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一次ステップ解析

2026年10月15日18分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第15章 マルコフ連鎖の長時間の振る舞い
目次
  1. 到達確率の方程式
  2. 吸収的な連鎖の行列による計算
  3. ギャンブラーの破産
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第15章 §15.2 ★★★ 最初の1歩で場合を分けると、吸収確率と平均到達時間が連立1次方程式の最小の非負解として得られる

到達確率の方程式

集合 A⊂SA\subset S を固定する。時刻 0 を含めてそこに到達する確率と、到達までの時間の期待値を

hi=Pi(τA<∞),ki=Ei[τA]∈[0,∞](15.14)h_i=P_i(\tau_A<\infty),\qquad k_i=E_i[\tau_A]\in[0,\infty]\tag{15.14}

と置く。目標が吸収状態の集合なら、hih_i は吸収確率で、kik_i は吸収までの平均時間である。目標の外から出発すると、最初の1歩で jj に移り、そのあとは jj から出発し直す。この考察を式にしたものが次の定理である。

定理 15.10(到達確率は最小の非負解 ★★★)

h=(hi)i∈Sh=(h_i)_{i\in S} は連立方程式

hi=1(i∈A),hi=∑j∈Spijhj(i∉A)(15.15)h_i=1\quad(i\in A),\qquad h_i=\sum_{j\in S}p_{ij}h_j\quad(i\notin A)\tag{15.15}

の非負解のうち最小のものである。すなわち、次の2つが成り立つ。

  1. hh は (15.15) を満たす。
  2. (15.15) を満たす任意の非負の x=(xi)x=(x_i) について、すべての成分で xi≥hix_i\ge h_i である。
証明

方程式を満たすこと。 出発点で分ける。

  • i∈Ai\in A なら τA=0\tau_A=0 である。よって hi=1h_i=1 である。
  • i∉Ai\notin A なら τA≥1\tau_A\ge1 である。到達が起きるのは、時刻 1 以降に AA に入るときである。

時刻 1 でのマルコフ性から

Pi(τA<∞∣X1=j)=Pj(τA<∞)=hjP_i(\tau_A<\infty\mid X_1=j)=P_j(\tau_A<\infty)=h_j

なので、全確率の公式から

hi=∑jPi(X1=j) Pi(τA<∞∣X1=j)=∑jpijhjh_i=\sum_jP_i(X_1=j)\,P_i(\tau_A<\infty\mid X_1=j)=\sum_jp_{ij}h_j

となる。

最小であること。 xx を (15.15) の非負解とする。すべての n≥0n\ge0 と状態について

xi≥Pi(τA≤n)(15.16)x_i\ge P_i(\tau_A\le n)\tag{15.16}

を nn についての帰納法で示す。

  1. n=0n=0 のとき。 右辺は、目標の中では 1=xi1=x_i、外では 0≤xi0\le x_i である。
  2. nn から n+1n+1 へ。 AA の中では右辺は 1=xi1=x_i である。AA の外では、1歩目で分けて

xi=∑jpijxj≥∑jpijPj(τA≤n)=Pi(τA≤n+1)x_i=\sum_jp_{ij}x_j\ge\sum_jp_{ij}P_j(\tau_A\le n)=P_i(\tau_A\le n+1)

となる(最後の等号は時刻 1 でのマルコフ性)。よって n+1n+1 でも成り立つ。n→∞n\to\infty とすると、確率の下からの連続性から

Pi(τA≤n)↑Pi(τA<∞)=hiP_i(\tau_A\le n)\uparrow P_i(\tau_A<\infty)=h_i

なので、xi≥hix_i\ge h_i である。

定理 15.11(平均到達時間は最小の非負解 ★★★)

k=(ki)k=(k_i) は連立方程式

ki=0(i∈A),ki=1+∑j∉Apijkj(i∉A)(15.17)k_i=0\quad(i\in A),\qquad k_i=1+\sum_{j\notin A}p_{ij}k_j\quad(i\notin A)\tag{15.17}

の [0,∞][0,\infty] に値をとる解のうち最小のものである。

証明

方程式を満たすこと。 i∉Ai\notin A なら τA≥1\tau_A\ge1 である。到達時間は、X1X_1 から出発し直した到達時間に 1 を足したものである。マルコフ性から

Ei[τA∣X1=j]=1+kj(j∈A なら kj=0)E_i[\tau_A\mid X_1=j]=1+k_j\qquad(j\in A \text{ なら } k_j=0)

なので

ki=∑jpij(1+kj)=1+∑j∉Apijkjk_i=\sum_jp_{ij}(1+k_j)=1+\sum_{j\notin A}p_{ij}k_j

である。

最小であること。 yy を (15.17) の非負解とする。AA の外の ii について、方程式を繰り返し代入すると

yi=1+∑j1∉Apij1yj1=1+∑j1∉Apij1+∑j1,j2∉Apij1pj1j2yj2=Pi(τA≥1)+Pi(τA≥2)+∑j1,j2∉Apij1pj1j2yj2\begin{aligned}y_i&=1+\sum_{j_1\notin A}p_{ij_1}y_{j_1} =1+\sum_{j_1\notin A}p_{ij_1}+\sum_{j_1,j_2\notin A}p_{ij_1}p_{j_1j_2}y_{j_2}\\ &=P_i(\tau_A\ge1)+P_i(\tau_A\ge2)+\sum_{j_1,j_2\notin A}p_{ij_1}p_{j_1j_2}y_{j_2}\end{aligned}

となる。Pi(τA≥m+1)P_i(\tau_A\ge m+1) は、時刻 1 から mm までずっと目標の外にいる確率である。よって

Pi(τA≥m+1)=∑j1,…,jm∉Apij1⋯pjm−1jmP_i(\tau_A\ge m+1)=\sum_{j_1,\dots,j_m\notin A}p_{ij_1}\cdots p_{j_{m-1}j_m}

である。nn 回代入して、非負の最後の項を捨てると

yi≥∑m=1nPi(τA≥m)y_i\ge\sum_{m=1}^nP_i(\tau_A\ge m)

である。n→∞n\to\infty とすると、右辺は

∑m≥1Pi(τA≥m)=Ei[τA]=ki\sum_{m\ge1}P_i(\tau_A\ge m)=E_i[\tau_A]=k_i

に収束する。

最小性の条件は飾りではない。§15.1 の偏りのあるランダムウォークで、原点だけの集合 A={0}A=\{0\} を考える。定数 hi≡1h_i\equiv1 も (15.15) を満たすが、実際の到達確率は 1 より小さいことがある(確認テスト 15.2-1)。

方程式だけでは解が1つに決まらないとき、どの解が確率を表すかを決めるのが最小性である。状態空間が有限のときは次のように解が1つに決まる。

命題 15.12(有限の場合の一意性 ★★)

S∖AS\setminus A が有限で、そのどの状態からも AA が到達可能であるとする。S∖AS\setminus A に制限した遷移行列を QQ と書く。このとき次が成り立つ。

  1. I−QI-Q は正則で、Qn→0Q^n\to0 である。
  2. (15.15) と (15.17) はどちらも有界な解をただ1つもち、それが hh と kk である。
  3. とくに、すべての状態で hi=1h_i=1 かつ ki<∞k_i<\infty である。
証明

S∖AS\setminus A の状態はすべて、§15.1 の意味で過渡的である。実際、目標の外の各状態 ii には、AA に到達する経路がある。その確率を αi>0\alpha_i>0、長さを mim_i とする。そして

α=min⁡i∉Aαi,m=max⁡i∉Ami\alpha=\min_{i\notin A}\alpha_i,\qquad m=\max_{i\notin A}m_i

と置く。目標の外のどこから出発しても、mm ステップ以内に目標に入る確率は α\alpha 以上である。マルコフ性を mm ステップごとに使うと、次の評価を得る。

Pi(τA>ℓm)≤(1−α)ℓ(Qn)ij≤Pi(τA>n) → 0\begin{aligned}P_i(\tau_A>\ell m)&\le(1-\alpha)^\ell\\ (Q^n)_{ij}&\le P_i(\tau_A>n)\ \to\ 0\end{aligned}

よって Qn→0Q^n\to0 で、∑nQn\sum_nQ^n は収束する。さらに

(I−Q)∑n=0NQn=I−QN+1→I(I-Q)\sum_{n=0}^NQ^n=I-Q^{N+1}\to I

から、I−QI-Q は正則で (I−Q)−1=∑nQn(I-Q)^{-1}=\sum_nQ^n である。

  • kk の一意性。 (15.17) の AA の外の部分は (I−Q)k=1(I-Q)k=\mathbf 1 と書ける。よって解は k=(I−Q)−11k=(I-Q)^{-1}\mathbf 1 ただ1つである。
  • hh の一意性。 (15.15) の2つの有界な解の差を uu とする。目標の外で u=Quu=Qu を満たすので、u=Qnu→0u=Q^nu\to0 となる。よって解はただ1つである。

平均到達時間が有限であることも、上の評価から出る。

Ei[τA]=∑mPi(τA≥m)≤∑ℓm(1−α)ℓ<∞E_i[\tau_A]=\sum_mP_i(\tau_A\ge m)\le\sum_\ell m(1-\alpha)^\ell<\infty

吸収的な連鎖の行列による計算

状態が有限であるとする。過渡的な状態の集合を TT、吸収状態の集合を AA とする。過渡的な状態を先に並べると、遷移確率行列は

P=(QR0I)(15.18)P=\begin{pmatrix}Q&R\\0&I\end{pmatrix}\tag{15.18}

の形になる。QQ は過渡的な状態どうしの遷移で、RR は過渡的な状態から吸収状態への遷移である。命題 15.12 の (I−Q)−1(I-Q)^{-1} を基本行列と呼び、N=(I−Q)−1N=(I-Q)^{-1} と書く。例題 15.1 で見たように、成分 Nij=G(i,j)N_{ij}=G(i,j) は、出発点から過渡的な状態 jj を訪れる回数の期待値である。

命題 15.13(基本行列による公式 ★★)

i∈Ti\in T、a∈Aa\in A について次が成り立つ。

  1. ii から出発して aa に吸収される確率を考える。これは行列 B=NRB=NR の成分である。
  2. 吸収までの時間の期待値は、ベクトル t=N1t=N\mathbf 1 の ii 成分である。ここで 1\mathbf 1 はすべて 1 の列ベクトルである。
証明

(1) 吸収状態 aa に吸収されるのは、ある時刻に過渡的な状態 jj にいて、次の1歩でそこへ移るときである。この事象は時刻と jj について排反なので、確率は

∑n∑j∈T(Qn)ijRja=(NR)ia\sum_n\sum_{j\in T}(Q^n)_{ij}R_{ja}=(NR)_{ia}

である。

(2) 吸収までの時間は、過渡的な状態に滞在する回数の合計 ∑j∈TNj\sum_{j\in T}N_j である。よって期待値は

∑j∈TNij=(N1)i\sum_{j\in T}N_{ij}=(N\mathbf 1)_i

である。

ギャンブラーの破産

所持金 ii 円の賭け手が、1 円を賭ける勝負をくり返す。毎回、確率 pp で 1 円勝ち、確率 q=1−pq=1-p で 1 円負ける。所持金が 0 円(破産)か NN 円(目標)になったらやめる。所持金は状態空間 {0,1,…,N}\{0,1,\dots,N\} 上のマルコフ連鎖で、両端は吸収状態である(図 15.2)。

図

図 15.2 ギャンブラーの破産の連鎖。両端の 0 と NN(色付き)は吸収状態である。内部の状態からは確率 pp で右へ、qq で左へ移る。

定理 15.14(ギャンブラーの破産 ★★★)

r=q/pr=q/p と置く。所持金 ii から出発して、破産する前に目標に達する確率と、賭けが終わるまでの回数の期待値を

ui=Pi(τN<τ0),Di=Ei[τ{0,N}]u_i=P_i(\tau_N<\tau_0),\qquad D_i=E_i[\tau_{\{0,N\}}]

と書く。これらは

ui={1−ri1−rN(p≠q),iN(p=q),Di={iq−p−Nq−p⋅1−ri1−rN(p≠q),i(N−i)(p=q)\begin{align*}u_i&=\begin{cases}\dfrac{1-r^i}{1-r^N}&(p\ne q),\\[8pt]\dfrac iN&(p=q),\end{cases}\tag{15.20}\\[4pt] D_i&=\begin{cases}\dfrac{i}{q-p}-\dfrac{N}{q-p}\cdot\dfrac{1-r^i}{1-r^N}&(p\ne q),\\[8pt]i(N-i)&(p=q)\end{cases}\tag{15.22}\end{align*}

である。

証明

状態は有限で、内部のどの状態からも 0 に到達できるので、命題 15.12 から、方程式の有界な解がただ1つあり、それが求める量である。

uiu_i。 方程式は次のとおりである。

u0=0,uN=1,ui=pui+1+qui−1(1≤i≤N−1)u_0=0,\qquad u_N=1,\qquad u_i=pu_{i+1}+qu_{i-1}\quad(1\le i\le N-1)

p+q=1p+q=1 を使って ui=(p+q)uiu_i=(p+q)u_i と書き直すと

p(ui+1−ui)=q(ui−ui−1),すなわちui+1−ui=r (ui−ui−1)p(u_{i+1}-u_i)=q(u_i-u_{i-1}),\qquad\text{すなわち}\qquad u_{i+1}-u_i=r\,(u_i-u_{i-1})

となる。c=u1−u0=u1c=u_1-u_0=u_1 と置くと、差は ui+1−ui=ricu_{i+1}-u_i=r^ic である。足し合わせて

ui=c (1+r+⋯+ri−1)={c 1−ri1−r(r≠1),c i(r=1)u_i=c\,(1+r+\cdots+r^{i-1})=\begin{cases}c\,\dfrac{1-r^i}{1-r}&(r\ne1),\\[6pt] c\,i&(r=1)\end{cases}

である。uN=1u_N=1 から cc を決めると (15.20) を得る。

DiD_i。 方程式は次のとおりである。

D0=DN=0,Di=1+pDi+1+qDi−1D_0=D_N=0,\qquad D_i=1+pD_{i+1}+qD_{i-1}

p=q=12p=q=\frac12 のとき、Di=i(N−i)D_i=i(N-i) を入れると

1+12[(i+1)(N−i−1)+(i−1)(N−i+1)]=1+12[2i(N−i)−2]=i(N−i)1+\tfrac12\bigl[(i+1)(N-i-1)+(i-1)(N-i+1)\bigr]=1+\tfrac12\bigl[2i(N-i)-2\bigr]=i(N-i)

で方程式を満たし、境界条件も満たす。p≠qp\ne q のときは、特殊解として Di=i/(q−p)D_i=i/(q-p) を試す。

1+p(i+1)+q(i−1)q−p=1+i−(q−p)q−p=iq−p1+\frac{p(i+1)+q(i-1)}{q-p}=1+\frac{i-(q-p)}{q-p}=\frac{i}{q-p}

で方程式を満たす。斉次方程式 Di=pDi+1+qDi−1D_i=pD_{i+1}+qD_{i-1} の解は、uiu_i の計算と同じ形をしている。よって一般解は

Di=iq−p+α+βriD_i=\frac{i}{q-p}+\alpha+\beta r^i

である。境界条件から定数を決める。

D0=0 ⟹ β=−αDN=0 ⟹ α(1−rN)=−Nq−p\begin{aligned}D_0=0&\ \Longrightarrow\ \beta=-\alpha\\ D_N=0&\ \Longrightarrow\ \alpha(1-r^N)=-\frac{N}{q-p}\end{aligned}

これで (15.22) を得る。

目標を無限に遠くした極限 N→∞N\to\infty は、無限に裕福な相手との賭けにあたる。破産確率 hi=Pi(τ0<∞)h_i=P_i(\tau_0<\infty) を求めたい。

状態空間 {0,1,2,… }\{0,1,2,\dots\} は無限なので、命題 15.12 は使えない。最小性で決める。方程式と一般解は次のとおりである。

h0=1,hi=phi+1+qhi−1;hi={1−β+βri(r≠1),1+βi(r=1)h_0=1,\quad h_i=ph_{i+1}+qh_{i-1};\qquad h_i=\begin{cases}1-\beta+\beta r^i&(r\ne1),\\ 1+\beta i&(r=1)\end{cases}

  1. p≤qp\le q(r≥1r\ge1)なら確率 1 で破産する。 β<0\beta<0 だと、所持金の大きいところで hi<0h_i<0 となる。よって非負解は β≥0\beta\ge0 に限られ、そのとき hi≥1h_i\ge1 である。最小の非負解は β=0\beta=0 の hi=1h_i=1 である。
  2. p>qp>q なら破産確率は (q/p)i(q/p)^i。 このとき r<1r<1 である。非負であるためには 1−β≥01-\beta\ge0 が必要である。解 hi=1−β(1−ri)h_i=1-\beta(1-r^i) は、β\beta が大きいほど小さい。最小の非負解は β=1\beta=1 のときで

hi=ri=(qp)ih_i=r^i=\Bigl(\frac qp\Bigr)^i

である。

2つ目の結果は、定理 15.8 の左右を入れ替えた形と一致する。「1 段下に達する確率 q/pq/p」を、所持金の段数分だけ独立に掛け合わせたものである(強マルコフ性)。

例題 15.3 少し不利な賭け ★★

オリジナル所持金 5 円、目標 10 円で、1回の勝率が p=0.45p=0.45 の賭けをする。

  1. 目標に達する確率 u5u_5 と、賭けの回数の期待値 D5D_5 を求めよ。
  2. 公正な賭け(p=0.5p=0.5)の場合と比べよ。
解答

(1) r=0.55/0.45=11/9r=0.55/0.45=11/9 である。1−r10=(1−r5)(1+r5)1-r^{10}=(1-r^5)(1+r^5) なので、(15.20) は

u5=1−r51−r10=11+r5u_5=\frac{1-r^5}{1-r^{10}}=\frac1{1+r^5}

と簡単になる。r5=(11/9)5=161051/59049≈2.7274r^5=(11/9)^5=161051/59049\approx2.7274 から u5≈1/3.7274≈0.2683u_5\approx1/3.7274\approx0.2683 である。(15.22) で q−p=0.1q-p=0.1 なので

D5=50.1−100.1 u5=50−100×0.2683≈23.17D_5=\frac{5}{0.1}-\frac{10}{0.1}\,u_5=50-100\times0.2683\approx23.17

である。

(2) 公正な賭けでは u5=5/10=0.5u_5=5/10=0.5、D5=5×5=25D_5=5\times5=25 である。1回あたりの勝率が 0.05 下がるだけで、目標に達する確率は 0.5 から約 0.27 に下がる。1回ごとの不利は小さくても、所持金の変化は D5≈23D_5\approx23 回分の偏りを積み重ねる。所持金の平均の変化は −0.1-0.1 円/回なので、約 23 回で平均 −2.3-2.3 円ずれ、これは目標までの距離 5 円に比べて無視できない。

例題 15.4 硬貨の表裏の並びを待つ ★★

オリジナル公正な硬貨を投げ続ける。表を H、裏を T と書く。

  1. 「HH」が初めて現れるまでの投げる回数の期待値を、状態「直前の進み具合」の連鎖と基本行列で求めよ。
  2. 「HT」についても同じことをせよ。どちらも表が2回続く確率は 14\frac14 なのに、期待値が異なる理由を述べよ。
解答

(1) 状態を「進みなし(s0s_0)」「直前が H(s1s_1)」「HH が完成(吸収)」とする。

  • 進みなしの状態からは、H で s1s_1 に、T で同じ状態に移る。
  • s1s_1 からは、H で完成し、T で s0s_0 に戻る。

過渡的な部分の行列と基本行列は

Q=(1212120),I−Q=(12−12−121),N=(I−Q)−1=4(1121212)=(4222)Q=\begin{pmatrix}\frac12&\frac12\\[2pt]\frac12&0\end{pmatrix},\quad I-Q=\begin{pmatrix}\frac12&-\frac12\\[2pt]-\frac12&1\end{pmatrix},\quad N=(I-Q)^{-1}=4\begin{pmatrix}1&\frac12\\[2pt]\frac12&\frac12\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}4&2\\2&2\end{pmatrix}

である(det⁡(I−Q)=12−14=14\det(I-Q)=\frac12-\frac14=\frac14)。命題 15.13 から、吸収までの時間の期待値は N1=(6,4)⊤N\mathbf 1=(6,4)^\top で、最初の状態 s0s_0 からの期待値は 6 回である。

(2) 「HT」では、直前が H の状態 s1s_1 から H が出ても、同じ状態に留まる。T が出れば完成する。進みなしの状態からの移り方は (1) と同じである。

Q=(1212012),N=(I−Q)−1=(2202),N1=(42)Q=\begin{pmatrix}\frac12&\frac12\\[2pt]0&\frac12\end{pmatrix},\quad N=(I-Q)^{-1}=\begin{pmatrix}2&2\\0&2\end{pmatrix},\quad N\mathbf 1=\begin{pmatrix}4\\2\end{pmatrix}

で、期待値は 4 回である。

違いは失敗したときの戻り先にある。HH を待っているときに s1s_1 で T が出ると、進みが失われて s0s_0 に戻る。HT を待っているときに s1s_1 で H が出ても、その H が新しい「直前の H」になるので進みは失われない。進みを失う確率がある分だけ、HH の方が待ち時間が長い。

確認テスト

オリジナル

  1. 15.2-1 {0,1,2,… }\{0,1,2,\dots\} 上の連鎖を、p>qp>q として次で定める。

pi,i+1=p,pi,i−1=q(i≥1),p00=1p_{i,i+1}=p,\quad p_{i,i-1}=q\quad(i\ge1),\qquad p_{00}=1

原点だけの集合 A={0}A=\{0\} を考える。定数 xi≡1x_i\equiv1 が (15.15) を満たすことを確かめよ。また、これが到達確率でない理由を述べよ。2. 15.2-2 ギャンブラーの破産で N=6N=6、i=2i=2 とする。次を求めよ。

  1. 公正な場合(p=12p=\frac12)の到達確率と平均回数 u2,D2u_2,D_2。

  2. p=23p=\frac23 のときの u2u_2。

  3. 15.2-3 {0,1,…,N}\{0,1,\dots,N\} 上の連鎖を次で定める。

    • 0 からは確率 1 で 1 へ移る。
    • 1≤i≤N−11\le i\le N-1 からは、確率 12\frac12 ずつで左右の隣へ移る。
    • NN は吸収状態とする。

ki=Ei[τN]=N2−i2k_i=E_i[\tau_N]=N^2-i^2 を示せ。また N=3N=3 のとき、k0,k1,k2k_0,k_1,k_2 を方程式から直接求めて一致を確かめよ。4. 15.2-4 公正な硬貨で「HTH」が初めて現れるまでの投げる回数の期待値を、一次ステップ解析で求めよ。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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