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再帰と過渡

2026年10月15日30分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第15章 マルコフ連鎖の長時間の振る舞い
目次
  1. 第14章から借りる定義と結果
  2. 初到達の確率と分解公式
  3. 再帰と過渡の定義と Green 関数
  4. クラスの性質
  5. 1次元のランダムウォーク
  6. 多次元のランダムウォーク
  7. 確認テスト
  8. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第15章 §15.1 ★★★ 出発点に確率1で戻る状態が再帰的、戻らない可能性のある状態が過渡的で、遷移確率の和が発散するかどうかで判定できる

第14章では、マルコフ連鎖を遷移確率行列で記述し、nn ステップの遷移確率を行列の積で計算する方法を整えた。この章では、時刻 nn を大きくしたときの連鎖の振る舞いを調べる。問いは次の4つに分かれる。

  1. 出発点に戻ってくるか(§15.1)。戻ってくる確率が 1 の状態を再帰的、1 未満の状態を過渡的と呼び、遷移確率の和(Green 関数)で判定する。1次元・2次元の対称なランダムウォークは再帰的で、3次元では過渡的になる。第7章 確認テスト 7.4-5 で前提にした「対称な単純ランダムウォークはいつか必ず +1+1 に達する」もこの節で示す。
  2. どこに吸収されるか、いつ吸収されるか(§15.2)。最初の1歩で場合を分けると、吸収確率と平均到達時間が連立1次方程式の解として得られる。
  3. 分布はどこへ落ち着くか(§15.3)。既約で正再帰的な連鎖には定常分布がただ1つあり、その値は平均再帰時間の逆数である。周期が 1 なら、nn ステップの遷移確率は定常分布に収束する。
  4. 時間平均は何に収束するか(§15.4)。1本の見本路に沿った時間平均が、定常分布による平均にほとんど確実に収束する(エルゴード定理)。証明には、再生過程と再生報酬定理を使う。

§15.5 では、これらの結果の応用として、目的の分布からの標本をマルコフ連鎖で作る方法(MCMC と Metropolis 法)と、大きな状態空間をもつ連鎖を1次元の連鎖へ還元する方法を扱う。

第14章から借りる定義と結果

状態空間 SS は有限または可算の集合とする。(Xn)n≥0(X_n)_{n\ge0} は遷移確率行列

P=(pij)i,j∈SP=(p_{ij})_{i,j\in S}

をもつマルコフ連鎖とする。すなわち、すべての nn と状態の列について

P(Xn+1=j∣X0=i0,…,Xn−1=in−1,Xn=i)=pij(15.1)P(X_{n+1}=j\mid X_0=i_0,\dots,X_{n-1}=i_{n-1},X_n=i)=p_{ij}\tag{15.1}

が成り立つ(条件の確率が正のとき)。出発点を X0=iX_0=i とした確率を PiP_i と書く。その期待値は EiE_i と書く。初期分布が μ\mu のときは PμP_\mu と書く。

nn ステップの遷移確率を pij(n)=Pi(Xn=j)p^{(n)}_{ij}=P_i(X_n=j) と書く。これは行列 PnP^n の成分に等しい。これは Chapman–Kolmogorov 方程式

pij(m+n)=∑k∈Spik(m) pkj(n),pij(m+n)≥pik(m) pkj(n)(15.2)p^{(m+n)}_{ij}=\sum_{k\in S}p^{(m)}_{ik}\,p^{(n)}_{kj},\qquad p^{(m+n)}_{ij}\ge p^{(m)}_{ik}\,p^{(n)}_{kj}\tag{15.2}

を満たす(pij(0)=δijp^{(0)}_{ij}=\delta_{ij})。自然なフィルトレーションは Fn=σ(X0,…,Xn)\mathcal F_n=\sigma(X_0,\dots,X_n) である。集合 A⊂SA\subset S への到達時刻を、時刻 0 を数えるものと数えないものの2種類で

τA=inf⁡{n≥0:Xn∈A},TA=inf⁡{n≥1:Xn∈A},Tj=T{j}(15.3)\tau_A=\inf\{n\ge0:X_n\in A\},\qquad T_A=\inf\{n\ge1:X_n\in A\},\qquad T_j=T_{\{j\}}\tag{15.3}

と書く(inf⁡∅=∞\inf\emptyset=\infty)。どちらも停止時刻である(第14章 §14.1)。

第14章 §14.4 の強マルコフ性を次の形で使う。τ\tau を停止時刻とする。事象 AA は、すべての m≥0m\ge0 で

A∩{τ=m}∈FmA\cap\{\tau=m\}\in\mathcal F_m

を満たすとする。このとき

P(A, τ<∞, Xτ=i, Xτ+1=j1,…,Xτ+n=jn)=P(A, τ<∞, Xτ=i) Pi(X1=j1,…,Xn=jn)(15.4)P\bigl(A,\ \tau<\infty,\ X_\tau=i,\ X_{\tau+1}=j_1,\dots,X_{\tau+n}=j_n\bigr)=P(A,\ \tau<\infty,\ X_\tau=i)\,P_i(X_1=j_1,\dots,X_n=j_n)\tag{15.4}

が成り立つ。言葉で言えば、停止時刻で連鎖を切ると、その後は XτX_\tau から出発した新しい連鎖と同じ法則に従い、それまでの経路と独立である。

第14章 §14.5 の状態の分類を、式の形で書いておく。

  • 次の条件を満たすとき、jj は ii から到達可能であるという。

ある n≥0 で pij(n)>0\text{ある } n\ge0 \text{ で } p^{(n)}_{ij}>0

これを i→ji\to j と書く。両向きに到達可能な2つの状態は連絡するといい、i↔ji\leftrightarrow j と書く。↔\leftrightarrow は同値関係で、その同値類をクラスと呼ぶ。

  • クラスが1つだけのとき、連鎖は既約であるという。集合 C⊂SC\subset S から出る遷移が無い、すなわち

i∈C, pij>0 ⟹ j∈Ci\in C,\ p_{ij}>0\ \Longrightarrow\ j\in C

を満たすとき、CC は閉じているという。

  • 状態 ii の周期を d(i)=gcd⁡{n≥1:pii(n)>0}d(i)=\gcd\{n\ge1:p^{(n)}_{ii}>0\} で定める。d(i)=1d(i)=1 の状態を非周期的と呼ぶ。同じクラスの状態は同じ周期をもつ。

この章の結果のうち、全変動距離による収束(§15.3)には第5章 §5.5 の全変動距離

dTV(μ,ν)=12∑j∣μj−νj∣d_{\mathrm{TV}}(\mu,\nu)=\frac12\sum_j\left\vert \mu_j-\nu_j\right\vert

を使う。エルゴード定理(§15.4)には第12章 §12.2 の Kolmogorov の強法則を使う。これは、独立同分布で E∣X1∣<∞E\left\vert X_1\right\vert <\infty なら標本平均が E[X1]E[X_1] にほとんど確実に収束する、という定理である。ランダムウォークの計算では、第8章 §8.1 の確率母関数の考え方を使う。

初到達の確率と分解公式

状態 ii から出発して状態 jj をめざす。時刻 nn に初めて達する確率を fij(n)f^{(n)}_{ij} と書く。いつか達する確率を fijf_{ij} と書く。式では

fij(n)=Pi(Tj=n),fij=Pi(Tj<∞)=∑n=1∞fij(n)(15.5)f^{(n)}_{ij}=P_i(T_j=n),\qquad f_{ij}=P_i(T_j<\infty)=\sum_{n=1}^\infty f^{(n)}_{ij}\tag{15.5}

である。i=ji=j の場合の fjjf_{jj} は「出発点をいったん出たあと、そこへ戻ってくる確率」である。

時刻 nn に jj にいるという事象を、初めてそこに達した時刻で分ける。初めて達したあとは jj から出発し直すので、次の分解が成り立つ。

命題 15.1(初到達による分解 ★★★)

すべての i,j∈Si,j\in S と n≥1n\ge1 について

pij(n)=∑m=1nfij(m) pjj(n−m).(15.6)p^{(n)}_{ij}=\sum_{m=1}^{n}f^{(m)}_{ij}\,p^{(n-m)}_{jj}.\tag{15.6}

証明

Xn=jX_n=j なら Tj≤nT_j\le n なので、次は排反な和である。

{Xn=j}=⋃m=1n{Tj=m, Xn=j}\{X_n=j\}=\bigcup_{m=1}^n\{T_j=m,\ X_n=j\}

事象 {Tj=m}={X1≠j,…,Xm−1≠j, Xm=j}\{T_j=m\}=\{X_1\ne j,\dots,X_{m-1}\ne j,\ X_m=j\} は Fm\mathcal F_m に属する。その上では Xm=jX_m=j である。定まった時刻 mm でのマルコフ性(第14章 §14.4)から

Pi(Tj=m, Xn=j)=Pi(Tj=m) Pj(Xn−m=j)=fij(m) pjj(n−m)P_i(T_j=m,\ X_n=j)=P_i(T_j=m)\,P_j(X_{n-m}=j)=f^{(m)}_{ij}\,p^{(n-m)}_{jj}

となる。m=1,…,nm=1,\dots,n について足せば (15.6) を得る。

(15.6) は畳み込みの形をしているので、母関数に移ると積になる。∣s∣<1\left\vert s\right\vert <1 について

Pij(s)=∑n=0∞pij(n)sn,Fij(s)=∑n=1∞fij(n)sn(15.7)P_{ij}(s)=\sum_{n=0}^\infty p^{(n)}_{ij}s^n,\qquad F_{ij}(s)=\sum_{n=1}^\infty f^{(n)}_{ij}s^n\tag{15.7}

と置く。どちらの係数も [0,1][0,1] に入るので、級数は ∣s∣<1\left\vert s\right\vert <1 で絶対収束する。(15.6) の両辺に sns^n を掛けて n≥1n\ge1 で足す。n=0n=0 の項 pij(0)=δijp^{(0)}_{ij}=\delta_{ij} を補うと

Pjj(s)=1+Fjj(s) Pjj(s),Pij(s)=Fij(s) Pjj(s)(i≠j)(15.8)P_{jj}(s)=1+F_{jj}(s)\,P_{jj}(s),\qquad P_{ij}(s)=F_{ij}(s)\,P_{jj}(s)\quad(i\ne j)\tag{15.8}

を得る。前者を解くと

Pjj(s)=11−Fjj(s)P_{jj}(s)=\frac{1}{1-F_{jj}(s)}

である。

再帰と過渡の定義と Green 関数

定義 15.2(再帰と過渡 ★★★)

状態 jj について、

  1. fjj=1f_{jj}=1 のとき、jj は再帰的(recurrent)であるという。
  2. fjj<1f_{jj}<1 のとき、jj は過渡的(transient)であるという。

jj を訪れる回数を、時刻 0 も数えて

Nj=∑n=0∞1{Xn=j}N_j=\sum_{n=0}^\infty\mathbf 1_{\{X_n=j\}}

と置く。その期待値

G(i,j)=Ei[Nj]=∑n=0∞pij(n)(15.9)G(i,j)=E_i[N_j]=\sum_{n=0}^\infty p^{(n)}_{ij}\tag{15.9}

を Green 関数と呼ぶ。2つ目の等号は、非負の項の和と期待値の交換(第5章 §5.2 の単調収束定理)による。

定理 15.3(Green 関数による判定 ★★★)

状態 jj について次が成り立つ。

  1. Pj(Nj≥k)=fjj k−1P_j(N_j\ge k)=f_{jj}^{\,k-1}(k=1,2,…k=1,2,\dots)。
  2. jj が再帰的なら、Pj(Nj=∞)=1P_j(N_j=\infty)=1 である。とくに G(j,j)=∞G(j,j)=\infty である。
  3. jj が過渡的なら、PjP_j のもとで訪問回数は幾何分布に従う。成功確率は 1−fjj1-f_{jj} である。期待値は有限で

G(j,j)=11−fjj<∞G(j,j)=\frac{1}{1-f_{jj}}<\infty

である。

とくに、jj が再帰的であることと ∑npjj(n)=∞\sum_{n}p^{(n)}_{jj}=\infty は同値である。また i≠ji\ne j について

G(i,j)=fij G(j,j)G(i,j)=f_{ij}\,G(j,j)

が成り立つ。

証明

(1) kk 回目の滞在の時刻を σk\sigma_k と置く。σ1=0\sigma_1=0 である。kk 回目が無ければ σk=∞\sigma_k=\infty とする。

σk\sigma_k は停止時刻で、{Nj≥k}={σk<∞}\{N_j\ge k\}=\{\sigma_k<\infty\} である。σk<∞\sigma_k<\infty のとき Xσk=jX_{\sigma_k}=j である。k+1k+1 回目の滞在が起きるのは、時刻 σk\sigma_k のあとに再び戻ってくるときである。強マルコフ性 (15.4) を τ=σk\tau=\sigma_k、A=ΩA=\Omega で使い、その後の経路について和をとると

Pj(Nj≥k+1)=Pj(σk<∞) Pj(Tj<∞)=Pj(Nj≥k) fjjP_j(N_j\ge k+1)=P_j(\sigma_k<\infty)\,P_j(T_j<\infty)=P_j(N_j\ge k)\,f_{jj}

を得る。Pj(Nj≥1)=1P_j(N_j\ge1)=1 から帰納法で Pj(Nj≥k)=fjj k−1P_j(N_j\ge k)=f_{jj}^{\,k-1} である。

(2) fjj=1f_{jj}=1 なら、(1) から Pj(Nj≥k)=1P_j(N_j\ge k)=1 がどの回数でも成り立つ。確率の上からの連続性(第1章 §1.4)により

Pj(Nj=∞)=lim⁡kPj(Nj≥k)=1P_j(N_j=\infty)=\lim_kP_j(N_j\ge k)=1

である。したがって G(j,j)=Ej[Nj]=∞G(j,j)=E_j[N_j]=\infty である。

(3) fjj<1f_{jj}<1 なら

Pj(Nj=k)=fjj k−1−fjj k=fjj k−1(1−fjj)P_j(N_j=k)=f_{jj}^{\,k-1}-f_{jj}^{\,k}=f_{jj}^{\,k-1}(1-f_{jj})

で、これは幾何分布である。非負整数値の確率変数の期待値は E[N]=∑k≥1P(N≥k)E[N]=\sum_{k\ge1}P(N\ge k) で計算できるので

G(j,j)=∑k=1∞fjj k−1=11−fjjG(j,j)=\sum_{k=1}^\infty f_{jj}^{\,k-1}=\frac{1}{1-f_{jj}}

である。最後の主張を示す。i≠ji\ne j とする。jj への訪問は事象 {Tj<∞}\{T_j<\infty\} の上でだけ起きる。TjT_j 以後は jj から出発し直すので

Ei[Nj]=Pi(Tj<∞) Ej[Nj]E_i[N_j]=P_i(T_j<\infty)\,E_j[N_j]

となる。

(15.8) から同じ結論を得ることもできる。s↑1s\uparrow1 とすると、単調収束定理により

Pjj(s)↑G(j,j),Fjj(s)↑fjjP_{jj}(s)\uparrow G(j,j),\qquad F_{jj}(s)\uparrow f_{jj}

なので、G(j,j)=1/(1−fjj)G(j,j)=1/(1-f_{jj}) である。fjj=1f_{jj}=1 なら右辺は ∞\infty と読む。

注意

  • 過渡的な状態には有限回しか来ない。 G(i,j)<∞G(i,j)<\infty なら、訪問回数は PiP_i-a.s. で有限である。とくに過渡的な jj については pij(n)→0p^{(n)}_{ij}\to0 となる。収束する級数の項は 0 に近づくからである。
  • 判定に fjjf_{jj} を求める必要はない。 pjj(n)p^{(n)}_{jj} の漸近形が分かれば、級数の収束・発散だけで判定できる。ランダムウォークではこの方法を使う。

クラスの性質

定理 15.4(再帰性はクラスの性質 ★★★)

i↔ji\leftrightarrow j とする。ii が再帰的なら、jj も再帰的である。したがって、1つのクラスの状態はすべて再帰的か、すべて過渡的である。

証明

i↔ji\leftrightarrow j なので、ある a,b≥0a,b\ge0 で

pji(a)>0,pij(b)>0p^{(a)}_{ji}>0,\qquad p^{(b)}_{ij}>0

となる。(15.2) の不等式を2回使うと、すべての nn で

pjj(a+n+b)≥pji(a) pii(n) pij(b)p^{(a+n+b)}_{jj}\ge p^{(a)}_{ji}\,p^{(n)}_{ii}\,p^{(b)}_{ij}

である。nn について足す。右辺は正の定数 pji(a)pij(b)p^{(a)}_{ji}p^{(b)}_{ij} と、発散する級数 ∑npii(n)\sum_np^{(n)}_{ii} の積なので発散する。よって ∑npjj(n)=∞\sum_np^{(n)}_{jj}=\infty となり、定理 15.3 から jj は再帰的である。

命題 15.5(再帰的な状態からは戻ってくる ★★★)

再帰的な状態 ii から jj へ到達可能とする。このとき fji=1f_{ji}=1 である。とくに j→ij\to i である。さらに jj も再帰的で、fij=1f_{ij}=1 も成り立つ。

証明

j=ij=i なら明らかなので j≠ij\ne i とする。

i→ji\to j なので、出発点から出て、途中で出発点を通らずに jj に達する経路が正の確率で存在する。実際、pij(n)>0p^{(n)}_{ij}>0 となる経路をとり、最後に ii を通った時刻より後の部分を使えばよい。この経路の確率を α>0\alpha>0 とする。この経路で jj に達し、そのあと二度と出発点に戻らなければ、ii への戻りは起きない。強マルコフ性から

1−fii=Pi(Ti=∞)≥α (1−fji)1-f_{ii}=P_i(T_i=\infty)\ge\alpha\,(1-f_{ji})

である。fii=1f_{ii}=1 なので左辺は 0 である。α>0\alpha>0 から fji=1f_{ji}=1 を得る。

すると j→ij\to i なので i↔ji\leftrightarrow j である。定理 15.4 から jj は再帰的である。役割を入れ替えれば fij=1f_{ij}=1 である。

系 15.6(閉じたクラスと有限の状態空間 ★★★)

  1. 再帰的なクラスは閉じている。
  2. 有限の閉じたクラスは再帰的である。とくに、有限の状態空間をもつ既約な連鎖のすべての状態は再帰的である。
証明

(1) 再帰的なクラスの状態 ii から、1歩で状態 jj へ移れるとする。このとき i→ji\to j である。命題 15.5 から j→ij\to i となり、j∈Cj\in C である。

(2) 有限の閉じたクラス CC の状態 ii から出発する。連鎖は CC を出ないので、訪問回数の合計は

∑j∈CNj=∞\sum_{j\in C}N_j=\infty

である。期待値をとると ∑j∈CG(i,j)=∞\sum_{j\in C}G(i,j)=\infty となる。CC は有限なので、和のどれかの項が発散する。その項を G(i,j)=∞G(i,j)=\infty とする。定理 15.3 から

G(j,j)≥fijG(j,j)=G(i,j)=∞G(j,j)\ge f_{ij}G(j,j)=G(i,j)=\infty

なので、jj は再帰的である。定理 15.4 からクラス全体が再帰的である。

無限の状態空間では (2) は成り立たない。偏りのあるランダムウォークは既約だが、次の小節で見るようにすべての状態が過渡的である。

例題 15.1 有限の連鎖の分類と Green 関数 ★★

オリジナルS={1,2,3,4}S=\{1,2,3,4\} 上の連鎖を次の遷移確率で定める。

p12=p13=12,p21=12, p22=14, p24=14,p34=1,p43=1.p_{12}=p_{13}=\tfrac12,\qquad p_{21}=\tfrac12,\ p_{22}=\tfrac14,\ p_{24}=\tfrac14,\qquad p_{34}=1,\qquad p_{43}=1.

  1. クラスに分け、各クラスが再帰的か過渡的かと周期を答えよ。
  2. 戻る確率と到達確率 f11,f22,f12f_{11},f_{22},f_{12} を求めよ。また Green 関数 G(1,1),G(2,2),G(1,2)G(1,1),G(2,2),G(1,2) を求めよ。
  3. 過渡的な状態の部分の行列を QQ とする。(I−Q)−1(I-Q)^{-1} が (2) の Green 関数を並べたものに一致することを確かめよ。
解答

(1) 1→2→11\to2\to1 なので 1↔21\leftrightarrow2 である。同様に 3↔43\leftrightarrow4 である。状態1から3へは行けるが、3 からは {3,4}\{3,4\} を出ない。よってクラスは {1,2}\{1,2\} と {3,4}\{3,4\} の2つである。

  • {3,4}\{3,4\} は再帰的で周期2。 閉じた有限のクラスなので、系 15.6 から再帰的である。3 と 4 を決定的に往復するので、p33(n)>0p^{(n)}_{33}>0 となるのは nn が偶数のときだけである。
  • {1,2}\{1,2\} は過渡的で周期1。 p13>0p_{13}>0 なので閉じていない。系 15.6 (1) の対偶から過渡的である。p22>0p_{22}>0 なので周期は 1 である。

(2) まず f22f_{22} を求める。2 に戻る道は2通りある。

  1. 1歩目でその場に留まる道。確率は 14\frac14 である。
  2. 1 に移ってから、次の1歩で 2 に戻る道。1 からは 2 か 3 にしか行けず、3 に行けば戻れない。確率は

p21 p12=12⋅12=14p_{21}\,p_{12}=\tfrac12\cdot\tfrac12=\tfrac14

である。よって

f22=14+14=12,G(2,2)=11−f22=2.f_{22}=\tfrac14+\tfrac14=\tfrac12,\qquad G(2,2)=\frac1{1-f_{22}}=2.

次に f11f_{11} を求める。1 に戻るには、まず確率 12\frac12 で 2 に行き、2 から 4 より先に 1 に行く必要がある。2 では毎回、1・2・4 に 12,14,14\frac12,\frac14,\frac14 で移る。留まる分を除くと、1 が先になる確率は

1/23/4=23\frac{1/2}{3/4}=\frac23

である。よって

f11=12⋅23=13,G(1,1)=11−f11=32.f_{11}=\tfrac12\cdot\tfrac23=\tfrac13,\qquad G(1,1)=\frac1{1-f_{11}}=\frac32.

1 から 2 に達するのは、最初に 2 に行くときだけである。よって f12=12f_{12}=\frac12 で、定理 15.3 から

G(1,2)=f12G(2,2)=1G(1,2)=f_{12}G(2,2)=1

である。

(3) 過渡的な部分の行列と行列式は

Q=(0121214),det⁡(I−Q)=1⋅34−14=12Q=\begin{pmatrix}0&\frac12\\ \frac12&\frac14\end{pmatrix},\qquad \det(I-Q)=1\cdot\frac34-\frac14=\frac12

なので

(I−Q)−1=2(3412121)=(32112).(I-Q)^{-1}=2\begin{pmatrix}\frac34&\frac12\\[2pt]\frac12&1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\frac32&1\\[2pt]1&2\end{pmatrix}.

これは Green 関数を並べた行列

(G(1,1)G(1,2)G(2,1)G(2,2)),G(2,1)=f21G(1,1)=23⋅32=1\begin{pmatrix}G(1,1)&G(1,2)\\G(2,1)&G(2,2)\end{pmatrix},\qquad G(2,1)=f_{21}G(1,1)=\frac23\cdot\frac32=1

に一致する。過渡的な状態どうしの nn ステップの遷移確率は QnQ^n の成分である。よって G=∑nQn=(I−Q)−1G=\sum_nQ^n=(I-Q)^{-1} となるのは当然である。この関係は §15.2 で吸収の計算に使う。

1次元のランダムウォーク

0<p<10<p<1 と q=1−pq=1-p を使い、整数の上の単純ランダムウォークを

pi,i+1=p,pi,i−1=qp_{i,i+1}=p,\qquad p_{i,i-1}=q

で定める。既約で、周期は 2 である。原点に 2n2n ステップで戻るには、右と左を nn 回ずつ選べばよいので

p00(2n)=(2nn)(pq)n,p00(2n+1)=0(15.10)p^{(2n)}_{00}=\binom{2n}{n}(pq)^n,\qquad p^{(2n+1)}_{00}=0\tag{15.10}

である。Stirling の公式 n!∼2πn (n/e)nn!\sim\sqrt{2\pi n}\,(n/\mathrm{e})^n を使うと

(2nn)∼4nπn,p00(2n)∼(4pq)nπn.\binom{2n}{n}\sim \frac{4^n}{\sqrt{\pi n}},\qquad p^{(2n)}_{00}\sim\frac{(4pq)^n}{\sqrt{\pi n}}.

ここで 4pq=1−(p−q)2≤14pq=1-(p-q)^2\le1 で、等号は p=q=12p=q=\frac12 のときだけである。

  • p≠12p\ne\frac12 なら、級数は等比級数で抑えられて収束する。
  • p=12p=\frac12 なら、∑n−1/2=∞\sum n^{-1/2}=\infty で発散する。

よって次が分かる。

定理 15.7(1次元のランダムウォーク ★★★)

Z\mathbb{Z} 上の単純ランダムウォークについて、次が成り立つ。

  1. p=12p=\frac12 のとき再帰的である。
  2. p≠12p\ne\frac12 のとき過渡的である。

母関数は

P00(s)=11−4pqs2,F00(s)=1−1−4pqs2(∣s∣<1)(15.11)P_{00}(s)=\frac{1}{\sqrt{1-4pqs^2}},\qquad F_{00}(s)=1-\sqrt{1-4pqs^2}\qquad(\left\vert s\right\vert <1)\tag{15.11}

で、原点に戻る確率は f00=1−∣p−q∣f_{00}=1-\left\vert p-q\right\vert である。

証明

前半は上で示した。母関数には二項級数

(1−x)−1/2=∑n(2nn)(x4)n(∣x∣<1)(1-x)^{-1/2}=\sum_n\binom{2n}{n}\Bigl(\frac x4\Bigr)^n\qquad(\left\vert x\right\vert <1)

を使う。x=4pqs2x=4pqs^2 を入れれば、(15.10) から P00P_{00} が得られる。(15.8) から F00=1−1/P00F_{00}=1-1/P_{00} である。s↑1s\uparrow1 とすると

f00=1−1−4pq=1−(p−q)2=1−∣p−q∣f_{00}=1-\sqrt{1-4pq}=1-\sqrt{(p-q)^2}=1-\left\vert p-q\right\vert

となる。

次に、第7章 確認テスト 7.4-5 で前提にした「+1+1 への到達」を示す。

定理 15.8(+1+1 への到達 ★★★)

原点から出発する単純ランダムウォークについて、T1T_1 の確率母関数は

Φ(s)=E0[sT1]=1−1−4pqs22qs(0<s<1)(15.12)\Phi(s)=E_0\bigl[s^{T_1}\bigr]=\frac{1-\sqrt{1-4pqs^2}}{2qs}\qquad(0<s<1)\tag{15.12}

である(T1=∞T_1=\infty の上では sT1=0s^{T_1}=0 と読む)。したがって

P0(T1<∞)=min⁡(1,pq)P_0(T_1<\infty)=\min\Bigl(1,\frac pq\Bigr)

で、とくに対称な場合(p=12p=\frac12)は確率 1 で到達する。平均到達時間は次のとおりである。

  1. p>qp>q なら E0[T1]=1/(p−q)E_0[T_1]=1/(p-q) である。
  2. p=qp=q なら E0[T1]=∞E_0[T_1]=\infty である。
証明

最初の1歩で場合を分ける。

  1. 1歩目が右。 X1=+1X_1=+1 なら T1=1T_1=1 である。
  2. 1歩目が左。 X1=−1X_1=-1 なら、まず 0 に戻り、そこから +1+1 に達しなければならない。遷移確率は平行移動で変わらない。よって −1-1 から 0 に達するまでの時間は、T1T_1 と同じ分布をもつ。 0 に戻った時刻は停止時刻である。強マルコフ性 (15.4) により、そこから +1+1 に達するまでの時間は、それまでの時間と独立で、やはり T1T_1 と同じ分布をもつ。

したがって、1歩目が左のとき T1T_1 は 1+T′+T′′1+T'+T'' と同じ分布に従う。ここで T′,T′′T',T'' は T1T_1 の独立な複製である。母関数で書くと

Φ(s)=ps+qs Φ(s)2(15.13)\Phi(s)=ps+qs\,\Phi(s)^2\tag{15.13}

を得る。複製のどちらかが ∞\infty なら和も ∞\infty である。これは s∞=0s^{\infty}=0 の読み方と整合する。これは Φ\Phi の2次方程式 qsΦ2−Φ+ps=0qs\Phi^2-\Phi+ps=0 で、根は

Φ(s)=1±1−4pqs22qs\Phi(s)=\frac{1\pm\sqrt{1-4pqs^2}}{2qs}

である。T1≥1T_1\ge1 なので 0≤Φ(s)≤s0\le\Phi(s)\le s である。よって s↓0s\downarrow0 で Φ\Phi は 0 に近づかなければならない。

++ の根は s↓0s\downarrow0 で発散するので、マイナスの根が正しい。これで (15.12) を得る。両辺は ss について連続なので、根の選び方は (0,1)(0,1) 全体で変わらない。

s↑1s\uparrow1 とすると、単調収束定理により Φ(s)↑P0(T1<∞)\Phi(s)\uparrow P_0(T_1<\infty) で、

P0(T1<∞)=1−∣p−q∣2q={2q2q=1(p≥q),2p2q=pq(p<q)P_0(T_1<\infty)=\frac{1-\left\vert p-q\right\vert }{2q} =\begin{cases}\dfrac{2q}{2q}=1&(p\ge q),\\[8pt]\dfrac{2p}{2q}=\dfrac pq&(p<q)\end{cases}

となる。平均は Φ′(1−)\Phi'(1-) である。

p>qp>q のときを考える。(15.13) を微分して、s=1s=1 と Φ(1)=1\Phi(1)=1 を入れる。

Φ′=p+qΦ2+2qsΦΦ′Φ′(1)(1−2q)=p+q=1\begin{aligned}\Phi'&=p+q\Phi^2+2qs\Phi\Phi'\\ \Phi'(1)(1-2q)&=p+q=1\end{aligned}

1−2q=p−q1-2q=p-q なので E0[T1]=1/(p−q)E_0[T_1]=1/(p-q) である。

p=q=12p=q=\frac12 のときは Φ(s)=(1−1−s2)/s\Phi(s)=(1-\sqrt{1-s^2})/s で、商の微分から

Φ′(s)=1s2(s21−s2−1+1−s2) ⟶ ∞(s↑1)\Phi'(s)=\frac{1}{s^2}\Bigl(\frac{s^2}{\sqrt{1-s^2}}-1+\sqrt{1-s^2}\Bigr)\ \longrightarrow\ \infty\qquad(s\uparrow1)

となる。単調収束定理から

E0[T1]=∑nnP0(T1=n)=lim⁡s↑1Φ′(s)=∞E_0[T_1]=\sum_nnP_0(T_1=n)=\lim_{s\uparrow1}\Phi'(s)=\infty

である。

対称な場合の結論は「+1+1 には確率 1 で達するが、達するまでの平均時間は無限大」である。これは第7章 確認テスト 7.4-5 で Wald の等式から導いた E[N]=∞E[N]=\infty と一致する。

また、再帰性からも P0(T1<∞)=1P_0(T_1<\infty)=1 が出る。対称なランダムウォークは既約で、原点は再帰的である。よって命題 15.5 から f01=1f_{01}=1 である。

図

図 15.1 Z\mathbb{Z} 上の単純ランダムウォークで、原点に戻る確率 f00f_{00}(実線)と +1+1 に達する確率 P0(T1<∞)=min⁡(1,p/q)P_0(T_1<\infty)=\min(1,p/q)(破線)。f00=1f_{00}=1 となるのは p=12p=\frac12 の1点だけである。p>12p>\frac12 では +1+1 には必ず達するが、原点には確率 1−(p−q)1-(p-q) でしか戻らない。

多次元のランダムウォーク

Zd\mathbb{Z}^d 上の対称な単純ランダムウォークは、各ステップで 2d2d 個の隣の点のどれかへ等確率で移る。2次元と3次元を調べる。

定理 15.9(Pólya の定理 ★★★)

Zd\mathbb{Z}^d 上の対称な単純ランダムウォークについて、次が成り立つ。

  1. d=1,2d=1,2 で再帰的である。
  2. d=3d=3 で過渡的である。d≥4d\ge4 でも過渡的である。
証明

d=2d=2。 位置を (Xn,Yn)(X_n,Y_n) とし、座標を45度回して

Un=Xn+Yn,Vn=Xn−YnU_n=X_n+Y_n,\qquad V_n=X_n-Y_n

と置く。1歩の変位は (±1,0),(0,±1)(\pm1,0),(0,\pm1) の4通りである。これに対応する (U,V)(U,V) の変位は (+1,+1),(−1,−1),(+1,−1),(−1,+1)(+1,+1),(-1,-1),(+1,-1),(-1,+1) で、どれも等確率である。

したがって、新しい2つの座標の変位は、それぞれ等確率で +1+1 か −1-1 をとる。両者は互いに独立である。つまり UnU_n と VnV_n は独立な1次元の対称ランダムウォークである。原点に戻るのは U2n=V2n=0U_{2n}=V_{2n}=0 のときなので

p00(2n)=((2nn)2−2n)2∼1πn.p^{(2n)}_{00}=\Bigl(\binom{2n}{n}2^{-2n}\Bigr)^2\sim\frac{1}{\pi n}.

∑1/n=∞\sum1/n=\infty なので再帰的である。

d=3d=3。 2n2n ステップで原点に戻るのは、3つの軸の正の向きと負の向きを同じ回数ずつ選ぶときである。その回数を軸ごとに i,j,ki,j,k 回(i+j+k=ni+j+k=n)とすると

p00(2n)=∑i+j+k=n(2n)!(i! j! k!)2 6−2n=(2nn)2−2n∑i+j+k=n(n!i! j! k!3−n)2.p^{(2n)}_{00}=\sum_{i+j+k=n}\frac{(2n)!}{(i!\,j!\,k!)^2}\,6^{-2n} =\binom{2n}{n}2^{-2n}\sum_{i+j+k=n}\Bigl(\frac{n!}{i!\,j!\,k!}3^{-n}\Bigr)^2.

和の中の cijk=n!i!j!k!3−nc_{ijk}=\frac{n!}{i!j!k!}3^{-n} は3項分布の確率なので、合計は 1 である。よって

∑cijk2≤max⁡cijk∑cijk=max⁡cijk\sum c_{ijk}^2\le\max c_{ijk}\sum c_{ijk}=\max c_{ijk}

である。3項分布の確率が最大になるのは、3つの回数が n/3n/3 に最も近いときである。Stirling の公式から、nn によらない定数 CC を使って次のように評価できる。

max⁡cijk≤Cn\max c_{ijk}\le \frac Cn

(2nn)2−2n≤1/n\binom{2n}{n}2^{-2n}\le1/\sqrt{n} と合わせて

p00(2n)≤Cn3/2,∑np00(2n)<∞p^{(2n)}_{00}\le\frac{C}{n^{3/2}},\qquad\sum_np^{(2n)}_{00}<\infty

となり、過渡的である。d≥4d\ge4 では、最初の3成分に注目した同様の評価で過渡的であることが示せる。

3次元の Green 関数の値は、数値計算で G(0,0)≈1.5164G(0,0)\approx1.5164 と求まる。原点に戻る確率は

f00=1−1G(0,0)≈0.340f_{00}=1-\frac1{G(0,0)}\approx0.340

である。3次元の対称なランダムウォークは、約 66%66\% の確率で原点に二度と戻らない。

例題 15.2 偏りのあるランダムウォークの数値 ★★

オリジナルZ\mathbb{Z} 上の単純ランダムウォークで p=0.6p=0.6 とする。X0=0X_0=0 のとき次を求めよ。

  1. 原点に戻る確率 f00f_{00} と、原点を訪れる回数の期待値 G(0,0)G(0,0)。後者は (15.11) からも計算して一致を確かめよ。
  2. +1+1 に達する確率と、達するまでの平均時間。
  3. −1-1 に達する確率。
解答

(1) 定理 15.7 と定理 15.3 から

f00=1−∣0.6−0.4∣=0.8,G(0,0)=11−0.8=5f_{00}=1-\left\vert 0.6-0.4\right\vert =0.8,\qquad G(0,0)=\frac1{1-0.8}=5

である。母関数から計算しても

G(0,0)=lim⁡s↑1P00(s)=(1−4pq)−1/2=(1−0.96)−1/2=0.04−1/2=5G(0,0)=\lim_{s\uparrow1}P_{00}(s)=(1-4pq)^{-1/2}=(1-0.96)^{-1/2}=0.04^{-1/2}=5

で、一致する。

(2) p>qp>q なので、定理 15.8 から

P0(T1<∞)=1,E0[T1]=1p−q=10.2=5P_0(T_1<\infty)=1,\qquad E_0[T_1]=\frac1{p-q}=\frac1{0.2}=5

である。

(3) 左右を入れ替えると、−1-1 に達する確率は、勝ち負けの確率を入れ替えた式で

min⁡(1,qp)=0.40.6=23\min\Bigl(1,\frac qp\Bigr)=\frac{0.4}{0.6}=\frac23

である。(1) の戻る確率と合わせて確かめておく。原点に戻るのは、最初に右へ行ってから 0 に戻るか、左へ行ってから 0 に戻るときである。それぞれの確率を掛けて足すと

f00=0.6⋅23+0.4⋅1=0.8f_{00}=0.6\cdot\tfrac23+0.4\cdot1=0.8

となり、(1) と一致する。

確認テスト

オリジナル

  1. 15.1-1 状態空間が有限のマルコフ連鎖では、すべての状態が過渡的になることはない。その理由を述べよ。
  2. 15.1-2 状態空間 S={a,b,c}S=\{a,b,c\} 上の連鎖を、次の遷移確率で定める。

paa=13,pab=23,pba=12,pbc=12,pcc=1p_{aa}=\tfrac13,\quad p_{ab}=\tfrac23,\quad p_{ba}=\tfrac12,\quad p_{bc}=\tfrac12,\quad p_{cc}=1

戻る確率 faaf_{aa} を求めよ。Green 関数 G(a,a)G(a,a) と G(a,b)G(a,b) を求めよ。また、aa から出発して cc に吸収されるまでの時間の期待値を求めよ。3. 15.1-3 整数の上の単純ランダムウォークで p>qp>q とする。(15.12) を直接 ss で微分して s↑1s\uparrow1 とせよ。これで E0[T1]=1/(p−q)E_0[T_1]=1/(p-q) を確かめよ。4. 15.1-4 平面の格子 Z2\mathbb{Z}^2 上の対称な単純ランダムウォークについて、次の2つが等しいことを示せ。

p00(2n)=(2nn)24−2n,∑i+j=n(2n)!(i! j!)24−2np^{(2n)}_{00}=\binom{2n}{n}^24^{-2n},\qquad \sum_{i+j=n}\frac{(2n)!}{(i!\,j!)^2}4^{-2n}

恒等式 ∑i(ni)2=(2nn)\sum_i\binom ni^2=\binom{2n}{n} を使ってよい。5. 15.1-5 整数の上で、各ステップで確率 12\frac12 でその場に留まり、確率 14\frac14 ずつで左右に1動く連鎖を考える。p00(n)=(2nn)4−np^{(n)}_{00}=\binom{2n}{n}4^{-n} を示せ。また原点が再帰的であることを示せ。

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