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1変数の変数変換(単調な場合と一般の場合)

2026年10月15日21分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第7章 変数変換と畳み込み
目次
  1. 分布関数を経由する方法
  2. 単調な変換
  3. 単調でない変換:逆像の枝ごとの和
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第7章 §7.1 ★★★ 密度は「確率を保存する」ように変換される。単調なら1項、単調でなければ逆像の枝ごとの和

第3章で確率変数 XX の分布 PXP_X を定め、第6章で代表的な分布を一覧にした。実際の問題では、分布の分かった確率変数をそのまま観測するより、その関数を観測することのほうが多い。半径が分かれば面積 πX2\pi X^2 を、2つの待ち時間が分かればその和を、事故の件数と1件ごとの損害額が分かれば損害の総額を知りたくなる。

この章では、XX の分布から g(X)g(X) の分布を計算する手続きを、1変数(§7.1)、多変数(§7.2)、独立な確率変数の和(§7.3)、足し合わせる個数そのものが確率変数である和(§7.4)の順に整える。

道具は2つしかない。1つ目は、押し出し測度の定義 Pg(X)(B)=P(X∈g−1(B))P_{g(X)}(B)=P(X\in g^{-1}(B)) そのものである(第3章 §3.2)。2つ目は、積分の変数変換の公式で、これが密度の変換規則に「ヤコビアンの絶対値」という因子を持ち込む。独立和の分布は、第4章の「独立なら同時分布は周辺分布の積測度」と累次積分を組み合わせると、畳み込みという形にまとまる。

この章で使う前の章の結果を、式の形で先に書いておく。第3章 §3.4 の意味で XX が密度 ff を持つとは

P(X∈B)=∫Bf(x) dx(B∈B(R))(7.1)P(X\in B)=\int_Bf(x)\,\mathrm{d} x\qquad(B\in\mathcal B(\mathbb{R}))\tag{7.1}

が成り立つことであり、分布関数で言えば FX(x)=∫−∞xf(t) dtF_X(x)=\int_{-\infty}^xf(t)\,\mathrm{d} t がすべての xx で成り立つことと同値である(第3章 §3.3 の一対一対応)。第4章 §4.3 からは、X,YX,Y が独立であることと同時分布が積測度 P(X,Y)=PX⊗PYP_{(X,Y)}=P_X\otimes P_Y になることの同値性を借りる。第5章からは、期待値が変数変換公式 E[g(X)]=∫g dPXE[g(X)]=\int g\,\mathrm{d} P_X で計算できること(§5.3)、独立なら E[XY]=E[X]E[Y]E[XY]=E[X]E[Y](§5.4)、単調収束定理と優収束定理(§5.2)、および非負可測関数の累次積分の順序を入れ替えてよいこと(Tonelli の定理)

∫R2ϕ d(μ⊗ν)=∫R(∫Rϕ(x,y) μ(dx))ν(dy)=∫R(∫Rϕ(x,y) ν(dy))μ(dx)(ϕ≥0)(7.2)\int_{\mathbb{R}^2}\phi\,\mathrm{d}(\mu\otimes\nu)=\int_{\mathbb{R}}\Bigl(\int_{\mathbb{R}}\phi(x,y)\,\mu(\mathrm{d} x)\Bigr)\nu(\mathrm{d} y)=\int_{\mathbb{R}}\Bigl(\int_{\mathbb{R}}\phi(x,y)\,\nu(\mathrm{d} y)\Bigr)\mu(\mathrm{d} x)\qquad(\phi\ge0)\tag{7.2}

を借りる。ここで ∫g(x) μ(dx)\int g(x)\,\mu(\mathrm{d} x) は ∫g dμ\int g\,\mathrm{d}\mu と同じもので、積分する変数を明示したいときにこう書く。分布の名前と密度は第6章のとおりである。とくにガンマ分布 Ga(α,λ)\mathrm{Ga}(\alpha,\lambda) の密度

λαxα−1e−λxΓ(α)(x>0)\frac{\lambda^\alpha x^{\alpha-1}\mathrm{e}^{-\lambda x}}{\Gamma(\alpha)}\qquad(x>0)

と、Ex(λ)=Ga(1,λ)\mathrm{Ex}(\lambda)=\mathrm{Ga}(1,\lambda) を使う。Lebesgue 測度は第2章にならって Leb\mathrm{Leb} と書く。

この章の結果の使い道も書いておく。§7.3 の畳み込みは、第8章・第9章で母関数と特性関数を導入する直接の動機になる。畳み込みの積分は一般に計算が重いが、特性関数をとると積に変わるからである(第9章 §9.3)。

§7.2 の Box–Muller 法は、第12章の Monte Carlo 法で正規乱数を作る方法として使う。§7.4 のランダム和と Wald の等式は、第14章の Poisson 過程の間引きと、第15章の到達時間の計算で再び現れる。

分布関数を経由する方法

XX を確率変数、g:R→Rg:\mathbb{R}\to\mathbb{R} を Borel 可測関数とする。第3章 §3.1 により Y=g(X)Y=g(X) も確率変数で、その分布は押し出し測度の定義から

PY(B)=P(g(X)∈B)=P(X∈g−1(B))=PX(g−1(B))(7.3)P_Y(B)=P(g(X)\in B)=P\bigl(X\in g^{-1}(B)\bigr)=P_X\bigl(g^{-1}(B)\bigr)\tag{7.3}

で決まる。原理としてはこれで終わりだが、実際に PYP_Y を分布関数や密度の形で書き下すには、逆像 g−1(B)g^{-1}(B) を具体的に求める必要がある。最も素朴な方法は B=(−∞,y]B=(-\infty,y] ととって分布関数

FY(y)=P(X∈g−1((−∞,y]))(7.4)F_Y(y)=P\bigl(X\in g^{-1}((-\infty,y])\bigr)\tag{7.4}

を計算し、それを yy で微分して密度の候補を得る方法である。分布関数は分布を決めるので(第3章 §3.3)、(7.4) が分かれば YY の分布はすべて分かる。

正規分布の2乗

X∼N(0,1)X\sim\mathrm N(0,1) とし、Y=X2Y=X^2 と置く。標準正規分布の密度と分布関数を

ϕ(x)=12πe−x2/2,Φ(x)=∫−∞xϕ(t) dt\phi(x)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\mathrm{e}^{-x^2/2},\qquad \Phi(x)=\int_{-\infty}^x\phi(t)\,\mathrm{d} t

と書く。

  • y≤0y\le0 なら FY(y)=0F_Y(y)=0 である。y=0y=0 でも P(X2≤0)=P(X=0)=0P(X^2\le0)=P(X=0)=0 となる。
  • y>0y>0 なら次のようになる。

FY(y)=P(−y≤X≤y)=Φ(y)−Φ(−y).F_Y(y)=P(-\sqrt y\le X\le\sqrt y)=\Phi(\sqrt y)-\Phi(-\sqrt y).

y>0y>0 で微分すると、合成関数の微分により

fY(y)=ϕ(y)12y+ϕ(−y)12y=12πye−y/2f_Y(y)=\phi(\sqrt y)\frac{1}{2\sqrt y}+\phi(-\sqrt y)\frac{1}{2\sqrt y}=\frac{1}{\sqrt{2\pi y}}\mathrm{e}^{-y/2}

を得る。これは Ga(12,12)\mathrm{Ga}(\frac12,\frac12) の密度

(12)1/2y−1/2e−y/2Γ(12)(Γ(12)=π)\frac{(\frac12)^{1/2}y^{-1/2}\mathrm{e}^{-y/2}}{\Gamma(\frac12)}\qquad\bigl(\Gamma(\tfrac12)=\sqrt\pi\bigr)

に一致する。この分布を自由度1の χ2\chi^2 分布と呼ぶ。2つの項が足されているのは、Y=yY=y になる点が ±y\pm\sqrt y の2つあるからである。

この例では「微分したものが密度である」ことを暗黙に使った。FYF_Y が微分可能でも、その導関数を積分して FYF_Y に戻るとは限らない。第3章 §3.4 の Cantor 関数は、ほとんどいたるところで微分係数0を持つが、FC(1)=1F_{\mathrm C}(1)=1 である。そこで、微分する代わりに積分の置換で FY(y)=∫−∞yfYF_Y(y)=\int_{-\infty}^yf_Y の形を直接作る、という方針で定理を述べる。

単調な変換

実解析の置換積分の公式を、Lebesgue 積分の形で1つ借りる。設定は次のとおりである。

  • JJ は開区間とする。h:J→Rh:J\to\mathbb{R} は C1C^1 級である。
  • h′h' は JJ 上で0にならない。
  • I=h(J)I=h(J) と置く。hh は狭義単調なので II も開区間である。また h:J→Ih:J\to I は全単射である。

このとき、非負の Borel 可測関数 φ\varphi と Borel 集合 B⊂JB\subset J について

∫h(B)φ(x) dx=∫Bφ(h(v)) ∣h′(v)∣ dv(7.5)\int_{h(B)}\varphi(x)\,\mathrm{d} x=\int_B\varphi\bigl(h(v)\bigr)\,\left\vert h'(v)\right\vert \,\mathrm{d} v\tag{7.5}

が成り立つ。φ\varphi が連続で BB が区間なら、これは微積分の置換積分そのものである。hh が減少関数のときは積分の上端と下端が入れ替わり、その符号を ∣h′∣\left\vert h'\right\vert が吸収する。

一般の φ\varphi と BB への拡張は、次の2つの測度に第2章 §2.3 の一意性を使う標準的な議論による。

B↦∫h(B)φ,B↦∫Bφ(h)∣h′∣B\mapsto\int_{h(B)}\varphi,\qquad B\mapsto\int_B\varphi(h)\left\vert h'\right\vert

この2つは区間の上で一致する。(7.5) は §7.2 の多変数の公式 (7.9) の n=1n=1 の場合でもある。

定理 7.1(単調な変換による密度の変換 ★★★)

次の2つを仮定する。

  • (i) XX は密度 ff を持つ。ある開区間 II について P(X∈I)=1P(X\in I)=1 である。
  • (ii) g:I→Rg:I\to\mathbb{R} は C1C^1 級である。II 上で g′(x)≠0g'(x)\ne0 である。

J=g(I)J=g(I)、h=g−1:J→Ih=g^{-1}:J\to I と置く。このとき Y=g(X)Y=g(X) は密度

fY(y)={f(h(y)) ∣h′(y)∣(y∈J)0(y∉J)(7.6)f_Y(y)=\begin{cases}f\bigl(h(y)\bigr)\,\left\vert h'(y)\right\vert &(y\in J)\\0&(y\notin J)\end{cases}\tag{7.6}

を持つ。h′(y)=1/g′(h(y))h'(y)=1/g'(h(y)) なので、x=h(y)x=h(y) として次のように書いてもよい。

fY(y)=f(x)∣g′(x)∣f_Y(y)=\frac{f(x)}{\left\vert g'(x)\right\vert }

証明

g′g' は連続で II 上で0にならない。中間値の定理により、g′g' は II 上で常に正か常に負である。

したがって gg は狭義単調で、JJ は開区間である。hh は C1C^1 級である。h′(y)=1/g′(h(y))≠0h'(y)=1/g'(h(y))\ne0 を満たす。

Borel 集合 B⊂RB\subset\mathbb{R} をとる。P(X∈I)=1P(X\in I)=1 なので、XX が区間の外にある零集合を除いてよい。すると

P(Y∈B)=P(X∈I, g(X)∈B)=P(X∈h(B∩J))=∫h(B∩J)f(x) dx.P(Y\in B)=P\bigl(X\in I,\ g(X)\in B\bigr)=P\bigl(X\in h(B\cap J)\bigr)=\int_{h(B\cap J)}f(x)\,\mathrm{d} x.

2つ目の等号は、x∈Ix\in I について g(x)∈B  ⟺  g(x)∈B∩J  ⟺  x∈h(B∩J)g(x)\in B\iff g(x)\in B\cap J\iff x\in h(B\cap J) による。置換の公式 (7.5) を φ=f\varphi=f、B∩JB\cap J に使うと

P(Y∈B)=∫B∩Jf(h(y))∣h′(y)∣ dy=∫BfY(y) dyP(Y\in B)=\int_{B\cap J}f\bigl(h(y)\bigr)\left\vert h'(y)\right\vert \,\mathrm{d} y=\int_Bf_Y(y)\,\mathrm{d} y

となり、(7.1) の意味で fYf_Y は YY の密度である。

(7.6) の因子 ∣h′(y)∣\left\vert h'(y)\right\vert は、確率の保存から理解することができる。次の2つの確率は等しい。

P(Y が y の近くの幅 Δy の区間に入る)=P(X が x=h(y) の近くの幅 ∣h′(y)∣Δy の区間に入る)P\bigl(Y\text{ が }y\text{ の近くの幅 }\Delta y\text{ の区間に入る}\bigr) =P\bigl(X\text{ が }x=h(y)\text{ の近くの幅 }\left\vert h'(y)\right\vert \Delta y\text{ の区間に入る}\bigr)

したがって

fY(y) Δy≈f(x) ∣h′(y)∣ Δyf_Y(y)\,\Delta y\approx f(x)\,\left\vert h'(y)\right\vert \,\Delta y

となる。gg が区間を引き伸ばす所(∣g′∣\left\vert g'\right\vert が大きい所)では、同じ確率がより広い幅に広がるので、密度はその分だけ薄くなる。

1次変換

定数 a≠0a\ne0 と b∈Rb\in\mathbb{R} をとる。Y=aX+bY=aX+b と置く。I=J=RI=J=\mathbb{R} であり、

h(y)=y−ba,∣h′(y)∣=1∣a∣h(y)=\frac{y-b}{a},\qquad \left\vert h'(y)\right\vert =\frac{1}{\left\vert a\right\vert }

だから

fY(y)=1∣a∣ f(y−ba).(7.7)f_Y(y)=\frac{1}{\left\vert a\right\vert }\,f\Bigl(\frac{y-b}{a}\Bigr).\tag{7.7}

a<0a<0 のときも絶対値のおかげで fY≥0f_Y\ge0 が保たれる。X∼N(0,1)X\sim\mathrm N(0,1) なら、σ>0\sigma>0 について次が成り立つ。

σX+μ∼N(μ,σ2)\sigma X+\mu\sim\mathrm N(\mu,\sigma^2)標準化 (Y−μ)/σ(Y-\mu)/\sigma はこの逆の変換である。

対数正規分布

X∼N(μ,σ2)X\sim\mathrm N(\mu,\sigma^2)、Y=eXY=\mathrm{e}^X とする。g(x)=exg(x)=\mathrm{e}^x は g′>0g'>0 を満たし、

J=(0,∞),h(y)=log⁡y,h′(y)=1yJ=(0,\infty),\qquad h(y)=\log y,\qquad h'(y)=\frac1y

である。したがって y>0y>0 で

fY(y)=1yσ2πexp⁡(−(log⁡y−μ)22σ2)f_Y(y)=\frac{1}{y\sigma\sqrt{2\pi}}\exp\Bigl(-\frac{(\log y-\mu)^2}{2\sigma^2}\Bigr)

となる。この分布を対数正規分布と呼ぶ。多数の正の要因の積で決まる量(粒径や所得など)の模型に使われる。

対数をとると正規分布になるので、YY の分位点は XX の分位点を指数関数で写したものである。たとえば中央値は eμ\mathrm{e}^\mu である。

単調でない変換:逆像の枝ごとの和

正規分布の2乗の例のように、gg が単調でないと、Y=yY=y となる点が複数ある。そのときは gg が単調になる区間に定義域を分け、各区間で定理 7.1 を使って足し合わせる。

定理 7.2(区分的に単調な変換 ★★★)

XX は密度 ff を持つとする。互いに交わらない開区間 I1,…,ImI_1,\dots,I_m について、次の2つを仮定する。

  • (i) P(X∈⋃kIk)=1P\bigl(X\in\bigcup_kI_k\bigr)=1 である。
  • (ii) gg は各区間の上で C1C^1 級である。また IkI_k 上で g′≠0g'\ne0 である。

各 kk について次のように置く。

Jk=g(Ik),hk=(g∣Ik)−1:Jk→IkJ_k=g(I_k),\qquad h_k=(g|_{I_k})^{-1}:J_k\to I_k

このとき Y=g(X)Y=g(X) は密度

fY(y)=∑k=1mf(hk(y)) ∣hk′(y)∣ 1Jk(y)(7.8)f_Y(y)=\sum_{k=1}^m f\bigl(h_k(y)\bigr)\,\left\vert h_k'(y)\right\vert \,\mathbf 1_{J_k}(y)\tag{7.8}

を持つ。区間の個数 mm は可算無限でもよい。

証明

Borel 集合 BB をとる。事象 {X∈Ik}\{X\in I_k\} たちは互いに素で、その和の確率は1である。確率の加法性と、定理 7.1 の証明と同じ計算から

P(Y∈B)=∑kP(X∈Ik, g(X)∈B)=∑k∫hk(B∩Jk)f(x) dx=∑k∫Bf(hk(y))∣hk′(y)∣1Jk(y) dy.P(Y\in B)=\sum_kP\bigl(X\in I_k,\ g(X)\in B\bigr)=\sum_k\int_{h_k(B\cap J_k)}f(x)\,\mathrm{d} x =\sum_k\int_Bf\bigl(h_k(y)\bigr)\left\vert h_k'(y)\right\vert \mathbf 1_{J_k}(y)\,\mathrm{d} y.

mm が可算無限のときは、最後に非負関数の和と積分を入れ替える(単調収束定理、第5章 §5.2)。右辺は ∫BfY\int_Bf_Y に等しい。

(7.8) の和は「Y=yY=y になる xx をすべて集め、それぞれの寄与を足す」という意味である。正規分布の2乗の例は、次の場合にあたる。

I1=(−∞,0),I2=(0,∞),h1(y)=−y,h2(y)=yI_1=(-\infty,0),\quad I_2=(0,\infty),\quad h_1(y)=-\sqrt y,\quad h_2(y)=\sqrt y

X=0X=0 となる確率は0なので、この点は除いてよい。

落とし穴

  • gg が平らな部分を持つと密度が無くなる。たとえば X∼N(0,1)X\sim\mathrm N(0,1) と Y=max⁡(X,0)Y=\max(X,0) を考える。gg は (−∞,0)(-\infty,0) で定数なので

P(Y=0)=P(X≤0)=12P(Y=0)=P(X\le0)=\tfrac12

となり、YY は原子を持つ。定理 7.2 の仮定 g′≠0g'\ne0 はこの事態を除くためのものである。そういう場合は (7.4) に戻って分布関数を求め、第3章 §3.4 の分類(離散部分と連続部分の混合)で書く。

  • ∣h′∣\left\vert h'\right\vert の絶対値を落とす。gg が減少関数のとき h′<0h'<0 で、絶対値を付けないと密度が負になる。分布関数から出発すれば

FY(y)=P(X≥h(y))=1−FX(h(y))F_Y(y)=P(X\ge h(y))=1-F_X(h(y))

となり、微分すると自然に −h′>0-h'>0 が現れる。

  • 値域を書き忘れる。(7.6) は y∈Jy\in J でだけ有効で、JJ の外では0である。対数正規分布の密度を y≤0y\le0 で使うと意味を失う。
図

図 7.1 例題 7.2 の変換 g(x)=x2g(x)=x^2(−1<x<2-1<x<2)。0<y0<10<y_0<1 の高さの水平線はグラフと2点で交わり、密度 (7.8) は2つの枝の和になる。1<y1<41<y_1<4 の高さでは交点は y1\sqrt{y_1} の1点だけで、和は1項になる。

例題 7.1 一様な角度の正接と Cauchy 分布 ★★★

オリジナル直線の壁から距離1の点に回転する光源を置き、壁に垂直な向きから測った角度 Θ\Theta の方向へ光を1回だけ放つ。Θ∼U(−π2,π2)\Theta\sim\mathrm U(-\frac\pi2,\frac\pi2) とする。光が壁に当たる位置を、垂線の足を原点として Y=tan⁡ΘY=\tan\Theta と表す。

  1. YY の密度を求めよ。
  2. P(∣Y∣>1)P(\left\vert Y\right\vert >1) を求めよ。
  3. 1/Y1/Y が YY と同じ分布に従うことを示せ。
解答

(1) I=(−π2,π2)I=(-\frac\pi2,\frac\pi2) と置く。Θ\Theta の密度は II の上で 1/π である。g(θ)=tan⁡θg(\theta)=\tan\theta について

g′(θ)=1cos⁡2θ>0,J=g(I)=R,h(y)=arctan⁡y,h′(y)=11+y2g'(\theta)=\frac{1}{\cos^2\theta}>0,\qquad J=g(I)=\mathbb{R},\qquad h(y)=\arctan y,\qquad h'(y)=\frac{1}{1+y^2}

である。定理 7.1 から

fY(y)=1π⋅11+y2(y∈R).f_Y(y)=\frac1\pi\cdot\frac{1}{1+y^2}\qquad(y\in\mathbb{R}).

これが標準 Cauchy 分布の密度である。分布関数は FY(y)=12+1πarctan⁡yF_Y(y)=\frac12+\frac1\pi\arctan y である。

(2) ∣Y∣>1\left\vert Y\right\vert >1 は ∣Θ∣>π4\left\vert \Theta\right\vert >\frac\pi4 と同じである。Θ\Theta の一様性から

P(∣Y∣>1)=π/2π=12P(\left\vert Y\right\vert >1)=\dfrac{\pi/2}{\pi}=\dfrac12

である。密度から計算しても 2∫1∞dyπ(1+y2)=2π(π2−π4)=122\int_1^\infty\frac{\mathrm{d} y}{\pi(1+y^2)}=\frac2\pi\bigl(\frac\pi2-\frac\pi4\bigr)=\frac12 となり一致する。光源の真正面から距離1より外に当たる確率が半分あり、裾が重い。

(3) P(Y=0)=0P(Y=0)=0 なので 1/Y1/Y はほとんど確実に定義される。g(y)=1/yg(y)=1/y を2つの枝に分ける。

I1=(−∞,0),I2=(0,∞),g′(y)=−1y2≠0I_1=(-\infty,0),\quad I_2=(0,\infty),\qquad g'(y)=-\frac{1}{y^2}\ne0

像は J1=(−∞,0)J_1=(-\infty,0) と J2=(0,∞)J_2=(0,\infty) である。どちらの枝でも逆関数は

h(w)=1w,∣h′(w)∣=1w2h(w)=\frac1w,\qquad \left\vert h'(w)\right\vert =\frac{1}{w^2}

である。寄与する枝は1つだけである。

  • w>0w>0 なら I2I_2 の枝だけが寄与する。
  • w<0w<0 なら I1I_1 の枝だけが寄与する。

定理 7.2 から

f1/Y(w)=1π⋅11+1/w2⋅1w2=1π⋅1w2+1.f_{1/Y}(w)=\frac1\pi\cdot\frac{1}{1+1/w^2}\cdot\frac{1}{w^2}=\frac1\pi\cdot\frac{1}{w^2+1}.

これは fYf_Y と同じ関数である。角度で見れば、1/tan⁡Θ=tan⁡(π2−Θ)1/\tan\Theta=\tan(\frac\pi2-\Theta) が成り立つ。π2−Θ\frac\pi2-\Theta を区間 II に戻したものもまた一様分布に従う、ということに対応する。

例題 7.2 一様分布の2乗(枝の数が場所で変わる場合) ★★

オリジナルX∼U(−1,2)X\sim\mathrm U(-1,2) とし、Y=X2Y=X^2 と置く。YY の密度を求め、それが確率密度であること(積分が1)を確かめよ。また P(Y≤14)P(Y\le\frac14) を求めよ。

解答

XX の密度は (−1,2)(-1,2) の上で 1/3 である。X=0X=0 は確率0なので除き、定義域を2つに分ける(図 7.1)。

  • I1=(−1,0)I_1=(-1,0) では g(x)=x2g(x)=x^2 は減少である。像と逆関数は J1=(0,1)J_1=(0,1)、h1(y)=−yh_1(y)=-\sqrt y である。
  • I2=(0,2)I_2=(0,2) では gg は増加である。像と逆関数は J2=(0,4)J_2=(0,4)、h2(y)=yh_2(y)=\sqrt y である。

どちらも ∣hk′(y)∣=12y\left\vert h_k'(y)\right\vert =\frac{1}{2\sqrt y} である。定理 7.2 から

fY(y)=13⋅12y1(0,1)(y)+13⋅12y1(0,4)(y)={13y(0<y<1),16y(1≤y<4),0(それ以外).f_Y(y)=\frac13\cdot\frac{1}{2\sqrt y}\mathbf 1_{(0,1)}(y)+\frac13\cdot\frac{1}{2\sqrt y}\mathbf 1_{(0,4)}(y) =\begin{cases}\dfrac{1}{3\sqrt y}&(0<y<1),\\[2mm]\dfrac{1}{6\sqrt y}&(1\le y<4),\\[2mm]0&(\text{それ以外}).\end{cases}

y=1y=1 を境に密度が半分に跳ぶ。理由は枝の数にある。

  • y<1y<1 では、対応する点が2つある(±y\pm\sqrt y)。
  • y>1y>1 では、そういう点は y\sqrt y の1つしかない。

積分は

∫01dy3y+∫14dy6y=23[y]01+13[y]14=23+13=1\int_0^1\frac{\mathrm{d} y}{3\sqrt y}+\int_1^4\frac{\mathrm{d} y}{6\sqrt y}=\frac23\bigl[\sqrt y\bigr]_0^1+\frac13\bigl[\sqrt y\bigr]_1^4=\frac23+\frac13=1

で、確率密度になっている。最後に

P(Y≤14)=∫01/4dy3y=23⋅12=13.P\bigl(Y\le\tfrac14\bigr)=\int_0^{1/4}\frac{\mathrm{d} y}{3\sqrt y}=\frac23\cdot\frac12=\frac13.

直接 P(−12≤X≤12)=13P(-\frac12\le X\le\frac12)=\frac{1}{3} と計算しても同じ値になる。

確認テスト

オリジナル

  1. 7.1-1 X∼Ex(λ)X\sim\mathrm{Ex}(\lambda) とし、c>0c>0 とする。cX∼Ex(λ/c)cX\sim\mathrm{Ex}(\lambda/c) であることを、(7.7) を使って示せ。
  2. 7.1-2 X∼Ex(1)X\sim\mathrm{Ex}(1) とし、Y=XY=\sqrt X と置く。YY の密度を求めよ。また P(Y>1)P(Y>1) と、YY の中央値を求めよ。中央値とは FY(m)=12F_Y(m)=\frac12 となる mm のことである。
  3. 7.1-3 XX の密度が次で与えられるとする。

f(x)={1+x2(−1<x<1)0(それ以外)f(x)=\begin{cases}\frac{1+x}{2}&(-1<x<1)\\0&(\text{それ以外})\end{cases}

Y=X2Y=X^2 の密度を求めよ。また P(Y≤14)P(Y\le\frac14) を求めよ。4. 7.1-4 X∼N(μ,σ2)X\sim\mathrm N(\mu,\sigma^2) とし、定数 a≠0, b∈Ra\ne0,\ b\in\mathbb{R} をとる。次を示せ(a<0a<0 の場合を含めること)。

aX+b∼N(aμ+b, a2σ2)aX+b\sim\mathrm N(a\mu+b,\,a^2\sigma^2) 5. 7.1-5 X∼N(0,1)X\sim\mathrm N(0,1)、Y=max⁡(X,0)Y=\max(X,0) とする。YY の分布関数を Φ\Phi で書け。また、YY が密度を持たないことを示せ。

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