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複合分布(ランダム和・Wald の等式)

2026年10月15日19分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第7章 変数変換と畳み込み
目次
  1. ランダム和とその分布
  2. 確率母関数の合成
  3. 平均と分散
  4. Wald の等式
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第7章 §7.4 ★★★ 足す個数が確率変数のとき。分布は畳み込みの混合、母関数は合成、平均は「個数の平均×1つの平均」

ランダム和とその分布

ある期間に保険会社へ届く請求の件数 NN と、1件ごとの請求額 X1,X2,…X_1,X_2,\dots を考える。支払いの総額は X1+⋯+XNX_1+\cdots+X_N で、足す個数そのものが確率変数である。§7.3 の畳み込みは個数を固定した和しか扱わないので、もう1段の手続きが要る。

定義 7.12(ランダム和と複合分布)

次の設定を考える。

  • X1,X2,…X_1,X_2,\dots は、同じ分布 μ\mu に従う独立な確率変数の列である。
  • NN は値 0,1,2,…0,1,2,\dots をとる確率変数である。
  • NN と列 (Xi)i≥1(X_i)_{i\ge1} は独立である。すなわち σ(N)\sigma(N) と σ(X1,X2,… )\sigma(X_1,X_2,\dots) が独立である。

Sn=X1+⋯+XnS_n=X_1+\cdots+X_n と置く(S0=0S_0=0)。

SN(ω)=SN(ω)(ω)=∑n=0∞1{N(ω)=n} Sn(ω)(7.20)S_N(\omega)=S_{N(\omega)}(\omega)=\sum_{n=0}^\infty\mathbf 1\{N(\omega)=n\}\,S_n(\omega)\tag{7.20}

をランダム和と呼ぶ。SNS_N の分布を複合分布と呼ぶ。とくに N∼Po(λ)N\sim\mathrm{Po}(\lambda) のとき複合 Poisson 分布と呼ぶ。

(7.20) の右辺は、各 ω\omega で1つの項だけが残る和である。可測関数の各点極限なので、SNS_N は確率変数である(第3章 §3.1)。

定理 7.13(複合分布は畳み込みの混合 ★★★)

定義 7.12 の状況で、pn=P(N=n)p_n=P(N=n) と置くと

P(SN∈B)=∑n=0∞pn P(Sn∈B)=∑n=0∞pn μ∗n(B)(B∈B(R)).(7.21)P(S_N\in B)=\sum_{n=0}^\infty p_n\,P(S_n\in B)=\sum_{n=0}^\infty p_n\,\mu^{*n}(B)\qquad(B\in\mathcal B(\mathbb{R})).\tag{7.21}

証明

事象 {N=n}\{N=n\} たちは互いに素で、和は全体 Ω\Omega である。可算加法性により

P(SN∈B)=∑nP(N=n, SN∈B)=∑nP(N=n, Sn∈B).P(S_N\in B)=\sum_nP(N=n,\ S_N\in B)=\sum_nP(N=n,\ S_n\in B).

{Sn∈B}\{S_n\in B\} は σ(X1,…,Xn)\sigma(X_1,\dots,X_n) の元である。したがって {N=n}\{N=n\} と独立である。したがって

P(N=n, Sn∈B)=pnP(Sn∈B)P(N=n,\ S_n\in B)=p_nP(S_n\in B)

である。SnS_n の分布は定理 7.9 により μ∗n\mu^{*n} である。

(7.21) は全確率の公式(第4章 §4.1)を NN の値で場合分けしたものである。複合分布は、個数を固定したときの分布 μ∗n\mu^{*n} を、重み pnp_n で混ぜ合わせた分布になっている。

とくに P(SN=0)≥p0P(S_N=0)\ge p_0 である。したがって XiX_i が密度を持っても、p0>0p_0>0 ならランダム和は0に原子を持つ。このとき分布は、離散部分と連続部分の混合になる(第3章 §3.4)。

確率母関数の合成

XiX_i が値 0,1,2,…0,1,2,\dots をとるとき、混合 (7.21) は確率母関数を使うと1つの式にまとまる。確率母関数は第8章 §8.1 で詳しく扱うが、ここでは定義と1つの性質だけを使う。値 0,1,2,…0,1,2,\dots をとる XX について

GX(s)=E[sX]=∑k=0∞P(X=k) sk(∣s∣≤1)(7.22)G_X(s)=E\bigl[s^X\bigr]=\sum_{k=0}^\infty P(X=k)\,s^k\qquad(\left\vert s\right\vert \le1)\tag{7.22}

を XX の確率母関数と呼ぶ。∣s∣≤1\left\vert s\right\vert \le1 では係数の絶対値の和が1なので、級数は絶対収束する。冪級数の係数は P(X=k)=GX(k)(0)/k!P(X=k)=G_X^{(k)}(0)/k! で取り出せるので、確率母関数は分布をただ1つに定める。

また、独立な X,YX,Y について、(7.16) の両辺に sks^k を掛けて足す(絶対収束する二重級数の並べ替え)。すると

GX+Y(s)=∑k∑jP(X=j)sj P(Y=k−j)sk−j=GX(s) GY(s)(7.23)G_{X+Y}(s)=\sum_k\sum_jP(X=j)s^j\,P(Y=k-j)s^{k-j}=G_X(s)\,G_Y(s)\tag{7.23}

を得る。

定理 7.14(ランダム和の確率母関数 ★★★)

定義 7.12 の状況で、XiX_i が値 0,1,2,…0,1,2,\dots をとるとする。このとき ∣s∣≤1\left\vert s\right\vert \le1 で

GSN(s)=GN(GX(s))(7.24)G_{S_N}(s)=G_N\bigl(G_X(s)\bigr)\tag{7.24}

が成り立つ。ここで GXG_X は X1X_1 の確率母関数である。とくに N∼Po(λ)N\sim\mathrm{Po}(\lambda) なら GN(s)=eλ(s−1)G_N(s)=\mathrm{e}^{\lambda(s-1)} であり、

GSN(s)=exp⁡(λ(GX(s)−1)).G_{S_N}(s)=\exp\bigl(\lambda(G_X(s)-1)\bigr).

証明

(7.23) を繰り返し使うと GSn(s)=GX(s)nG_{S_n}(s)=G_X(s)^n である(n=0n=0 では1)。(7.21) を B={k}B=\{k\} に使い、sks^k を掛けて足す。二重級数の各項の絶対値は pnP(Sn=k)∣s∣k≤pnP(Sn=k)p_nP(S_n=k)\left\vert s\right\vert ^k\le p_nP(S_n=k) で、その総和は1である。したがって和の順序を入れ替えてよく、

GSN(s)=∑kP(SN=k)sk=∑npn∑kP(Sn=k)sk=∑npn GX(s)n=GN(GX(s)).G_{S_N}(s)=\sum_kP(S_N=k)s^k=\sum_np_n\sum_kP(S_n=k)s^k=\sum_np_n\,G_X(s)^n=G_N\bigl(G_X(s)\bigr).

最後の等号は、∣GX(s)∣≤1\left\vert G_X(s)\right\vert \le1 なので定義 (7.22) にそのまま代入してよいことによる。Poisson 分布については

GN(s)=∑ke−λλkk!sk=e−λeλsG_N(s)=\sum_k\mathrm{e}^{-\lambda}\frac{\lambda^k}{k!}s^k=\mathrm{e}^{-\lambda}\mathrm{e}^{\lambda s}

である。

例題 7.7 Poisson 個の Bernoulli の和(間引き) ★★★

オリジナルある店に1日に来る客の数を N∼Po(λ)N\sim\mathrm{Po}(\lambda) とする。各客は、他の客や来客数と独立に、確率 pp で商品を買う(確率 1−p1-p で買わない)。商品を買った客の数を KK、買わなかった客の数を L=N−KL=N-K とする。

  1. K∼Po(λp)K\sim\mathrm{Po}(\lambda p) を、確率母関数の合成 (7.24) を使って示せ。
  2. KK と LL が独立であることを示せ。また L∼Po(λ(1−p))L\sim\mathrm{Po}(\lambda(1-p)) を示せ。
  3. λ=20\lambda=20、p=0.3p=0.3 とする。P(K=0)P(K=0) と、KK の平均・分散を求めよ。
解答

(1) 客 ii が買えば1、買わなければ0をとる XiX_i を置く。K=X1+⋯+XNK=X_1+\cdots+X_N はランダム和で、GX(s)=1−p+psG_X(s)=1-p+ps である。定理 7.14 から

GK(s)=exp⁡(λ(1−p+ps−1))=exp⁡(λp(s−1)).G_K(s)=\exp\bigl(\lambda(1-p+ps-1)\bigr)=\exp\bigl(\lambda p(s-1)\bigr).

これは Po(λp)\mathrm{Po}(\lambda p) の確率母関数である。確率母関数は分布を決めるから、K∼Po(λp)K\sim\mathrm{Po}(\lambda p) である。

(2) k,l≥0k,l\ge0 をとる。K=kK=k かつ L=lL=l という事象は、次の事象と同じである。

{N=k+l}∩{最初の k+l 人のうち、買った人がちょうど k 人}\{N=k+l\}\cap\{\text{最初の }k+l\text{ 人のうち、買った人がちょうど }k\text{ 人}\}

NN と (Xi)(X_i) の独立性から

P(K=k, L=l)=P(N=k+l)(k+lk)pk(1−p)l=e−λλk+l(k+l)!⋅(k+l)!k! l!pk(1−p)l=e−λp(λp)kk!⋅e−λ(1−p)(λ(1−p))ll!.\begin{aligned}P(K=k,\ L=l)&=P(N=k+l)\binom{k+l}{k}p^k(1-p)^l =\mathrm{e}^{-\lambda}\frac{\lambda^{k+l}}{(k+l)!}\cdot\frac{(k+l)!}{k!\,l!}p^k(1-p)^l\\ &=\mathrm{e}^{-\lambda p}\frac{(\lambda p)^k}{k!}\cdot\mathrm{e}^{-\lambda(1-p)}\frac{(\lambda(1-p))^l}{l!}.\end{aligned}

e−λ=e−λpe−λ(1−p)\mathrm{e}^{-\lambda}=\mathrm{e}^{-\lambda p}\mathrm{e}^{-\lambda(1-p)} と λk+l=λkλl\lambda^{k+l}=\lambda^k\lambda^l を分けた。同時確率関数が、kk だけの関数と ll だけの関数の積に分かれ、それぞれが Poisson 分布の確率関数である。第4章 §4.2 の判定により、KK と LL は独立である。また L∼Po(λ(1−p))L\sim\mathrm{Po}(\lambda(1-p)) である。

(3) λp=6\lambda p=6 である。Poisson 分布の平均と分散はともにパラメータに等しいので(第6章 §6.1)、

P(K=0)=e−6≈0.00248,E[K]=V[K]=6.P(K=0)=\mathrm{e}^{-6}\approx0.00248,\qquad E[K]=V[K]=6.

来客数を知らないと、KK と LL は独立になる。一方、来客数を固定すると K+L=NK+L=N なので独立ではない。この独立性は、来客数が Poisson 分布に従うことによって初めて成り立つ。

平均と分散

定理 7.15(ランダム和の平均と分散 ★★★)

定義 7.12 の状況で、E∣X1∣<∞E\left\vert X_1\right\vert <\infty かつ E[N]<∞E[N]<\infty なら

E[SN]=E[N] E[X1].(7.25)E[S_N]=E[N]\,E[X_1].\tag{7.25}

さらに E[X12]<∞E[X_1^2]<\infty、E[N2]<∞E[N^2]<\infty なら

V[SN]=E[N] V[X1]+V[N] (E[X1])2.(7.26)V[S_N]=E[N]\,V[X_1]+V[N]\,\bigl(E[X_1]\bigr)^2.\tag{7.26}

とくに複合 Poisson 分布(N∼Po(λ)N\sim\mathrm{Po}(\lambda))では、次が成り立つ。

E[SN]=λE[X1],V[SN]=λE[X12]E[S_N]=\lambda E[X_1],\qquad V[S_N]=\lambda E[X_1^2]

証明

m=E[X1]m=E[X_1]、v=V[X1]v=V[X_1] と置く。まず、非負の ∣SN∣\left\vert S_N\right\vert に (7.20) を使う。単調収束定理(第5章 §5.2)で和と期待値を入れ替え、1{N=n}\mathbf 1\{N=n\} と SnS_n の独立性で積に分けると

E∣SN∣=∑nE[1{N=n}∣Sn∣]=∑npnE∣Sn∣≤∑npn nE∣X1∣=E[N] E∣X1∣<∞.E\left\vert S_N\right\vert =\sum_nE\bigl[\mathbf 1\{N=n\}\left\vert S_n\right\vert \bigr]=\sum_np_nE\left\vert S_n\right\vert \le\sum_np_n\,nE\left\vert X_1\right\vert =E[N]\,E\left\vert X_1\right\vert <\infty.

これで SNS_N が可積分であることが分かった。部分和について次が成り立つ。

∣∑n≤M1{N=n}Sn∣≤∣SN∣\Bigl|\sum_{n\le M}\mathbf 1\{N=n\}S_n\Bigr|\le\left\vert S_N\right\vert

したがって、優収束定理により同じ入れ替えが SNS_N そのものでも許され、

E[SN]=∑npnE[Sn]=∑npn nm=E[N] m.E[S_N]=\sum_np_nE[S_n]=\sum_np_n\,nm=E[N]\,m.

2乗についても同様である(SN2=∑n1{N=n}Sn2S_N^2=\sum_n\mathbf 1\{N=n\}S_n^2 は非負)。独立な和の分散は分散の和なので(第5章 §5.4)、

E[Sn2]=V[Sn]+(E[Sn])2=nv+n2m2.E[S_n^2]=V[S_n]+(E[S_n])^2=nv+n^2m^2.

これを使って

E[SN2]=∑npn(nv+n2m2)=E[N] v+E[N2] m2.E[S_N^2]=\sum_np_n\bigl(nv+n^2m^2\bigr)=E[N]\,v+E[N^2]\,m^2.

したがって

V[SN]=E[N]v+E[N2]m2−(E[N]m)2=E[N]v+V[N]m2V[S_N]=E[N]v+E[N^2]m^2-(E[N]m)^2=E[N]v+V[N]m^2

である。Poisson 分布では E[N]=V[N]=λE[N]=V[N]=\lambda なので、分散は λv+λm2=λE[X12]\lambda v+\lambda m^2=\lambda E[X_1^2] となる。

(7.26) の2つの項は、ばらつきの2つの源に対応する。

  • 第1項は、件数を固定しても1件ごとの額がばらつく分である。
  • 第2項は、1件ごとの額を平均に固定しても件数がばらつく分である。

保険金の総額

1年間の請求件数を N∼Po(50)N\sim\mathrm{Po}(50) とする。1件の請求額(単位:万円)を Xi∼Ex(1/20)X_i\sim\mathrm{Ex}(1/20) とする。平均は20で、E[Xi2]=2⋅202=800E[X_i^2]=2\cdot20^2=800 である。

  • 総額 SNS_N の平均は 50×20=100050\times20=1000 である。分散は 50×800=4000050\times800=40000 で、標準偏差は200である。
  • 件数が平均の50に固定されていれば、分散は 50×V[X1]=50×400=2000050\times V[X_1]=50\times400=20000 にとどまる。残りの20000は件数のばらつきに由来する。
  • また P(SN=0)=P(N=0)=e−50P(S_N=0)=P(N=0)=\mathrm{e}^{-50} で、総額は0にごく小さな原子を持つ。

Wald の等式

(7.25) の証明では、NN と列 (Xi)(X_i) の独立性を使った。しかし実際によく現れるのは、XiX_i の値を見ながら止める時刻を決める場合である。そのとき両者は独立でない。

たとえばサイコロを6が出るまで振り続けるとき、振った回数 NN は出た目で決まる。それでも平均の公式は、次の弱い条件のもとで成り立つ。

定理 7.16(Wald の等式 ★★★)

次の3つを仮定する。

  • (i) X1,X2,…X_1,X_2,\dots は同じ分布に従い、E∣X1∣<∞E\left\vert X_1\right\vert <\infty である。
  • (ii) NN は非負整数値をとり、E[N]<∞E[N]<\infty である。
  • (iii) 各番号について、事象 {N≥n}\{N\ge n\} と XnX_n が独立である。

このとき

E[SN]=E[N] E[X1].(7.27)E[S_N]=E[N]\,E[X_1].\tag{7.27}

証明

E[N]<∞E[N]<\infty から P(N<∞)=1P(N<\infty)=1 である。したがって SNS_N はほとんど確実に定義される。各 ω\omega で、和の第 nn 項は、その番号が回数以下のときだけ現れる。したがって

SN=∑n=1∞Xn 1{N≥n}S_N=\sum_{n=1}^\infty X_n\,\mathbf 1\{N\ge n\}

と書ける。N(ω)N(\omega) が有限なので、右辺は各点で有限和である。まず絶対値を考える。単調収束定理と、1{N≥n}\mathbf 1\{N\ge n\} と ∣Xn∣\left\vert X_n\right\vert の独立性(第5章 §5.4)から

E[∑n=1∞∣Xn∣1{N≥n}]=∑n=1∞E∣Xn∣ P(N≥n)=E∣X1∣∑n=1∞P(N≥n).E\Bigl[\sum_{n=1}^\infty\left\vert X_n\right\vert \mathbf 1\{N\ge n\}\Bigr]=\sum_{n=1}^\infty E\left\vert X_n\right\vert \,P(N\ge n)=E\left\vert X_1\right\vert \sum_{n=1}^\infty P(N\ge n).

ここで次の等式の期待値をとる(N=kN=k なら右辺は最初の kk 項が1)。

N=∑n≥11{N≥n}N=\sum_{n\ge1}\mathbf 1\{N\ge n\}

単調収束定理から ∑n≥1P(N≥n)=E[N]\sum_{n\ge1}P(N\ge n)=E[N] である。したがって上の量は E∣X1∣E[N]<∞E\left\vert X_1\right\vert E[N]<\infty である。

よって部分和 ∑n≤MXn1{N≥n}\sum_{n\le M}X_n\mathbf 1\{N\ge n\} は、可積分な関数 ∑n∣Xn∣1{N≥n}\sum_n\left\vert X_n\right\vert \mathbf 1\{N\ge n\} で抑えられる。優収束定理により和と期待値を入れ替えて

E[SN]=∑n=1∞E[Xn] P(N≥n)=E[X1] E[N].E[S_N]=\sum_{n=1}^\infty E[X_n]\,P(N\ge n)=E[X_1]\,E[N].

条件「{N≥n}\{N\ge n\} と XnX_n が独立」は、回数と列全体の独立よりずっと弱い。典型的なのは、直前の回までの結果を見て、nn 回目を行うかどうか決める場合である。そのとき {N≥n}={N≤n−1}c\{N\ge n\}=\{N\le n-1\}^c は σ(X1,…,Xn−1)\sigma(X_1,\dots,X_{n-1}) の元である。第4章 §4.2 のまとめ方の補題により、これは σ(Xn)\sigma(X_n) と独立になる。

このように、{N≤n}\{N\le n\} が nn 回目までの結果で決まる時刻を停止時刻と呼ぶ。第14章 §14.1 でフィルトレーションの言葉で定め直す。

落とし穴

  • E[N]<∞E[N]<\infty を落とすと成り立たない。公正な硬貨で表なら +1+1、裏なら −1-1 進むランダムウォークを考える。初めて +1+1 に達した時刻 NN で止める。NN は停止時刻で、第15章で示すとおり P(N<∞)=1P(N<\infty)=1 である。しかし SN=1S_N=1 なので

E[SN]=1≠0=E[N]E[X1]E[S_N]=1\ne0=E[N]E[X_1]

である。矛盾が起きないのは E[N]=∞E[N]=\infty だからである(確認テスト 7.4-5)。

  • 未来を見て止めてはならない。「次の回で6が出る直前に止める」ような時刻では、{N≥n}\{N\ge n\} が XnX_n の値に依存する。条件を満たさないので、(7.27) を使うことはできない。

例題 7.8 6が出るまでの目の合計 ★★

オリジナル公正なサイコロを、6の目が出るまで振り続ける(6が出た回も含めて数える)。振った回数を NN、出た目の合計を TT とする。

  1. E[N]E[N] を求めよ。
  2. Wald の等式を使って E[T]E[T] を求めよ。
  3. 6以外の目の合計に分けて E[T]E[T] を別の方法で計算し、(2) と一致することを確かめよ。
解答

(1) NN は成功確率1/6の幾何分布(値 1,2,…1,2,\dots)に従う。したがって P(N≥n)=(56)n−1P(N\ge n)=(\frac56)^{n-1} である。定理 7.16 の証明で示した E[N]=∑n≥1P(N≥n)E[N]=\sum_{n\ge1}P(N\ge n) から

E[N]=∑n=1∞(56)n−1=11−5/6=6.E[N]=\sum_{n=1}^\infty\Bigl(\frac56\Bigr)^{n-1}=\frac{1}{1-5/6}=6.

(2) kk 回目の目を XkX_k とする。T=SNT=S_N である。{N≥n}\{N\ge n\} は「直前の回まで6が出ない」事象で、σ(X1,…,Xn−1)\sigma(X_1,\dots,X_{n-1}) に属する。したがって XnX_n と独立である。E[X1]=72E[X_1]=\frac72、E[N]=6<∞E[N]=6<\infty なので、定理 7.16 から

E[T]=6×72=21E[T]=6\times\frac72=21

である。回数は6が出た所で止まるので、NN と (Xk)(X_k) は独立でない。したがって定理 7.15 を使うことはできない。

(3) 合計を、最後の回とそれより前の回に分ける。

T=6+(最後の回を除く N−1 回の目の合計)T=6+(\text{最後の回を除く } N-1 \text{ 回の目の合計})

最後の回より前の各回の目は、「6でない」という条件のもとで {1,…,5}\{1,\dots,5\} 上の一様分布に従う。その条件付きの平均は3である。

さらに、回数が N−1=jN-1=j と決まったもとで、それらの目は互いに独立で、{1,…,5}\{1,\dots,5\} 上一様に従う。各回が「6以外で値 ii」になる確率1/6を、6以外になる確率5/6で割ると1/5になるからである。したがって最後の回を除く合計は、個数 N−1N-1 と、それと独立な一様の列とのランダム和と同じ分布を持つ。

定理 7.15 から、その平均は E[N−1]×3=5×3=15E[N-1]\times3=5\times3=15 である。よって E[T]=6+15=21E[T]=6+15=21 である。2つの方法の答えが一致した。最初の方法は条件付き分布の考察を全く要しない。

確認テスト

オリジナル

  1. 7.4-1 定義 7.12 の状況で、XiX_i が値 0,1,2,…0,1,2,\dots をとるとする。次を示せ。

P(SN=0)=GN(P(X1=0))P(S_N=0)=G_N\bigl(P(X_1=0)\bigr) 2. 7.4-2 N∼Bin(n,q)N\sim\mathrm{Bin}(n,q) とする。XiX_i は回数と独立で、確率 pp で1をとり、それ以外は0をとるとする。SN∼Bin(n,pq)S_N\sim\mathrm{Bin}(n,pq) を示せ。3. 7.4-3 0<q<10<q<1 とする。NN は値 1,2,…1,2,\dots をとり、次の幾何分布に従うとする。

P(N=n)=(1−q)n−1qP(N=n)=(1-q)^{n-1}q

Xi∼Ex(λ)X_i\sim\mathrm{Ex}(\lambda) は NN と独立であるとする。(7.21) と (7.19) を使って SN∼Ex(λq)S_N\sim\mathrm{Ex}(\lambda q) を示せ。4. 7.4-4 N∼Po(4)N\sim\mathrm{Po}(4) とする。XiX_i は NN と独立で、1と2を確率1/2ずつとるとする。SNS_N の平均と分散を求めよ。また P(SN=2)P(S_N=2) を求めよ。5. 7.4-5 公正な硬貨で ±1\pm1 進むランダムウォーク Sn=X1+⋯+XnS_n=X_1+\cdots+X_n を考える。XiX_i は独立で、P(Xi=1)=P(Xi=−1)=12P(X_i=1)=P(X_i=-1)=\frac12 である。初めて Sn=1S_n=1 となる時刻を NN とする。P(N<∞)=1P(N<\infty)=1(第15章で示す)を認めて、E[N]=∞E[N]=\infty を Wald の等式から示せ。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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