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電磁場の Lorentz 変換

2026年10月15日21分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第10章 電磁気学と特殊相対論
目次
  1. テンソルの変換則から成分の公式へ
  2. 3次元ベクトルの形と低速の極限
  3. 一様に動く点電荷の場
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

電磁気学入門 第10章 §10.5 ★★★ テンソルの変換則から、運動方向の成分は変わらず、垂直な成分は電場が γ(E+v×B)\gamma(\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B})、磁場が γ(B−v×E/c2)\gamma(\bm{B}-\bm{v}\times\bm{E}/c^2) になる

テンソルの変換則から成分の公式へ

FμνF^{\mu\nu} は2階のテンソルである。§10.1 の標準配置のブーストでは、次のように変換される。

F′μν=ΛμαΛνβFαβ,行列で書けばF′=ΛFΛT(10.37)F'^{\mu\nu}=\Lambda^\mu{}_\alpha\Lambda^\nu{}_\beta F^{\alpha\beta},\qquad\text{行列で書けば}\quad F'=\Lambda F\Lambda^{\mathsf T}\tag{10.37}

(10.10) で0でない成分は、次のものだけである。

Λ00=Λ11=γ,Λ01=Λ10=−γβ,Λ22=Λ33=1\Lambda^0{}_0=\Lambda^1{}_1=\gamma,\qquad \Lambda^0{}_1=\Lambda^1{}_0=-\gamma\beta,\qquad \Lambda^2{}_2=\Lambda^3{}_3=1

6つの成分を順に計算する。

F′01F'^{01}:添字が0と1の項だけが残り、

F′01=Λ00Λ11F01+Λ01Λ10F10=γ2F01−γ2β2F01=F01F'^{01}=\Lambda^0{}_0\Lambda^1{}_1F^{01}+\Lambda^0{}_1\Lambda^1{}_0F^{10}=\gamma^2F^{01}-\gamma^2\beta^2F^{01}=F^{01}

なので Ex′=ExE'_x=E_x である。

F′02F'^{02}:Λ2β\Lambda^2{}_\beta で0でないのは対角成分だけなので

F′02=Λ00F02+Λ01F12=γ(−Eyc)−γβ(−Bz)=−γc(Ey−vBz)F'^{02}=\Lambda^0{}_0F^{02}+\Lambda^0{}_1F^{12}=\gamma\Bigl(-\frac{E_y}{c}\Bigr)-\gamma\beta(-B_z)=-\frac{\gamma}{c}(E_y-vB_z)

となり、Ey′=γ(Ey−vBz)E'_y=\gamma(E_y-vB_z) である。同様に

F′03=Λ00F03+Λ01F13=−γEzc−γβByF'^{03}=\Lambda^0{}_0F^{03}+\Lambda^0{}_1F^{13}=-\gamma\frac{E_z}{c}-\gamma\beta B_y

から Ez′=γ(Ez+vBy)E'_z=\gamma(E_z+vB_y) となる。

F′23F'^{23}:Λ22=Λ33=1\Lambda^2{}_2=\Lambda^3{}_3=1 だけが寄与する。したがって F′23=F23F'^{23}=F^{23} である。すなわち Bx′=BxB'_x=B_x である。

F′12F'^{12}:

F′12=Λ10F02+Λ11F12=−γβ(−Eyc)+γ(−Bz)=−γ(Bz−vc2Ey)F'^{12}=\Lambda^1{}_0F^{02}+\Lambda^1{}_1F^{12}=-\gamma\beta\Bigl(-\frac{E_y}{c}\Bigr)+\gamma(-B_z)=-\gamma\Bigl(B_z-\frac{v}{c^2}E_y\Bigr)

なので Bz′=γ(Bz−vEy/c2)B'_z=\gamma(B_z-vE_y/c^2) である。F′31=−By′F'^{31}=-B'_y も同様で、

F′31=Λ10F30+Λ11F31=−γβEzc−γByF'^{31}=\Lambda^1{}_0F^{30}+\Lambda^1{}_1F^{31}=-\gamma\beta\frac{E_z}{c}-\gamma B_y

から By′=γ(By+vEz/c2)B'_y=\gamma(B_y+vE_z/c^2) となる。

定理 10.6(電磁場の Lorentz 変換)

§10.1 の標準配置で、ブーストの速さを vv とするとき、

Ex′=Ex,Ey′=γ(Ey−vBz),Ez′=γ(Ez+vBy),Bx′=Bx,By′=γ(By+vc2Ez),Bz′=γ(Bz−vc2Ey).\begin{align*}E'_x&=E_x, & E'_y&=\gamma(E_y-vB_z), & E'_z&=\gamma(E_z+vB_y),\tag{10.38}\\B'_x&=B_x, & B'_y&=\gamma\Bigl(B_y+\frac{v}{c^2}E_z\Bigr), & B'_z&=\gamma\Bigl(B_z-\frac{v}{c^2}E_y\Bigr).\tag{10.39}\end{align*}

逆変換は v→−vv\to-v として、ダッシュの有無を入れ替えたものである。

3次元ベクトルの形と低速の極限

xx 方向という特別な向きを使わずに書く。v=vx^\bm{v}=v\hat{\bm{x}} のとき、

v×B=v(0,−Bz,By),v×E=v(0,−Ez,Ey)\bm{v}\times\bm{B}=v(0,-B_z,B_y),\qquad \bm{v}\times\bm{E}=v(0,-E_z,E_y)

である。したがって (10.38) と (10.39) の y,zy,z 成分は、次の2つのベクトルの y,zy,z 成分そのものである。

γ(E+v×B),γ(B−1c2v×E)\gamma(\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B}),\qquad \gamma\Bigl(\bm{B}-\frac{1}{c^2}\bm{v}\times\bm{E}\Bigr)

2つの外積は速度に垂直なので、速度に平行な成分(∥\parallel)と垂直な成分(⊥\perp)に分けて

E∥′=E∥,E⊥′=γ(E+v×B)⊥,B∥′=B∥,B⊥′=γ(B−1c2v×E)⊥(10.40)\bm{E}'_\parallel=\bm{E}_\parallel,\quad \bm{E}'_\perp=\gamma\bigl(\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B}\bigr)_\perp,\qquad \bm{B}'_\parallel=\bm{B}_\parallel,\quad \bm{B}'_\perp=\gamma\Bigl(\bm{B}-\frac{1}{c^2}\bm{v}\times\bm{E}\Bigr)_\perp\tag{10.40}

と書くことができる。両辺が3次元のベクトルの式で、座標軸の向きを使っていないので、任意の向きの v\bm{v} についても成り立つ。

この変換で2つの不変量が保たれることは、§10.3 で一般に示したが、成分の公式から直接確かめることもできる(確認テスト 10.5-5)。

v≪cv\ll c では γ≃1\gamma\simeq1 とおいて

E′≃E+v×B,B′≃B−1c2v×E(10.41)\bm{E}'\simeq\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B},\qquad \bm{B}'\simeq\bm{B}-\frac{1}{c^2}\bm{v}\times\bm{E}\tag{10.41}

となり、§10.1 で2つの例から推した (10.8) に一致する。

  • 第1式は、第7章 §7.1 の運動起電力と誘導起電力の一致の理由である。磁場中を動く導体の電荷が受ける力 q(E+v×B)q(\bm{E}+\bm{v}\times\bm{B}) は、導体とともに動く系では電場 E′\bm{E}' による力に見える。
  • 第2式は、静止した電荷を動く系から見ると Biot–Savart の磁場 (10.7) が現れることを表す。

Galilei 変換から推した (10.5) は、v≪cv\ll c でも第2式の右辺第2項を落としていた。E≪cBE\ll cB の場(磁気的な場)ではその項が無視できるが、E≳cBE\gtrsim cB の場では無視できない。

例題 10.5 直交する電場と磁場を消す系 ★★

オリジナルKK に一様な電場と一様な磁場がある。

E=Ey^  (E=1.0×104 V/m),B=Bz^  (B=1.0×10−2 T)\bm{E}=E\hat{\bm{y}}\ \ (E=1.0\times10^4\,\mathrm{V/m}),\qquad \bm{B}=B\hat{\bm{z}}\ \ (B=1.0\times10^{-2}\,\mathrm T)

  1. 2つの不変量を調べ、電場が0になる慣性系があるかどうかを判定せよ。
  2. 系 K′K' は、もとの系に対して xx 方向に動く。その速さを vv とする。電場が0となる vv を求め、そのときの B′\bm{B}' を求めよ。
  3. この場の中で、はじめ静止していた電荷は、平均として xx 方向に速さ vv で流される。これを E×B\bm{E}\times\bm{B} ドリフトと呼ぶ。このことを K′K' での運動から説明せよ。
解答
  1. E⋅B=0\bm{E}\cdot\bm{B}=0 である。また

cB=2.998×108×1.0×10−2 V/m=3.0×106 V/m>EcB=2.998\times10^8\times1.0\times10^{-2}\,\mathrm{V/m}=3.0\times10^6\,\mathrm{V/m}>E

なので、E2−c2B2<0E^2-c^2B^2<0 である。§10.3 の分類により、磁場が0になる系は無いが、電場が0になる系はありうる。2. (10.38) で Ex=Ez=0E_x=E_z=0、By=0B_y=0 である。したがって

Ex′=Ez′=0,Ey′=γ(E−vB)E'_x=E'_z=0,\qquad E'_y=\gamma(E-vB)

である。Ey′=0E'_y=0 とするには

v=EB=1.0×1041.0×10−2 m/s=1.0×106 m/sv=\frac{E}{B}=\frac{1.0\times10^4}{1.0\times10^{-2}}\,\mathrm{m/s}=1.0\times10^6\,\mathrm{m/s}

とすればよい。v<cv<c なので、この系は実在する。このとき (10.39) から Bx′=By′=0B'_x=B'_y=0 で、

Bz′=γ(B−vc2E)=γB(1−v2c2)=BγB'_z=\gamma\Bigl(B-\frac{v}{c^2}E\Bigr)=\gamma B\Bigl(1-\frac{v^2}{c^2}\Bigr)=\frac{B}{\gamma}

である。β=3.34×10−3\beta=3.34\times10^{-3} で、相対的に 1−1/γ=5.6×10−61-1/\gamma=5.6\times10^{-6} しかもとの磁場と違わない。不変量で確かめると c2B′2=c2B2/γ2=c2B2−E2c^2B'^2=c^2B^2/\gamma^2=c^2B^2-E^2 である。E′=0E'=0 と合わせて、E2−c2B2E^2-c^2B^2 が保たれている。3. K′K' には一様な磁場 B′z^B'\hat{\bm{z}} だけがある。K′K' で見た電荷のはじめの速度は −vx^-v\hat{\bm{x}} である。電荷は第5章 §5.2 のサイクロトロン運動をする(速さ vv の円運動で、平均の速度は0)。

これをもとの系に戻すと、円運動の中心が +x+x 向きに速さ vv で動く。つまり KK では、電荷は平均して次の速度で流される。

v=E×BB2=EBx^\bm{v}=\frac{\bm{E}\times\bm{B}}{B^2}=\frac{E}{B}\hat{\bm{x}}

この向きは電荷の符号によらない。電場と磁場が両方ある問題を、電場の無い系へ移ってサイクロトロン運動だけの問題に直したことになる。

一様に動く点電荷の場

点電荷 qq が KK で等速直線運動をしている。速度は vx^v\hat{\bm{x}} で、時刻0に原点を通るとする。電荷とともに動く系 K′K' では、電荷は原点に静止していて、場は Coulomb 場

E′=q4πε0r′r′3,B′=0,r′=(x′,y′,z′)\bm{E}'=\frac{q}{4\pi\varepsilon_0}\frac{\bm{r}'}{r'^3},\qquad \bm{B}'=\bm{0},\qquad \bm{r}'=(x',y',z')

だけである。これを (10.38) と (10.39) の逆変換(v→−vv\to-v)で、もとの系へ戻す。B′=0B'=0 なので

Ex=Ex′,Ey=γEy′,Ez=γEz′,Bx=0,By=−γvc2Ez′,Bz=γvc2Ey′E_x=E'_x,\qquad E_y=\gamma E'_y,\qquad E_z=\gamma E'_z,\qquad B_x=0,\qquad B_y=-\frac{\gamma v}{c^2}E'_z,\qquad B_z=\frac{\gamma v}{c^2}E'_y

となる。もとの系の時空点 (t,x,y,z)(t,x,y,z) に対応する K′K' の座標は、(10.9) から

x′=γ(x−vt),y′=y,z′=zx'=\gamma(x-vt),\qquad y'=y,\qquad z'=z

である(K′K' の場は時間によらないので t′t' は使わない)。電荷の「現在の位置」(vt,0,0)(vt,0,0) から観測点へのベクトルを R=(x−vt,y,z)\bm{R}=(x-vt,y,z) とおく。r′2=γ2(x−vt)2+y2+z2r'^2=\gamma^2(x-vt)^2+y^2+z^2 なので

Ex=q4πε0γ(x−vt)r′3,Ey=q4πε0γyr′3,Ez=q4πε0γzr′3E_x=\frac{q}{4\pi\varepsilon_0}\frac{\gamma(x-vt)}{r'^3},\qquad E_y=\frac{q}{4\pi\varepsilon_0}\frac{\gamma y}{r'^3},\qquad E_z=\frac{q}{4\pi\varepsilon_0}\frac{\gamma z}{r'^3}

となる。3つの成分がそろって R\bm{R} に比例しているので、電場は電荷の現在の位置から放射状に出る。R\bm{R} と速度のなす角を ψ\psi とすると

x−vt=Rcos⁡ψ,y2+z2=R2sin⁡2ψx-vt=R\cos\psi,\qquad y^2+z^2=R^2\sin^2\psi

で、

r′2=γ2R2cos⁡2ψ+R2sin⁡2ψ=γ2R2(cos⁡2ψ+sin⁡2ψγ2)=γ2R2(1−β2sin⁡2ψ)r'^2=\gamma^2R^2\cos^2\psi+R^2\sin^2\psi=\gamma^2R^2\Bigl(\cos^2\psi+\frac{\sin^2\psi}{\gamma^2}\Bigr)=\gamma^2R^2\bigl(1-\beta^2\sin^2\psi\bigr)

である。

定理 10.7(一様に動く点電荷の場)

速度 v\bm{v} で等速直線運動する点電荷 qq の電場と磁場を考える。電荷の現在の位置から観測点へのベクトル R\bm{R} と、それが速度となす角 ψ\psi を使って

E=q4πε0 1−β2(1−β2sin⁡2ψ)3/2 R^R2,B=1c2v×E(10.42)\bm{E}=\frac{q}{4\pi\varepsilon_0}\,\frac{1-\beta^2}{\bigl(1-\beta^2\sin^2\psi\bigr)^{3/2}}\,\frac{\hat{\bm{R}}}{R^2},\qquad \bm{B}=\frac{1}{c^2}\bm{v}\times\bm{E}\tag{10.42}

である。

証明

電場は上の計算で E=q4πε0γR/r′3\bm{E}=\frac{q}{4\pi\varepsilon_0}\gamma\bm{R}/r'^3 と求めた。次を入れて γ/γ3=1−β2\gamma/\gamma^3=1-\beta^2 とすれば、第1式になる。

r′3=γ3R3(1−β2sin⁡2ψ)3/2r'^3=\gamma^3R^3(1-\beta^2\sin^2\psi)^{3/2}

磁場は次のとおりである。

Bx=0,By=−γvc2Ez′=−vc2Ez,Bz=γvc2Ey′=vc2EyB_x=0,\qquad B_y=-\frac{\gamma v}{c^2}E'_z=-\frac{v}{c^2}E_z,\qquad B_z=\frac{\gamma v}{c^2}E'_y=\frac{v}{c^2}E_y

これは v×E=v(0,−Ez,Ey)\bm{v}\times\bm{E}=v(0,-E_z,E_y) を c2c^2 で割ったものに等しい。

電場の強さは向きによって違う。

  • 運動の方向(ψ=0,π\psi=0,\pi)では、(1−β2)=1/γ2(1-\beta^2)=1/\gamma^2 倍に弱まる。
  • 運動に垂直な方向(ψ=π/2\psi=\pi/2)では、(1−β2)/(1−β2)3/2=γ(1-\beta^2)/(1-\beta^2)^{3/2}=\gamma 倍に強まる。

電気力線は運動に垂直な面の近くへ寄せ集められる。K′K' で角 θ′\theta' の方向へ出る力線は、もとの系では

tan⁡ψ=yx−vt=y′x′/γ=γtan⁡θ′\tan\psi=\frac{y}{x-vt}=\frac{y'}{x'/\gamma}=\gamma\tan\theta'

の方向へ出る。したがって K′K' で等間隔だった力線が、もとの系では赤道面の側へ集まる(図 10.2)。

図

図 10.2 一様に動く正の点電荷の電気力線(16本)。左は静止した電荷、右は β=0.9\beta=0.9 で右へ動く電荷で、力線は現在の位置から放射状に出るが、tan⁡ψ=γtan⁡θ′\tan\psi=\gamma\tan\theta' に従って運動に垂直な方向へ集まる。力線の向きは K′K' で等間隔の角 θ′=kπ/8\theta'=k\pi/8 から計算した。

この場が Gauss の法則を満たしていることを確かめる。電荷の現在の位置を中心とする半径 RR の球面で、流束を計算する。dS=2πR2sin⁡ψ dψ\mathrm{d} S=2\pi R^2\sin\psi\,\mathrm{d}\psi なので

∮E⋅dS=q4πε0(1−β2) 2π∫0πsin⁡ψ dψ(1−β2sin⁡2ψ)3/2\oint\bm{E}\cdot\mathrm{d}\bm{S}=\frac{q}{4\pi\varepsilon_0}(1-\beta^2)\,2\pi\int_0^\pi\frac{\sin\psi\,\mathrm{d}\psi}{(1-\beta^2\sin^2\psi)^{3/2}}

となる。s=cos⁡ψs=\cos\psi とおくと 1−β2sin⁡2ψ=1−β2+β2s21-\beta^2\sin^2\psi=1-\beta^2+\beta^2s^2 なので、

∫−11ds(1−β2+β2s2)3/2=[s(1−β2)1−β2+β2s2]−11=21−β2\int_{-1}^{1}\frac{\mathrm{d} s}{(1-\beta^2+\beta^2s^2)^{3/2}}=\biggl[\frac{s}{(1-\beta^2)\sqrt{1-\beta^2+\beta^2s^2}}\biggr]_{-1}^{1}=\frac{2}{1-\beta^2}

である(右辺の原始関数を微分すると被積分関数に戻る)。したがって流束は q4πε0⋅2π⋅2=q/ε0\frac{q}{4\pi\varepsilon_0}\cdot2\pi\cdot2=q/\varepsilon_0 となり、速さによらない。電荷の不変性と合っている。

低速の極限 β→0\beta\to0 では、電場は Coulomb 場に戻り、磁場は

B≃1c2v×qR^4πε0R2=μ04πqv×R^R2\bm{B}\simeq\frac{1}{c^2}\bm{v}\times\frac{q\hat{\bm{R}}}{4\pi\varepsilon_0R^2}=\frac{\mu_0}{4\pi}\frac{q\bm{v}\times\hat{\bm{R}}}{R^2}

となって、§10.1 の (10.6) に一致する。Biot–Savart の法則は、この厳密な結果の低速の近似である。

「現在の位置」から出る理由

  • 場は光速で伝わるので、観測点の場は、電荷が過去に別の位置にあったときの情報から決まるはずである。それでも (10.42) の電場が「現在の位置」から放射状に出るのは、等速直線運動ならその過去の位置から現在の位置を正確に外挿できるためである。
  • 電荷が加速すると、この外挿がずれ、ずれの部分が放射として遠方へ出ていく。第11章 §11.4 の Liénard–Wiechert の場は、遅延時刻の位置と速度・加速度で場を書いたもので、加速度が 00 のときに (10.42) に一致することをそこで確かめる。

速い電荷のそばを通る観測者から見た場の時間変化も、(10.42) から求めることができる。電荷が xx 軸に沿って動き、観測者が (0,b,0)(0,b,0) にいるとする。x−vt=−vtx-vt=-vt、y=by=b なので

Ey(t)=q4πε0γb(b2+γ2v2t2)3/2,Ex(t)=−q4πε0γvt(b2+γ2v2t2)3/2,Bz=vc2Ey(10.43)E_y(t)=\frac{q}{4\pi\varepsilon_0}\frac{\gamma b}{(b^2+\gamma^2v^2t^2)^{3/2}},\qquad E_x(t)=-\frac{q}{4\pi\varepsilon_0}\frac{\gamma vt}{(b^2+\gamma^2v^2t^2)^{3/2}},\qquad B_z=\frac{v}{c^2}E_y\tag{10.43}

である。EyE_y の最大値は、時刻0での値 γq/(4πε0b2)\gamma q/(4\pi\varepsilon_0b^2) である。これは静止した電荷の γ\gamma 倍で、その値が続く時間はおよそ b/(γv)b/(\gamma v) に縮む(図 10.3)。時間で積分すると、u=γvt/bu=\gamma vt/b と置き換えて ∫−∞∞du/(1+u2)3/2=2\int_{-\infty}^\infty\mathrm{d} u/(1+u^2)^{3/2}=2 から

∫−∞∞Ey dt=q4πε0γbb3⋅bγv⋅2=q2πε0bv\int_{-\infty}^{\infty}E_y\,\mathrm{d} t=\frac{q}{4\pi\varepsilon_0}\frac{\gamma b}{b^3}\cdot\frac{b}{\gamma v}\cdot2=\frac{q}{2\pi\varepsilon_0bv}

で、γ\gamma によらない。速い電荷の場は、強さが γ\gamma 倍、続く時間が 1/γ1/\gamma 倍になって、そばを通る電荷が受ける力積は変わらない。γ≫1\gamma\gg1 では、電場の垂直成分と cBzcB_z がほぼ等しく、互いに直交する。したがってこの場は、進行方向へ進む電磁波のパルスに近い形をしている。

図

図 10.3 一様に動く点電荷が距離 bb のそばを通るときの、観測点の電場の垂直成分 EyE_y の時間変化 (10.43)。γ\gamma が大きいほど最大値は γ\gamma 倍に高く、幅は 1/γ1/\gamma 倍に狭くなり、曲線の下の面積(力積に比例する)は変わらない。

例題 10.6 高エネルギーの陽子がつくる場のパルス ★★

オリジナル全エネルギー 7.0 TeV7.0\,\mathrm{TeV} の陽子(静止エネルギー 938.27 MeV938.27\,\mathrm{MeV})が直線上を等速で進む。陽子の進路から b=1.0 cmb=1.0\,\mathrm{cm} 離れた点で観測する。

  1. γ\gamma を求めよ。
  2. 観測点の電場の垂直成分の最大値と、磁場の最大値を求めよ。静止した陽子が同じ距離につくる電場と比べよ。
  3. 場の強いパルスが続く時間の目安 b/(γv)b/(\gamma v) を求めよ。
解答
  1. 全エネルギーは γmpc2\gamma m_{\mathrm p}c^2 なので γ=7.0×106 MeV/938.27 MeV=7.46×103\gamma=7.0\times10^{6}\,\mathrm{MeV}/938.27\,\mathrm{MeV}=7.46\times10^3 である。β=1−1/γ2\beta=\sqrt{1-1/\gamma^2} は1との差が 9×10−99\times10^{-9} である。したがって v≃cv\simeq c としてよい。
  2. 静止した陽子の電場は

e4πε0b2=8.988×109×1.602×10−19(1.0×10−2)2 V/m=1.44×10−5 V/m\frac{e}{4\pi\varepsilon_0b^2}=\frac{8.988\times10^9\times1.602\times10^{-19}}{(1.0\times10^{-2})^2}\,\mathrm{V/m}=1.44\times10^{-5}\,\mathrm{V/m}

で、(10.43) の最大値はその γ\gamma 倍、

Ey,max⁡=7.46×103×1.44×10−5 V/m=0.107 V/mE_{y,\max}=7.46\times10^3\times1.44\times10^{-5}\,\mathrm{V/m}=0.107\,\mathrm{V/m}

である。磁場は Bz,max⁡=vEy,max⁡/c2≃Ey,max⁡/c=0.107/(2.998×108) T=3.6×10−10 TB_{z,\max}=vE_{y,\max}/c^2\simeq E_{y,\max}/c=0.107/(2.998\times10^8)\,\mathrm T=3.6\times10^{-10}\,\mathrm T。3. b/(γv)≃1.0×10−2/(7.46×103×2.998×108) s=4.5×10−15 sb/(\gamma v)\simeq1.0\times10^{-2}/(7.46\times10^3\times2.998\times10^8)\,\mathrm s=4.5\times10^{-15}\,\mathrm s。静止した陽子なら場が変化しない距離 1 cm1\,\mathrm{cm} の点で、陽子が通りすぎる数フェムト秒だけ、静止したときの約7500倍の電場が現れる。進路にほぼ垂直な薄い円板の中に場が押し込められていると見ることもできる。

確認テスト

オリジナル

  1. 10.5-1 xx 方向のブーストで変わらない場の成分はどれか。また、KK に一様な電場 E=E0y^\bm{E}=E_0\hat{\bm{y}} だけがあるとする。β=0.60\beta=0.60 で xx 方向に動く系での電場と磁場を求めよ。
  2. 10.5-2 β=0.80\beta=0.80 で動く点電荷について、同じ距離で比べた電場の強さの比(運動に垂直な方向 // 運動の方向)を求めよ。
  3. 10.5-3 一様な線電荷密度 λ0\lambda_0 を持つ無限に長い直線がある。直線は自身の静止系 K′K' で、xx 軸に沿って静止している。もとの系では、この直線は xx 方向に速さ vv で動く。

KK で直線から距離 dd の点の電場と磁場を、次の2通りで求めて一致を確かめよ。

  1. (a) 場の変換 (10.38)・(10.39) から。
  2. (b) 4元電流の変換と Gauss の法則・Ampère の法則から。
  3. 10.5-4 電場と磁場のどちらにも垂直な向き n^=E×B/∣E×B∣\hat{\bm{n}}=\bm{E}\times\bm{B}/\left\vert \bm{E}\times\bm{B}\right\vert に、速さ vv で動く系を考える。次の条件のとき E′∥B′\bm{E}'\parallel\bm{B}' となることを、(10.40) から示せ。

β1+β2=∣E×B∣c(E2/c2+B2)\frac{\beta}{1+\beta^2}=\frac{\left\vert \bm{E}\times\bm{B}\right\vert }{c(E^2/c^2+B^2)}

例題 10.3 の場でこの β\beta を求めよ。E′/cE'/c と B′B' が例題の値になることを確かめよ。5. 10.5-5 (10.38)・(10.39) から、次の2式を直接示せ。

E′2−c2B′2=E2−c2B2,E′⋅B′=E⋅BE'^2-c^2B'^2=E^2-c^2B^2,\qquad \bm{E}'\cdot\bm{B}'=\bm{E}\cdot\bm{B}

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