次元解析入門 第5章 §5.4 ★★★ レイノルズ数が導入される典型例。第5.5節の助走区間はこの節の延長にある
ハーゲン–ポアズイユの法則
1840年代、ポアズイユはガラス管を流れる液体(血液の研究が動機だった)の実験から、流量が両端の圧力差に比例し、管の半径の4乗に比例することを報告した。ハーゲンも独立に管の半径と流量の関係を調べた。長さ L、半径 r の円管に、圧力差 ΔP で粘性流体をゆっくり流すときの流量 Q は
Q=8μLπr4ΔP
であり、これをハーゲン–ポアズイユの法則と呼ぶ。上水の輸送設備の設計などで使われる。
次元解析で半径の4乗を出す
流れがゆっくりで慣性が無視できるなら、密度 ρ は関係しない(ナビエ–ストークス方程式で左辺を省くとρ が消える)。関係する量は Q(L3T−1)、r(L)、圧力勾配 G=ΔP/L(ML−2T−2)、μ(ML−1T−1)の4つで、階数は3、無次元量は1個である。Π=QrxGyμz の条件M:y+z=0、L:3+x−2y−z=0、T:−1−2y−z=0 を解くと y=−1, z=1, x=−4 で、
Π=Gr4Qμ,Q=CμLr4ΔP
となる。ポアズイユが実験で見つけた「半径の4乗」は次元解析だけから出てくる。係数 C=π/8 は、円管の中の流速分布 u(s)=G(r2−s2)/(4μ)(s は中心からの距離。放物線になる)を断面で積分して得られる。
壁面せん断応力
静止した管の壁には、流れに引きずられる向きの接線応力がはたらく。これを壁面せん断応力 σ と呼ぶ。流速分布を微分すると σ=μ∣du/ds∣s=r=rΔP/(2L)=DΔP/(4L) で、これは管の中の流体にはたらく圧力の力と壁の摩擦力のつり合い(ニュートンの第2法則)からも直接出る。圧力差 ΔP を決めて流す場合、σ は粘性係数によらない。流量 Q を決めて流す場合はσ=4μQ/(πr3) となり、半径の3乗に反比例して大きくなる。半径が半分になると、同じ流量を保つには壁面せん断応力が8倍になる。血管がプラークで細くなると、壁にかかる応力が急激に増える。
層流と乱流:データが1本の曲線に乗る
流れが速くなると慣性が無視できず、密度も関係する。量は流速 v、圧力勾配 ΔP/L、μ、ρ、直径 D の5つ、階数は3なので、無次元量は2個である。次のように置くと
Π1=μρvD=Re,Π2=ρv2(ΔP/L)D
となる(Π1 は運動と粘性の比、Π2 は圧力と運動の比)。工学では Π2 を2倍したf=2(ΔP/L)D/(ρv2) を管摩擦係数と呼び、f=ϕ(Re) の形にまとめる。層流のハーゲン–ポアズイユの法則を書き直すと、ちょうど f=64/Re になる。
いろいろな密度・粘性の気体や液体をいろいろな太さの管に流して測った値を Π1 と Π2 でプロットすると、すべての測定点が1本の曲線に乗る。Re が約2000(臨界レイノルズ数)より小さい範囲ではf=64/Re の層流、それより大きい範囲では乱流で、滑らかな管ではブラジウスの実験式 f≈0.316Re−1/4がよく合う(図 5.4.2)。Re が等しければ、流体の種類や管の太さによらず同じ振る舞いをする。Re は「運動する粘性流体」を特徴づける量である。
図 5.4.2 円管の管摩擦係数 f とレイノルズ数の関係。層流の 64/Re(理論)と、乱流のブラジウスの実験式 0.316Re−1/4(Re≈4×103–105 の滑らかな管)。灰色は層流から乱流への遷移域。どちらも式で描いた線で、測定点ではない。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com