdot\mathrm{d}\bm{S}=0

が任意の曲面 SS で成り立つ。被積分関数は連続とし、ある点 r0\bm{r}_0 で n\bm{n} 方向の成分が正だったとする。その点を中心とし法線が n\bm{n} の十分小さな円板の上で積分は正になり、矛盾する。したがって被積分関数は恒等的に 0\bm{0} で、(7.10) が成り立つ。

逆に (7.10) を SS 上で積分して Stokes の定理を使えば (7.9) に戻る。

静電場の基本法則 ∇×E=0\nabla\times\bm{E}=\bm{0}(第2章 §2.3)は、この式の ∂B/∂t=0\partial\bm{B}/\partial t=\bm{0} の場合である。磁場が時間変化すると、電場の回転は 0 でなくなり、∮E⋅dl\oint\bm{E}\cdot\mathrm{d}\bm{l} は経路によって変わる。したがって、電場を電位の勾配 −∇ϕ-\nabla\phi だけで書くことはできない。B=∇×A\bm{B}=\nabla\times\bm{A} を (7.10) に入れると

∇×(E+∂A∂t)=0\nabla\times\Bigl(\bm{E}+\frac{\partial \bm{A}}{\partial t}\Bigr)=\bm{0}

になる。この回転の無い場を勾配で書いて

E=−∇ϕ−∂A∂t(7.11)\bm{E}=-\nabla\phi-\frac{\partial \bm{A}}{\partial t}\tag{7.11}

とすることができる(確認テスト 7.1-4)。時間変化する場のポテンシャルの扱いは、第8章 §8.2 で改めて整理する。

右辺の負号は、Lenz の法則と呼ばれる次の事実を表す。誘導起電力による電流は、それ自身がつくる磁場で、回路を貫く磁束の変化を打ち消す向きに流れる。もし符号が逆なら、磁束が増えると電流がさらに磁束を増やす向きに流れ、外から仕事をしなくても電流が際限なく増えることになり、エネルギーの保存に反する。

渦電流

誘導電場 (7.10) は、導線の中だけでなく、塊の導体の中にも電流をつくる。この電流を渦電流と呼ぶ。

  • 銅やアルミニウムの管の中に強い磁石を落とすと、磁石の下側の管壁では磁束が増え、上側では減る。管壁に流れる渦電流の磁場は、Lenz の法則によって磁石の運動を妨げ、磁石はゆっくり落ちる。
  • 変圧器の鉄心は、薄い板を絶縁して重ねてつくる。こうすると渦電流の流れる経路が断たれ、渦電流による Joule 熱の損失が小さくなる。

同じ法則の2つの顔

ここまでで、起電力が −dΦ/dt-\mathrm{d}\Phi/\mathrm{d} t になる場合が2つあった。導体が動くとき(運動起電力)は Lorentz 力の v×B\bm{v}\times\bm{B} の項が原因で、磁場が時間変化するとき(誘導起電力)は ∇×E=−∂B/∂t\nabla\times\bm{E}=-\partial\bm{B}/\partial t が原因である。両方が同時に起きる一般の場合をまとめる。

定理 7.4(磁束則 ★★★)

磁場 B(r,t)\bm{B}(\bm{r},t) の中で閉曲線 C(t)C(t) が動き、変形するとする。曲線上の電荷に働く単位電荷あたりの力 E+v×B\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B} による起電力は

E=∮C(t)(E+v×B)⋅dl=−dΦdt.(7.12)\mathcal E=\oint_{C(t)}(\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B})\cdot\mathrm{d}\bm{l}=-\frac{d \Phi}{d t}.\tag{7.12}

証明

命題 7.2 の証明で、磁場が時間変化する場合を考える。Φ(t+dt)\Phi(t+\mathrm{d} t) は、その時刻の磁場を、その時刻の曲面で積分したものである。その時刻の磁場も ∇⋅B=0\nabla\cdot\bm{B}=0 を満たすので、閉曲面の議論はその時刻の磁場について成り立ち、

∫S(t+dt)B(t+dt)⋅dS=∫S(t)B(t+dt)⋅dS−∮CB⋅(dl×v) dt\int_{S(t+\mathrm{d} t)}\bm{B}(t+\mathrm{d} t)\cdot\mathrm{d}\bm{S}=\int_{S(t)}\bm{B}(t+\mathrm{d} t)\cdot\mathrm{d}\bm{S}-\oint_C\bm{B}\cdot(\mathrm{d}\bm{l}\times\bm{v})\,\mathrm{d} t

となる(最後の項の B\bm{B} は時刻 tt の値で置き換えてよい。差は dt2\mathrm{d} t^2 の大きさである)。右辺第1項は

Φ(t)+dt∫S(t)∂tB⋅dS\Phi(t)+\mathrm{d} t\int_{S(t)}\partial_t\bm{B}\cdot\mathrm{d}\bm{S}

なので、

dΦdt=∫S∂B∂t⋅dS−∮C(v×B)⋅dl.\frac{d \Phi}{d t}=\int_{S}\frac{\partial \bm{B}}{\partial t}\cdot\mathrm{d}\bm{S}-\oint_C(\bm{v}\times\bm{B})\cdot\mathrm{d}\bm{l} .

右辺第1項は (7.10) と Stokes の定理で −∮CE⋅dl-\oint_C\bm{E}\cdot\mathrm{d}\bm{l} に等しい。移項すれば (7.12) を得る。

起電力のうち E\bm{E} による部分と v×B\bm{v}\times\bm{B} による部分の割合は、観測する座標系によって変わる。磁石の静止系で見ると、磁場は時間変化せず、コイルが動くので、起電力はすべて v×B\bm{v}\times\bm{B} による。コイルの静止系で見ると、コイルは動かず、磁石が動くので磁場が時間変化し、起電力はすべて誘導電場 E\bm{E} による。どちらの系で計算しても起電力は同じ −dΦ/dt-\mathrm{d}\Phi/\mathrm{d} t になり、実験で測る電流も同じである。

2つの説明がなぜ一致するか

Faraday の法則と Lorentz 力の式は、別々の経験から得た法則である。それなのに、相対運動だけが同じ2つの状況で起電力が一致する。この一致が偶然でないとすれば、ある系で「磁場」と呼んだものの一部が、別の系では「電場」に見えるはずである。

実際、速さ v≪cv\ll c で動く系では、電場が E′=E+v×B\bm{E}'=\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B} に変わる。A. Einstein は1905年の特殊相対論の論文を、まさにこの「動く磁石と導体」の非対称性の指摘から始めた。電場と磁場が座標系によって混ざる正確な規則は、第10章 §10.1 と §10.5 で導く。

磁束則がそのまま使えない場合

磁束則 (7.12) は、回路が「どの物質の点を結んだ曲線か」がはっきり決まっている場合の式である。

  • 回転する導体の円板の中心と縁に接点をつけた Faraday の円板(単極発電機)では、電流の通り道の中で円板の中の部分が刻々と別の物質の点に入れ替わる。回路の形は変わらないので、磁束則を素朴に使うと dΦ/dt=0\mathrm{d}\Phi/\mathrm{d} t=0 になるが、実際には起電力が生じる(確認テスト 7.1-3)。
  • このような場合は、磁束則に頼らず、各点の電荷に働く力 q(E+v×B)q(\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B}) を電流の通り道に沿って積分する。定義 (7.4) に戻れば、いつでも正しい起電力が得られる。

例題 7.1 レールの上を滑る棒の減速 ★★

オリジナル図 7.1 の配置で、棒の質量を mm、抵抗を RR とする。レールの間隔は ll である(棒とレールの抵抗と、回路の自己インダクタンスは無視する)。時刻 t=0t=0 に棒に速さ v0v_0 を与えて放す。摩擦は無い。

  1. 棒の速さ v(t)v(t) を求めよ。
  2. 棒が止まるまでに進む距離と、抵抗で発生する Joule 熱の総量を求め、熱が初めの運動エネルギーに等しいことを確かめよ。
  3. 次の値のとき、速さが初めの 1/e1/\mathrm{e} になるまでの時間と、止まるまでに進む距離を求めよ。

m=0.10 kg,B=0.50 T,l=0.20 m,R=0.10 Ω,v0=2.0 m/s.m=0.10\,\mathrm{kg},\quad B=0.50\,\mathrm T,\quad l=0.20\,\mathrm m,\quad R=0.10\,\Omega,\quad v_0=2.0\,\mathrm{m/s}.

解答
  1. 起電力の大きさは BlvBlv で、電流の大きさは I=Blv/RI=Blv/R である。棒は磁場から大きさ IlB=B2l2v/RIlB=B^2l^2v/R の力を、運動と逆向きに受ける。運動方程式は

mdvdt=−B2l2Rvm\frac{d v}{d t}=-\frac{B^2l^2}{R}v

である。τ=mR/(B2l2)\tau=mR/(B^2l^2) とおくと、解は v(t)=v0e−t/τv(t)=v_0\mathrm{e}^{-t/\tau} である。2. 進む距離は

∫0∞v0e−t/τ dt=v0τ=mRv0B2l2.\int_0^\infty v_0\mathrm{e}^{-t/\tau}\,\mathrm{d} t=v_0\tau=\frac{mRv_0}{B^2l^2}.

Joule 熱は

∫0∞RI2 dt=∫0∞B2l2v02Re−2t/τ dt=B2l2v02R⋅τ2=B2l2v02R⋅mR2B2l2=12mv02\int_0^\infty RI^2\,\mathrm{d} t=\int_0^\infty\frac{B^2l^2v_0^2}{R}\mathrm{e}^{-2t/\tau}\,\mathrm{d} t=\frac{B^2l^2v_0^2}{R}\cdot\frac{\tau}{2}=\frac{B^2l^2v_0^2}{R}\cdot\frac{mR}{2B^2l^2}=\frac12mv_0^2

で、初めの運動エネルギーにちょうど等しい。運動エネルギーは、磁場の力に逆らって電流を流す仕事を通じて、すべて熱になる。3. τ=(0.10)(0.10)(0.50)2(0.20)2 s=0.0100.010 s=1.0 s\tau=\dfrac{(0.10)(0.10)}{(0.50)^2(0.20)^2}\,\mathrm s=\dfrac{0.010}{0.010}\,\mathrm s=1.0\,\mathrm s。止まるまでに進む距離は v0τ=2.0 mv_0\tau=2.0\,\mathrm m。

例題 7.2 回転コイルの発電機 ★★

オリジナル平面コイルの面積を SS、巻数を NN とする。このコイルが角速度 ω\omega で回る。回転軸は一様な磁場 B\bm{B} に垂直である。時刻 t=0t=0 にコイルの面は磁場に垂直である。

  1. コイルの起電力 E(t)\mathcal E(t) を求めよ。
  2. 次の値のとき、起電力の最大値を求めよ。

N=200,S=1.0×10−2 m2,B=0.25 T,回転数 50 Hz.N=200,\quad S=1.0\times10^{-2}\,\mathrm{m^2},\quad B=0.25\,\mathrm T,\quad \text{回転数 }50\,\mathrm{Hz}. 3. 同じ結果を、コイルの導線に働く v×B\bm{v}\times\bm{B} の力から求めよ。コイルは長方形とし、軸に平行な辺の長さを aa、もう一方の辺の長さを bb とする。

解答
  1. コイルの法線と磁場のなす角は ωt\omega t なので、1巻きを貫く磁束は BScos⁡ωtBS\cos\omega t である。導線は同じ曲線を NN 回まわるので、磁束も起電力も NN 倍になる。Faraday の法則から

E(t)=−ddt(NBScos⁡ωt)=NBSωsin⁡ωt.\mathcal E(t)=-\frac{d }{d t}(NBS\cos\omega t)=NBS\omega\sin\omega t . 2. ω=2π×50 s−1=314.2 s−1\omega=2\pi\times50\,\mathrm{s^{-1}}=314.2\,\mathrm{s^{-1}} なので、最大値はNBSω=200×0.25×1.0×10−2×314.2 V=157 VNBS\omega=200\times0.25\times1.0\times10^{-2}\times314.2\,\mathrm V=157\,\mathrm V。3. 軸に平行な2辺は、軸から b/2b/2 の距離を速さ v=ωb/2v=\omega b/2 で回る。この辺の速度と磁場のなす角は ωt\omega t である。そのため、v×B\bm{v}\times\bm{B} の辺に沿った成分の大きさは vBsin⁡ωtvB\sin\omega t になる。

2辺は逆向きに動くが、回路の向きも逆向きにたどるので、起電力は足し合わさる。1巻きあたりの起電力は

2⋅a⋅ωb2Bsin⁡ωt=ωabBsin⁡ωt=BSωsin⁡ωt.2\cdot a\cdot\frac{\omega b}{2}B\sin\omega t=\omega abB\sin\omega t=BS\omega\sin\omega t .

軸に垂直な2辺では v×B\bm{v}\times\bm{B} が辺に垂直なので寄与しない。NN 倍すると 1 の結果に一致する。

確認テスト

オリジナル

  1. 7.1-1 水平に置いた円形のコイルの真上から、N 極を下に向けた棒磁石を近づける。コイルに流れる電流の向きを、上から見て時計回りか反時計回りかで答え、理由を Lenz の法則で説明せよ。
  2. 7.1-2 半径 RR の長いソレノイドの内部に一様な磁場 B(t)B(t) がある。この磁場が一定の割合 B˙=dB/dt\dot B=\mathrm{d} B/\mathrm{d} t で増える。軸からの距離 ss の点の誘導電場 E\bm{E} を、ソレノイドの内と外の両方で求めよ。さらに、次の値のとき、軸からの距離が 1.0 cm1.0\,\mathrm{cm} の点と 5.0 cm5.0\,\mathrm{cm} の点で電場の大きさを求めよ。

R=2.0 cm,B˙=10 T/s.R=2.0\,\mathrm{cm},\qquad \dot B=10\,\mathrm{T/s}. 3. 7.1-3 半径 aa の導体の円板が、中心を通る軸のまわりに角速度 ω\omega で回る(Faraday の円板)。円板に垂直な一様な磁場 BB がかかっている。中心と縁のあいだの起電力を、電荷に働く力 v×B\bm{v}\times\bm{B} の積分から求めよ。さらに、a=0.10 ma=0.10\,\mathrm m、B=1.0 TB=1.0\,\mathrm T、毎分 3000 回転のときの値を求めよ。4. 7.1-4 Faraday の法則 (7.10) と B=∇×A\bm{B}=\nabla\times\bm{A} から、電場が次の形に書けることを導け。

E=−∇ϕ−∂A∂t\bm{E}=-\nabla\phi-\frac{\partial \bm{A}}{\partial t}

さらに、この E\bm{E} の閉曲線に沿った積分が −dΦ/dt-\mathrm{d}\Phi/\mathrm{d} t になることを示せ。

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