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一意性定理

2026年10月15日22分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第9章 特性関数の一意性と反転公式
目次
  1. 1次元の一意性定理
  2. 多変量の一意性定理
  3. 確認テスト
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第9章 §9.2 ★★★ 特性関数が等しい分布は等しい。多変量でも成り立ち、独立性は同時特性関数の分解で判定できる

1次元の一意性定理

定理 9.5(一意性定理)

確率変数 X,YX,Y が、すべての実数 tt で次を満たすとする。

φX(t)=φY(t)\varphi_X(t)=\varphi_Y(t)

このとき2つは同分布である(PX=PYP_X=P_Y)。

証明

2つの確率変数の原子を合わせた集合 NN は、高々可算である(第3章 §3.3)。a<ba<b がともに NN に属さなければ、反転公式 (9.8) の左辺は2つの特性関数で同じ値をとるので

FX(b)−FX(a)=FY(b)−FY(a)F_X(b)-F_X(a)=F_Y(b)-F_Y(a)

である。証明は2段で進める。

  1. NN の外の点で分布関数が一致する。NN は可算なので、この集合に属さない点列 an↓−∞a_n\downarrow-\infty を選べる。このとき FX(an)→0F_X(a_n)\to0 かつ FY(an)→0F_Y(a_n)\to0 である。よって b∉Nb\notin N なら FX(b)=FY(b)F_X(b)=F_Y(b) である。
  2. すべての点で一致する。任意の点 xx をとる。この集合に属さない点列 bnb_n で、上から xx に近づくものを選べる。区間 (x,x+1/n)(x,x+1/n) は非可算なので、NN に属さない点を含むからである。分布関数の右連続性から

FX(x)=lim⁡FX(bn)=lim⁡FY(bn)=FY(x)F_X(x)=\lim F_X(b_n)=\lim F_Y(b_n)=F_Y(x)

となる。

分布関数が等しいので分布も等しい(第3章 §3.3)。

この定理によって、特性関数は分布の完全な代わりになる。分布を特定したいときは、特性関数を計算して既知の分布の特性関数と比べればよい。第8章で予告した2つの主張をここで証明しておく。

系 9.6(対称な分布)

X=d−XX\overset{d}{=}-X であるための必要十分条件は、φX\varphi_X が実数値であることである。

証明

(9.1) から

φ−X(t)=φX(−t)=φX(t)‾\varphi_{-X}(t)=\varphi_X(-t)=\overline{\varphi_X(t)}

である。この式から両向きが従う。

  • φX\varphi_X が実数値なら φ−X=φX\varphi_{-X}=\varphi_X となる。定理 9.5 から −X=dX-X\overset{d}{=}X である。
  • 逆に X=d−XX\overset{d}{=}-X なら φX=φ−X=φX‾\varphi_X=\varphi_{-X}=\overline{\varphi_X} である。よって φX\varphi_X は実数値である。

第8章 §8.2 では、積率母関数が 0 の近くで有限で等しければ分布が等しいこと(積率母関数の一意性)を、複素関数論の一致の定理を使う筋だけ示した。ここでは複素関数論を使わない証明を与える。

定理 9.7(積率母関数の一意性)

ある δ>0\delta>0 をとる。0 を含むこの幅の開区間の上で、2つの積率母関数 MX,MYM_X,M_Y がともに有限で等しいとする。このとき X=dYX\overset{d}{=}Y である。

証明

0<s<δ0<s<\delta を1つ固定する。es∣x∣≤esx+e−sx\mathrm{e}^{s\left\vert x\right\vert }\le\mathrm{e}^{sx}+\mathrm{e}^{-sx} だから

E[es∣X∣]≤MX(s)+MX(−s)<∞E[\mathrm{e}^{s\left\vert X\right\vert }]\le M_X(s)+M_X(-s)<\infty

である。es∣X∣\mathrm{e}^{s\left\vert X\right\vert } を級数に展開して項別積分する(第5章 §5.2 の単調収束定理)と

∑k≥0skE[∣X∣k]k!=E[es∣X∣]<∞\sum_{k\ge0}\frac{s^kE[\left\vert X\right\vert ^k]}{k!}=E[\mathrm{e}^{s\left\vert X\right\vert }]<\infty

を得る。とくに

snE[∣X∣n]n!⟶0(n→∞)(9.15)\frac{s^{n}E[\left\vert X\right\vert ^{n}]}{n!}\longrightarrow0\qquad(n\to\infty)\tag{9.15}

である。YY についても同じである。

第8章 §8.3 の特性関数とモーメントの定理から、φX\varphi_X は何回でも微分でき、

φX(k)(t0)=E[(iX)keit0X]\varphi_X^{(k)}(t_0)=E[(\mathrm{i} X)^k\mathrm{e}^{\mathrm{i} t_0X}]

である。第8章 §8.3 では、指数関数の Taylor 剰余を次のように評価した。

∣eix−∑k=0n(ix)kk!∣≤∣x∣n+1(n+1)!\Bigl\lvert\mathrm{e}^{\mathrm{i} x}-\sum_{k=0}^{n}\frac{(\mathrm{i} x)^k}{k!}\Bigr\rvert\le\frac{\left\vert x\right\vert ^{n+1}}{(n+1)!}

これを x=hXx=hX に使い、eit0X\mathrm{e}^{\mathrm{i} t_0X} を掛けて期待値をとると

∣φX(t0+h)−∑k=0nhkk!φX(k)(t0)∣≤∣h∣n+1E[∣X∣n+1](n+1)!\Bigl\lvert\varphi_X(t_0+h)-\sum_{k=0}^{n}\frac{h^k}{k!}\varphi_X^{(k)}(t_0)\Bigr\rvert\le\frac{\left\vert h\right\vert ^{n+1}E[\left\vert X\right\vert ^{n+1}]}{(n+1)!}

となる。∣h∣≤s\left\vert h\right\vert \le s なら、右辺は (9.15) により 0 に収束する。したがって、任意の t0t_0 と ∣h∣≤s\left\vert h\right\vert \le s について

φX(t0+h)=∑k=0∞hkk!φX(k)(t0)(9.16)\varphi_X(t_0+h)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{h^k}{k!}\varphi_X^{(k)}(t_0)\tag{9.16}

であり、YY についても同じ式が成り立つ。

この級数を使い、2つの特性関数が一致する範囲を順に広げる。

  1. 原点のまわりで一致する。t0=0t_0=0 で比べる。MX=MYM_X=M_Y が (−δ,δ)(-\delta,\delta) で成り立つので、0 での導関数も等しく、すべてのモーメントが一致する。

E[Xk]=MX(k)(0)=MY(k)(0)=E[Yk]E[X^k]=M_X^{(k)}(0)=M_Y^{(k)}(0)=E[Y^k]

よって φX(k)(0)=ikE[Xk]=φY(k)(0)\varphi_X^{(k)}(0)=\mathrm{i}^kE[X^k]=\varphi_Y^{(k)}(0) である。(9.16) から、[−s,s][-s,s] の上で2つの特性関数は一致する。2. 区間の端から先へ延ばす。次に t0=±st_0=\pm s で比べる。2つの特性関数は t0t_0 の片側の区間で一致し、どちらも t0t_0 で何回でも微分できる。微分係数は片側からの差分商の極限としても求まるので、すべての kk で φX(k)(t0)=φY(k)(t0)\varphi_X^{(k)}(t_0)=\varphi_Y^{(k)}(t_0) である。 (9.16) から、[−2s,2s][-2s,2s] の上で一致する。3. 繰り返す。これを繰り返せば、すべての tt で φX(t)=φY(t)\varphi_X(t)=\varphi_Y(t) となる。

定理 9.5 から X=dYX\overset{d}{=}Y である。

この証明の要点は2つある。積率母関数が有限という仮定から、E[∣X∣n]E[\left\vert X\right\vert ^n] の増え方は n!/snn!/s^n で抑えられる。その結果、特性関数はどの点のまわりでも半径 ss の Taylor 級数で表せる。

第8章 §8.2 の対数正規分布の例では、すべてのモーメントが有限でも E[Xn]E[X^n] が en2/2\mathrm{e}^{n^2/2} の程度で増える。このためこの議論が使えず、実際に同じモーメントをもつ別の分布が存在した。

例題 9.3 特性関数から分布を特定する ★★

オリジナル確率変数 XX の特性関数が φX(t)=cos⁡t⋅e−t2/2\varphi_X(t)=\cos t\cdot\mathrm{e}^{-t^2/2} であるとする。

  1. XX の分布を特定し、密度を書け。
  2. E[X2]E[X^2] を特性関数から求めよ。
  3. P(X>1)P(X>1) を標準正規分布の分布関数 Φ\Phi で表し、数値を求めよ。
解答
  1. 余弦関数は次のように書ける。

cos⁡t=12eit+12e−it\cos t=\tfrac12\mathrm{e}^{\mathrm{i} t}+\tfrac12\mathrm{e}^{-\mathrm{i} t}

これは、±1\pm1 を等確率でとる確率変数 BB の特性関数である(第8章の確認テスト 8.3-1)。Z∼N(0,1)Z\sim\mathrm N(0,1) を BB と独立にとると、(9.2) から

φB+Z(t)=cos⁡t⋅e−t2/2\varphi_{B+Z}(t)=\cos t\cdot\mathrm{e}^{-t^2/2}

である。定理 9.5 から X=dB+ZX\overset{d}{=}B+Z である。BB の値で場合分けすると

fX(x)=12⋅e−(x−1)2/22π+12⋅e−(x+1)2/22πf_X(x)=\frac12\cdot\frac{\mathrm{e}^{-(x-1)^2/2}}{\sqrt{2\pi}}+\frac12\cdot\frac{\mathrm{e}^{-(x+1)^2/2}}{\sqrt{2\pi}}

となる。N(1,1)\mathrm N(1,1) と N(−1,1)\mathrm N(-1,1) を半分ずつ混ぜた分布である。2. φX(t)=cos⁡t⋅e−t2/2\varphi_X(t)=\cos t\cdot\mathrm{e}^{-t^2/2} を2回微分する。積の微分で

φX′′(t)=(−cos⁡t)e−t2/2+2(−sin⁡t)(−te−t2/2)+cos⁡t⋅(t2−1)e−t2/2\varphi_X''(t)=(-\cos t)\mathrm{e}^{-t^2/2}+2(-\sin t)(-t\mathrm{e}^{-t^2/2})+\cos t\cdot(t^2-1)\mathrm{e}^{-t^2/2}

だから φX′′(0)=−1+0−1=−2\varphi_X''(0)=-1+0-1=-2 で、E[X2]=−φX′′(0)=2E[X^2]=-\varphi_X''(0)=2 である。E[(B+Z)2]=E[B2]+2E[B]E[Z]+E[Z2]=1+0+1E[(B+Z)^2]=E[B^2]+2E[B]E[Z]+E[Z^2]=1+0+1 と一致する。3. BB の値で場合分けすると

P(X>1)=12P(Z>0)+12P(Z>2)=12(12+1−Φ(2))≈12(0.5+0.02275)≈0.2614P(X>1)=\frac12P(Z>0)+\frac12P(Z>2)=\frac12\Bigl(\frac12+1-\Phi(2)\Bigr)\approx\frac12(0.5+0.02275)\approx0.2614

である。

多変量の一意性定理

Rd\mathbb{R}^d 値の確率ベクトル X=(X1,…,Xd)⊤\bm X=(X_1,\dots,X_d)^\top の同時特性関数を

φX(t)≔E[ei t⊤X]=E[ei(t1X1+⋯+tdXd)](t∈Rd)(9.17)\varphi_{\bm X}(\bm t)\coloneqq E\bigl[\mathrm{e}^{\mathrm{i}\,\bm t^\top\bm X}\bigr]=E\bigl[\mathrm{e}^{\mathrm{i}(t_1X_1+\cdots+t_dX_d)}\bigr]\qquad(\bm t\in\mathbb{R}^d)\tag{9.17}

で定める。1次元の反転公式を dd 次元に広げることもできるが、ここでは正規分布を使って次元によらない形で一意性を証明する。各成分の分散が σ2\sigma^2 の dd 次元正規分布の密度を、次のように書く。

ϕσ(x)≔(2πσ2)−d/2e−∣x∣2/(2σ2)\phi_\sigma(\bm x)\coloneqq(2\pi\sigma^2)^{-d/2}\mathrm{e}^{-\left\vert \bm x\right\vert ^2/(2\sigma^2)}

補題 9.8(正規分布によるなめらか化)

Z∼Nd(0,I)\bm Z\sim\mathrm N_d(\bm 0,I) を X\bm X と独立にとる。σ>0\sigma>0 とすると、X+σZ\bm X+\sigma\bm Z は密度

fσ(x)=1(2π)d∫Rde−i t⊤x φX(t) e−σ2∣t∣2/2 dt(9.18)f_\sigma(\bm x)=\frac{1}{(2\pi)^d}\int_{\mathbb{R}^d}\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\,\bm t^\top\bm x}\,\varphi_{\bm X}(\bm t)\,\mathrm{e}^{-\sigma^2\left\vert \bm t\right\vert ^2/2}\,\mathrm{d}\bm t\tag{9.18}

をもつ。とくに X+σZ\bm X+\sigma\bm Z の分布は φX\varphi_{\bm X} だけで決まる。

証明

(9.3) で x=σtx=\sigma t と置換する。さらに tt の代わりに −u/σ-u/\sigma を入れると、1次元の等式

12π∫−∞∞e−itu e−σ2t2/2 dt=12πσ2 e−u2/(2σ2)\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\mathrm{e}^{-\mathrm{i} tu}\,\mathrm{e}^{-\sigma^2t^2/2}\,\mathrm{d} t=\frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma^2}}\,\mathrm{e}^{-u^2/(2\sigma^2)}

を得る。これを各座標で掛け合わせると

ϕσ(u)=1(2π)d∫Rde−i t⊤u e−σ2∣t∣2/2 dt(9.19)\phi_\sigma(\bm u)=\frac{1}{(2\pi)^d}\int_{\mathbb{R}^d}\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\,\bm t^\top\bm u}\,\mathrm{e}^{-\sigma^2\left\vert \bm t\right\vert ^2/2}\,\mathrm{d}\bm t\tag{9.19}

である。σZ\sigma\bm Z は密度 ϕσ\phi_\sigma をもち、もとのベクトルと独立である。よって第7章 §7.3 の畳み込みにより、和は次の密度をもつ。

fσ(x)=E[ϕσ(x−X)]f_\sigma(\bm x)=E[\phi_\sigma(\bm x-\bm X)]

(9.19) を u=x−X\bm u=\bm x-\bm X で代入すると

fσ(x)=E[1(2π)d∫Rde−i t⊤(x−X) e−σ2∣t∣2/2 dt]f_\sigma(\bm x)=E\Bigl[\frac{1}{(2\pi)^d}\int_{\mathbb{R}^d}\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\,\bm t^\top(\bm x-\bm X)}\,\mathrm{e}^{-\sigma^2\left\vert \bm t\right\vert ^2/2}\,\mathrm{d}\bm t\Bigr]

となる。被積分関数の絶対値は e−σ2∣t∣2/2\mathrm{e}^{-\sigma^2\left\vert \bm t\right\vert ^2/2} で、これは Rd×Ω\mathbb{R}^d\times\Omega の上で可積分である。Fubini の定理により期待値と積分を交換すると E[eit⊤X]=φX(t)E[\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm t^\top\bm X}]=\varphi_{\bm X}(\bm t) が現れ、(9.18) を得る。

補題 9.9(有界連続関数の期待値は分布を決める)

2つの dd 次元確率ベクトル X,Y\bm X,\bm Y が、すべての有界連続関数について次を満たすとする。

E[g(X)]=E[g(Y)]E[g(\bm X)]=E[g(\bm Y)]

このとき X=dY\bm X\overset{d}{=}\bm Y である。

証明

点 x∈Rd\bm x\in\mathbb{R}^d を固定する。1変数の連続関数

hn(s)=min⁡(1,max⁡(0,1−ns))h_n(s)=\min\bigl(1,\max(0,1-ns)\bigr)

を使う。これは s≤0s\le0 で 1、s≥1/ns\ge1/n で 0 をとり、その間は1次関数である。これを使って gn(y)=∏k=1dhn(yk−xk)g_n(\bm y)=\prod_{k=1}^dh_n(y_k-x_k) と置く。

  • gng_n は有界連続である。
  • n→∞n\to\infty のとき、gng_n は各点で減少しながら次の指示関数に収束する。

1{y≤x}\mathbf 1\{\bm y\le\bm x\}ここで y≤x\bm y\le\bm x は、すべての成分で yk≤xky_k\le x_k という意味である。

優収束定理(優関数は定数 1)から

P(X≤x)=lim⁡E[gn(X)]=lim⁡E[gn(Y)]=P(Y≤x)P(\bm X\le\bm x)=\lim E[g_n(\bm X)]=\lim E[g_n(\bm Y)]=P(\bm Y\le\bm x)

である。同時分布関数が一致するので、同時分布も一致する。区間の族 {(−∞,x]}\{(-\infty,\bm x]\} は B(Rd)\mathcal B(\mathbb{R}^d) を生成する π系なので、第4章 §4.3 と第2章 §2.3 の一意性が使えるからである。

定理 9.10(多変量の一意性定理)

2つの dd 次元確率ベクトル X,Y\bm X,\bm Y が、すべての点で次を満たすとする。

φX(t)=φY(t)\varphi_{\bm X}(\bm t)=\varphi_{\bm Y}(\bm t)

このとき X=dY\bm X\overset{d}{=}\bm Y である。

証明

Z∼Nd(0,I)\bm Z\sim\mathrm N_d(\bm 0,I) を、2つの確率ベクトルのどちらとも独立にとる。2つのベクトルは別の確率空間にあってもよく、それぞれの空間で Z\bm Z をとればよい。

各 σ>0\sigma>0 で、雑音を足した2つの確率ベクトルを比べる。

X+σZ,Y+σZ\bm X+\sigma\bm Z,\qquad\bm Y+\sigma\bm Z補題 9.8 から、この2つは同じ密度をもち、同分布である。よって有界連続な gg について

E[g(X+σZ)]=E[g(Y+σZ)]E[g(\bm X+\sigma\bm Z)]=E[g(\bm Y+\sigma\bm Z)]

である。ここで σ→0\sigma\to0 とする。

  • 各標本点で g(X+σZ)→g(X)g(\bm X+\sigma\bm Z)\to g(\bm X) である(gg の連続性)。
  • ∣g∣\left\vert g\right\vert は定数で抑えられる。

優収束定理から、左辺は E[g(X)]E[g(\bm X)] に、右辺は E[g(Y)]E[g(\bm Y)] に収束する。補題 9.9 から X=dY\bm X\overset{d}{=}\bm Y である。

d=1d=1 の場合、この証明は定理 9.5 の別証明になっている。2つの証明は経由するものが違う。

  • 1次元の証明は、反転公式という具体的な公式を経由する。
  • この証明は、「分布に小さな正規分布の雑音を足すと、その密度は特性関数の積分で書ける」ことを経由する。

多変量の一意性からすぐに分かることを3つ挙げる。

  1. 分布は1次元の射影で決まる。確率ベクトル X\bm X の分布は、すべての1次元の射影 t⊤X\bm t^\top\bm X の分布で決まる。実際

φX(t)=E[ei⋅1⋅t⊤X]=φt⊤X(1)\varphi_{\bm X}(\bm t)=E[\mathrm{e}^{\mathrm{i}\cdot1\cdot\bm t^\top\bm X}]=\varphi_{\bm t^\top\bm X}(1)

である。よってすべての方向で t⊤X=dt⊤Y\bm t^\top\bm X\overset{d}{=}\bm t^\top\bm Y なら、φX=φY\varphi_{\bm X}=\varphi_{\bm Y} となる。この事実を分布収束の形にしたものが、第13章 §13.3 の Cramér–Wold の方法である。2. 多変量正規分布は平均と共分散行列で決まる。第6章 §6.2 の多変量正規分布 X=μ+AZ\bm X=\bm\mu+A\bm Z を考える。射影は

t⊤X=t⊤μ+(A⊤t)⊤Z\bm t^\top\bm X=\bm t^\top\bm\mu+(A^\top\bm t)^\top\bm Z

である。第2項は独立な正規分布の1次結合なので、N(0,∣A⊤t∣2)\mathrm N(0,\left\vert A^\top\bm t\right\vert ^2) に従う(第6章 §6.3)。∣A⊤t∣2=t⊤AA⊤t\left\vert A^\top\bm t\right\vert ^2=\bm t^\top AA^\top\bm t なので、Σ=AA⊤\Sigma=AA^\top と書くと

φX(t)=φt⊤X(1)=exp⁡(i t⊤μ−12t⊤Σt)(9.20)\varphi_{\bm X}(\bm t)=\varphi_{\bm t^\top\bm X}(1)=\exp\Bigl(\mathrm{i}\,\bm t^\top\bm\mu-\frac12\bm t^\top\Sigma\bm t\Bigr)\tag{9.20}

である。右辺は AA によらず、Σ\Sigma だけで決まる。定理 9.10 から分布も AA によらない。3. 独立性を同時特性関数で判定できる。次の定理である。

定理 9.11(独立性の判定)

X=(X1,…,Xd)⊤\bm X=(X_1,\dots,X_d)^\top の成分が独立であるための必要十分条件は、すべての t∈Rd\bm t\in\mathbb{R}^d で

φX(t1,…,td)=∏k=1dφXk(tk)(9.21)\varphi_{\bm X}(t_1,\dots,t_d)=\prod_{k=1}^{d}\varphi_{X_k}(t_k)\tag{9.21}

が成り立つことである。

証明
  • 必要性。eit⊤X=∏keitkXk\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm t^\top\bm X}=\prod_k\mathrm{e}^{\mathrm{i} t_kX_k} である。独立な確率変数の有界な関数の積の期待値は、期待値の積になる。これには第8章 §8.3 の複素数値の期待値の補題を、dd 個に繰り返し使う。
  • 十分性。Y1,…,YdY_1,\dots,Y_d を、独立で Yk=dXkY_k\overset{d}{=}X_k となるようにとる(第4章 §4.3 の積測度)。必要性から

φY(t)=∏kφYk(tk)=∏kφXk(tk)\varphi_{\bm Y}(\bm t)=\prod_k\varphi_{Y_k}(t_k)=\prod_k\varphi_{X_k}(t_k)

で、仮定からこれは φX(t)\varphi_{\bm X}(\bm t) に等しい。定理 9.10 から X=dY\bm X\overset{d}{=}\bm Y である。よって X\bm X の同時分布は周辺分布の積測度であり、第4章 §4.3 から成分は独立である。

例題 9.4 無相関と独立 ★★★

オリジナル

  1. 次の2変量正規分布を考える。

(X,Y)⊤∼N2(0,Σ),Σ=(1ρρ1)(∣ρ∣≤1)(X,Y)^\top\sim\mathrm N_2(\bm 0,\Sigma),\qquad\Sigma=\begin{pmatrix}1&\rho\\\rho&1\end{pmatrix}\quad(\left\vert \rho\right\vert \le1)

ρ=0\rho=0 なら2つの成分が独立であることを、定理 9.11 で示せ。2. X∼N(0,1)X\sim\mathrm N(0,1) をとる。これと独立で ±1\pm1 を等確率でとる ε\varepsilon をとる。Y=εXY=\varepsilon X と置く。

  • Y∼N(0,1)Y\sim\mathrm N(0,1) で、Cov(X,Y)=0\mathrm{Cov}(X,Y)=0 であることを示せ。
  • (X,Y)(X,Y) の同時特性関数を計算して、2つが独立でないことを示せ。
解答
  1. (9.20) から

φ(X,Y)(s,t)=exp⁡(−12(s2+2ρst+t2))\varphi_{(X,Y)}(s,t)=\exp\bigl(-\tfrac12(s^2+2\rho st+t^2)\bigr)

である。ρ\rho で場合分けする。

  • ρ=0\rho=0 なら e−s2/2e−t2/2=φX(s)φY(t)\mathrm{e}^{-s^2/2}\mathrm{e}^{-t^2/2}=\varphi_X(s)\varphi_Y(t) と分解する。定理 9.11 から2つは独立である。
  • ρ≠0\rho\neq0 なら、e−ρst≠1\mathrm{e}^{-\rho st}\neq1 となる点がある。よって独立でない。
  1. ε\varepsilon の値で場合分けし、−X=dX-X\overset{d}{=}X を使うと

P(Y≤y)=12P(X≤y)+12P(−X≤y)=P(X≤y)P(Y\le y)=\tfrac12P(X\le y)+\tfrac12P(-X\le y)=P(X\le y)

となる。よって Y∼N(0,1)Y\sim\mathrm N(0,1) である。また E[XY]=E[ε]E[X2]=0E[XY]=E[\varepsilon]E[X^2]=0 だから、共分散は 0 である。同時特性関数は、ε\varepsilon の値で場合分けして

φ(X,Y)(s,t)=12E[ei(s+t)X]+12E[ei(s−t)X]=12(e−(s+t)2/2+e−(s−t)2/2)=e−(s2+t2)/2cosh⁡(st)\begin{aligned} \varphi_{(X,Y)}(s,t)&=\frac12E[\mathrm{e}^{\mathrm{i}(s+t)X}]+\frac12E[\mathrm{e}^{\mathrm{i}(s-t)X}]\\ &=\frac12\Bigl(\mathrm{e}^{-(s+t)^2/2}+\mathrm{e}^{-(s-t)^2/2}\Bigr)=\mathrm{e}^{-(s^2+t^2)/2}\cosh(st) \end{aligned}

となる。これを φX(s)φY(t)=e−(s2+t2)/2\varphi_X(s)\varphi_Y(t)=\mathrm{e}^{-(s^2+t^2)/2} と比べる。st≠0st\neq0 では cosh⁡(st)>1\cosh(st)>1 なので、一致しない。定理 9.11 から2つは独立でない(実際 ∣X∣=∣Y∣\left\vert X\right\vert =\left\vert Y\right\vert である)。

(2) の (X,Y)(X,Y) は、成分がどちらも正規分布で無相関だが、同時分布は2変量正規分布ではない。(1) の「無相関なら独立」は、同時分布が多変量正規であるときに限る。

確認テスト

オリジナル

  1. 9.2-1 特性関数が φX(t)=e2it\varphi_X(t)=\mathrm{e}^{2\mathrm{i} t} である確率変数 XX は何か。理由も書け。
  2. 9.2-2 φX(t)=13(1+2cos⁡t)\varphi_X(t)=\frac13(1+2\cos t) である XX の分布を求めよ。また XX と独立で同分布の YY をとる。和の特性関数を展開して、X+YX+Y の分布を求めよ。
  3. 9.2-3 E1,E2E_1,E_2 が独立で Ex(1)\mathrm{Ex}(1) に従うとする。差 E1−E2E_1-E_2 の特性関数を求めよ。また、差が Laplace 分布(密度 12e−∣x∣\frac12\mathrm{e}^{-\left\vert x\right\vert })に従うことを示せ。
  4. 9.2-4 (X,Y)(X,Y) の同時特性関数が次であるとする。

exp⁡(−12(s2+2ρst+t2))(∣ρ∣<1)\exp\bigl(-\tfrac12(s^2+2\rho st+t^2)\bigr)\qquad(\left\vert \rho\right\vert <1)

X+YX+Y と X−YX-Y の分布を求め、この2つが独立であることを示せ。5. 9.2-5 XX と YY が独立で同分布とする。差 X−YX-Y の特性関数は ∣φX(t)∣2\left\vert \varphi_X(t)\right\vert ^2 であることを示せ。また、差の分布は原点について対称であることを示せ。

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