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多変数の変数変換とヤコビアン(極座標・Box–Muller)

2026年10月15日22分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第7章 変数変換と畳み込み
目次
  1. 多変数の置換積分とヤコビアン
  2. 密度の変換公式
  3. 補助変数を足す方法
  4. 極座標と Box–Muller 法
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第7章 §7.2 ★★★ 1変数の ∣h′∣\left\vert h'\right\vert がヤコビアンの絶対値に置き換わる。極座標と補助変数の導入が二大定石

多変数の置換積分とヤコビアン

確率ベクトル X=(X1,…,Xn)\bm X=(X_1,\dots,X_n) が同時密度 ff を持つとは、次が成り立つことであった(第4章 §4.3)。

P(X∈B)=∫Bf(x) dx(B∈B(Rn))P(\bm X\in B)=\int_Bf(\bm x)\,\mathrm{d}\bm x\qquad(B\in\mathcal B(\mathbb{R}^n))

1変数の (7.5) の多変数版を、解析学から借りる。

定理 7.3(多変数の置換積分の公式)

U,V⊂RnU,V\subset\mathbb{R}^n を開集合とする。h:V→Uh:V\to U は全単射とする。hh も逆写像も C1C^1 級であるとする。このような写像を C1C^1 級微分同相と呼ぶ。hh のヤコビ行列を

Dh(y)=(∂hi∂yj)i,jDh(\bm y)=\Bigl(\frac{\partial h_i}{\partial y_j}\Bigr)_{i,j}

と書き、その行列式をヤコビアンと呼ぶ。このとき非負の Borel 可測関数 φ\varphi について

∫Uφ(x) dx=∫Vφ(h(y)) ∣det⁡Dh(y)∣ dy.(7.9)\int_U\varphi(\bm x)\,\mathrm{d}\bm x=\int_V\varphi\bigl(h(\bm y)\bigr)\,\left\vert \det Dh(\bm y)\right\vert \,\mathrm{d}\bm y.\tag{7.9}

証明は解析学の本に譲り、ここでは ∣det⁡Dh∣\left\vert \det Dh\right\vert が現れる理由の筋を2段で示す。

  1. 線形写像の場合。正則な n×nn\times n 行列 AA について、次が成り立つ。

Leb(A(B))=∣det⁡A∣ Leb(B)\mathrm{Leb}(A(B))=\left\vert \det A\right\vert \,\mathrm{Leb}(B)

AA は基本行列(2つの座標の入れ替え・1つの座標の定数倍・1つの座標に別の座標の定数倍を足す)の積に分解できる。それぞれについて、直方体の体積の変化が ∣det⁡∣\left\vert \det\right\vert 倍であることは直接確かめられる。直方体で一致する2つの測度は、第2章 §2.3 の一意性によって一致する。2. 一般の hh の場合。各点の近くで、hh は1次近似で書ける。

h(y+Δy)≈h(y)+Dh(y)Δyh(\bm y+\Delta\bm y)\approx h(\bm y)+Dh(\bm y)\Delta\bm y

したがって、点 y\bm y の近くの小さな直方体は、体積が ∣det⁡Dh(y)∣\left\vert \det Dh(\bm y)\right\vert 倍の平行六面体に写る(図 7.2)。VV を小さな直方体に分割してこの近似を足し合わせ、分割を細かくする極限をとると (7.9) が得られる。

図

図 7.2 極座標の写像 h(r,θ)=(rcos⁡θ,rsin⁡θ)h(r,\theta)=(r\cos\theta,r\sin\theta) が、(r,θ)(r,\theta) 平面の小さな長方形(面積 Δr Δθ\Delta r\,\Delta\theta)を(x,y)(x,y) 平面の扇形の一部に写す様子。扇形の弧の長さは rΔθr\Delta\theta なので面積は約 r Δr Δθr\,\Delta r\,\Delta\theta で、比 rr がヤコビアンの絶対値 ∣det⁡Dh∣=r\left\vert \det Dh\right\vert =r に当たる。

密度の変換公式

定理 7.4(多変数の変数変換 ★★★)

次の2つを仮定する。

  • (i) 確率ベクトル X\bm X は同時密度 ff を持つ。開集合 U⊂RnU\subset\mathbb{R}^n について P(X∈U)=1P(\bm X\in U)=1 である。
  • (ii) g:U→Vg:U\to V は C1C^1 級微分同相である。V=g(U)V=g(U) は開集合である。

h=g−1h=g^{-1} と置く。このとき Y=g(X)\bm Y=g(\bm X) は同時密度

fY(y)=f(h(y)) ∣det⁡Dh(y)∣ 1V(y)(7.10)f_{\bm Y}(\bm y)=f\bigl(h(\bm y)\bigr)\,\left\vert \det Dh(\bm y)\right\vert \,\mathbf 1_V(\bm y)\tag{7.10}

を持つ。x=h(y)\bm x=h(\bm y) と置くと det⁡Dh(y)=1/det⁡Dg(x)\det Dh(\bm y)=1/\det Dg(\bm x) なので、次のようにも書ける。

fY(y)=f(x)∣det⁡Dg(x)∣f_{\bm Y}(\bm y)=\frac{f(\bm x)}{\left\vert \det Dg(\bm x)\right\vert }

証明

B∈B(Rn)B\in\mathcal B(\mathbb{R}^n) をとる。x∈U\bm x\in U について次の同値が成り立つ。

g(x)∈B  ⟺  x∈h(B∩V)g(\bm x)\in B\iff\bm x\in h(B\cap V)

したがって

P(Y∈B)=P(X∈h(B∩V))=∫U1h(B∩V)(x)f(x) dx.P(\bm Y\in B)=P\bigl(\bm X\in h(B\cap V)\bigr)=\int_U\mathbf 1_{h(B\cap V)}(\bm x)f(\bm x)\,\mathrm{d}\bm x.

置換積分 (7.9) を φ=1h(B∩V)f\varphi=\mathbf 1_{h(B\cap V)}f に使う。y∈V\bm y\in V では次が成り立つ。

1h(B∩V)(h(y))=1B(y)\mathbf 1_{h(B\cap V)}(h(\bm y))=\mathbf 1_{B}(\bm y)

したがって

P(Y∈B)=∫V1B(y)f(h(y))∣det⁡Dh(y)∣ dy=∫BfY(y) dy.P(\bm Y\in B)=\int_V\mathbf 1_B(\bm y)f\bigl(h(\bm y)\bigr)\left\vert \det Dh(\bm y)\right\vert \,\mathrm{d}\bm y=\int_Bf_{\bm Y}(\bm y)\,\mathrm{d}\bm y.

最後に、連鎖律から次が成り立ち、別の形が出る。

det⁡Dh(y)det⁡Dg(x)=det⁡(D(g∘h)(y))=det⁡I=1\det Dh(\bm y)\det Dg(\bm x)=\det\bigl(D(g\circ h)(\bm y)\bigr)=\det I=1

系 7.5(1次変換と多変量正規分布 ★★)

AA を正則な n×nn\times n 行列とする。b∈Rn\bm b\in\mathbb{R}^n とする。Y=AX+b\bm Y=A\bm X+\bm b の同時密度は

fY(y)=1∣det⁡A∣ f(A−1(y−b))(7.11)f_{\bm Y}(\bm y)=\frac{1}{\left\vert \det A\right\vert }\,f\bigl(A^{-1}(\bm y-\bm b)\bigr)\tag{7.11}

である。とくに Z1,…,ZnZ_1,\dots,Z_n が独立で N(0,1)\mathrm N(0,1) に従うとする。Y=AZ+μ\bm Y=A\bm Z+\bm\mu なら、Σ=AA⊤\Sigma=AA^\top と置いて

fY(y)=1(2π)n/2(det⁡Σ)1/2exp⁡(−12(y−μ)⊤Σ−1(y−μ)).(7.12)f_{\bm Y}(\bm y)=\frac{1}{(2\pi)^{n/2}(\det\Sigma)^{1/2}}\exp\Bigl(-\frac12(\bm y-\bm\mu)^\top\Sigma^{-1}(\bm y-\bm\mu)\Bigr).\tag{7.12}

これが第6章 §6.2 の多変量正規分布 Nn(μ,Σ)\mathrm N_n(\bm\mu,\Sigma) の密度である。第6章の Nd\mathrm N_d で次元を nn としたものにあたる。

証明

g(x)=Ax+bg(\bm x)=A\bm x+\bm b は Rn\mathbb{R}^n の上の微分同相である。逆写像とヤコビアンは

h(y)=A−1(y−b),Dh=A−1,∣det⁡A−1∣=1∣det⁡A∣h(\bm y)=A^{-1}(\bm y-\bm b),\qquad Dh=A^{-1},\qquad \left\vert \det A^{-1}\right\vert =\frac{1}{\left\vert \det A\right\vert }

だから、定理 7.4 から (7.11) が出る。

第4章 §4.3 により、Z\bm Z の同時密度は周辺密度の積である。

fZ(z)=(2π)−n/2exp⁡(−12∣z∣2)f_{\bm Z}(\bm z)=(2\pi)^{-n/2}\exp\bigl(-\tfrac12\left\vert \bm z\right\vert ^2\bigr)

w=y−μ\bm w=\bm y-\bm\mu と置くと

∣A−1w∣2=w⊤(A−1)⊤A−1w=w⊤(AA⊤)−1w=w⊤Σ−1w,\left\vert A^{-1}\bm w\right\vert ^2=\bm w^\top(A^{-1})^\top A^{-1}\bm w=\bm w^\top(AA^\top)^{-1}\bm w=\bm w^\top\Sigma^{-1}\bm w,

となる。また det⁡Σ=(det⁡A)2\det\Sigma=(\det A)^2 から ∣det⁡A∣=(det⁡Σ)1/2\left\vert \det A\right\vert =(\det\Sigma)^{1/2} である。これらを (7.11) に入れれば (7.12) を得る。

(7.12) は AA そのものでなく Σ=AA⊤\Sigma=AA^\top だけで決まる。したがって、AA に右から直交行列を掛けても、Y\bm Y の分布は変わらない。

とくに μ=0\bm\mu=\bm 0 で AA が直交行列なら、共分散行列は単位行列である。独立な標準正規の組は、回転しても独立な標準正規の組のままである(確認テスト 7.2-3)。

補助変数を足す方法

X\bm X の1つの関数、たとえば X1/X2X_1/X_2 の分布だけが欲しいとする。Rn→R\mathbb{R}^n\to\mathbb{R} の写像は微分同相になりえないので、定理 7.4 を直接使うことはできない。そこで次の3段で計算する。

  1. 欲しい関数 Y1=g1(X)Y_1=g_1(\bm X) に、補助の関数 Y2,…,YnY_2,\dots,Y_n を付け足して微分同相を作る。
  2. 定理 7.4 で Y\bm Y の同時密度を求める。
  3. 余分な変数について積分して、周辺密度 fY1f_{Y_1} を得る。

補助変数は「逆写像とヤコビアンが簡単になるように」選ぶのが定石である。次の例題はこの方法の典型例で、その答えからガンマ分布の和についての大事な結果が得られる。

例題 7.3 ガンマ分布の和と比(ベータ分布) ★★★

オリジナルα,β,λ>0\alpha,\beta,\lambda>0 とする。X∼Ga(α,λ)X\sim\mathrm{Ga}(\alpha,\lambda) と Y∼Ga(β,λ)Y\sim\mathrm{Ga}(\beta,\lambda) が独立であるとする。U=X+YU=X+Y、V=X/(X+Y)V=X/(X+Y) と置く。

  1. (U,V)(U,V) の同時密度を求めよ。

  2. 次の3つを示せ。

    • (i) U∼Ga(α+β,λ)U\sim\mathrm{Ga}(\alpha+\beta,\lambda) である。
    • (ii) VV は次の密度を持つ。

Γ(α+β)Γ(α)Γ(β)vα−1(1−v)β−1(0<v<1)\dfrac{\Gamma(\alpha+\beta)}{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}v^{\alpha-1}(1-v)^{\beta-1}\qquad(0<v<1)

  • (iii) UU と VV は独立である。
  1. ベータ関数の公式 ∫01vα−1(1−v)β−1 dv=Γ(α)Γ(β)Γ(α+β)\displaystyle\int_0^1v^{\alpha-1}(1-v)^{\beta-1}\,\mathrm{d} v=\frac{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}{\Gamma(\alpha+\beta)} が (2) から従うことを説明せよ。
解答

(1) 第4章 §4.3 により (X,Y)(X,Y) の同時密度は U0=(0,∞)2U_0=(0,\infty)^2 の上で

f(x,y)=λαxα−1e−λxΓ(α)⋅λβyβ−1e−λyΓ(β)f(x,y)=\frac{\lambda^\alpha x^{\alpha-1}\mathrm{e}^{-\lambda x}}{\Gamma(\alpha)}\cdot\frac{\lambda^\beta y^{\beta-1}\mathrm{e}^{-\lambda y}}{\Gamma(\beta)}

である。次の写像は、U0U_0 から V0=(0,∞)×(0,1)V_0=(0,\infty)\times(0,1) への全単射である。

g(x,y)=(x+y, xx+y),h(u,v)=g−1(u,v)=(uv, u(1−v))g(x,y)=\Bigl(x+y,\ \frac{x}{x+y}\Bigr),\qquad h(u,v)=g^{-1}(u,v)=\bigl(uv,\ u(1-v)\bigr)

実際、2つの成分を足すと uv+u(1−v)=uuv+u(1-v)=u である。また、和に対する第1成分の比は vv である。ヤコビ行列と行列式は

Dh(u,v)=(vu1−v−u),det⁡Dh=−uv−u(1−v)=−uDh(u,v)=\begin{pmatrix}v&u\\1-v&-u\end{pmatrix},\qquad \det Dh=-uv-u(1-v)=-u

で、∣det⁡Dh∣=u\left\vert \det Dh\right\vert =u である。定理 7.4 から、V0V_0 の上で

fU,V(u,v)=λα+βΓ(α)Γ(β)(uv)α−1(u(1−v))β−1e−λu⋅u=λα+βΓ(α)Γ(β) uα+β−1e−λu vα−1(1−v)β−1.f_{U,V}(u,v)=\frac{\lambda^{\alpha+\beta}}{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}(uv)^{\alpha-1}\bigl(u(1-v)\bigr)^{\beta-1}\mathrm{e}^{-\lambda u}\cdot u =\frac{\lambda^{\alpha+\beta}}{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}\,u^{\alpha+\beta-1}\mathrm{e}^{-\lambda u}\,v^{\alpha-1}(1-v)^{\beta-1}.

指数の肩では λx+λy=λu\lambda x+\lambda y=\lambda u を使った。

(2) (1) の式を

fU,V(u,v)=λα+βuα+β−1e−λuΓ(α+β)⏟=:p(u)⋅Γ(α+β)Γ(α)Γ(β)vα−1(1−v)β−1⏟=:q(v)f_{U,V}(u,v)=\underbrace{\frac{\lambda^{\alpha+\beta}u^{\alpha+\beta-1}\mathrm{e}^{-\lambda u}}{\Gamma(\alpha+\beta)}}_{=:p(u)}\cdot \underbrace{\frac{\Gamma(\alpha+\beta)}{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}v^{\alpha-1}(1-v)^{\beta-1}}_{=:q(v)}

と分ける。周辺密度と独立性を順に確かめる。

  • (i) VV の周辺密度。pp は Ga(α+β,λ)\mathrm{Ga}(\alpha+\beta,\lambda) の密度だから、その積分は1である。したがって

fV(v)=∫0∞p(u)q(v) du=q(v).f_V(v)=\int_0^\infty p(u)q(v)\,\mathrm{d} u=q(v).

  • (ii) UU の周辺密度。fU,Vf_{U,V} は確率密度なので、全体の積分は1である。

fU(u)=p(u)∫01q(v) dv,1=∫ ⁣ ⁣∫fU,V=∫01q(v) dv\begin{aligned}f_U(u)&=p(u)\int_0^1q(v)\,\mathrm{d} v,\\ 1&=\int\!\!\int f_{U,V}=\int_0^1q(v)\,\mathrm{d} v\end{aligned}

したがって fU=pf_U=p を得る。

  • (iii) 独立性。台 V0V_0 は長方形で、fU,V=fUfVf_{U,V}=f_Uf_V が成り立つ。第4章 §4.3 の定理により、UU と VV は独立である。

(3) (2) の途中で ∫01q(v) dv=1\int_0^1q(v)\,\mathrm{d} v=1 が出た。qq の定義を代入すると、これは

∫01vα−1(1−v)β−1 dv=Γ(α)Γ(β)Γ(α+β)\int_0^1v^{\alpha-1}(1-v)^{\beta-1}\,\mathrm{d} v=\frac{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}{\Gamma(\alpha+\beta)}

そのものである。この等式を事前に知らなくても、確率の総和が1であることと Gamma 関数の積分だけからベータ関数の値が決まった。

VV の分布をベータ分布 Beta(α,β)\mathrm{Beta}(\alpha,\beta) と呼ぶ。α=β=1\alpha=\beta=1 では X,Y∼Ex(λ)X,Y\sim\mathrm{Ex}(\lambda) であり、次のようになる。

X+Y∼Ga(2,λ),XX+Y∼U(0,1)X+Y\sim\mathrm{Ga}(2,\lambda),\qquad \frac{X}{X+Y}\sim\mathrm U(0,1)

2つの待ち時間の合計を知っても、その中で1つ目が占める割合は一様で、合計の長さとは無関係である。

極座標と Box–Muller 法

平面の確率ベクトルで、密度が原点からの距離だけで決まるときは、極座標

h(r,θ)=(rcos⁡θ, rsin⁡θ),(r,θ)∈V=(0,∞)×(0,2π)h(r,\theta)=(r\cos\theta,\ r\sin\theta),\qquad (r,\theta)\in V=(0,\infty)\times(0,2\pi)

が最も見通しの良い変換である。原点と正の xx 軸を除いた平面を

U=R2∖{(x,0):x≥0}U=\mathbb{R}^2\setminus\{(x,0):x\ge0\}

と置く。hh はこの2つの集合のあいだの C1C^1 級微分同相で、

Dh(r,θ)=(cos⁡θ−rsin⁡θsin⁡θrcos⁡θ),det⁡Dh=rcos⁡2θ+rsin⁡2θ=rDh(r,\theta)=\begin{pmatrix}\cos\theta&-r\sin\theta\\ \sin\theta&r\cos\theta\end{pmatrix},\qquad\det Dh=r\cos^2\theta+r\sin^2\theta=r

である。除いた半直線は面積0である。密度を持つ確率ベクトルがそこに入る確率は0なので、無視してよい。

定理 7.6(2次元標準正規の極座標表示 ★★★)

X,YX,Y が独立で N(0,1)\mathrm N(0,1) に従うとする。次の式で (R,Θ)(R,\Theta) を定める。

(X,Y)=(Rcos⁡Θ,Rsin⁡Θ),R>0,0<Θ<2π(X,Y)=(R\cos\Theta,R\sin\Theta),\qquad R>0,\quad 0<\Theta<2\pi

このとき RR と Θ\Theta は独立で、

fR(r)=r e−r2/2(r>0),Θ∼U(0,2π)(7.13)f_R(r)=r\,\mathrm{e}^{-r^2/2}\quad(r>0),\qquad \Theta\sim\mathrm U(0,2\pi)\tag{7.13}

である。また R2=X2+Y2∼Ex(12)R^2=X^2+Y^2\sim\mathrm{Ex}(\frac12) である。

証明

(X,Y)(X,Y) の同時密度は f(x,y)=12πe−(x2+y2)/2f(x,y)=\frac{1}{2\pi}\mathrm{e}^{-(x^2+y^2)/2} である。(R,Θ)=h−1(X,Y)(R,\Theta)=h^{-1}(X,Y) に定理 7.4 を使う。逆写像は hh そのもので、∣det⁡Dh∣=r\left\vert \det Dh\right\vert =r である。したがって VV の上で

fR,Θ(r,θ)=12πe−r2/2⋅r=(re−r2/2)⋅12π.f_{R,\Theta}(r,\theta)=\frac{1}{2\pi}\mathrm{e}^{-r^2/2}\cdot r=\bigl(r\mathrm{e}^{-r^2/2}\bigr)\cdot\frac{1}{2\pi}.

台 VV は長方形で、密度は動径だけの関数と角度だけの関数の積に分かれる。それぞれの積分は

∫0∞re−r2/2dr=1,∫02πdθ2π=1\int_0^\infty r\mathrm{e}^{-r^2/2}\mathrm{d} r=1,\qquad \int_0^{2\pi}\frac{\mathrm{d}\theta}{2\pi}=1

なので、(7.13) と独立性が従う。

R2R^2 については、g(r)=r2g(r)=r^2 が正の実数の上で単調増加である。逆関数は h(s)=sh(s)=\sqrt s で、h′(s)=12sh'(s)=\frac{1}{2\sqrt s} である。定理 7.1 により、s>0s>0 で

fR2(s)=s e−s/2⋅12s=12e−s/2f_{R^2}(s)=\sqrt s\,\mathrm{e}^{-s/2}\cdot\frac{1}{2\sqrt s}=\frac12\mathrm{e}^{-s/2}

となる。

RR の分布を Rayleigh 分布と呼ぶ。この定理の副産物として、正規分布の正規化定数が得られる。c=∫Re−x2/2dxc=\int_{\mathbb{R}}\mathrm{e}^{-x^2/2}\mathrm{d} x と置くと

c2=∫R2e−(x2+y2)/2dx dy=∫02π ⁣∫0∞e−r2/2r dr dθ=2π(極座標に置換した)\begin{aligned}c^2&=\int_{\mathbb{R}^2}\mathrm{e}^{-(x^2+y^2)/2}\mathrm{d} x\,\mathrm{d} y\\ &=\int_0^{2\pi}\!\int_0^\infty\mathrm{e}^{-r^2/2}r\,\mathrm{d} r\,\mathrm{d}\theta=2\pi &&\text{(極座標に置換した)}\end{aligned}

となり、c=2πc=\sqrt{2\pi} である。

定理 7.6 を逆向きに読むと、一様乱数から正規乱数を作る方法になる。第3章 §3.5 の逆変換法で RR と Θ\Theta を作り、直交座標に戻せばよい。

定理 7.7(Box–Muller 法 ★★★)

U1,U2U_1,U_2 が独立で U(0,1)\mathrm U(0,1) に従うとする。

X=−2log⁡U1 cos⁡(2πU2),Y=−2log⁡U1 sin⁡(2πU2)(7.14)X=\sqrt{-2\log U_1}\,\cos(2\pi U_2),\qquad Y=\sqrt{-2\log U_1}\,\sin(2\pi U_2)\tag{7.14}

と置くと、X,YX,Y は独立で N(0,1)\mathrm N(0,1) に従う。

証明

R=−2log⁡U1R=\sqrt{-2\log U_1}、Θ=2πU2\Theta=2\pi U_2 と置く。第4章 §4.2 のまとめ方の補題により、RR と Θ\Theta は独立である。また Θ∼U(0,2π)\Theta\sim\mathrm U(0,2\pi) である。r>0r>0 について

P(R>r)=P(−2log⁡U1>r2)=P(U1<e−r2/2)=e−r2/2P(R>r)=P\bigl(-2\log U_1>r^2\bigr)=P\bigl(U_1<\mathrm{e}^{-r^2/2}\bigr)=\mathrm{e}^{-r^2/2}

だから fR(r)=re−r2/2f_R(r)=r\mathrm{e}^{-r^2/2} である。よって (R,Θ)(R,\Theta) の同時密度は、VV の上で

fR,Θ(r,θ)=re−r2/2⋅12πf_{R,\Theta}(r,\theta)=r\mathrm{e}^{-r^2/2}\cdot\frac{1}{2\pi}

となる。これは定理 7.6 の証明に現れたものと同じである。(X,Y)=h(R,Θ)(X,Y)=h(R,\Theta) に定理 7.4 を使う。逆写像 h−1h^{-1} のヤコビアンは 1/r1/r なので、

fX,Y(x,y)=re−r2/22π⋅1r=12πe−(x2+y2)/2(r=x2+y2)f_{X,Y}(x,y)=\frac{r\mathrm{e}^{-r^2/2}}{2\pi}\cdot\frac1r=\frac{1}{2\pi}\mathrm{e}^{-(x^2+y^2)/2}\qquad(r=\sqrt{x^2+y^2})

となる。これは独立な2つの N(0,1)\mathrm N(0,1) の同時密度である。

Box–Muller 法は、Φ−1\Phi^{-1} を数値的に計算せずに、対数・平方根・三角関数だけで正規乱数を2つずつ作る。一様乱数から作った (7.14) を図に描くと、U1U_1 が小さい(確率の小さい)ときにだけ原点から遠くへ飛ぶ点ができる。こうして正規分布の裾が再現される。

例題 7.4 2つの標準正規の距離と比 ★★

オリジナルX,YX,Y が独立で N(0,1)\mathrm N(0,1) に従うとする。

  1. 点 (X,Y)(X,Y) が原点を中心とする半径 ρ\rho の円板に入る確率を求めよ。また、それが 1/2 になる ρ\rho を求めよ。
  2. Y/XY/X が標準 Cauchy 分布に従うことを示せ。
解答

(1) 定理 7.6 により、R=X2+Y2R=\sqrt{X^2+Y^2} の密度は re−r2/2r\mathrm{e}^{-r^2/2} である。したがって

P(X2+Y2≤ρ2)=P(R≤ρ)=∫0ρre−r2/2 dr=1−e−ρ2/2.P(X^2+Y^2\le\rho^2)=P(R\le\rho)=\int_0^\rho r\mathrm{e}^{-r^2/2}\,\mathrm{d} r=1-\mathrm{e}^{-\rho^2/2}.

これが 1/2 になるのは e−ρ2/2=12\mathrm{e}^{-\rho^2/2}=\frac12 のとき、すなわち ρ=2log⁡2≈1.177\rho=\sqrt{2\log2}\approx1.177 のときである。各座標の標準偏差は1だが、2次元では半分の確率を囲むのに半径1.18ほど要る。

(2) P(X=0)=0P(X=0)=0 なので Y/XY/X はほとんど確実に定義される。Y/X=tan⁡ΘY/X=\tan\Theta で、Θ∼U(0,2π)\Theta\sim\mathrm U(0,2\pi) である。正接は周期 π\pi を持つので、角度を2段で区間 (−π2,π2)(-\frac\pi2,\frac\pi2) へ折り返す。

  • (i) Θ′=Θ−π⋅1{Θ>π}\Theta'=\Theta-\pi\cdot\mathbf 1\{\Theta>\pi\} と置く。tan⁡Θ=tan⁡Θ′\tan\Theta=\tan\Theta' であり、Θ′∼U(0,π)\Theta'\sim\mathrm U(0,\pi) である。実際 0<t<π0<t<\pi について

P(Θ′≤t)=P(Θ≤t)+P(π<Θ≤π+t)=2t2π=tπ.P(\Theta'\le t)=P(\Theta\le t)+P(\pi<\Theta\le\pi+t)=\frac{2t}{2\pi}=\frac t\pi.

  • (ii) Θ′′=Θ′−π⋅1{Θ′>π2}\Theta''=\Theta'-\pi\cdot\mathbf 1\{\Theta'>\frac\pi2\} と置く。同じ計算で Θ′′∼U(−π2,π2)\Theta''\sim\mathrm U(-\frac\pi2,\frac\pi2) である。また tan⁡Θ′′=tan⁡Θ′\tan\Theta''=\tan\Theta' である。

例題 7.1 (1) から、Y/X=tan⁡Θ′′Y/X=\tan\Theta'' は標準 Cauchy 分布に従う。

X,YX,Y は裾の軽い正規分布に従うのに、その比は平均すら持たない分布になる。分母の XX が0の近くに来る確率が、比を大きく振らせるからである。

確認テスト

オリジナル

  1. 7.2-1 X,YX,Y が独立で U(0,1)\mathrm U(0,1) に従うとする。(S,D)=(X+Y, X−Y)(S,D)=(X+Y,\ X-Y) の同時密度を求めよ(値をとる範囲も書くこと)。
  2. 7.2-2 X,YX,Y が独立で U(0,1)\mathrm U(0,1) に従うとする。補助変数 W=XW=X を使って Z=XYZ=XY の密度を求めよ。また P(Z≤12)P(Z\le\frac12) を求めよ。
  3. 7.2-3 X,YX,Y が独立で N(0,1)\mathrm N(0,1) に従うとする。次の U,VU,V も独立で N(0,1)\mathrm N(0,1) に従うことを示せ。

U=X+Y2,V=X−Y2U=\frac{X+Y}{\sqrt2},\qquad V=\frac{X-Y}{\sqrt2}

これを使って X+Y∼N(0,2)X+Y\sim\mathrm N(0,2) を示せ。4. 7.2-4 (X,Y)(X,Y) が単位円板 {x2+y2<1}\{x^2+y^2<1\} 上の一様分布に従うとする。S=X2+Y2S=X^2+Y^2 と置く。S∼U(0,1)S\sim\mathrm U(0,1) を示せ。また、SS と偏角 Θ\Theta が独立であることを示せ。

さらに、次の組が独立な2つの N(0,1)\mathrm N(0,1) であることを、定理 7.7 の証明と同じ考え方で導け(Marsaglia の極座標法)。

(X−2log⁡S/S, Y−2log⁡S/S)\Bigl(X\sqrt{-2\log S/S},\ Y\sqrt{-2\log S/S}\Bigr)

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