電磁気学入門 第10章 §10.1 ★★ 電場と磁場の分け方は慣性系による。Galilei 変換ではその分け方を矛盾なく移せず、Lorentz 変換が要る
第8章で完成させた Maxwell 方程式は、ある1つの慣性系で書かれた式である。別の慣性系へ移ったとき、電場と磁場がどう変わるのか、方程式の形が保たれるのかは、第8章までの議論では何も決めていなかった。
Newton 力学の慣性系の取り替え(Galilei 変換)を使うと、Maxwell 方程式は形を変えてしまう。電磁波の速さが c c c になる特別な系が、1つだけ選ばれることになる。
Einstein はこの食い違いを、力学の側の変換を Lorentz 変換に取り替えることで解消した。この章では、Lorentz 変換のもとで Maxwell 方程式が形を保つことを、電磁気の量を4次元のベクトルとテンソルにまとめて示す。章の流れは次のとおりである。
§10.1 では、動く磁石と導体の例から、電場と磁場の分け方が観測者によることを確かめ、Lorentz 変換の要点をまとめる。
§10.2 では、電荷密度と電流密度が4元電流 J μ = ( c ρ , J ) J^\mu=(c\rho,\bm{J}) J μ = ( c ρ , J ) にまとまることを示す。スカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルも、4元ポテンシャル A μ = ( ϕ / c , A ) A^\mu=(\phi/c,\bm{A}) A μ = ( ϕ / c , A ) にまとまる。連続の式と Lorenz 条件は、どちらも4元発散がゼロという式になる。
§10.3 では、A μ A^\mu A μ の微分から電磁場テンソル F μ ν F^{\mu\nu} F μν をつくる。その成分が電場と磁場であることを示し、双対テンソルと2つの不変量を導く。
§10.4 では、Maxwell 方程式の4本が次の2本にまとまることを示す。第8章のエネルギーと運動量の保存則も、4次元の形にまとめる。
∂ μ F μ ν = μ 0 J ν , ∂ μ F ~ μ ν = 0 \partial_\mu F^{\mu\nu}=\mu_0J^\nu,\qquad \partial_\mu\tilde F^{\mu\nu}=0 ∂ μ F μν = μ 0 J ν , ∂ μ F ~ μν = 0
5. §10.5 では、テンソルの変換則から電場と磁場の Lorentz 変換の公式を導き、一様に動く点電荷の場を求める。
前の章から借りる結果は次のとおりである。
第5章 §5.1 の連続の式 ∇ ⋅ J + ∂ ρ / ∂ t = 0 \nabla\cdot\bm{J}+\partial\rho/\partial t=0 ∇ ⋅ J + ∂ ρ / ∂ t = 0 。
第5章 §5.2 の Lorentz 力 F = q ( E + u × B ) \bm{F}=q(\bm{E}+\bm{u}\times\bm{B}) F = q ( E + u × B ) と Biot–Savart の法則。
第7章 §7.1 の磁束則(運動起電力と誘導起電力が同じ − d Φ / d t -\mathrm{d}\Phi/\mathrm{d} t − d Φ/ d t になること)。
さらに第8章の Maxwell 方程式
∇ ⋅ E = ρ ε 0 , ∇ ⋅ B = 0 , ∇ × E = − ∂ B ∂ t , ∇ × B = μ 0 J + 1 c 2 ∂ E ∂ t , (10.1) \nabla\cdot\bm{E}=\frac{\rho}{\varepsilon_0},\qquad
\nabla\cdot\bm{B}=0,\qquad
\nabla\times\bm{E}=-\frac{\partial \bm{B}}{\partial t},\qquad
\nabla\times\bm{B}=\mu_0\bm{J}+\frac{1}{c^2}\frac{\partial \bm{E}}{\partial t},\tag{10.1} ∇ ⋅ E = ε 0 ρ , ∇ ⋅ B = 0 , ∇ × E = − ∂ t ∂ B , ∇ × B = μ 0 J + c 2 1 ∂ t ∂ E , ( 10.1 )
ポテンシャルとゲージ変換
B = ∇ × A , E = − ∇ ϕ − ∂ A ∂ t ; A → A + ∇ Λ , ϕ → ϕ − ∂ Λ ∂ t , \bm{B}=\nabla\times\bm{A},\qquad \bm{E}=-\nabla\phi-\frac{\partial \bm{A}}{\partial t};\qquad \bm{A}\to\bm{A}+\nabla\Lambda,\qquad \phi\to\phi-\frac{\partial \Lambda}{\partial t}, B = ∇ × A , E = − ∇ ϕ − ∂ t ∂ A ; A → A + ∇Λ , ϕ → ϕ − ∂ t ∂ Λ ,
Lorenz ゲージのポテンシャルの方程式
∇ ⋅ A + 1 c 2 ∂ ϕ ∂ t = 0 , □ ϕ = ρ ε 0 , □ A = μ 0 J , □ = 1 c 2 ∂ 2 ∂ t 2 − ∇ 2 , (10.2) \nabla\cdot\bm{A}+\frac{1}{c^2}\frac{\partial \phi}{\partial t}=0,\qquad
\Box\phi=\frac{\rho}{\varepsilon_0},\qquad
\Box\bm{A}=\mu_0\bm{J},\qquad
\Box=\frac{1}{c^2}\frac{\partial ^2}{\partial t^2}-\nabla^2,\tag{10.2} ∇ ⋅ A + c 2 1 ∂ t ∂ ϕ = 0 , □ ϕ = ε 0 ρ , □ A = μ 0 J , □ = c 2 1 ∂ t 2 ∂ 2 − ∇ 2 , ( 10.2 )
そして第8章 §8.3・§8.4 のエネルギー密度 u u u と Poynting ベクトル S = E × B / μ 0 \bm{S}=\bm{E}\times\bm{B}/\mu_0 S = E × B / μ 0 である。同じ節の Maxwell 応力テンソル T i j T_{ij} T ij も使う。
相対論の側からは、『相対論入門』の次の結果を使う。これらの導出は相対論入門に任せ、§10.1 で結果の形だけをまとめる。
第2章の Lorentz 変換。
第4章の添字の記法(計量・共変成分・テンソルの変換則・Levi-Civita 記号)。
第5章の4元速度 u μ u^\mu u μ と4元力。
この章の結果は、『相対論入門』第6章で電磁場をテンソル計算の例として使うとき(Lorentz 力の共変形・エネルギー運動量テンソル)の出発点になる。次の第11章では、§10.5 の一様に動く点電荷の場を、加速する電荷の Liénard–Wiechert の場の特別な場合として確かめる。
この章では計量を η μ ν = d i a g ( + 1 , − 1 , − 1 , − 1 ) \eta_{\mu\nu}=\mathrm{diag}(+1,-1,-1,-1) η μν = diag ( + 1 , − 1 , − 1 , − 1 ) にとる。ギリシャ文字の添字は 0, 1, 2, 3 を、ローマ字の添字は空間の 1, 2, 3 を走る。同じ添字が上と下に1回ずつ現れたら和をとる(総和規約)。
動く磁石と導体
Einstein が 1905 年の論文の冒頭で取り上げた例から始める。静止した磁石のそばを、閉じた導線の輪(導体)が一定の速度 v \bm{v} v で動いているとする。磁石とともに静止している慣性系を K K K と呼ぶ。K K K には時間変化しない磁場 B ( r ) \bm{B}(\bm{r}) B ( r ) だけがあり、電場は無い。
導線の中の電荷 q q q は導線と一緒に動くので、Lorentz 力 q v × B q\bm{v}\times\bm{B} q v × B を受ける。輪を一周すると運動起電力
E = ∮ ( v × B ) ⋅ d l (10.3) \mathcal E=\oint(\bm{v}\times\bm{B})\cdot\mathrm{d}\bm{l}\tag{10.3} E = ∮ ( v × B ) ⋅ d l ( 10.3 )
が生じ、電流が流れる。K K K での説明では、電流の原因は磁気力である。
同じ現象を、導線とともに静止している慣性系 K ′ K' K ′ から見る。K ′ K' K ′ では導線は止まっていて、磁石が速度 − v -\bm{v} − v で動いている。
止まっている電荷には磁気力が働かないので、電流が流れる以上、K ′ K' K ′ には電場 E ′ \bm{E}' E ′ があるはずである。速さ v v v が光速に比べて十分小さいとする。K ′ K' K ′ での磁場は、元の磁場を平行移動したものとみなせる。
B ′ ( r ′ , t ′ ) = B ( r ′ + v t ′ ) \bm{B}'(\bm{r}',t')=\bm{B}(\bm{r}'+\bm{v}t') B ′ ( r ′ , t ′ ) = B ( r ′ + v t ′ )
このとき K ′ K' K ′ の各点で磁場が時間変化し、その変化率は
∂ B ′ ∂ t ′ = ( v ⋅ ∇ ) B \frac{\partial \bm{B}'}{\partial t'}=(\bm{v}\cdot\nabla)\bm{B} ∂ t ′ ∂ B ′ = ( v ⋅ ∇ ) B
である。第7章 §7.1 の Faraday の法則 ∇ × E ′ = − ∂ B ′ / ∂ t ′ \nabla\times\bm{E}'=-\partial\bm{B}'/\partial t' ∇ × E ′ = − ∂ B ′ / ∂ t ′ により、K ′ K' K ′ には誘導電場が生じる。速度が定数で ∇ ⋅ B = 0 \nabla\cdot\bm{B}=0 ∇ ⋅ B = 0 のとき、ベクトル解析の恒等式から
∇ × ( v × B ) = v ( ∇ ⋅ B ) − ( v ⋅ ∇ ) B = − ( v ⋅ ∇ ) B (10.4) \nabla\times(\bm{v}\times\bm{B})=\bm{v}(\nabla\cdot\bm{B})-(\bm{v}\cdot\nabla)\bm{B}=-(\bm{v}\cdot\nabla)\bm{B}\tag{10.4} ∇ × ( v × B ) = v ( ∇ ⋅ B ) − ( v ⋅ ∇ ) B = − ( v ⋅ ∇ ) B ( 10.4 )
となる(確認テスト 10.1-4)。したがって Faraday の法則は ∇ × E ′ = ∇ × ( v × B ) \nabla\times\bm{E}'=\nabla\times(\bm{v}\times\bm{B}) ∇ × E ′ = ∇ × ( v × B ) と書くことができる。
回転が等しい2つのベクトル場の差は勾配で書けるので、E ′ = v × B − ∇ χ \bm{E}'=\bm{v}\times\bm{B}-\nabla\chi E ′ = v × B − ∇ χ の形になる。勾配の部分は閉じた輪を一周すると積分が0になるので、起電力は
E ′ = ∮ E ′ ⋅ d l = ∮ ( v × B ) ⋅ d l = E \mathcal E'=\oint\bm{E}'\cdot\mathrm{d}\bm{l}=\oint(\bm{v}\times\bm{B})\cdot\mathrm{d}\bm{l}=\mathcal E E ′ = ∮ E ′ ⋅ d l = ∮ ( v × B ) ⋅ d l = E
となり、K K K での値 (10.3) と一致する。K ′ K' K ′ での説明では、電流の原因は誘導電場である。
図 10.1 動く磁石と導体。K K K では導線の中の電荷が磁気力を受け、K ′ K' K ′ では磁石の運動で変化する磁場がつくる誘導電場から力を受ける。観測される起電力はどちらの説明でも同じになる。
観測されるのは導線を流れる電流だけで、それは磁石と導線の相対速度だけで決まる。ところが理論の説明は、どちらが動いているとみなすかで「磁気力」と「誘導電場」の2つに分かれる。第7章 §7.1 では、これを磁束則という1つの法則の2つの顔として扱った。
Einstein は、現象が相対運動だけで決まるのに説明が非対称になる理由を次のように考えた。電場と磁場は慣性系ごとに別々に存在する量ではなく、1つの対象を慣性系ごとに2つに分けて見たものである。K K K で純粋な磁場だったものが、K ′ K' K ′ では磁場と電場の両方に見える。この「混ざり方」を決めるのが、この章の目標である。
Galilei 変換では場を矛盾なく移せない
Newton 力学の考え方で、場の変換を推してみる。K ′ K' K ′ が K K K に対して一定の速度で動いているとする。その速度を v \bm{v} v とすると、Galilei 変換では次のようになる。
t ′ = t , r ′ = r − v t , u ′ = u − v t'=t,\qquad \bm{r}'=\bm{r}-\bm{v}t,\qquad \bm{u}'=\bm{u}-\bm{v} t ′ = t , r ′ = r − v t , u ′ = u − v
加速度と力は変わらない。力が両方の系で同じなら、電荷 q q q が受ける Lorentz 力について
q ( E + u × B ) = q ( E ′ + u ′ × B ′ ) = q ( E ′ + ( u − v ) × B ′ ) q(\bm{E}+\bm{u}\times\bm{B})=q(\bm{E}'+\bm{u}'\times\bm{B}')=q\bigl(\bm{E}'+(\bm{u}-\bm{v})\times\bm{B}'\bigr) q ( E + u × B ) = q ( E ′ + u ′ × B ′ ) = q ( E ′ + ( u − v ) × B ′ )
がすべての u \bm{u} u で成り立つ。u \bm{u} u に比例する部分と残りを比べると、次の規則が出る(確認テスト 10.1-1)。
E ′ = E + v × B , B ′ = B ( Galilei 変換から推した規則 ) . (10.5) \bm{E}'=\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B},\qquad \bm{B}'=\bm{B}\qquad(\text{Galilei 変換から推した規則}).\tag{10.5} E ′ = E + v × B , B ′ = B ( Galilei 変換から推した規則 ) . ( 10.5 )
第1式は、上の磁石と導体の例で K ′ K' K ′ に現れた誘導電場 E ′ = v × B \bm{E}'=\bm{v}\times\bm{B} E ′ = v × B とよく合っている。
ところが、第2式はすぐに矛盾を起こす。K K K の原点に点電荷 q q q が静止しているとする。K K K には Coulomb 電場
E = q r ^ 4 π ε 0 r 2 \bm{E}=\frac{q\hat{\bm{r}}}{4\pi\varepsilon_0r^2} E = 4 π ε 0 r 2 q r ^
だけがあり、磁場は無い。規則 (10.5) によれば K ′ K' K ′ でも B ′ = 0 \bm{B}'=\bm{0} B ′ = 0 のはずである。
しかし K ′ K' K ′ では、この電荷は速度 − v -\bm{v} − v で動いていて、電流と同じ働きをする。ゆっくり動く点電荷の磁場は、第5章 §5.2 の Biot–Savart の法則で電流要素 I d l I\,\mathrm{d}\bm{l} I d l を q u q\bm{u} q u に置き換えた
B = μ 0 4 π q u × R ^ R 2 (10.6) \bm{B}=\frac{\mu_0}{4\pi}\frac{q\bm{u}\times\hat{\bm{R}}}{R^2}\tag{10.6} B = 4 π μ 0 R 2 q u × R ^ ( 10.6 )
で表される(R \bm{R} R は電荷から観測点へのベクトル)。u = − v \bm{u}=-\bm{v} u = − v を入れ、μ 0 = 1 / ( ε 0 c 2 ) \mu_0=1/(\varepsilon_0c^2) μ 0 = 1/ ( ε 0 c 2 ) を使うと
B ′ = − μ 0 4 π q v × R ^ R 2 = − 1 c 2 v × ( q R ^ 4 π ε 0 R 2 ) = − 1 c 2 v × E (10.7) \bm{B}'=-\frac{\mu_0}{4\pi}\frac{q\bm{v}\times\hat{\bm{R}}}{R^2}=-\frac{1}{c^2}\bm{v}\times\Bigl(\frac{q\hat{\bm{R}}}{4\pi\varepsilon_0R^2}\Bigr)=-\frac{1}{c^2}\bm{v}\times\bm{E}\tag{10.7} B ′ = − 4 π μ 0 R 2 q v × R ^ = − c 2 1 v × ( 4 π ε 0 R 2 q R ^ ) = − c 2 1 v × E ( 10.7 )
となり、0ではない。つまり、静止した電荷を動く系から見ると B ′ ≃ B − v × E / c 2 \bm{B}'\simeq\bm{B}-\bm{v}\times\bm{E}/c^2 B ′ ≃ B − v × E / c 2 という磁場が現れる。規則 (10.5) はこの項を落としていて、v / c v/c v / c の2次の大きさで間違っている。
2つの例を並べると、低速では
E ′ ≃ E + v × B , B ′ ≃ B − 1 c 2 v × E (10.8) \bm{E}'\simeq\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B},\qquad \bm{B}'\simeq\bm{B}-\frac{1}{c^2}\bm{v}\times\bm{E}\tag{10.8} E ′ ≃ E + v × B , B ′ ≃ B − c 2 1 v × E ( 10.8 )
となっていてほしい。しかしこの2式を Galilei 変換と組み合わせると、v 2 / c 2 v^2/c^2 v 2 / c 2 の大きさの不整合が残る。たとえば2回続けて変換したときに元に戻らない、Maxwell 方程式の形が保たれない、といった不整合である(『相対論入門』第1章 §1.2 で、Maxwell 方程式から出る波動方程式が Galilei 変換で形を変えることを示した)。
(10.8) を正確な形に直すには、時間と空間の変換そのものを Lorentz 変換に取り替える必要がある。その正確な形が §10.5 の結果 (10.40) で、そこでは (10.8) の右辺の垂直成分に γ \gamma γ が掛かる。
Lorentz 変換の要点
ここでは『相対論入門』第2章〜第4章の結果を、この章で使う形にまとめる。導出はそちらを参照する。慣性系 K ′ K' K ′ は、もとの系に対して x x x 方向に動くとする。その速さを v v v とし、時刻0で原点が一致しているとする(標準配置)。時空の点を x μ = ( c t , x , y , z ) x^\mu=(ct,x,y,z) x μ = ( c t , x , y , z ) と書き、
β = v c , γ = ( 1 − β 2 ) − 1 / 2 \beta=\frac{v}{c},\qquad \gamma=(1-\beta^2)^{-1/2} β = c v , γ = ( 1 − β 2 ) − 1/2
とおくと、Lorentz 変換は
c t ′ = γ ( c t − β x ) , x ′ = γ ( x − β c t ) , y ′ = y , z ′ = z (10.9) ct'=\gamma(ct-\beta x),\qquad x'=\gamma(x-\beta ct),\qquad y'=y,\qquad z'=z\tag{10.9} c t ′ = γ ( c t − β x ) , x ′ = γ ( x − β c t ) , y ′ = y , z ′ = z ( 10.9 )
である。これを x ′ μ = Λ μ ν x ν x'^\mu=\Lambda^\mu{}_\nu x^\nu x ′ μ = Λ μ ν x ν と書くと、変換の行列は
Λ μ ν = ( γ − γ β 0 0 − γ β γ 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 ) (10.10) \Lambda^\mu{}_\nu=\begin{pmatrix}\gamma&-\gamma\beta&0&0\\-\gamma\beta&\gamma&0&0\\0&0&1&0\\0&0&0&1\end{pmatrix}\tag{10.10} Λ μ ν = γ − γ β 0 0 − γ β γ 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 ( 10.10 )
で、逆変換は β → − β \beta\to-\beta β → − β としたものである。
計量 η μ ν = η μ ν = d i a g ( + 1 , − 1 , − 1 , − 1 ) \eta_{\mu\nu}=\eta^{\mu\nu}=\mathrm{diag}(+1,-1,-1,-1) η μν = η μν = diag ( + 1 , − 1 , − 1 , − 1 ) で添字を上げ下げする。a μ = ( a 0 , a ) a^\mu=(a^0,\bm{a}) a μ = ( a 0 , a ) の共変成分は
a μ = η μ ν a ν = ( a 0 , − a ) a_\mu=\eta_{\mu\nu}a^\nu=(a^0,-\bm{a}) a μ = η μν a ν = ( a 0 , − a )
である。Lorentz 変換は、次の内積を保つ線形変換である。行列で書けば Λ T η Λ = η \Lambda^{\mathsf T}\eta\Lambda=\eta Λ T η Λ = η を満たす。
a ⋅ b = η μ ν a μ b ν = a 0 b 0 − a ⋅ b a\cdot b=\eta_{\mu\nu}a^\mu b^\nu=a^0b^0-\bm{a}\cdot\bm{b} a ⋅ b = η μν a μ b ν = a 0 b 0 − a ⋅ b
Λ μ ν \Lambda^\mu{}_\nu Λ μ ν で変換される量 a μ a^\mu a μ を4元ベクトルと呼ぶ。その共変成分は次の規則で変換される。
a μ ′ = Λ μ ν a ν , Λ μ ν = η μ α Λ α β η β ν a'_\mu=\Lambda_\mu{}^\nu a_\nu,\qquad \Lambda_\mu{}^\nu=\eta_{\mu\alpha}\Lambda^\alpha{}_\beta\eta^{\beta\nu} a μ ′ = Λ μ ν a ν , Λ μ ν = η μα Λ α β η β ν
このブーストでは、Λ μ ν \Lambda_\mu{}^\nu Λ μ ν は (10.10) で β \beta β の符号を変えた行列である。添字を2つ持つ量 T μ ν T^{\mu\nu} T μν が
T ′ μ ν = Λ μ α Λ ν β T α β (10.11) T'^{\mu\nu}=\Lambda^\mu{}_\alpha\Lambda^\nu{}_\beta T^{\alpha\beta}\tag{10.11} T ′ μν = Λ μ α Λ ν β T α β ( 10.11 )
で変換されるとき、2階のテンソルと呼ぶ。添字を全部縮約した量(a μ b μ a_\mu b^\mu a μ b μ や T μ ν T μ ν T_{\mu\nu}T^{\mu\nu} T μν T μν など)は、どの慣性系でも同じ値をとる不変量(スカラー)である。
微分は
∂ μ = ∂ ∂ x μ = ( 1 c ∂ ∂ t , ∇ ) , ∂ μ = η μ ν ∂ ν = ( 1 c ∂ ∂ t , − ∇ ) (10.12) \partial_\mu=\frac{\partial }{\partial x^\mu}=\Bigl(\frac{1}{c}\frac{\partial }{\partial t},\,\nabla\Bigr),\qquad
\partial^\mu=\eta^{\mu\nu}\partial_\nu=\Bigl(\frac{1}{c}\frac{\partial }{\partial t},\,-\nabla\Bigr)\tag{10.12} ∂ μ = ∂ x μ ∂ = ( c 1 ∂ t ∂ , ∇ ) , ∂ μ = η μν ∂ ν = ( c 1 ∂ t ∂ , − ∇ ) ( 10.12 )
で、∂ μ \partial_\mu ∂ μ は共変成分として変換される。したがって次の2つは Lorentz 変換で形を変えない。
4元発散 ∂ μ a μ = 1 c ∂ t a 0 + ∇ ⋅ a \partial_\mu a^\mu=\frac1c\partial_ta^0+\nabla\cdot\bm{a} ∂ μ a μ = c 1 ∂ t a 0 + ∇ ⋅ a 。これはスカラーである。
ダランベルシアン □ = ∂ μ ∂ μ = c − 2 ∂ t 2 − ∇ 2 \Box=\partial_\mu\partial^\mu=c^{-2}\partial_t^2-\nabla^2 □ = ∂ μ ∂ μ = c − 2 ∂ t 2 − ∇ 2 。第8章 §8.2 で使ったものと同じ演算子である。
4次元の Levi-Civita 記号 ϵ μ ν ρ σ \epsilon^{\mu\nu\rho\sigma} ϵ μν ρ σ は、次のように定める。
添字が 0123 の偶置換なら + 1 +1 + 1 、奇置換なら − 1 -1 − 1 、同じ添字を含めば0。
ϵ 0123 = + 1 \epsilon^{0123}=+1 ϵ 0123 = + 1 、ϵ 0123 = − 1 \epsilon_{0123}=-1 ϵ 0123 = − 1 と約束する。
ϵ μ ν ρ σ \epsilon^{\mu\nu\rho\sigma} ϵ μν ρ σ は、det Λ = 1 \det\Lambda=1 det Λ = 1 の Lorentz 変換で不変なテンソルである。
この章の方針
物理法則を「4元ベクトル = = = 4元ベクトル」「テンソル = = = テンソル」の形に書ければ、両辺は同じ規則で変換されるので、1つの慣性系で成り立てばすべての慣性系で同じ形で成り立つ。§10.2〜§10.4 では、電磁気学の法則をこの形に書き直す。
例題 10.1 動く棒の起電力を2つの系で見る ★★
オリジナル z z z 方向の一様な磁場 B = 0.30 T B=0.30\,\mathrm T B = 0.30 T の中を、導体の棒が動く。棒の長さは l = 0.50 m l=0.50\,\mathrm m l = 0.50 m である。棒は y y y 軸に平行な向きを保ったまま、x x x 方向に動く。その速さは v = 20 m / s v=20\,\mathrm{m/s} v = 20 m/s である。
磁場が静止している系 K K K で、棒の両端のあいだの起電力を求めよ。
棒が静止している系 K ′ K' K ′ では、棒の中の電荷は止まっているので磁気力を受けない。(10.8) の第1式から K ′ K' K ′ の電場を求め、起電力が同じになることを確かめよ。
§10.5 で導く正確な変換は E y ′ = γ ( E y − v B z ) E'_y=\gamma(E_y-vB_z) E y ′ = γ ( E y − v B z ) である。これと (10.8) の相対的な差 γ − 1 \gamma-1 γ − 1 の大きさを見積もれ。
解答
棒の中の電荷 q q q は次の力を受ける。
q v × B = q v B ( x ^ × z ^ ) = − q v B y ^ q\bm{v}\times\bm{B}=qvB\,(\hat{\bm{x}}\times\hat{\bm{z}})=-qvB\,\hat{\bm{y}} q v × B = q v B ( x ^ × z ^ ) = − q v B y ^
単位電荷あたりの力を棒に沿って積分すると、起電力の大きさは
E = v B l = 20 × 0.30 × 0.50 V = 3.0 V \mathcal E=vBl=20\times0.30\times0.50\,\mathrm V=3.0\,\mathrm V E = v B l = 20 × 0.30 × 0.50 V = 3.0 V
で、正の電荷は − y -y − y 側の端に寄る。2. K K K では電場が無いので、(10.8) の第1式は E ′ = v × B = − v B y ^ \bm{E}'=\bm{v}\times\bm{B}=-vB\,\hat{\bm{y}} E ′ = v × B = − v B y ^ である。大きさは E ′ = v B = 20 × 0.30 V / m = 6.0 V / m E'=vB=20\times0.30\,\mathrm{V/m}=6.0\,\mathrm{V/m} E ′ = v B = 20 × 0.30 V/m = 6.0 V/m で、向きは − y -y − y である。棒に沿って積分すると E ′ l = 6.0 × 0.50 V = 3.0 V E'l=6.0\times0.50\,\mathrm V=3.0\,\mathrm V E ′ l = 6.0 × 0.50 V = 3.0 V となり、(1) と一致する。3. 正確な変換では E y ′ = γ ( 0 − v B ) = − γ v B E'_y=\gamma(0-vB)=-\gamma vB E y ′ = γ ( 0 − v B ) = − γ v B である。(10.8) との相対的な差は γ − 1 \gamma-1 γ − 1 である。β ≪ 1 \beta\ll1 β ≪ 1 では γ ≃ 1 + β 2 / 2 \gamma\simeq1+\beta^2/2 γ ≃ 1 + β 2 /2 なので
γ − 1 ≃ v 2 2 c 2 = ( 20 ) 2 2 × ( 2.998 × 10 8 ) 2 = 2.2 × 10 − 15 . \gamma-1\simeq\frac{v^2}{2c^2}=\frac{(20)^2}{2\times(2.998\times10^8)^2}=2.2\times10^{-15}. γ − 1 ≃ 2 c 2 v 2 = 2 × ( 2.998 × 1 0 8 ) 2 ( 20 ) 2 = 2.2 × 1 0 − 15 .
日常の速さでは (10.8) で十分であり、相対論の補正は測定にかからない大きさである。それでも、磁気力と誘導電場が同じ1つの場の2つの見え方であるという構造は、この低速の例にすでに現れている。
確認テスト
オリジナル
10.1-1 Newton 力学では、力は Galilei 変換で変わらない。K K K での速度が u \bm{u} u の電荷を考える。2つの系でこの電荷が受ける力を、それぞれ
q ( E + u × B ) , q ( E ′ + u ′ × B ′ ) ( u ′ = u − v ) q(\bm{E}+\bm{u}\times\bm{B}),\qquad q(\bm{E}'+\bm{u}'\times\bm{B}')\quad(\bm{u}'=\bm{u}-\bm{v}) q ( E + u × B ) , q ( E ′ + u ′ × B ′ ) ( u ′ = u − v )
と書く。両者がすべての u \bm{u} u で一致することから、規則 (10.5) を導け。2. 10.1-2 K K K の原点に電荷 q = 1.0 n C q=1.0\,\mathrm{nC} q = 1.0 nC が静止している。系 K ′ K' K ′ は、もとの系に対して x x x 方向に動く。その速さは v = 1.0 × 10 3 m / s v=1.0\times10^3\,\mathrm{m/s} v = 1.0 × 1 0 3 m/s である。 K ′ K' K ′ で、電荷から y y y 方向に 0.10 m 離れた点の磁場を、(10.6) から求めよ(大きさと向き)。それが − v × E / c 2 -\bm{v}\times\bm{E}/c^2 − v × E / c 2 に等しいことを数値で確かめよ。3. 10.1-3 β = 0.6 \beta=0.6 β = 0.6 の x x x 方向のブーストについて、変換の行列とその逆行列を書け。また Λ T η Λ = η \Lambda^{\mathsf T}\eta\Lambda=\eta Λ T η Λ = η を確かめよ。さらに4元ベクトル a μ = ( 5 , 4 , 0 , 0 ) a^\mu=(5,4,0,0) a μ = ( 5 , 4 , 0 , 0 ) を変換し、a ⋅ a a\cdot a a ⋅ a が変わらないことを確かめよ。4. 10.1-4 速度 v \bm{v} v が定数ベクトルで、∇ ⋅ B = 0 \nabla\cdot\bm{B}=0 ∇ ⋅ B = 0 とする。このとき恒等式 (10.4) を成分の計算で示せ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com