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Jensen・Cauchy–Schwarz・Hölder の不等式

2026年10月15日27分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第10章 確率の不等式
目次
  1. 凸関数
  2. Jensen の不等式
  3. のノルムと Lyapunov の不等式
  4. Hölder の不等式と Minkowski の不等式
  5. 2次モーメント法(Paley–Zygmund の不等式)
  6. 確認テスト
  7. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第10章 §10.2 ★★★ 凸関数と期待値の順序を入れ替える Jensen の不等式から、モーメントのノルムの大小関係と積の期待値の評価を導く

凸関数

区間 I⊂RI\subset\mathbb{R} の上の関数 ψ\psi を考える。この関数が凸であるとは、任意の x,y∈Ix,y\in I と、任意の λ∈[0,1]\lambda\in[0,1] について

ψ(λx+(1−λ)y)≤λψ(x)+(1−λ)ψ(y)(10.9)\psi\bigl(\lambda x+(1-\lambda)y\bigr)\le\lambda\psi(x)+(1-\lambda)\psi(y)\tag{10.9}

が成り立つことをいう。x≠yx\ne y かつ 0<λ<10<\lambda<1 でつねに不等号が真に成り立つとき、狭義凸であるという。幾何的には、グラフ上の2点を結ぶ弦がグラフの上にあることを意味する。

凸関数の例を挙げる。

  • 実数全体の上で凸:x2x^2 と etx\mathrm{e}^{tx}。
  • 実数全体の上で凸(p≥1p\ge1):∣x∣p\left\vert x\right\vert ^p。
  • 正の実数の上で凸:−log⁡x-\log x、1/x1/x。

2回微分可能な関数については、ψ′′≥0\psi''\ge0 なら凸、ψ′′>0\psi''>0 なら狭義凸であることが知られている(Taylor の定理から示すことができる)。−ψ-\psi が凸のとき、ψ\psi は凹であるという。

Jensen の不等式の証明には、凸関数のグラフの任意の点に「下から接する直線」が引けることを使う。そのために傾きの単調性を先に示す。

補題 10.6(傾きの単調性)

ψ\psi が区間の上で凸なら、x<y<zx<y<z を満たす区間内の3点について

ψ(y)−ψ(x)y−x≤ψ(z)−ψ(x)z−x≤ψ(z)−ψ(y)z−y.(10.10)\frac{\psi(y)-\psi(x)}{y-x}\le\frac{\psi(z)-\psi(x)}{z-x}\le\frac{\psi(z)-\psi(y)}{z-y}.\tag{10.10}

証明

λ=z−yz−x∈(0,1)\lambda=\frac{z-y}{z-x}\in(0,1) と置くと、

1−λ=y−xz−x,λx+(1−λ)z=(z−y)x+(y−x)zz−x=y1-\lambda=\frac{y-x}{z-x},\qquad\lambda x+(1-\lambda)z=\frac{(z-y)x+(y-x)z}{z-x}=y

となる。凸性 (10.9) から ψ(y)≤λψ(x)+(1−λ)ψ(z)\psi(y)\le\lambda\psi(x)+(1-\lambda)\psi(z) である。両辺から ψ(x)\psi(x) を引くと

ψ(y)−ψ(x)≤(1−λ)(ψ(z)−ψ(x))=y−xz−x(ψ(z)−ψ(x))\psi(y)-\psi(x)\le(1-\lambda)\bigl(\psi(z)-\psi(x)\bigr)=\frac{y-x}{z-x}\bigl(\psi(z)-\psi(x)\bigr)

となり、y−x>0y-x>0 で割れば (10.10) の左の不等号を得る。同じ不等式を ψ(z)\psi(z) から引くと

ψ(z)−ψ(y)≥λ(ψ(z)−ψ(x))=z−yz−x(ψ(z)−ψ(x))\psi(z)-\psi(y)\ge\lambda\bigl(\psi(z)-\psi(x)\bigr)=\frac{z-y}{z-x}\bigl(\psi(z)-\psi(x)\bigr)

となり、z−y>0z-y>0 で割れば右の不等号を得る。

補題 10.7(支持直線)

ψ\psi を開区間 II 上の凸関数とする。区間内の点 x0x_0 をとる。ある実数 cc が存在して、区間内のすべての xx について

ψ(x)≥ψ(x0)+c (x−x0)(10.11)\psi(x)\ge\psi(x_0)+c\,(x-x_0)\tag{10.11}

が成り立つ。ψ\psi が狭義凸なら、x≠x0x\ne x_0 で (10.11) の不等号は真に成り立つ。また、凸関数は開区間の上で連続である。

証明

x<x0<zx<x_0<z を満たす区間内の2点 x,zx,z をとる。区間は開いているので、x0x_0 の左右にこのような点がある。補題 10.6 をこの3点に使うと、左の傾きと右の傾きの間に

ψ(x0)−ψ(x)x0−x≤ψ(z)−ψ(x0)z−x0\frac{\psi(x_0)-\psi(x)}{x_0-x}\le\frac{\psi(z)-\psi(x_0)}{z-x_0}

が成り立つ。左辺を x<x0x<x_0 のすべてで考えた上限を cc と置く。右辺のどれか1つが上界になるので cc は有限で、すべての x<x0<zx<x_0<z について

ψ(x0)−ψ(x)x0−x≤c≤ψ(z)−ψ(x0)z−x0\frac{\psi(x_0)-\psi(x)}{x_0-x}\le c\le\frac{\psi(z)-\psi(x_0)}{z-x_0}

が成り立つ。この両側の不等式から、それぞれ次が得られる。

  • 左の不等式に x0−x>0x_0-x>0 を掛けて移項すると、ψ(x)≥ψ(x0)+c(x−x0)\psi(x)\ge\psi(x_0)+c(x-x_0) である。
  • 右の不等式に z−x0>0z-x_0>0 を掛けると、ψ(z)≥ψ(x0)+c(z−x0)\psi(z)\ge\psi(x_0)+c(z-x_0) である。

x=x0x=x_0 では (10.11) は等号である。

狭義凸の場合を示す。ある x1≠x0x_1\ne x_0 で (10.11) が等号になったとする。中点 m=x0+x12m=\frac{x_0+x_1}2 では、狭義凸性から

ψ(m)<ψ(x0)+ψ(x1)2=ψ(x0)+ψ(x0)+c(x1−x0)2=ψ(x0)+c(m−x0)\psi(m)<\frac{\psi(x_0)+\psi(x_1)}{2}=\frac{\psi(x_0)+\psi(x_0)+c(x_1-x_0)}{2}=\psi(x_0)+c(m-x_0)

となり、(10.11) の x=mx=m の場合に反する。

連続性を示す。[α,β]⊂I[\alpha,\beta]\subset I を閉区間とする。開区間なので、その中に閉区間の外側の点 α′<α\alpha'<\alpha と β′>β\beta'>\beta をとれる。α≤x<y≤β\alpha\le x<y\le\beta なら、補題 10.6 を繰り返し使って

ψ(α)−ψ(α′)α−α′≤ψ(y)−ψ(x)y−x≤ψ(β′)−ψ(β)β′−β\frac{\psi(\alpha)-\psi(\alpha')}{\alpha-\alpha'}\le\frac{\psi(y)-\psi(x)}{y-x}\le\frac{\psi(\beta')-\psi(\beta)}{\beta'-\beta}

となる。両端は x,yx,y によらない定数である。

その絶対値の大きい方を LL とすれば、∣ψ(y)−ψ(x)∣≤L∣y−x∣\left\vert \psi(y)-\psi(x)\right\vert \le L\left\vert y-x\right\vert である。したがって ψ\psi は [α,β][\alpha,\beta] 上で連続である。閉区間は任意だから、ψ\psi は開区間全体で連続である。

ψ\psi がその点で微分可能なら、(10.11) の傾きは ψ′(x0)\psi'(x_0) に一致し、支持直線は接線そのものになる。凸関数が連続であることから、ψ(X)\psi(X) は確率変数になる(第3章 §3.1 の、連続関数と確率変数の合成は確率変数であるという結果による)。

Jensen の不等式

定理 10.8(Jensen の不等式)

ψ\psi を開区間 II 上の凸関数とする。確率変数 XX は、ほとんど確実にこの区間に値をとり、E[∣X∣]<∞E[\left\vert X\right\vert ]<\infty を満たすとする。このとき次が成り立つ。

  • E[X]∈IE[X]\in I である。
  • E[ψ(X)]E[\psi(X)] は (−∞,∞](-\infty,\infty] の値として定まり、

ψ(E[X])≤E[ψ(X)](10.12)\psi\bigl(E[X]\bigr)\le E[\psi(X)]\tag{10.12}

が成り立つ。さらに ψ\psi が狭義凸で、E[ψ(X)]<∞E[\psi(X)]<\infty かつ (10.12) が等号になるとする。このとき X=E[X]X=E[X] a.s. である。

証明

まず m=E[X]∈Im=E[X]\in I を示す。I=(α,β)I=(\alpha,\beta)(−∞≤α<β≤∞-\infty\le\alpha<\beta\le\infty)と書く。左端 α\alpha が有限なら、X−α>0X-\alpha>0 a.s. なので、その期待値は非負である。もし E[X−α]=0E[X-\alpha]=0 なら、(10.1) から X=αX=\alpha a.s. となり、仮定に反する。

したがって m>αm>\alpha である。同様に、右端が有限なら m<βm<\beta である。

補題 10.7 を x0=mx_0=m で使い、傾き cc をとる。XX はほとんど確実に区間内にあるので、ほとんどすべての標本点で

ψ(X)≥ψ(m)+c (X−m)(10.13)\psi(X)\ge\psi(m)+c\,(X-m)\tag{10.13}

が成り立つ。右辺は可積分な確率変数である。したがって ψ(X)\psi(X) の負の部分は、∣ψ(m)∣+∣c∣ ∣X−m∣\left\vert \psi(m)\right\vert +\left\vert c\right\vert \,\left\vert X-m\right\vert で抑えられて可積分となる。よって期待値 E[ψ(X)]=E[ψ(X)+]−E[ψ(X)−]E[\psi(X)]=E[\psi(X)^+]-E[\psi(X)^-] は、(−∞,∞](-\infty,\infty] の値として定まる。(10.13) の期待値をとると

E[ψ(X)]≥ψ(m)+c (E[X]−m)=ψ(m)E[\psi(X)]\ge\psi(m)+c\,(E[X]-m)=\psi(m)

を得る。

等号の場合を示す。E[ψ(X)]=ψ(m)<∞E[\psi(X)]=\psi(m)<\infty とする。このとき、次の非負の確率変数の期待値は 0 である。

Y=ψ(X)−ψ(m)−c(X−m)Y=\psi(X)-\psi(m)-c(X-m)

(10.1) から Y=0Y=0 a.s. である。補題 10.7 の狭義凸の場合から、Y(ω)=0Y(\omega)=0 となるのは X(ω)=mX(\omega)=m のときに限る。したがって X=mX=m a.s. である。

区間の端を含む場合

  • ψ\psi が閉区間や半開区間の上で凸かつ連続な場合も、(10.12) は成り立つ。たとえば非負の実数の上の xlog⁡xx\log x(ただし 0log⁡0=00\log0=0)である。
  • E[X]E[X] が区間の内部にあれば、補題 10.6 は端点を含めて成り立つので、上の証明がそのまま通る。
  • E[X]E[X] が区間の端点 α\alpha に一致する場合を考える。X−αX-\alpha は非負で期待値 0 なので、XX はほとんど確実に端点に一致する。よって両辺はともに ψ(α)\psi(\alpha) に等しい。

Jensen の不等式の意味を図 10.2 に示す。XX が2点 x1,x2x_1,x_2 を等確率でとる場合を考える。

  • E[ψ(X)]E[\psi(X)] は、弦の中点の高さである。
  • ψ(E[X])\psi(E[X]) は、グラフの上の点の高さである。

凸関数では弦がグラフの上にあるので、E[ψ(X)]≥ψ(E[X])E[\psi(X)]\ge\psi(E[X]) となる。一般の分布では、弦の代わりに支持直線を使って下から比べる。

図

図 10.2 Jensen の不等式。XX が x1,x2x_1,x_2 を等確率でとるとき、E[ψ(X)]E[\psi(X)] は弦の中点の高さ、ψ(E[X])\psi(E[X]) はグラフ上の点の高さである。E[X]E[X] での支持直線(緑)はグラフの下にあり、その直線の上での平均は ψ(E[X])\psi(E[X]) に等しい。

具体的な凸関数を入れると、次の不等式が得られる。どれも XX が可積分であることを仮定する。

  • ψ(x)=x2\psi(x)=x^2 とすると (E[X])2≤E[X2](E[X])^2\le E[X^2] である。これは分散が非負であることと同じ内容である。
  • p≥1p\ge1 について ψ(x)=∣x∣p\psi(x)=\left\vert x\right\vert ^p とすると、次が成り立つ。

∣E[X]∣p≤E[∣X∣p]\left\vert E[X]\right\vert ^p\le E[\left\vert X\right\vert ^p]

  • ψ(x)=etx\psi(x)=\mathrm{e}^{tx} とすると etE[X]≤MX(t)\mathrm{e}^{tE[X]}\le M_X(t) である。これは第8章 確認テスト 8.2-5 の結果で、キュムラント母関数で書けば KX(t)≥tE[X]K_X(t)\ge tE[X] となる。
  • 正の値をとる確率変数について、ψ(x)=−log⁡x\psi(x)=-\log x とすると E[log⁡X]≤log⁡E[X]E[\log X]\le\log E[X] である。
  • 同じく ψ(x)=1/x\psi(x)=1/x とすると E[1/X]≥1/E[X]E[1/X]\ge1/E[X] である。

XX が正の数 a1,…,ana_1,\dots,a_n を等確率でとるとき、対数の不等式は

1n∑log⁡ai≤log⁡(1n∑ai)\frac1n\sum\log a_i\le\log\Bigl(\frac1n\sum a_i\Bigr)

となる。すなわち相乗平均が相加平均以下であることを表す。

LpL^p のノルムと Lyapunov の不等式

p>0p>0 とする。E[∣X∣p]<∞E[\left\vert X\right\vert ^p]<\infty となる確率変数の全体を LpL^p と書き、

∥X∥p≔(E[∣X∣p])1/p(10.14)\left\Vert X\right\Vert _p\coloneqq\bigl(E[\left\vert X\right\vert ^p]\bigr)^{1/p}\tag{10.14}

と置く。pp 次モーメントが無限大のときは、∥X∥p=∞\left\Vert X\right\Vert _p=\infty とする。∥X∥p\left\Vert X\right\Vert _p は、確率変数の典型的な大きさを pp 次の平均で測った量である。Jensen の不等式から、この量が pp について非減少であることが分かる。

定理 10.9(Lyapunov の不等式)

0<r<s0<r<s なら、任意の確率変数 XX について次が成り立つ。とくに Ls⊂LrL^s\subset L^r である。

∥X∥r≤∥X∥s\left\Vert X\right\Vert _r\le\left\Vert X\right\Vert _s

証明

∥X∥s=∞\left\Vert X\right\Vert _s=\infty なら示すことはないので、E[∣X∣s]<∞E[\left\vert X\right\vert ^s]<\infty とする。Y=∣X∣rY=\left\vert X\right\vert ^r と置く。

  • ∣X∣≤1\left\vert X\right\vert \le1 のところでは Y≤1Y\le1 である。
  • ∣X∣>1\left\vert X\right\vert >1 のところでは Y≤∣X∣sY\le\left\vert X\right\vert ^s である。

よって Y≤1+∣X∣sY\le1+\left\vert X\right\vert ^s であり、YY は可積分である。指数 s/rs/r は 1 より大きいので、関数 ψ(y)=∣y∣s/r\psi(y)=\left\vert y\right\vert ^{s/r} は凸である。Jensen の不等式から

(E[∣X∣r])s/r=ψ(E[Y])≤E[ψ(Y)]=E[∣X∣s]\bigl(E[\left\vert X\right\vert ^r]\bigr)^{s/r}=\psi\bigl(E[Y]\bigr)\le E[\psi(Y)]=E[\left\vert X\right\vert ^s]

を得る。両辺を 1/s1/s 乗すると ∥X∥r≤∥X∥s\left\Vert X\right\Vert _r\le\left\Vert X\right\Vert _s である。

全体の測度が有限であることを使っている

  • 証明の Y≤1+∣X∣sY\le1+\left\vert X\right\vert ^s の期待値が有限になるのは、定数 1 の期待値が P(Ω)=1P(\Omega)=1 だからである。
  • 全体の測度が無限の場合、Ls⊂LrL^s\subset L^r は成り立たない。たとえば [1,∞)[1,\infty) 上の Lebesgue 測度で、f(x)=1/xf(x)=1/x を考えると

∫1∞f2 dx=1,∫1∞f dx=∞\int_1^\infty f^2\,\mathrm{d} x=1,\qquad\int_1^\infty f\,\mathrm{d} x=\infty

である。

Hölder の不等式と Minkowski の不等式

Cauchy–Schwarz の不等式 (10.2) は、積 XYXY の期待値を2次モーメントで抑えた。2つの確率変数に異なる次数のモーメントを割り当てたいときは、Hölder の不等式を使う。

その準備として、実数の不等式を1つ示す。p,q>1p,q>1 が 1p+1q=1\frac1p+\frac1q=1 を満たすとき、この2つは互いに共役な指数であるという。p=q=2p=q=2 はその例である。

補題 10.10(Young の不等式)

p,qp,q を共役な指数とする。a,b≥0a,b\ge0 について

ab≤app+bqq(10.15)ab\le\frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}\tag{10.15}

が成り立ち、等号は ap=bqa^p=b^q のときに限る。

証明

a=0a=0 または b=0b=0 なら、左辺は 0 で右辺は非負である。等号は a=b=0a=b=0 のとき、すなわち ap=bqa^p=b^q のときに限る。

以下 a,b>0a,b>0 とする。次の2点分布に従う確率変数 ZZ を考える。

P(Z=ap)=1p,P(Z=bq)=1qP(Z=a^p)=\frac1p,\qquad P(Z=b^q)=\frac1q

狭義凸関数 −log⁡-\log に Jensen の不等式を使う。E[Z]=app+bqqE[Z]=\frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q} であり、

log⁡(app+bqq)=log⁡E[Z]≥E[log⁡Z]=1plog⁡ap+1qlog⁡bq=log⁡a+log⁡b=log⁡(ab)\log\Bigl(\frac{a^p}p+\frac{b^q}q\Bigr)=\log E[Z]\ge E[\log Z]=\frac1p\log a^p+\frac1q\log b^q=\log a+\log b=\log(ab)

となる。対数は狭義増加なので (10.15) を得る。等号は ZZ がほとんど確実に定数のとき、すなわち ap=bqa^p=b^q のときに限る。

定理 10.11(Hölder の不等式)

p,qp,q を共役な指数とする。任意の確率変数 X,YX,Y について

E[∣XY∣]≤∥X∥p ∥Y∥q.(10.16)E[\left\vert XY\right\vert ]\le\left\Vert X\right\Vert _p\,\left\Vert Y\right\Vert _q .\tag{10.16}

ただし右辺で 0⋅∞=00\cdot\infty=0 と約束する。p=q=2p=q=2 の場合が Cauchy–Schwarz の不等式 (10.2) である。

証明

∥X∥p=0\left\Vert X\right\Vert _p=0 なら、(10.1) から X=0X=0 a.s. である。よって XY=0XY=0 a.s. で、左辺は 0 である。∥Y∥q=0\left\Vert Y\right\Vert _q=0 の場合も同じである。右辺の一方が無限大で他方が正なら、示すことはない。そこで2つのノルムがともに正で有限であるとし、

U=∣X∣∥X∥p,V=∣Y∣∥Y∥qU=\frac{\left\vert X\right\vert }{\left\Vert X\right\Vert _p},\qquad V=\frac{\left\vert Y\right\vert }{\left\Vert Y\right\Vert _q}

と置く。E[Up]=E[∣X∣p]/∥X∥pp=1E[U^p]=E[\left\vert X\right\vert ^p]/\left\Vert X\right\Vert _p^p=1 で、同様に E[Vq]=1E[V^q]=1 である。各標本点で Young の不等式を使うと UV≤Upp+VqqUV\le\frac{U^p}{p}+\frac{V^q}{q} なので、期待値をとって

E[∣XY∣]∥X∥p∥Y∥q=E[UV]≤E[Up]p+E[Vq]q=1p+1q=1\frac{E[\left\vert XY\right\vert ]}{\left\Vert X\right\Vert _p\left\Vert Y\right\Vert _q}=E[UV]\le\frac{E[U^p]}{p}+\frac{E[V^q]}{q}=\frac1p+\frac1q=1

を得る。両辺に ∥X∥p∥Y∥q\left\Vert X\right\Vert _p\left\Vert Y\right\Vert _q を掛ければ (10.16) である。

p=1p=1 の極限に対応する形として、次が成り立つ。∣Y∣≤C\left\vert Y\right\vert \le C a.s. なら E[∣XY∣]≤C E[∣X∣]E[\left\vert XY\right\vert ]\le C\,E[\left\vert X\right\vert ] である。これは期待値の単調性からただちに従う。

定理 10.12(Minkowski の不等式)

p≥1p\ge1 なら、任意の確率変数 X,YX,Y について

∥X+Y∥p≤∥X∥p+∥Y∥p.(10.17)\left\Vert X+Y\right\Vert _p\le\left\Vert X\right\Vert _p+\left\Vert Y\right\Vert _p .\tag{10.17}

証明

p=1p=1 の場合は、各点の三角不等式 ∣X+Y∣≤∣X∣+∣Y∣\left\vert X+Y\right\vert \le\left\vert X\right\vert +\left\vert Y\right\vert の期待値をとればよい。以下 p>1p>1 とし、右辺が有限である場合を考える(無限なら示すことはない)。

まず左辺が有限であることを確かめる。各点で ∣X+Y∣≤2max⁡(∣X∣,∣Y∣)\left\vert X+Y\right\vert \le2\max(\left\vert X\right\vert ,\left\vert Y\right\vert ) なので

∣X+Y∣p≤2pmax⁡(∣X∣,∣Y∣)p≤2p(∣X∣p+∣Y∣p)\left\vert X+Y\right\vert ^p\le2^p\max(\left\vert X\right\vert ,\left\vert Y\right\vert )^p\le2^p\bigl(\left\vert X\right\vert ^p+\left\vert Y\right\vert ^p\bigr)

であり、E[∣X+Y∣p]<∞E[\left\vert X+Y\right\vert ^p]<\infty となる。次に、次のように2つに分ける。

∣X+Y∣p=∣X+Y∣⋅∣X+Y∣p−1≤∣X∣ ∣X+Y∣p−1+∣Y∣ ∣X+Y∣p−1\left\vert X+Y\right\vert ^p=\left\vert X+Y\right\vert \cdot\left\vert X+Y\right\vert ^{p-1}\le\left\vert X\right\vert \,\left\vert X+Y\right\vert ^{p-1}+\left\vert Y\right\vert \,\left\vert X+Y\right\vert ^{p-1}

q=pp−1q=\frac{p}{p-1} を共役な指数とすると (p−1)q=p(p-1)q=p なので、Hölder の不等式から

E[∣X∣ ∣X+Y∣p−1]≤∥X∥p (E[∣X+Y∣(p−1)q])1/q=∥X∥p (E[∣X+Y∣p])1−1/pE\bigl[\left\vert X\right\vert \,\left\vert X+Y\right\vert ^{p-1}\bigr]\le\left\Vert X\right\Vert _p\,\bigl(E[\left\vert X+Y\right\vert ^{(p-1)q}]\bigr)^{1/q}=\left\Vert X\right\Vert _p\,\bigl(E[\left\vert X+Y\right\vert ^p]\bigr)^{1-1/p}

である。YY についても同じ評価をして足すと

E[∣X+Y∣p]≤(∥X∥p+∥Y∥p)(E[∣X+Y∣p])1−1/pE[\left\vert X+Y\right\vert ^p]\le\bigl(\left\Vert X\right\Vert _p+\left\Vert Y\right\Vert _p\bigr)\bigl(E[\left\vert X+Y\right\vert ^p]\bigr)^{1-1/p}

となる。E[∣X+Y∣p]=0E[\left\vert X+Y\right\vert ^p]=0 なら (10.17) は明らかである。そうでなければ、両辺を有限の正の数 (E[∣X+Y∣p])1−1/p\bigl(E[\left\vert X+Y\right\vert ^p]\bigr)^{1-1/p} で割って

(E[∣X+Y∣p])1/p≤∥X∥p+∥Y∥p\bigl(E[\left\vert X+Y\right\vert ^p]\bigr)^{1/p}\le\left\Vert X\right\Vert _p+\left\Vert Y\right\Vert _p

を得る。

LpL^p はノルム空間になる

  • Minkowski の不等式から、p≥1p\ge1 のとき LpL^p は和と定数倍で閉じる。またノルム ∥⋅∥p\left\Vert \cdot\right\Vert _p は三角不等式を満たす。
  • ∥X∥p=0\left\Vert X\right\Vert _p=0 は X=0X=0 a.s. を意味する。よってほとんど確実に等しい確率変数を同一視すれば、∥⋅∥p\left\Vert \cdot\right\Vert _p はノルムになる。第11章 §11.1 の LpL^p 収束は、このノルムでの収束である。
  • 0<p<10<p<1 では三角不等式が成り立たない(確認テスト 10.2-5)。

2次モーメント法(Paley–Zygmund の不等式)

Markov の不等式は「非負の確率変数が大きな値をとる確率」を上から抑えた。Cauchy–Schwarz の不等式を使うと、反対に「非負の確率変数が 0 から離れた値をとる確率」を下から抑えることができる。

命題 10.13(Paley–Zygmund の不等式)

非負の確率変数 XX が 0<E[X2]<∞0<E[X^2]<\infty を満たすとする。0≤θ<10\le\theta<1 について

P(X>θE[X])≥(1−θ)2(E[X])2E[X2].(10.18)P\bigl(X>\theta E[X]\bigr)\ge(1-\theta)^2\frac{(E[X])^2}{E[X^2]}.\tag{10.18}

とくに θ=0\theta=0 として、次が成り立つ。

P(X>0)≥(E[X])2E[X2]P(X>0)\ge\frac{(E[X])^2}{E[X^2]}

証明

A={X>θE[X]}A=\{X>\theta E[X]\} と置き、X=X1Ac+X1AX=X\mathbf 1_{A^c}+X\mathbf 1_A と分ける。

  • 補集合の上では X≤θE[X]X\le\theta E[X] なので、E[X1Ac]≤θE[X]E[X\mathbf 1_{A^c}]\le\theta E[X] である。
  • E[X1A]E[X\mathbf 1_A] には Cauchy–Schwarz の不等式 (10.2) を使う。E[1A2]=P(A)E[\mathbf 1_A^2]=P(A) に注意する。

2つを合わせると

E[X]=E[X1Ac]+E[X1A]≤θE[X]+E[X2] P(A)E[X]=E[X\mathbf 1_{A^c}]+E[X\mathbf 1_A]\le\theta E[X]+\sqrt{E[X^2]\,P(A)}

を得る。移項すると (1−θ)E[X]≤E[X2]P(A)(1-\theta)E[X]\le\sqrt{E[X^2]P(A)} である。両辺は非負なので、2乗して2次モーメントで割れば (10.18) である。

上からの評価(Markov)と下からの評価(Paley–Zygmund)を組み合わせて、「ある性質をもつものの個数 XX が 0 でない確率」を挟む方法を2次モーメント法と呼ぶ。個数を指示関数の和で書けば、1次と2次のモーメントは第5章 §5.4 の計算で求めることができる。

例題 10.3 指数分布のモーメントのノルム ★★

オリジナルX∼Ex(1)X\sim\mathrm{Ex}(1) とする。r>0r>0 について E[Xr]=Γ(r+1)E[X^r]=\Gamma(r+1) である。

  1. ∥X∥r\left\Vert X\right\Vert _r を r=1,2,3,4r=1,2,3,4 について計算し、Lyapunov の不等式と一致していることを確かめよ。
  2. Hölder の不等式(p=q=2p=q=2)で E[X3]=E[X⋅X2]E[X^3]=E[X\cdot X^2] を上から評価せよ。また正確な値と比べよ。
  3. E[log⁡X]=−γEE[\log X]=-\gamma_{\mathrm E} である(γE≈0.5772\gamma_{\mathrm E}\approx0.5772 は Euler の定数)。Jensen の不等式 E[log⁡X]≤log⁡E[X]E[\log X]\le\log E[X] が成り立っていることを確かめよ。
解答
  1. 部分積分を繰り返すか、第8章 §8.2 の E[Xk]=k!/λkE[X^k]=k!/\lambda^k を λ=1\lambda=1 で使う。整数 kk では E[Xk]=k!E[X^k]=k! である。したがって

∥X∥1=1,∥X∥2=2≈1.414,∥X∥3=61/3≈1.817,∥X∥4=241/4≈2.213\left\Vert X\right\Vert _1=1,\qquad\left\Vert X\right\Vert _2=\sqrt{2}\approx1.414,\qquad\left\Vert X\right\Vert _3=6^{1/3}\approx1.817,\qquad\left\Vert X\right\Vert _4=24^{1/4}\approx2.213

となり、rr について増加している。Lyapunov の不等式はこの増加を一般の分布について保証している。2. Cauchy–Schwarz の不等式から

E[X⋅X2]≤E[X2] E[X4]=2×24=48≈6.93E[X\cdot X^2]\le\sqrt{E[X^2]\,E[X^4]}=\sqrt{2\times24}=\sqrt{48}\approx6.93

である。正確な値は E[X3]=6E[X^3]=6 である。3. log⁡E[X]=log⁡1=0\log E[X]=\log1=0 であり、E[log⁡X]=−0.5772<0E[\log X]=-0.5772<0 なので不等式は成り立っている。XX は定数でないので、狭義凸関数 −log⁡-\log に対する Jensen の不等式は等号にならない。

例題 10.4 ランダムな置換が不動点をもつ確率を下から抑える ★★

オリジナルn≥2n\ge2 とし、{1,…,n}\{1,\dots,n\} の置換を一様に選ぶ。不動点の個数 XX は平均 1、分散 1 である(第5章 §5.4 の例題)。

  1. Paley–Zygmund の不等式で P(X≥1)P(X\ge1) を下から評価せよ。
  2. 5 次の置換で不動点をもたないものの確率は ∑k=05(−1)kk!\sum_{k=0}^{5}\frac{(-1)^k}{k!} である(第1章 §1.4 の包除原理)。P(X≥1)P(X\ge1) の正確な値と比べよ。
  3. P(X≥3)P(X\ge3) を Markov の不等式と Chebyshev の不等式で上から評価せよ。
解答
  1. E[X2]=V[X]+(E[X])2=1+1=2E[X^2]=V[X]+(E[X])^2=1+1=2 である。XX は非負整数値なので {X>0}={X≥1}\{X>0\}=\{X\ge1\} である。θ=0\theta=0 の Paley–Zygmund の不等式から

P(X≥1)≥(E[X])2E[X2]=12.P(X\ge1)\ge\frac{(E[X])^2}{E[X^2]}=\frac12 .

この下限は nn によらない。2. 包除原理の和を計算すると

∑k=05(−1)kk!=1−1+12−16+124−1120=60−20+5−1120=44120=1130\sum_{k=0}^{5}\frac{(-1)^k}{k!}=1-1+\frac12-\frac16+\frac1{24}-\frac1{120}=\frac{60-20+5-1}{120}=\frac{44}{120}=\frac{11}{30}

なので、P(X≥1)=1−1130=1930≈0.633P(X\ge1)=1-\frac{11}{30}=\frac{19}{30}\approx0.633 である。下限 0.5 は正しく、正確な値との差は 0.13 程度である。3. Markov の不等式から P(X≥3)≤E[X]3=13P(X\ge3)\le\frac{E[X]}3=\frac13 である。Chebyshev の不等式では、X≥3X\ge3 なら ∣X−1∣≥2\left\vert X-1\right\vert \ge2 なので

P(X≥3)≤P(∣X−1∣≥2)≤V[X]4=14P(X\ge3)\le P(\left\vert X-1\right\vert \ge2)\le\frac{V[X]}{4}=\frac14

である。

確認テスト

オリジナル

  1. 10.2-1 XX が 1, 2, 4 をそれぞれ確率 1/3 でとるとする。XX の平均、逆数の平均、対数の平均を計算せよ。また、Jensen の不等式による次の2つが成り立っていることを確かめよ。

E[1/X]≥1/E[X],E[log⁡X]≤log⁡E[X]E[1/X]\ge1/E[X],\qquad E[\log X]\le\log E[X] 2. 10.2-2 X∼U(0,1)X\sim\mathrm U(0,1) とする。E[X⋅X]=E[X2]E[X\cdot X]=E[X^2] を、Hölder の不等式で上から評価せよ。指数の組は (p,q)=(3,32)(p,q)=(3,\frac32) と (2,2)(2,2) の2通りとし、正確な値と比べよ。3. 10.2-3 X∼N(0,1)X\sim\mathrm N(0,1) について、1次・2次・4次のノルム ∥X∥r\left\Vert X\right\Vert _r を求めよ。それらが Lyapunov の不等式の順に並んでいることを確かめよ。E[X4]=3E[X^4]=3 は第8章の結果を使ってよい。4. 10.2-4 p≥1p\ge1 とする。関数 ∣x∣p\left\vert x\right\vert ^p の凸性を使って、実数 x,yx,y について次を示せ。

∣x+y∣p≤2p−1(∣x∣p+∣y∣p)\left\vert x+y\right\vert ^p\le2^{p-1}\bigl(\left\vert x\right\vert ^p+\left\vert y\right\vert ^p\bigr) 5. 10.2-5 0<p<10<p<1 とする。確率 1/2 の事象 AA をとる。X=1AX=\mathbf 1_A、Y=1AcY=\mathbf 1_{A^c} と置く。∥X+Y∥p>∥X∥p+∥Y∥p\left\Vert X+Y\right\Vert _p>\left\Vert X\right\Vert _p+\left\Vert Y\right\Vert _p となることを示せ。

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