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4元電流と4元ポテンシャル

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第10章 電磁気学と特殊相対論
目次
  1. 電荷の不変性と電荷密度の変換
  2. 4元電流と連続の式
  3. 4元ポテンシャルと Lorenz 条件
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

電磁気学入門 第10章 §10.2 ★★★ (cρ,J)(c\rho,\bm{J}) と (ϕ/c,A)(\phi/c,\bm{A}) は4元ベクトルになり、連続の式と Lorenz 条件はどちらも「4元発散がゼロ」という不変な式になる

電荷の不変性と電荷密度の変換

物体の全電荷は、どの慣性系で測っても同じ値をとる。これを電荷の不変性と呼ぶ。質量やエネルギーと違い、電荷は速さによって変わらない。

実験の根拠として、たとえば水素分子とヘリウム原子はどちらも電気的に中性であることが高い精度で確かめられている。2つの中で電子と原子核の運動の速さはまったく違うので、もし電荷が速さに依存すれば、どちらかに正味の電荷が残るはずである。以下ではこれを前提として認める。

電荷の不変性から、電荷密度の変換が決まる。電荷が速度 u\bm{u} で一様に流れているとし、電荷とともに動く系(静止系)で測った電荷密度を ρ0\rho_0 とする。静止系で体積 V0V_0 の小さな箱をとると、その中の電荷は Q=ρ0V0Q=\rho_0V_0 である。

流れが動いて見える系では、箱の運動方向の辺だけが 1/γu1/\gamma_u 倍に縮む(『相対論入門』第2章 §2.2 の長さの収縮)。ここで

γu=(1−u2c2)−1/2\gamma_u=\Bigl(1-\frac{u^2}{c^2}\Bigr)^{-1/2}

である。体積は V=V0/γuV=V_0/\gamma_u になる。中の電荷は変わらないので

ρ=QV=γuρ0,J=ρu=γuρ0u(10.13)\rho=\frac{Q}{V}=\gamma_u\rho_0,\qquad \bm{J}=\rho\bm{u}=\gamma_u\rho_0\bm{u}\tag{10.13}

である。電荷密度は静止系で最も小さく、動いて見える系では γu\gamma_u 倍に大きくなる。

4元電流と連続の式

『相対論入門』第5章 §5.1 の4元速度 uμ=dxμ/dτ=γu(c,u)u^\mu=\mathrm{d} x^\mu/\mathrm{d}\tau=\gamma_u(c,\bm{u}) を使う。すると (10.13) は

Jμ=ρ0uμ=(cρ, J)(10.14)J^\mu=\rho_0u^\mu=(c\rho,\,\bm{J})\tag{10.14}

とまとまる。ρ0\rho_0 は静止系で測った量なので、どの系でも同じ値をとるスカラーである。uμu^\mu は4元ベクトルである。したがって JμJ^\mu は4元ベクトルで、4元電流と呼ぶ。

速度の違う何種類かの電荷が重なっているときは、それぞれの4元電流を足せばよい。4元ベクトルの和は4元ベクトルなので、一般の電荷と電流の分布について Jμ=(cρ,J)J^\mu=(c\rho,\bm{J}) は4元ベクトルである。

成分で書けば、xx 方向のブーストで

cρ′=γ(cρ−βJx),Jx′=γ(Jx−βcρ),Jy′=Jy,Jz′=Jz(10.15)c\rho'=\gamma(c\rho-\beta J_x),\qquad J'_x=\gamma(J_x-\beta c\rho),\qquad J'_y=J_y,\qquad J'_z=J_z\tag{10.15}

となる。電荷密度と電流密度は、時刻と位置が混ざるのと同じ仕方で混ざる。

とくに、KK で電荷密度が0でも電流があれば、もう一方の系では ρ′=−γβJx/c≠0\rho'=-\gamma\beta J_x/c\neq0 となる。電荷の不変性があるのに電荷密度が現れるのは、同時刻の取り方が系によって違うためである(例題 10.2)。

内積 JμJμ=c2ρ2−∣J∣2J_\mu J^\mu=c^2\rho^2-\left\vert \bm{J}\right\vert ^2 は不変量である。1種類の電荷の流れなら、c2ρ02c^2\rho_0^2 に等しい(確認テスト 10.2-1)。

連続の式は、(10.12) を使うと

∂μJμ=1c∂(cρ)∂t+∇⋅J=∂ρ∂t+∇⋅J=0(10.16)\partial_\mu J^\mu=\frac1c\frac{\partial (c\rho)}{\partial t}+\nabla\cdot\bm{J}=\frac{\partial \rho}{\partial t}+\nabla\cdot\bm{J}=0\tag{10.16}

と書くことができる。左辺は4元ベクトルの4元発散なのでスカラーである。1つの慣性系で0なら、すべての慣性系で0である。電荷の保存則は、どの慣性系でも同じ形で成り立つ。

4元ポテンシャルと Lorenz 条件

第8章 §8.2 の Lorenz ゲージのポテンシャルの方程式 (10.2) を、4元電流の形に合わせて書き直す。□ϕ=ρ/ε0\Box\phi=\rho/\varepsilon_0 の両辺を cc で割る。ε0μ0=1/c2\varepsilon_0\mu_0=1/c^2 から出る 1/(ε0c)=μ0c1/(\varepsilon_0c)=\mu_0c を使うと

□(ϕc)=ρε0c=μ0(cρ)\Box\Bigl(\frac{\phi}{c}\Bigr)=\frac{\rho}{\varepsilon_0c}=\mu_0(c\rho)

となる。□A=μ0J\Box\bm{A}=\mu_0\bm{J} と並べると、

Aμ=(ϕc, A)(10.17)A^\mu=\Bigl(\frac{\phi}{c},\,\bm{A}\Bigr)\tag{10.17}

とおいて、4本の方程式が

□Aμ=μ0Jμ(10.18)\Box A^\mu=\mu_0J^\mu\tag{10.18}

の1本にまとまる。Lorenz 条件も

∂μAμ=1c∂∂t(ϕc)+∇⋅A=1c2∂ϕ∂t+∇⋅A=0(10.19)\partial_\mu A^\mu=\frac1c\frac{\partial }{\partial t}\Bigl(\frac{\phi}{c}\Bigr)+\nabla\cdot\bm{A}=\frac{1}{c^2}\frac{\partial \phi}{\partial t}+\nabla\cdot\bm{A}=0\tag{10.19}

と4元発散の形になる。

AμA^\mu が4元ベクトルとして変換されることを確かめる。KK で AμA^\mu が (10.18) と (10.19) を満たすとする。K′K' で A′μ(x′)=ΛμνAν(x)A'^\mu(x')=\Lambda^\mu{}_\nu A^\nu(x) と定める。ダランベルシアンは不変で、4元電流は4元ベクトルなので

□′A′μ=Λμν□Aν=μ0ΛμνJν=μ0J′μ\Box'A'^\mu=\Lambda^\mu{}_\nu\Box A^\nu=\mu_0\Lambda^\mu{}_\nu J^\nu=\mu_0J'^\mu

となる。4元発散もスカラーなので、∂μ′A′μ=∂μAμ=0\partial'_\mu A'^\mu=\partial_\mu A^\mu=0 である。つまり ΛμνAν\Lambda^\mu{}_\nu A^\nu は、K′K' で同じ形の方程式を満たす。

第11章 §11.1 で示すとおり、遠方から入ってくる放射が無いという条件(遅延の条件)をつければ (10.18) の解はただ1つに決まる。

この条件は「過去の光円錐の上の源だけが寄与する」という形をしている。光円錐と時間の向きは Lorentz 変換で保たれるので、どの慣性系でも同じ条件である。したがって K′K' のポテンシャルは ΛμνAν\Lambda^\mu{}_\nu A^\nu そのものである。AμA^\mu は4元ベクトルで、これを4元ポテンシャルと呼ぶ。

ゲージ変換も4元の形で書くことができる。スカラー関数 Λ(x)\Lambda(x) について

Aμ→Aμ−∂μΛ(10.20)A^\mu\to A^\mu-\partial^\mu\Lambda\tag{10.20}

とする。成分に分けると次のようになる。

ϕc→ϕc−1c∂tΛ, つまり ϕ→ϕ−∂tΛ(μ=0 成分)A→A+∇Λ(空間成分。∂i=−∂i を使った)\begin{aligned}\frac{\phi}{c}&\to\frac{\phi}{c}-\frac1c\partial_t\Lambda,\ \text{つまり}\ \phi\to\phi-\partial_t\Lambda &&\text{(}{\mu=0}\text{ 成分)}\\ \bm{A}&\to\bm{A}+\nabla\Lambda &&\text{(空間成分。}{\partial^i=-\partial_i}\text{ を使った)}\end{aligned}

第8章 §8.2 のゲージ変換と同じ符号である。ゲージ関数 Λ\Lambda は Lorentz 変換の行列 Λμν\Lambda^\mu{}_\nu と字が同じだが、添字の有無で区別する。変換のあとで Lorenz 条件が保たれるのは、∂μ∂μΛ=□Λ=0\partial_\mu\partial^\mu\Lambda=\Box\Lambda=0 のときである(確認テスト 10.2-4)。

AμA^\mu が4元ベクトルであることの意味

  • ポテンシャルにはゲージの自由度があるので、「AμA^\mu は4元ベクトルである」は、ゲージ変換 (10.20) の分を除いて成り立つ主張である。上の議論は Lorenz ゲージと遅延の条件を選んだときのもので、この選び方はどの慣性系でも同じ形をしている。
  • Coulomb ゲージ ∇⋅A=0\nabla\cdot\bm{A}=0 は空間成分だけの条件なので、慣性系を変えると成り立たなくなる。変換したポテンシャルを K′K' の Coulomb ゲージへ戻すには、ゲージ変換を1回やり直す必要がある。
  • 電場と磁場はゲージによらないので、§10.3 の電磁場テンソルはゲージの選び方と無関係にテンソルになる。

例題 10.2 電流の流れる導線と平行に動く電荷:磁気力を電気力として見る ★★★

オリジナルKK で静止した細い直線の導線が、xx 軸に沿って置かれている。導線には +x+x 向きに電流 I=10 AI=10\,\mathrm A が流れている。導線は電気的に中性(線電荷密度 λ=0\lambda=0)である。

陽子(電荷 q=eq=e)が、導線から yy 方向に離れた所を動いている。その距離は d=1.0 cmd=1.0\,\mathrm{cm} である。陽子は導線に平行に、+x+x 向きに速さ u=1.0×105 m/su=1.0\times10^5\,\mathrm{m/s} で動く。

  1. KK で陽子が受ける力を、磁場と Lorentz 力から求めよ。
  2. 陽子が静止して見える系 K′K' を考える。この系は +x+x 向きに速さ uu で動く。K′K' での導線の線電荷密度 λ′\lambda' を、4元電流の変換から求めよ。
  3. K′K' で陽子が受ける力を求め、それを KK へ戻すと (1) と厳密に一致することを示せ。
  4. 断面積 1.0 mm2^2 の銅線(伝導電子の数密度 8.5×1028 m−38.5\times10^{28}\,\mathrm{m^{-3}})を考える。その伝導電子の線電荷密度の大きさと比べ、∣λ′∣\left\vert \lambda'\right\vert がどれほど小さいかを求めよ。
解答
  1. 第5章 §5.2 の無限直線電流の磁場は、陽子の位置 (0,d,0)(0,d,0) で

B=μ0I2πd z^,B=4π×10−7×102π×0.010 T=2.0×10−4 T\bm{B}=\frac{\mu_0I}{2\pi d}\,\hat{\bm{z}},\qquad B=\frac{4\pi\times10^{-7}\times10}{2\pi\times0.010}\,\mathrm T=2.0\times10^{-4}\,\mathrm T

である(電流 x^\hat{\bm{x}} と導線から陽子への向き y^\hat{\bm{y}} の外積の向き)。陽子が受ける力は

F=qu x^×Bz^=−quB y^,F=1.602×10−19×1.0×105×2.0×10−4 N=3.2×10−18 N\bm{F}=qu\,\hat{\bm{x}}\times B\hat{\bm{z}}=-quB\,\hat{\bm{y}},\qquad F=1.602\times10^{-19}\times1.0\times10^5\times2.0\times10^{-4}\,\mathrm N=3.2\times10^{-18}\,\mathrm N

で、導線へ向かう引力である。2. 導線の断面にわたって JμJ^\mu を積分すると (cλ,I,0,0)(c\lambda,I,0,0) になる。断面は xx 方向に垂直で、xx 方向のブーストでは変わらないので、この組は (10.15) と同じ規則で変換される。β=u/c\beta=u/c として

cλ′=γ(cλ−βI)=−γβI,λ′=−γuIc2.c\lambda'=\gamma(c\lambda-\beta I)=-\gamma\beta I,\qquad \lambda'=-\frac{\gamma uI}{c^2}.

数値は γ≃1\gamma\simeq1 で

λ′=−1.0×105×10(2.998×108)2 C/m=−1.11×10−11 C/m.\lambda'=-\frac{1.0\times10^5\times10}{(2.998\times10^8)^2}\,\mathrm{C/m}=-1.11\times10^{-11}\,\mathrm{C/m}.

K′K' から見ると、導線は負に帯電している。3. K′K' では陽子は静止しているので、磁場があっても磁気力は働かず、線電荷 λ′\lambda' の電場だけから力を受ける。第2章 §2.2 の直線電荷の電場から

Ey′=λ′2πε0d=−γuI2πε0c2d=−γuμ0I2πd=−γuB,Fy′=qEy′=−γquB.E'_y=\frac{\lambda'}{2\pi\varepsilon_0d}=-\frac{\gamma uI}{2\pi\varepsilon_0c^2d}=-\gamma u\frac{\mu_0I}{2\pi d}=-\gamma uB,\qquad F'_y=qE'_y=-\gamma quB.

数値では Ey′=−1.11×10−11/(2π×8.854×10−12×0.010) V/m=−20 V/mE'_y=-1.11\times10^{-11}/(2\pi\times8.854\times10^{-12}\times0.010)\,\mathrm{V/m}=-20\,\mathrm{V/m} である。

次に力を KK へ戻す。このブーストでは、運動量の yy 成分は変わらない。4元運動量のこの成分は Λ\Lambda で変わらないからである。したがって dpy=dpy′\mathrm{d} p_y=\mathrm{d} p'_y である。

一方、陽子は K′K' で静止している。その時計の進み dt′\mathrm{d} t' は、もとの系の時間では dt=γ dt′\mathrm{d} t=\gamma\,\mathrm{d} t' に延びる(時間の遅れ)。よって

Fy=dpydt=1γdpy′dt′=Fy′γ=−quBF_y=\frac{d p_y}{d t}=\frac{1}{\gamma}\frac{d p'_y}{d t'}=\frac{F'_y}{\gamma}=-quB

となり、(1) と γ\gamma まで含めて厳密に一致する。KK で「磁気力」と呼んだ力は、K′K' では「電気力」として現れる。4. 伝導電子の線電荷密度の大きさは

λ0=neA=8.5×1028×1.602×10−19×1.0×10−6 C/m=1.36×104 C/m\lambda_0=neA=8.5\times10^{28}\times1.602\times10^{-19}\times1.0\times10^{-6}\,\mathrm{C/m}=1.36\times10^{4}\,\mathrm{C/m}

で、∣λ′∣/λ0=1.11×10−11/1.36×104=8.2×10−16\left\vert \lambda'\right\vert /\lambda_0=1.11\times10^{-11}/1.36\times10^4=8.2\times10^{-16} である。正の電荷と負の電荷の密度が 10−1510^{-15} の桁でずれるだけで、電流のつくる磁気力に相当する電気力が生じる。磁気力が v2/c2v^2/c^2 の相対論的効果でありながら日常の大きさで観測されるのは、導線の中の正負の電荷がこれほど大量に打ち消し合っているからである。

確認テスト

オリジナル

  1. 10.2-1 1種類の電荷が速度 u\bm{u} で流れているとき、JμJμ=c2ρ02J_\mu J^\mu=c^2\rho_0^2 を示せ。また、電流の流れる中性の導線では JμJμ<0J_\mu J^\mu<0 となることを確かめよ。この場合には電荷が静止して見える系が無いことを説明せよ。
  2. 10.2-2 電荷の雲が、速さ 0.60c0.60c で xx 方向に動いている。静止系での電荷密度は ρ0=2.0 μC/m3\rho_0=2.0\,\mu\mathrm{C/m^3} である。この系での ρ\rho と JxJ_x を求め、次の関係を数値で確かめよ。

c2ρ2−Jx2=c2ρ02c^2\rho^2-J_x^2=c^2\rho_0^2 3. 10.2-3 KK で中性(λ=0\lambda=0)の導線に電流が流れている。電流は +x+x 向きで、I=5.0 AI=5.0\,\mathrm A である。もとの系に対して +x+x 向きに β=0.50\beta=0.50 で動く系を考える。その系での線電荷密度 λ′\lambda' と電流 I′I' を求めよ。(cλ)2−I2(c\lambda)^2-I^2 が変わらないことを確かめよ。4. 10.2-4 ゲージ変換 (10.20) のもとで ∂μAμ\partial_\mu A^\mu がどう変わるかを計算せよ。Lorenz 条件が保たれるための条件が □Λ=0\Box\Lambda=0 であることを示せ。

木下の勉強ステータス

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