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キュムラントと独立成分分析

2026年10月15日19分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第9章 特性関数の一意性と反転公式
目次
  1. 同時キュムラント
  2. 独立成分分析
  3. 第1段:白色化(2次の情報)
  4. 第2段:4次のキュムラントの最大化
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第9章 §9.4 ★★ 独立なら混合キュムラントはすべて 0 になる。4次のキュムラントで、無相関なだけの成分と独立な成分を見分ける

同時キュムラント

第8章 §8.4 では、1つの確率変数 XX のキュムラント κn(X)\kappa_n(X) を、次の関数の 0 での微分係数として定めた。

KX(t)=log⁡MX(t)K_X(t)=\log M_X(t)

そして、キュムラントが独立和で足し算になることを示した。これを複数の確率変数へ広げる。この節では簡単のため、扱う確率変数はすべて 0 の近くで積率母関数が有限であるとする(第8章 §8.4 の注意と同じく、4次までの量については4次のモーメントが有限であれば足りる)。

定義 9.14(同時キュムラント)

X=(X1,…,Xd)⊤\bm X=(X_1,\dots,X_d)^\top について、原点の近くで

KX(t)≔log⁡E[et⊤X]K_{\bm X}(\bm t)\coloneqq\log E\bigl[\mathrm{e}^{\bm t^\top\bm X}\bigr]

と置く。添字 j1,…,jn∈{1,…,d}j_1,\dots,j_n\in\{1,\dots,d\}(重複してよい)について

κ(Xj1,…,Xjn)≔∂nKX∂tj1⋯∂tjn(0)(9.23)\kappa(X_{j_1},\dots,X_{j_n})\coloneqq\frac{\partial^nK_{\bm X}}{\partial t_{j_1}\cdots\partial t_{j_n}}(\bm 0)\tag{9.23}

を同時キュムラントと呼ぶ。2つ以上の異なる確率変数を含むものを混合キュムラントと呼ぶ。

同じ確率変数を nn 個並べた同時キュムラントを考える。X=XjX=X_j とする。κ(X,…,X)\kappa(X,\dots,X) は、キュムラント母関数を tjt_j だけの関数とみたときの高階の微分係数である。よってこれは第8章の κn(X)\kappa_n(X) に一致する。

2つの引数の κ(X,Y)\kappa(X,Y) は、共分散 Cov(X,Y)\mathrm{Cov}(X,Y) に一致する。下の (9.24) の導出と同じ展開で、2次の項から分かる。

命題 9.15(同時キュムラントの性質)

  1. (対称性)κ(Xj1,…,Xjn)\kappa(X_{j_1},\dots,X_{j_n}) は引数の並べ替えで変わらない。
  2. (多重線形性)Y=∑kckXkY=\sum_kc_kX_k なら、次が成り立つ。他の引数についても同じである。

κ(Y,Xj2,…,Xjn)=∑kck κ(Xk,Xj2,…,Xjn)\kappa(Y,X_{j_2},\dots,X_{j_n})=\sum_kc_k\,\kappa(X_k,X_{j_2},\dots,X_{j_n}) 3. (独立なら混合キュムラントは 0)添字の集合が2組 J1,J2J_1,J_2 に分かれ、それぞれに属する確率変数の組どうしが独立であるとする。このとき、両方の組から少なくとも1つずつ引数を含む同時キュムラントは、すべて 0 である。4. (平均が 0 の場合の4次)すべての jj で E[Xj]=0E[X_j]=0 なら

κ(X1,X2,X3,X4)=E[X1X2X3X4]−E[X1X2]E[X3X4]−E[X1X3]E[X2X4]−E[X1X4]E[X2X3].(9.24)\begin{aligned} \kappa(X_1,X_2,X_3,X_4)&=E[X_1X_2X_3X_4]-E[X_1X_2]E[X_3X_4]\\ &\qquad-E[X_1X_3]E[X_2X_4]-E[X_1X_4]E[X_2X_3]. \end{aligned}\tag{9.24}

証明

(1) 偏微分の順序を入れ替えてよいことによる。KXK_{\bm X} は原点の近くで何回でも微分できる(第8章 §8.2 の議論を各変数に使う)。

(2) 正方行列 BB をとり、Y=BX\bm Y=B\bm X とすると、

KY(u)=log⁡E[eu⊤BX]=KX(B⊤u)K_{\bm Y}(\bm u)=\log E[\mathrm{e}^{\bm u^\top B\bm X}]=K_{\bm X}(B^\top\bm u)

である。連鎖律から ∂∂ua=∑jBaj∂∂tj\frac{\partial}{\partial u_a}=\sum_jB_{aj}\frac{\partial}{\partial t_j} である。よって Y\bm Y の同時キュムラントは、X\bm X の同時キュムラントの各引数について線形な組み合わせになる。

BB の第1行を (c1,…,cd)(c_1,\dots,c_d)、他の行を単位行列の行にとればよい。同じ確率変数を何度も並べたベクトルを考えれば、重複のある添字も扱える。

(3) 独立性から(第5章 §5.4)

E[et⊤X]=E[e∑J1tjXj] E[e∑J2tjXj]E[\mathrm{e}^{\bm t^\top\bm X}]=E[\mathrm{e}^{\sum_{J_1}t_jX_j}]\,E[\mathrm{e}^{\sum_{J_2}t_jX_j}]

である。対数をとると、KX(t)=K1(tJ1)+K2(tJ2)K_{\bm X}(\bm t)=K_1(\bm t_{J_1})+K_2(\bm t_{J_2}) と、片方の組の変数だけの関数どうしの和になる。

  • 前者を J2J_2 の変数で微分すると 0 である。
  • 後者を J1J_1 の変数で微分すると 0 である。

よって両方の変数を含む偏微分は 0 である。

(4) mij=E[XiXj]m_{ij}=E[X_iX_j]、mijkl=E[XiXjXkXl]m_{ijkl}=E[X_iX_jX_kX_l] と書く。平均が 0 なので、原点の近くで

E[et⊤X]=1+u,u=12∑i,jmijtitj+16∑i,j,kmijktitjtk+124∑i,j,k,lmijkltitjtktl+⋯E[\mathrm{e}^{\bm t^\top\bm X}]=1+u,\qquad u=\frac12\sum_{i,j}m_{ij}t_it_j+\frac16\sum_{i,j,k}m_{ijk}t_it_jt_k+\frac1{24}\sum_{i,j,k,l}m_{ijkl}t_it_jt_kt_l+\cdots

である。対数の展開は

log⁡(1+u)=u−u22+u33−⋯\log(1+u)=u-\frac{u^2}{2}+\frac{u^3}{3}-\cdots

である。uu は2次から始まるので、4次の項は次の2つだけから来る。

(u の4次の項),−12(12∑mijtitj)2({u}\text{ の4次の項}),\qquad -\frac12\Bigl(\frac12\sum m_{ij}t_it_j\Bigr)^2

(9.23) の4階の偏微分 ∂t1∂t2∂t3∂t4\partial_{t_1}\partial_{t_2}\partial_{t_3}\partial_{t_4} は、展開での単項式 t1t2t3t4t_1t_2t_3t_4 の係数に等しい(各変数について1次なので階乗が出ない)。2つの項から来る係数を順に求める。

  1. 第1の項。124∑mijkltitjtktl\frac1{24}\sum m_{ijkl}t_it_jt_kt_l の中で、添字が (1,2,3,4)(1,2,3,4) の並べ替えになる項は 24 個ある。よって係数は m1234m_{1234} である。
  2. 第2の項。∑i,jmijtitj=2∑i<jmijtitj\sum_{i,j}m_{ij}t_it_j=2\sum_{i<j}m_{ij}t_it_j なので、第2の項は

−12⋅14⋅4(∑i<jmijtitj)2-\frac12\cdot\frac14\cdot4\Bigl(\sum_{i<j}m_{ij}t_it_j\Bigr)^2

となる。その中の t1t2t3t4t_1t_2t_3t_4 の係数は −12⋅2(m12m34+m13m24+m14m23)-\frac12\cdot2(m_{12}m_{34}+m_{13}m_{24}+m_{14}m_{23}) である。

合わせて (9.24) を得る。

平均 0 の X,YX,Y について、(9.24) をベクトル (X,X,Y,Y)(X,X,Y,Y) に使うと

κ(X,X,Y,Y)=E[X2Y2]−E[X2]E[Y2]−2E[XY]2(9.25)\kappa(X,X,Y,Y)=E[X^2Y^2]-E[X^2]E[Y^2]-2E[XY]^2\tag{9.25}

となる。さらに Y=XY=X と置けば

κ4(X)=E[X4]−3E[X2]2\kappa_4(X)=E[X^4]-3E[X^2]^2

で、第8章 §8.4 の κ4=μ4−3μ22\kappa_4=\mu_4-3\mu_2^2 に一致する。

性質 (3) は、混合キュムラントが「独立からのずれ」を測る量であることを示している。

  • 2次の混合キュムラントは共分散なので、無相関は2次の混合キュムラントが 0 であることにあたる。
  • 独立であるには、すべての次数の混合キュムラントが 0 でなければならない。
  • 逆に、積率母関数が有限な場合は、すべての混合キュムラントが 0 なら独立である。

最後の主張の証明の筋を書く。混合キュムラントがすべて 0 なら、K(X,Y)(s,t)K_{(X,Y)}(s,t) の原点のまわりの冪級数に混合項が無い。よって原点の近くで

K(X,Y)(s,t)=KX(s)+KY(t),つまりE[esX+tY]=MX(s)MY(t)K_{(X,Y)}(s,t)=K_X(s)+K_Y(t),\qquad\text{つまり}\qquad E[\mathrm{e}^{sX+tY}]=M_X(s)M_Y(t)

となる。定理 9.7 の証明を2変数に移すと、同時積率母関数が原点の近くで一致する2つの確率ベクトルは同分布であることが示せる。右辺は独立なコピーの同時積率母関数なので、(X,Y)(X,Y) は独立なコピーと同分布である。つまり2つは独立である。

独立成分分析

2人が同時に話している部屋に2本のマイクを置くと、それぞれのマイクには2人の声が異なる割合で混ざって記録される。混ざった記録から2人の声を分離する問題を、確率論の言葉で書く。次の2つがあるとする。

  • 独立な確率変数 S1,…,SdS_1,\dots,S_d(源信号)を並べたベクトル S\bm S。
  • 正則な d×dd\times d 行列 AA(混合行列)。

観測できるのは

X=AS(9.26)\bm X=A\bm S\tag{9.26}

だけであるとする。混合行列も源信号も知らずに、観測の分布だけから S\bm S を復元したい。これを独立成分分析(independent component analysis、ICA)と呼ぶ。

源信号の大きさと符号は AA の列に吸収できる。よって E[Sk]=0E[S_k]=0、V[Sk]=1V[S_k]=1 と仮定してよい。このとき S\bm S の共分散行列は単位行列 II である。

第1段:白色化(2次の情報)

観測 X\bm X の共分散行列は

Σ=E[XX⊤]=AE[SS⊤]A⊤=AA⊤\Sigma=E[\bm X\bm X^\top]=AE[\bm S\bm S^\top]A^\top=AA^\top

で、正定値である。VΣV⊤=IV\Sigma V^\top=I となる行列 VV を選ぶ。たとえば Σ=LL⊤\Sigma=LL^\top と Cholesky 分解して、V=L−1V=L^{-1} とすればよい。Z=VX\bm Z=V\bm X と置くと、その共分散行列は VΣV⊤=IV\Sigma V^\top=I である(白色化)。

Z=(VA)S\bm Z=(VA)\bm S で、Q≔VAQ\coloneqq VA は

QQ⊤=VAA⊤V⊤=VΣV⊤=IQQ^\top=VAA^\top V^\top=V\Sigma V^\top=I

を満たすので直交行列である。こうして問題は、直交行列 QQ による混合 Z=QS\bm Z=Q\bm S を解くことに帰着する。

ここで2次の情報は使い切っている。直交行列 RR をどれだけ掛けても、共分散行列は RR⊤=IRR^\top=I のままである。共分散だけを見ても、回転は決められない。

とくに源信号がすべて正規分布なら、S∼Nd(0,I)\bm S\sim\mathrm N_d(\bm 0,I) である。(9.20) から

φQS(t)=e−∣Q⊤t∣2/2=e−∣t∣2/2\varphi_{Q\bm S}(\bm t)=\mathrm{e}^{-\left\vert Q^\top\bm t\right\vert ^2/2}=\mathrm{e}^{-\left\vert \bm t\right\vert ^2/2}

となり、定理 9.10 から QS=dSQ\bm S\overset{d}{=}\bm S である。観測の分布が QQ によらないので、QQ を推定することは原理的にできない。

源信号が正規分布でないことが、分離のための条件になる。正規分布では3次以上のキュムラントがすべて 0 である(第8章 §8.4)。このことから、高次のキュムラントを使うことが自然に考えられる。

第2段:4次のキュムラントの最大化

単位ベクトル v\bm v について、射影 Y=v⊤ZY=\bm v^\top\bm Z の4次のキュムラントを考える。

定理 9.16(尖度による源信号の復元)

S=(S1,…,Sd)⊤\bm S=(S_1,\dots,S_d)^\top の成分は独立で、平均 0、分散 1 とする。各成分の4次のキュムラントとその最大値を

kj≔κ4(Sj),M≔max⁡j∣kj∣>0k_j\coloneqq\kappa_4(S_j),\qquad M\coloneqq\max_j\left\vert k_j\right\vert >0

と書く。QQ を直交行列とし、Z=QS\bm Z=Q\bm S とする。

  1. 単位ベクトル w\bm w について、次が成り立つ。

κ4(w⊤S)=∑j=1dwj4kj\kappa_4(\bm w^\top\bm S)=\sum_{j=1}^dw_j^4k_j 2. 単位ベクトル v\bm v について ∣κ4(v⊤Z)∣≤M\left\vert \kappa_4(\bm v^\top\bm Z)\right\vert \le M である。等号が成り立つのは、∣kj∣=M\left\vert k_j\right\vert =M となるある添字について v⊤Z=±Sj\bm v^\top\bm Z=\pm S_j となるとき、かつそのときに限る。

証明

(1) 第8章 §8.4 のキュムラントの加法性と斉次性を、独立な wjSjw_jS_j の和に使う。

κ4(∑jwjSj)=∑jκ4(wjSj)=∑jwj4κ4(Sj)\kappa_4\Bigl(\sum_jw_jS_j\Bigr)=\sum_j\kappa_4(w_jS_j)=\sum_jw_j^4\kappa_4(S_j)

(2) w=Q⊤v\bm w=Q^\top\bm v と置くと、v⊤Z=v⊤QS=w⊤S\bm v^\top\bm Z=\bm v^\top Q\bm S=\bm w^\top\bm S である。QQ が直交行列なので、w\bm w も単位ベクトルである。(1) から

∣κ4(v⊤Z)∣=∣∑jwj4kj∣≤∑jwj4∣kj∣≤M∑jwj4≤M(∑jwj2)2=M\left\vert \kappa_4(\bm v^\top\bm Z)\right\vert =\Bigl\lvert\sum_jw_j^4k_j\Bigr\rvert\le\sum_jw_j^4\left\vert k_j\right\vert \le M\sum_jw_j^4\le M\Bigl(\sum_jw_j^2\Bigr)^2=M

である。最後の不等号は次の恒等式による。

(∑jwj2)2=∑jwj4+∑i≠jwi2wj2\Bigl(\sum_jw_j^2\Bigr)^2=\sum_jw_j^4+\sum_{i\neq j}w_i^2w_j^2

等号が成り立つには、次の2つが必要である。

  • 最後の不等号で、i≠ji\neq j について wi2wj2=0w_i^2w_j^2=0 となること。つまり w\bm w のただ1つの成分だけが 0 でなく、w=±ej\bm w=\pm\bm e_j であること。
  • 2つ目の不等号で ∣kj∣=M\left\vert k_j\right\vert =M となること。

逆にそのとき w⊤S=±Sj\bm w^\top\bm S=\pm S_j で、∣κ4∣=∣kj∣=M\left\vert \kappa_4\right\vert =\left\vert k_j\right\vert =M となる。

この定理から、白色化した Z\bm Z について、∣κ4(v⊤Z)∣\left\vert \kappa_4(\bm v^\top\bm Z)\right\vert を最大にする単位ベクトルを探せばよい。そうすれば、源信号の1つが符号を除いて得られる。見つけた v\bm v に直交する部分空間に話を限って同じことを繰り返せば、4次のキュムラントが 0 でない源信号はすべて取り出せる。実際のデータでは κ4\kappa_4 を標本の4次モーメントから推定して、最大化を数値的に行う(FastICA などの算法がこの原理に基づく)。

4次のキュムラントが 0 でも、その源信号が正規分布とは限らない。確認テスト 9.4-2 の射影のように、4次のキュムラントだけが 0 になる分布はある。その場合は他の次数のキュムラントを使えばよい。本質的に分離できないのは、正規分布の源信号が2つ以上ある場合だけであることが知られている。

識別可能性(主張)

  • Darmois–Skitovich の定理:独立な S1,…,SdS_1,\dots,S_d をとる。その2つの1次結合 ∑ajSj\sum a_jS_j と ∑bjSj\sum b_jS_j が独立であるとする。このとき、ajbj≠0a_jb_j\neq0 となるすべての添字について、その源信号は正規分布に従う。
  • この定理から、(9.26) の源信号のうち正規分布に従うものが高々1つなら、S\bm S は成分の並べ替えと符号・尺度を除いて X\bm X の分布から一意に定まる(Comon の定理)。
  • 証明は特性関数の対数についての関数方程式を解くもので、ここでは扱わない。完全な証明は確率論・統計学の専門書に譲る。

例題 9.7 回転で混ぜた一様分布の分離 ★★

オリジナルS1,S2S_1,S_2 を独立で U(−3,3)\mathrm U(-\sqrt3,\sqrt3) に従うとし、

X1=S1+S22,X2=S1−S22X_1=\frac{S_1+S_2}{\sqrt2},\qquad X_2=\frac{S_1-S_2}{\sqrt2}

と置く。

  1. S1S_1 の平均が 0、分散が 1 であることを示せ。また κ4(S1)=−65\kappa_4(S_1)=-\frac65 を示せ。
  2. X1,X2X_1,X_2 は平均 0、分散 1 で無相関であることを示せ。
  3. κ(X1,X1,X2,X2)\kappa(X_1,X_1,X_2,X_2) を計算し、2つの観測が独立でないことを示せ。
  4. 射影 Yθ=cos⁡θ X1+sin⁡θ X2Y_\theta=\cos\theta\,X_1+\sin\theta\,X_2 を考える。κ4(Yθ)\kappa_4(Y_\theta) を θ\theta の関数として求めよ。また、その絶対値を最大にする θ∈[0,π)\theta\in[0,\pi) と、そのときの YθY_\theta を求めよ。
解答
  1. 密度は 123\frac1{2\sqrt3} で対称なので、平均は 0 である。2次と4次のモーメントは

E[S12]=123∫−33x2 dx=(3)23=1,E[S14]=(3)45=95\begin{aligned}E[S_1^2]&=\frac{1}{2\sqrt3}\int_{-\sqrt3}^{\sqrt3}x^2\,\mathrm{d} x=\frac{(\sqrt3)^2}{3}=1,\\ E[S_1^4]&=\frac{(\sqrt3)^4}{5}=\frac95\end{aligned}

である。よって κ4=E[S14]−3E[S12]2=95−3=−65\kappa_4=E[S_1^4]-3E[S_1^2]^2=\frac95-3=-\frac65 である。2. 平均が 0 なのは明らかである。独立性から E[S1S2]=0E[S_1S_2]=0 なので、

E[X12]=12(1+0+1)=1,E[X22]=1,E[X1X2]=12(E[S12]−E[S22])=0\begin{aligned}E[X_1^2]&=\tfrac12(1+0+1)=1,\qquad E[X_2^2]=1,\\ E[X_1X_2]&=\tfrac12(E[S_1^2]-E[S_2^2])=0\end{aligned}

である。3. 命題 9.15 (2) で、各引数を S1,S2S_1,S_2 の1次結合として展開する。(3) から、両方の源信号を含む項はすべて 0 で、片方だけの項が残る。4つの引数 X1,X1,X2,X2X_1,X_1,X_2,X_2 の係数は次のとおりである。

  • S1S_1 の係数:12,12,12,12\frac1{\sqrt2},\frac1{\sqrt2},\frac1{\sqrt2},\frac1{\sqrt2}
  • S2S_2 の係数:12,12,−12,−12\frac1{\sqrt2},\frac1{\sqrt2},-\frac1{\sqrt2},-\frac1{\sqrt2}

よって

κ(X1,X1,X2,X2)=14κ4(S1)+14κ4(S2)=14(−65−65)=−35\kappa(X_1,X_1,X_2,X_2)=\frac14\kappa_4(S_1)+\frac14\kappa_4(S_2)=\frac14\Bigl(-\frac65-\frac65\Bigr)=-\frac35

である。0 でないので、命題 9.15 (3) の対偶から2つの観測は独立でない。

(9.25) で直接確かめると、

E[X12X22]=14E[(S12−S22)2]=14(95−2+95)=25E[X_1^2X_2^2]=\tfrac14E[(S_1^2-S_2^2)^2]=\tfrac14\Bigl(\tfrac95-2+\tfrac95\Bigr)=\tfrac25

で、25−1⋅1−2⋅0=−35\frac25-1\cdot1-2\cdot0=-\frac35 と一致する。4. YθY_\theta の各源信号の係数は

S1: cos⁡θ+sin⁡θ2=cos⁡(θ−π4),S2: cos⁡θ−sin⁡θ2=−sin⁡(θ−π4)S_1:\ \frac{\cos\theta+\sin\theta}{\sqrt2}=\cos\Bigl(\theta-\frac\pi4\Bigr),\qquad S_2:\ \frac{\cos\theta-\sin\theta}{\sqrt2}=-\sin\Bigl(\theta-\frac\pi4\Bigr)

である。定理 9.16 (1) から、ψ=θ−π4\psi=\theta-\frac\pi4 と書いて

κ4(Yθ)=−65(cos⁡4ψ+sin⁡4ψ)=−65(1−12sin⁡22ψ)=−65(1−12cos⁡22θ)\kappa_4(Y_\theta)=-\frac65\bigl(\cos^4\psi+\sin^4\psi\bigr)=-\frac65\Bigl(1-\frac12\sin^22\psi\Bigr)=-\frac65\Bigl(1-\frac12\cos^22\theta\Bigr)

となる。ここで次の2つを使った。

cos⁡4ψ+sin⁡4ψ=(cos⁡2ψ+sin⁡2ψ)2−2cos⁡2ψsin⁡2ψ,sin⁡2ψ=−cos⁡2θ\cos^4\psi+\sin^4\psi=(\cos^2\psi+\sin^2\psi)^2-2\cos^2\psi\sin^2\psi,\qquad\sin2\psi=-\cos2\theta

絶対値 ∣κ4∣\left\vert \kappa_4\right\vert は、cos⁡2θ=0\cos2\theta=0 のとき最大値 6/5 をとる。その角度は θ=π4,3π4\theta=\frac\pi4,\frac{3\pi}4 である。そのときの射影は

Yπ/4=X1+X22=S1,Y3π/4=−X1+X22=−S2Y_{\pi/4}=\frac{X_1+X_2}{\sqrt2}=S_1,\qquad Y_{3\pi/4}=\frac{-X_1+X_2}{\sqrt2}=-S_2

で、源信号が符号を除いて復元される。θ=0\theta=0(観測そのもの)では ∣κ4∣=35\left\vert \kappa_4\right\vert =\frac35 で最小になる。

図

図 9.3 例題 9.7 の射影 Yθ=cos⁡θ X1+sin⁡θ X2Y_\theta=\cos\theta\,X_1+\sin\theta\,X_2 の4次のキュムラント。∣κ4∣\left\vert \kappa_4\right\vert が最大になる2つの方向(点)で、射影は源信号 S1S_1、−S2-S_2 に一致する。観測の方向 θ=0,π2\theta=0,\frac\pi2 では ∣κ4∣\left\vert \kappa_4\right\vert が最小になる。

確認テスト

オリジナル

  1. 9.4-1 平均 0 の X,YX,Y が独立なら、(9.25) の右辺が 0 になることを、期待値の計算だけで直接確かめよ。

  2. 9.4-2 S1∼U(−3,3)S_1\sim\mathrm U(-\sqrt3,\sqrt3) をとる。それと独立に、分散 1 の Laplace 分布(密度 12e−2∣x∣\frac{1}{\sqrt2}\mathrm{e}^{-\sqrt2\left\vert x\right\vert })に従う S2S_2 をとる。

    1. κ4(S2)=3\kappa_4(S_2)=3 を示せ。
    2. 射影 Yθ=cos⁡θ S1+sin⁡θ S2Y_\theta=\cos\theta\,S_1+\sin\theta\,S_2 について、κ4(Yθ)\kappa_4(Y_\theta) を求めよ。また、その絶対値が最大になる θ∈[0,π)\theta\in[0,\pi) を求めよ。
    3. κ4(Yθ)=0\kappa_4(Y_\theta)=0 となる θ∈(0,π2)\theta\in(0,\frac\pi2) を求めよ。また、そのとき YθY_\theta は正規分布に従わないことを示せ。
  3. 9.4-3 次の混合行列と観測を考える(S\bm S の共分散行列は II)。

A=(2101),X=ASA=\begin{pmatrix}2&1\\0&1\end{pmatrix},\qquad\bm X=A\bm S

Σ=AA⊤\Sigma=AA^\top を Cholesky 分解して、Σ=LL⊤\Sigma=LL^\top と書く(下三角行列の対角成分は正にとる)。L−1AL^{-1}A を計算して、直交行列であることを確かめよ。4. 9.4-4 S∼N2(0,I)\bm S\sim\mathrm N_2(\bm 0,I) とし、QQ を2次の直交行列とする。Z=QS\bm Z=Q\bm S と置く。4次の同時キュムラント κ(Zi,Zj,Zk,Zl)\kappa(Z_i,Z_j,Z_k,Z_l) がすべて 0 であることを示せ。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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