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遅延ポテンシャル

2026年10月15日19分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第11章 電磁波の放射
目次
  1. 波動方程式の Green 関数
  2. 遅延ポテンシャルと Lorenz 条件
  3. 遅延ポテンシャルから場へ
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

電磁気学入門 第11章 §11.1 ★★★ Lorenz ゲージのポテンシャルは、源の「光が届くのにかかる時間だけ前」の値の重ね合わせで書ける

第9章では、電磁波が真空や物質の中をどう伝わり、境界でどう反射・屈折するかを調べた。そこでは電磁波がすでにあるものとして扱い、それを作る源のことは問わなかった。

この章では源の側から問題を立て直す。電荷と電流が時間とともに変化するとき、Maxwell 方程式の解はどういう形になり、そのうちのどの部分が遠方までエネルギーを運び去るのか。これが放射の問題である。道筋は次のとおりである。

  1. §11.1 で、第8章の Lorenz ゲージのポテンシャルの方程式を、波動方程式の Green 関数を使って解き、遅延ポテンシャルを導く。源の影響は光速で伝わり、場の点の値を決めるのは「少し前の時刻の源」であることが式の形で現れる。
  2. §11.2 では、源が波長に比べて小さい場合に遅延ポテンシャルを展開して電気双極子放射を導き、放射パターンと放射電力を求める。
  3. §11.3 では、その結果を1個の加速する電荷にあてはめて Larmor の公式を導く。古典的な原子の不安定性や Thomson 散乱、放射の反作用を扱う。
  4. §11.4 では、任意の運動をする点電荷の場を厳密に求め(Liénard–Wiechert ポテンシャル)、場を速度場と加速度場に分ける。一様に運動する電荷については、その結果が第10章 §10.5 の Lorentz 変換で得た場と一致することを確かめる。

前の章から借りる結果は次のとおりである。第1章 §1.3 のデルタ関数の性質

∇21r=−4πδ(3)(r),δ(g(x))=∑iδ(x−xi)∣g′(xi)∣(g(xi)=0),(11.1)\nabla^2\frac{1}{r}=-4\pi\delta^{(3)}(\bm{r}),\qquad \delta\bigl(g(x)\bigr)=\sum_i\frac{\delta(x-x_i)}{\left\vert g'(x_i)\right\vert }\quad(g(x_i)=0),\tag{11.1}

第3章 §3.5 の電気双極子モーメント p=∫r′ρ(r′) dV′\bm{p}=\int\bm{r}'\rho(\bm{r}')\,\mathrm{d} V' と双極子の電場、第5章 §5.1 の連続の式、第5章 §5.5 の磁気双極子モーメント、第8章 §8.2 のポテンシャルと Lorenz ゲージの方程式

E=−∇ϕ−∂A∂t,B=∇×A,∇⋅A+1c2∂ϕ∂t=0,□ϕ=ρε0,□A=μ0J,(11.2)\bm{E}=-\nabla\phi-\frac{\partial \bm{A}}{\partial t},\quad \bm{B}=\nabla\times\bm{A},\quad \nabla\cdot\bm{A}+\frac{1}{c^2}\frac{\partial \phi}{\partial t}=0,\quad \Box\phi=\frac{\rho}{\varepsilon_0},\quad \Box\bm{A}=\mu_0\bm{J},\tag{11.2}

ここで □=c−2∂t2−∇2\Box=c^{-2}\partial_t^2-\nabla^2 である。さらに次のものを使う。

  • 第8章 §8.3 の Poynting ベクトル S=E×B/μ0\bm{S}=\bm{E}\times\bm{B}/\mu_0。
  • 第9章 §9.1 の平面波の性質(E⊥B⊥k^\bm{E}\perp\bm{B}\perp\hat{\bm{k}}、∣E∣=c∣B∣\left\vert \bm{E}\right\vert =c\left\vert \bm{B}\right\vert)。
  • §11.3 と §11.4 では、『相対論入門』第5章の4元速度 uμ=γu(c,v)u^\mu=\gamma_u(c,\bm{v}) と4元運動量 pμ=muμp^\mu=mu^\mu。

この章に出る Lorentz 因子は粒子の速さで決まるものだけなので、添字を略して γ\gamma と書く。

波動方程式の Green 関数

静電場では、Poisson 方程式 ∇2ϕ=−ρ/ε0\nabla^2\phi=-\rho/\varepsilon_0 の解を、点電荷の解 1/(4πr)1/(4\pi r) の重ね合わせとして書いた。時間変化する場でも同じ考え方をとる。式 (11.2) の4本のポテンシャルの方程式は、どれも

□ψ=1c2∂2ψ∂t2−∇2ψ=s(r,t)(11.3)\Box\psi=\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2\psi}{\partial t^2}-\nabla^2\psi=s(\bm{r},t)\tag{11.3}

という同じ形をしている。ψ\psi はスカラーポテンシャルまたはベクトルポテンシャルの1成分である。右辺の源は、ρ/ε0\rho/\varepsilon_0 または μ0Ji\mu_0J_i である。そこで、ある時刻にある1点だけで瞬間的に働く源に対する解を先に求める。

定義 11.1(波動方程式の Green 関数)

方程式

□G(r,t)=δ(3)(r) δ(t)(11.4)\Box G(\bm{r},t)=\delta^{(3)}(\bm{r})\,\delta(t)\tag{11.4}

を満たす GG を、波動方程式の Green 関数と呼ぶ。t<0t<0 で0となるものを遅延 Green 関数と呼び、GretG_{\mathrm{ret}} と書く。

GG が分かれば、一般の源に対する解は、源を点状の源の重ね合わせとみなして

ψ(r,t)=∫ ⁣ ⁣∫G(r−r′,t−t′) s(r′,t′) dV′ dt′(11.5)\psi(\bm{r},t)=\int\!\!\int G(\bm{r}-\bm{r}',t-t')\,s(\bm{r}',t')\,\mathrm{d} V'\,\mathrm{d} t'\tag{11.5}

と書ける。実際、ダランベルシアンは (r,t)(\bm{r},t) にだけ働くので、次のようになる。

□ψ=∫ ⁣ ⁣∫δ(3)(r−r′)δ(t−t′)s(r′,t′) dV′dt′=s(r,t)\Box\psi=\int\!\!\int\delta^{(3)}(\bm{r}-\bm{r}')\delta(t-t')s(\bm{r}',t')\,\mathrm{d} V'\mathrm{d} t'=s(\bm{r},t)

定理 11.2(遅延 Green 関数 ★★★)

r=∣r∣r=\left\vert \bm{r}\right\vert として、

Gret(r,t)=δ(t−r/c)4πr(11.6)G_{\mathrm{ret}}(\bm{r},t)=\frac{\delta(t-r/c)}{4\pi r}\tag{11.6}

は (11.4) を満たし、t<0t<0 で0である。

証明

任意の滑らかな関数 ff について、ψ=f(t−r/c)/r\psi=f(t-r/c)/r を考える。積の微分の公式から

∇2ψ=f ∇21r+2 ∇1r⋅∇f+1r∇2f\nabla^2\psi=f\,\nabla^2\frac1r+2\,\nabla\frac1r\cdot\nabla f+\frac1r\nabla^2 f

である(ff は f(t−r/c)f(t-r/c) の略)。各項を計算する。

  • ∇(1/r)=−r^/r2\nabla(1/r)=-\hat{\bm{r}}/r^2 である。
  • ff は距離を通してだけ位置に依存するので、∇f=−f′r^/c\nabla f=-f'\hat{\bm{r}}/c となる。ここで f′f' は引数についての微分である。

したがって第2項は

2 ∇1r⋅∇f=2(−r^r2)⋅(−f′r^c)=2f′cr22\,\nabla\frac1r\cdot\nabla f=2\Bigl(-\frac{\hat{\bm{r}}}{r^2}\Bigr)\cdot\Bigl(-\frac{f'\hat{\bm{r}}}{c}\Bigr)=\frac{2f'}{cr^2}

である。第3項では、距離だけの関数 g(r)g(r) のラプラシアンが g′′+2g′/rg''+2g'/r であることを使う。g=f(t−r/c)g=f(t-r/c) では

g′=−f′c,g′′=f′′c2g'=-\frac{f'}{c},\qquad g''=\frac{f''}{c^2}

なので

1r∇2f=f′′c2r−2f′cr2.\frac1r\nabla^2f=\frac{f''}{c^2r}-\frac{2f'}{cr^2}.

第2項と第3項の 2f′/(cr2)2f'/(cr^2) は打ち消し合う。第1項には (11.1) の ∇2(1/r)=−4πδ(3)(r)\nabla^2(1/r)=-4\pi\delta^{(3)}(\bm{r}) を使う。デルタ関数は r=0r=0 でだけ値を持つので、そこで f(t−r/c)=f(t)f(t-r/c)=f(t) と置き換えてよい。まとめると

∇2ψ=−4πf(t) δ(3)(r)+f′′(t−r/c)c2r.\nabla^2\psi=-4\pi f(t)\,\delta^{(3)}(\bm{r})+\frac{f''(t-r/c)}{c^2r}.

一方 ∂t2ψ=f′′(t−r/c)/r\partial_t^2\psi=f''(t-r/c)/r なので、

□f(t−r/c)r=4πf(t) δ(3)(r)(11.7)\Box\frac{f(t-r/c)}{r}=4\pi f(t)\,\delta^{(3)}(\bm{r})\tag{11.7}

を得る。ここで ff をデルタ関数の近似列(幅の狭い山)にとって極限をとり、両辺を 4π4\pi で割れば (11.4) が成り立つ。t<0t<0 では t−r/c<0t-r/c<0 なので、デルタ関数の値は0である。したがって遅延 Green 関数は0となる。

式 (11.6) の意味ははっきりしている。時刻0に原点で一瞬だけ光った源の影響は、時刻 tt には半径 ctct の球面上にだけある。その強さは 1/r1/r で弱まる。影響は光速で広がる薄い球殻として伝わる。

先進解と因果律

  • 証明の計算は f(t−r/c)f(t-r/c) を f(t+r/c)f(t+r/c) に替えても同じように進む。したがって Gadv=δ(t+r/c)/(4πr)G_{\mathrm{adv}}=\delta(t+r/c)/(4\pi r) も (11.4) を満たす。これを先進 Green 関数と呼ぶ。
  • 先進解は、源が働く前に場が現れる解である。源が場の原因であるという要請(因果律)を課して、遅延解を選ぶ。
  • 2つの解の差 Gret−GadvG_{\mathrm{ret}}-G_{\mathrm{adv}} は斉次方程式 □ψ=0\Box\psi=0 を満たす。遅延解を選ぶことは、遠い過去に入ってくる電磁波が無いという境界条件を選ぶことに当たる。

遅延ポテンシャルと Lorenz 条件

式 (11.6) を (11.5) に入れ、t′t' の積分をデルタ関数で実行する。R=∣r−r′∣R=\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert と書くと、t′=t−R/ct'=t-R/c だけが残る。

定理 11.3(遅延ポテンシャル ★★★)

局在した源 ρ\rho、J\bm{J} に対し、Lorenz ゲージの方程式 (11.2) の遅延解は

ϕ(r,t)=14πε0∫ρ(r′,tr)∣r−r′∣ dV′,A(r,t)=μ04π∫J(r′,tr)∣r−r′∣ dV′(11.8)\phi(\bm{r},t)=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\int\frac{\rho(\bm{r}',t_{\mathrm r})}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }\,\mathrm{d} V',\qquad \bm{A}(\bm{r},t)=\frac{\mu_0}{4\pi}\int\frac{\bm{J}(\bm{r}',t_{\mathrm r})}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }\,\mathrm{d} V'\tag{11.8}

である。ここで

tr=t−∣r−r′∣c(11.9)t_{\mathrm r}=t-\frac{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }{c}\tag{11.9}

を遅延時刻と呼ぶ。源が連続の式 ∇′⋅J+∂tρ=0\nabla'\cdot\bm{J}+\partial_t\rho=0 を満たせば、(11.8) は Lorenz 条件∇⋅A+c−2∂tϕ=0\nabla\cdot\bm{A}+c^{-2}\partial_t\phi=0 を満たす。

証明

前半は上の計算そのものである。後半を示す。遅延時刻での値を角括弧で [J]=J(r′,tr)[\bm{J}]=\bm{J}(\bm{r}',t_{\mathrm r}) と書く。遅延時刻は r−r′\bm{r}-\bm{r}' を通して、場の点と源の点の両方に依存する。その勾配は

∇tr=−∇′tr=−R^c,R^=r−r′R\nabla t_{\mathrm r}=-\nabla' t_{\mathrm r}=-\frac{\hat{\bm{R}}}{c},\qquad \hat{\bm{R}}=\frac{\bm{r}-\bm{r}'}{R}

である。[J][\bm{J}] の場の点についての発散は、時刻の引数を通してだけ生じるので

∇⋅[J]=[J˙]⋅∇tr.\nabla\cdot[\bm{J}]=[\dot{\bm{J}}]\cdot\nabla t_{\mathrm r}.

r′\bm{r}' についての発散は、第1引数を通した部分と時刻の引数を通した部分の和になる。

∇′⋅[J]=[∇′⋅J]+[J˙]⋅∇′tr=[∇′⋅J]−∇⋅[J].\nabla'\cdot[\bm{J}]=[\nabla'\cdot\bm{J}]+[\dot{\bm{J}}]\cdot\nabla't_{\mathrm r}=[\nabla'\cdot\bm{J}]-\nabla\cdot[\bm{J}].

また ∇(1/R)=−∇′(1/R)\nabla(1/R)=-\nabla'(1/R) である。これらを使うと

∇⋅[J]R=[J]⋅∇1R+∇⋅[J]R=−[J]⋅∇′1R−∇′⋅[J]R+[∇′⋅J]R=−∇′⋅[J]R+[∇′⋅J]R.\nabla\cdot\frac{[\bm{J}]}{R}=[\bm{J}]\cdot\nabla\frac1R+\frac{\nabla\cdot[\bm{J}]}{R} =-[\bm{J}]\cdot\nabla'\frac1R-\frac{\nabla'\cdot[\bm{J}]}{R}+\frac{[\nabla'\cdot\bm{J}]}{R} =-\nabla'\cdot\frac{[\bm{J}]}{R}+\frac{[\nabla'\cdot\bm{J}]}{R}.

これを r′\bm{r}' で積分する。第1項は発散定理で無限遠の面積分になり、源が局在しているので0である。第2項に連続の式を使うと

∇⋅A=μ04π∫[∇′⋅J]R dV′=−μ04π∫[∂tρ]R dV′=−μ0ε0∂ϕ∂t\nabla\cdot\bm{A}=\frac{\mu_0}{4\pi}\int\frac{[\nabla'\cdot\bm{J}]}{R}\,\mathrm{d} V'=-\frac{\mu_0}{4\pi}\int\frac{[\partial_t\rho]}{R}\,\mathrm{d} V' =-\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial \phi}{\partial t}

となる。最後の等号では、2つの位置を止めて時間で微分すると、[ρ][\rho] の微分が [∂tρ][\partial_t\rho] になることを使った。μ0ε0=1/c2\mu_0\varepsilon_0=1/c^2 なので Lorenz 条件が成り立つ。

連続の式が必要だったことに注意する。ポテンシャルの方程式 □ϕ=ρ/ε0\Box\phi=\rho/\varepsilon_0、□A=μ0J\Box\bm{A}=\mu_0\bm{J} は、Lorenz 条件と組になってはじめて Maxwell 方程式と同値になる(第8章 §8.2)。電荷が保存しない源を勝手に与えると、(11.8) は Maxwell 方程式の解にならない。

Coulomb ゲージでも場は遅延する

第8章 §8.2 で見たとおり、Coulomb ゲージのスカラーポテンシャルは瞬時の Coulomb 電位であり、源が動くと遠方の ϕ\phi も同時に変わる。それでも場が光速より速く伝わることはない。理由は次のとおりである。

  • Lorenz ゲージから別のゲージへ移るゲージ変換 A→A+∇Λ\bm{A}\to\bm{A}+\nabla\Lambda、ϕ→ϕ−∂tΛ\phi\to\phi-\partial_t\Lambda で、電場と磁場は変わらない。
  • Lorenz ゲージの場 (11.8) から作った電場と磁場は、遅延時刻の源だけで決まる(次の小節の (11.10))。
  • したがって Coulomb ゲージでも、電場と磁場は同じく遅延している。瞬時の部分は2つのポテンシャル(ϕ\phi と A\bm{A} の縦成分)の両方に入り、電場の中で打ち消し合う。

第8章で使った方程式 □Λ=L\Box\Lambda=L(右辺は与えられた関数)の解も、(11.5) の源をこの関数に替えた次の式で与えられる。

Λ=14π∫[L]R dV′\Lambda=\frac{1}{4\pi}\int\frac{[L]}{R}\,\mathrm{d} V'

遅延ポテンシャルから場へ

ポテンシャルを微分して場を求めておく。遅延時刻の値を場の点で微分すると、時刻の引数を通して ∇tr=−R^/c\nabla t_{\mathrm r}=-\hat{\bm{R}}/c が出てくる。

∇[ρ]R=[ρ]∇1R+[ρ˙]∇trR=−[ρ]R^R2−[ρ˙]R^cR,∇×[J]R=∇1R×[J]+∇tr×[J˙]R=[J]×R^R2+[J˙]×R^cR.\nabla\frac{[\rho]}{R}=[\rho]\nabla\frac1R+\frac{[\dot\rho]\nabla t_{\mathrm r}}{R}=-\frac{[\rho]\hat{\bm{R}}}{R^2}-\frac{[\dot\rho]\hat{\bm{R}}}{cR},\qquad \nabla\times\frac{[\bm{J}]}{R}=\nabla\frac1R\times[\bm{J}]+\frac{\nabla t_{\mathrm r}\times[\dot{\bm{J}}]}{R} =\frac{[\bm{J}]\times\hat{\bm{R}}}{R^2}+\frac{[\dot{\bm{J}}]\times\hat{\bm{R}}}{cR}.

これと次の2つから、場が求まる。

−∂tA=−μ04π∫[J˙]R dV′,μ0=1ε0c2-\partial_t\bm{A}=-\frac{\mu_0}{4\pi}\int\frac{[\dot{\bm{J}}]}{R}\,\mathrm{d} V',\qquad \mu_0=\frac{1}{\varepsilon_0c^2}

E(r,t)=14πε0∫([ρ]R2R^+[ρ˙]cRR^−[J˙]c2R)dV′,B(r,t)=μ04π∫([J]R2+[J˙]cR)×R^ dV′(11.10)\begin{aligned} \bm{E}(\bm{r},t)&=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\int\Bigl(\frac{[\rho]}{R^2}\hat{\bm{R}}+\frac{[\dot\rho]}{cR}\hat{\bm{R}}-\frac{[\dot{\bm{J}}]}{c^2R}\Bigr)\mathrm{d} V',\\ \bm{B}(\bm{r},t)&=\frac{\mu_0}{4\pi}\int\Bigl(\frac{[\bm{J}]}{R^2}+\frac{[\dot{\bm{J}}]}{cR}\Bigr)\times\hat{\bm{R}}\,\mathrm{d} V' \end{aligned}\tag{11.10}

を得る。これを Jefimenko の式と呼ぶ。源が時間変化しなければ 1/R21/R^2 の項だけが残り、Coulomb の法則と Biot–Savart の法則に戻る。

時間変化する源には 1/R1/R で減る項が加わる。この項が放射を担う。源を囲む半径 rr の大きな球面を通って出ていく電力は ∮S⋅da\oint\bm{S}\cdot\mathrm{d}\bm{a} で、Poynting ベクトルは場の2乗に比例する。

  • 1/R21/R^2 の項どうしの積は 1/r41/r^4 で減る。面積 4πr24\pi r^2 を掛けても、無限遠で0になる。
  • 1/R1/R の項どうしの積だけが 1/r21/r^2 で減る。面積と掛け合わせて有限の値を残す。

放射とは、この「無限遠まで運ばれて戻らないエネルギーの流れ」のことである。それを担うのは、源の時間微分に比例する 1/R1/R の項である。

例題 11.1 無限に長い導線に電流を流し始める ★★

オリジナルzz 軸に沿った無限に長い導線に、時刻0に一斉に一定の電流 I0I_0 を流し始める(それより前は0)。導線は電気的に中性のままとする。

  1. 導線から距離 ss の点のベクトルポテンシャル Az(s,t)A_z(s,t) を求めよ。
  2. 電場と磁場を求め、t→∞t\to\infty で静磁場に近づくことを確かめよ。
  3. s=3 ms=3\ \mathrm{m} の点で、磁場が現れ始める時刻と、ct=2sct=2s での磁場が最終的な値の何倍かを求めよ。
解答
  1. 導線上の点 z′z' と場の点の距離は R=s2+z′2R=\sqrt{s^2+z'^2} である。遅延時刻 t−R/ct-R/c が正の部分だけに電流がある。したがって積分に寄与するのは R<ctR<ct、すなわち次の部分である。

∣z′∣<L≔c2t2−s2\left\vert z'\right\vert <L\coloneqq\sqrt{c^2t^2-s^2}

ct<sct<s ならどこも寄与せず、Az=0A_z=0 である。ct>sct>s では

Az=μ0I04π∫−LLdz′s2+z′2=μ0I02πarsinh⁡Ls=μ0I02πln⁡ct+c2t2−s2s.A_z=\frac{\mu_0I_0}{4\pi}\int_{-L}^{L}\frac{\mathrm{d} z'}{\sqrt{s^2+z'^2}}=\frac{\mu_0I_0}{2\pi}\operatorname{arsinh}\frac{L}{s} =\frac{\mu_0I_0}{2\pi}\ln\frac{ct+\sqrt{c^2t^2-s^2}}{s}.

最後の等号は arsinh⁡u=ln⁡(u+u2+1)\operatorname{arsinh}u=\ln(u+\sqrt{u^2+1}) と L2/s2+1=ct/s\sqrt{L^2/s^2+1}=ct/s による。2. 電荷が無いので ϕ=0\phi=0 である。電場は

Ez=−∂Az∂t=−μ0I02π⋅c+c2t/c2t2−s2ct+c2t2−s2=−μ0I0c2πc2t2−s2.E_z=-\frac{\partial A_z}{\partial t}=-\frac{\mu_0I_0}{2\pi}\cdot\frac{c+c^2t/\sqrt{c^2t^2-s^2}}{ct+\sqrt{c^2t^2-s^2}}=-\frac{\mu_0I_0c}{2\pi\sqrt{c^2t^2-s^2}}.

磁場は円柱座標の回転の公式(第1章 §1.4)から Bφ=−∂Az/∂sB_\varphi=-\partial A_z/\partial s で、

Bφ=−μ0I02π(−s/c2t2−s2ct+c2t2−s2−1s)=μ0I02πs⋅ctc2t2−s2.B_\varphi=-\frac{\mu_0I_0}{2\pi}\Bigl(\frac{-s/\sqrt{c^2t^2-s^2}}{ct+\sqrt{c^2t^2-s^2}}-\frac1s\Bigr) =\frac{\mu_0I_0}{2\pi s}\cdot\frac{ct}{\sqrt{c^2t^2-s^2}}.

(括弧の中を通分すると − ct/[sc2t2−s2]-\,ct/[s\sqrt{c^2t^2-s^2}] になる。)時間が十分たつと ct/c2t2−s2→1ct/\sqrt{c^2t^2-s^2}\to1 なので、Bφ→μ0I0/(2πs)B_\varphi\to\mu_0I_0/(2\pi s) となる。これは第5章の無限直線電流の磁場である。電場は 1/t1/t で0に近づく。3. 場が現れるのは t=s/c=3/(3.00×108) s=1.0×10−8 st=s/c=3/(3.00\times10^8)\ \mathrm{s}=1.0\times10^{-8}\ \mathrm{s} である。ct=2sct=2s ではct/c2t2−s2=2/3=1.15ct/\sqrt{c^2t^2-s^2}=2/\sqrt3=1.15 なので、磁場は最終値の1.15倍である。

波面 ct=sct=s の直後では、電場も磁場も発散し、Ez/Bφ→−cE_z/B_\varphi\to-c となる。これは、電流を流し始めた瞬間の変化が電磁波のパルスとして外へ伝わることを表している。

確認テスト

オリジナル

  1. 11.1-1 源から 3.0 m 離れた点の場は、源の何秒前の状態で決まるか。
  2. 11.1-2 球対称なラプラシアン ∇2ψ=1r∂2(rψ)∂r2\nabla^2\psi=\frac1r\frac{\partial^2(r\psi)}{\partial r^2} を使う。ψ=f(t−r/c)/r\psi=f(t-r/c)/r が原点以外で □ψ=0\Box\psi=0 を満たすことを示せ。
  3. 11.1-3 z=0z=0 の平面全体に、一様な面電流 K0K_0 を時刻0に一斉に流し始める。電流の向きは xx 方向である。遅延ポテンシャルからベクトルポテンシャルを求めよ。∣z∣<ct\left\vert z\right\vert <ct の領域の電場と磁場を求めよ。∣E∣=c∣B∣\left\vert \bm{E}\right\vert =c\left\vert \bm{B}\right\vert であることを確かめよ。
  4. 11.1-4 遅延 Green 関数 (11.6) を、時間で −∞-\infty から ∞\infty まで積分する。それが静的な Poisson 方程式の Green 関数1/(4πr)1/(4\pi r) になることを示し、その意味を説明せよ。

木下の勉強ステータス

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