確率論入門 第9章 §9.3 ★★★ 独立和の特性関数は積で、一意性定理と組み合わせると、和の分布を積の形から読み取れる
積の公式とその逆
第8章 §8.3 では2つの独立な確率変数の和について (9.2) を示した。n 個でも同じである。
命題 9.12(独立和の特性関数)
X1,…,Xn が独立なら、Sn=X1+⋯+Xn について
φSn(t)=k=1∏nφXk(t)(9.22)
である。Rd 値の独立な確率ベクトルの和についても、同時特性関数について同じ式が成り立つ。
証明
定理 9.11 の必要性の式 (9.21) で、t1=⋯=tn=t と置く。すると左辺は
E[eit(X1+⋯+Xn)]=φSn(t)
になる。ベクトルの場合は、eit⊤(X1+⋯+Xn)=∏keit⊤Xk の期待値を同じように積に分ければよい。
逆は成り立たない。φX+Y=φXφY であっても、2つが独立とは限らない。たとえば X∼Cauchy(0,1) とし、Y=X とする。例題 9.1 から
φX+Y(t)=φ2X(t)=e−2∣t∣=e−∣t∣e−∣t∣=φX(t)φY(t)
だが、X と Y は独立でない。独立性を判定するには、和の特性関数ではなく、定理 9.11 の同時特性関数を見る必要がある。
(9.22) と一意性定理を組み合わせると、和の分布を求める手順は次の2段になる。
- 特性関数を掛ける。
- その積がどの分布の特性関数かを見分ける。
第7章 §7.3 の畳み込みの積分を実行する必要がない。
再生性の証明
第8章 §8.2 の表の特性関数を使う。
定理 9.13(再生性)
X と Y は独立とする。
- X∼Bin(m,p) かつ Y∼Bin(n,p) なら、
X+Y∼Bin(m+n,p)
2. X∼Po(λ) かつ Y∼Po(μ) なら、
X+Y∼Po(λ+μ)
3. X∼N(μ1,σ12) かつ Y∼N(μ2,σ22) なら、
X+Y∼N(μ1+μ2,σ12+σ22)
4. X∼Ga(α,λ) かつ Y∼Ga(β,λ) なら、
X+Y∼Ga(α+β,λ)
5. X∼Cauchy(m1,γ1) かつ Y∼Cauchy(m2,γ2) なら、
X+Y∼Cauchy(m1+m2,γ1+γ2)
証明
どれも (9.2) で特性関数を掛け、結果が右辺の分布の特性関数に一致することを確かめて、定理 9.5 を使う。
- (1−p+peit)m(1−p+peit)n=(1−p+peit)m+n。
- exp(λ(eit−1))exp(μ(eit−1))=exp((λ+μ)(eit−1))。
- exp(iμ1t−21σ12t2)exp(iμ2t−21σ22t2)=exp(i(μ1+μ2)t−21(σ12+σ22)t2)。
- Ga(α,λ) の特性関数は
(λ−itλ)α=exp(−αlog(1−it/λ))
である。対数は主値をとる。1−it/λ の実部は 1 で正なので、主値は連続に定まる。指数の肩が α について1次なので、積は exp(−(α+β)log(1−it/λ)) となる。5. 例題 9.1 (3) から、exp(im1t−γ1∣t∣)exp(im2t−γ2∣t∣)=exp(i(m1+m2)t−(γ1+γ2)∣t∣)。
(4) で λ が等しいことは必要である。独立な2つの指数分布の和 Ex(1)+Ex(2) の特性関数は
1−it1⋅2−it2
である。これをガンマ分布の特性関数の形に書くことはできない。ガンマ分布の特性関数の特異点は1つだが、この関数には特異点が −i と −2i の2つあるからである。一様分布にも再生性はない(確認テスト 9.3-4)。
再生性の逆向きの使い方もある。次の3つが成り立つとする。
- X と Y が独立である。
- Y と X+Y の分布が分かっている。
- φY が 0 にならない。
このとき φX=φX+Y/φY から X の分布が決まる。この操作は密度の言葉では畳み込みの逆(逆畳み込み)にあたるが、特性関数の言葉では割り算で済む。
例題 9.5 カイ二乗分布の再生性 ★★
オリジナルZ1,…,Zn が独立で N(0,1) に従うとする。第6章 §6.3 の事実 Zk2∼Ga(21,21) を使う。
- Qn=Z12+⋯+Zn2 の特性関数を求め、Qn∼Ga(2n,21)=χn2 を示せ。
- Qn の平均と分散を特性関数から求めよ。
- P(Q2≤2) を求めよ。
解答
- Ga(21,21) の特性関数は (1/2−it1/2)1/2=(1−2it)−1/2 である。(9.22) から
φQn(t)=((1−2it)−1/2)n=(1−2it)−n/2
で、これは Ga(2n,21) の特性関数である。定理 9.5 から Qn∼Ga(2n,21)=χn2 である。2. φ(t)=(1−2it)−n/2 を2回微分すると
φ′(t)φ′′(t)=in(1−2it)−n/2−1,=in⋅(−2n−1)(−2i)(1−2it)−n/2−2=−n(n+2)(1−2it)−n/2−2
である。t=0 を入れてモーメントを読む。
E[Qn]E[Qn2]V[Qn]=φ′(0)/i=n,=−φ′′(0)=n(n+2),=n(n+2)−n2=2n
3. n=2 では Ga(1,21)=Ex(21) なので、
P(Q2≤2)=1−e−2/2=1−e−1≈0.6321
である。
例題 9.6 Cauchy 分布の標本平均 ★★★
オリジナルX1,X2,… が独立で Cauchy(0,1) に従うとする。標本平均を Xˉn=n1(X1+⋯+Xn) と置く。
- Xˉn∼Cauchy(0,1) を示せ。
- P(Xˉn>1) を求め、n によらないことを確かめよ。
- 独立な N(0,1) の標本平均と比べ、大数の法則との関係を述べよ。
解答
- (9.22) から φX1+⋯+Xn(t)=(e−∣t∣)n=e−n∣t∣ である。(9.1) の最後の式で (a,b)=(n1,0) として
φXˉn(t)=φX1+⋯+Xn(nt)=e−n∣t/n∣=e−∣t∣
となり、定理 9.5 から Xˉn∼Cauchy(0,1) である。2. 分布関数 F(x)=21+π1arctanx から
P(Xˉn>1)=2(1−F(1))=2(21−41)=21
である。n を増やしても変わらない。3. 独立な N(0,1) の標本平均は、定理 9.13 (3) と (9.1) から N(0,n1) に従う。よって
P(Xˉn>1)=2(1−Φ(n))→0
である。Cauchy 分布では、標本平均のばらつきが n によって少しも小さくならない。第12章の大数の法則は期待値の存在を仮定するが、Cauchy 分布は期待値をもたない。その仮定を外せないことが、この例から分かる。

図 9.2 標本平均 Xˉn の密度。灰色の3本は Xk∼N(0,1) の場合(実線 n=1、破線 n=4、点線 n=16)で、N(0,n1) に従って 0 のまわりに集まる。太線は Xk∼Cauchy(0,1) の場合で、どの n でも同じ Cauchy(0,1) の密度になる。
確認テスト
オリジナル
- 9.3-1 X1,…,Xn が独立で、それぞれ Po(λk) に従うとする。和の分布を特性関数で求めよ。
- 9.3-2 X∼N(1,4) と Y∼N(−2,5) が独立とする。2X−Y の分布を特性関数で求めよ。また P(2X−Y>0) を Φ で表して数値を求めよ。
- 9.3-3 X1,…,Xn が独立で Cauchy(0,1) に従うとする。少なくとも1つは 0 でない実数 a1,…,an について、次を示せ。
k∑akXk∼Cauchy(0,k∑∣ak∣)
また P(Xˉ100>10) を求めよ。4. 9.3-4 X,Y が独立で U(−1,1) に従うとする。和はどんな区間の上の一様分布にも従わないことを、特性関数の符号を比べて示せ。5. 9.3-5 2つの確率変数が独立で、Y∼Po(1) かつ X+Y∼Po(3) とする。このとき X∼Po(2) であることを示せ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com