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定常分布と極限定理

2026年10月15日18分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第15章 マルコフ連鎖の長時間の振る舞い
目次
  1. 定常分布と不変測度
  2. 1周期の滞在回数による不変測度
  3. 正再帰と平均再帰時間
  4. 極限定理
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第15章 §15.3 ★★★ 既約で正再帰的な連鎖には定常分布がただ1つあり、その値は平均再帰時間の逆数で、非周期的なら遷移確率がそこへ収束する

定常分布と不変測度

定義 15.15(不変測度と定常分布 ★★★)

非負の行ベクトル ν=(νi)i∈S\nu=(\nu_i)_{i\in S} が

νj=∑i∈Sνipij(j∈S),すなわちνP=ν(15.23)\nu_j=\sum_{i\in S}\nu_ip_{ij}\qquad(j\in S),\qquad\text{すなわち}\qquad\nu P=\nu\tag{15.23}

を満たし、すべての成分が 0 ではないとき、ν\nu を不変測度と呼ぶ。総和が ∑iνi=1\sum_i\nu_i=1 の不変測度を定常分布と呼び、π\pi と書く。

初期分布が π\pi なら、時刻 1 の分布は πP=π\pi P=\pi である。帰納法から、どの時刻でも分布は π\pi のままである。定常分布は、連鎖を走らせても変わらない分布である。

例

2状態の連鎖。 状態空間を S={1,2}S=\{1,2\} とし、遷移確率行列を

P=(1−aab1−b)(0<a,b≤1, a+b<2)P=\begin{pmatrix}1-a&a\\b&1-b\end{pmatrix}\qquad(0<a,b\le1,\ a+b<2)

とする。πP=π\pi P=\pi の第1成分は

π1(1−a)+π2b=π1,すなわちaπ1=bπ2\pi_1(1-a)+\pi_2b=\pi_1,\qquad\text{すなわち}\qquad a\pi_1=b\pi_2

である。総和が 1 であることと合わせて

π=(ba+b, aa+b)\pi=\Bigl(\frac{b}{a+b},\ \frac{a}{a+b}\Bigr)

である。第14章 §14.4 の例題では、閉じた形

p11(n)=ba+b+aa+b(1−a−b)np^{(n)}_{11}=\frac{b}{a+b}+\frac{a}{a+b}(1-a-b)^n

を求めた。∣1−a−b∣<1\left\vert 1-a-b\right\vert <1 なら、p11(n)→π1p^{(n)}_{11}\to\pi_1 が等比数列の速さで起きる。

a=b=1a=b=1 は決定的に往復する連鎖で、1−a−b=−11-a-b=-1 となる。このとき p11(n)p^{(n)}_{11} は 0 と 1 を交互にとって収束しない。この連鎖の周期は 2 である。

1周期の滞在回数による不変測度

再帰的な状態 kk を1つ固める。kk から出発して戻ってくるまでを1周期と呼ぶ。1周期のあいだに状態 ii を訪れる回数の期待値を

γik=Ek[∑n=0Tk−11{Xn=i}](15.24)\gamma^k_i=E_k\Bigl[\sum_{n=0}^{T_k-1}\mathbf 1_{\{X_n=i\}}\Bigr]\tag{15.24}

と置く。γkk=1\gamma^k_k=1 である(時刻 0 だけが数えられる)。また ∑iγik=Ek[Tk]\sum_i\gamma^k_i=E_k[T_k] である。

定理 15.16(不変測度の存在 ★★★)

連鎖が既約で再帰的なら、γk\gamma^k は不変測度である。さらに、すべての成分で 0<γik<∞0<\gamma^k_i<\infty である。

証明

再帰性から、Tk<∞T_k<\infty が PkP_k-a.s. で成り立つ。両端で X0=XTk=kX_0=X_{T_k}=k なので、数える範囲を1つずらしても回数は変わらない。

{0,…,Tk−1} → {1,…,Tk}\{0,\dots,T_k-1\}\ \to\ \{1,\dots,T_k\}

よって

γjk=Ek[∑n=1Tk1{Xn=j}]=∑n=1∞Pk(Xn=j, n≤Tk)\gamma^k_j=E_k\Bigl[\sum_{n=1}^{T_k}\mathbf 1_{\{X_n=j\}}\Bigr]=\sum_{n=1}^\infty P_k(X_n=j,\ n\le T_k)

である。事象 {n≤Tk}={Tk≤n−1}c\{n\le T_k\}=\{T_k\le n-1\}^c は Fn−1\mathcal F_{n-1} に属する。そこで1つ前の時刻の状態で分けて、マルコフ性を使うと

Pk(Xn=j, n≤Tk)=∑iPk(Xn−1=i, n≤Tk) pijP_k(X_n=j,\ n\le T_k)=\sum_iP_k(X_{n-1}=i,\ n\le T_k)\,p_{ij}

となる。nn について足し、m=n−1m=n-1 と置き直すと

γjk=∑ipij∑m=0∞Pk(Xm=i, m≤Tk−1)=∑iγikpij\gamma^k_j=\sum_ip_{ij}\sum_{m=0}^\infty P_k(X_m=i,\ m\le T_k-1)=\sum_i\gamma^k_ip_{ij}

となり、γkP=γk\gamma^kP=\gamma^k である。

既約なので、ある n,mn,m で

pki(n)>0,pik(m)>0p^{(n)}_{ki}>0,\qquad p^{(m)}_{ik}>0

となる。不変性を nn 回繰り返すと γkPn=γk\gamma^kP^n=\gamma^k なので

γik≥γkk pki(n)=pki(n)>0,1=γkk≥γik pik(m)\gamma^k_i\ge\gamma^k_k\,p^{(n)}_{ki}=p^{(n)}_{ki}>0,\qquad 1=\gamma^k_k\ge\gamma^k_i\,p^{(m)}_{ik}

であり、後者から γik≤1/pik(m)<∞\gamma^k_i\le1/p^{(m)}_{ik}<\infty である。

定理 15.17(不変測度の一意性 ★★★)

連鎖が既約であるとし、ν\nu を νk=1\nu_k=1 を満たす不変測度とする。

  1. 成分ごとに ν≥γk\nu\ge\gamma^k である。
  2. さらに連鎖が再帰的なら、ν=γk\nu=\gamma^k である。
証明

不変性の式で i=ki=k の項を分けると

νj=pkj+∑i1≠kνi1pi1j\nu_j=p_{kj}+\sum_{i_1\ne k}\nu_{i_1}p_{i_1j}

である。右辺の νi1\nu_{i_1} に同じ式を代入することを nn 回繰り返すと

νj=pkj+∑i1≠kpki1pi1j+⋯+∑i1,…,in−1≠kpkin−1⋯pi1j+∑i1,…,in≠kνinpinin−1⋯pi1j\nu_j=p_{kj}+\sum_{i_1\ne k}p_{ki_1}p_{i_1j}+\cdots+\sum_{i_1,\dots,i_{n-1}\ne k}p_{ki_{n-1}}\cdots p_{i_1j}+\sum_{i_1,\dots,i_n\ne k}\nu_{i_n}p_{i_ni_{n-1}}\cdots p_{i_1j}

となる。最後の項は非負なので捨てられる。残りの第 mm 項は、出発点から出て途中で戻らずに、その時刻に jj にいる確率である。式では Pk(Xm=j, Tk≥m)P_k(X_m=j,\ T_k\ge m) と書ける。よって j≠kj\ne k について

νj≥∑m=1nPk(Xm=j, Tk≥m) →n→∞ Ek[∑m=1Tk1{Xm=j}]=γjk\nu_j\ge\sum_{m=1}^nP_k(X_m=j,\ T_k\ge m)\ \xrightarrow{n\to\infty}\ E_k\Bigl[\sum_{m=1}^{T_k}\mathbf 1_{\{X_m=j\}}\Bigr]=\gamma^k_j

である(j=kj=k では両辺とも 1)。

再帰的なら、定理 15.16 から γk\gamma^k も不変測度である。よって差 μ=ν−γk\mu=\nu-\gamma^k は非負で、

μP=μ,μk=0\mu P=\mu,\qquad \mu_k=0

を満たす。既約なので、どの状態から見ても、ある時刻 nn で pik(n)>0p^{(n)}_{ik}>0 となる。すると

0=μk=∑jμjpjk(n)≥μipik(n)0=\mu_k=\sum_j\mu_jp^{(n)}_{jk}\ge\mu_ip^{(n)}_{ik}

から μi=0\mu_i=0 である。よって ν=γk\nu=\gamma^k である。

正再帰と平均再帰時間

定義 15.18(正再帰と零再帰 ★★★)

状態 ii の平均再帰時間を mi=Ei[Ti]∈[1,∞]m_i=E_i[T_i]\in[1,\infty] と書く。再帰的な状態を次の2つに分ける。

  1. mi<∞m_i<\infty のとき、正再帰的であるという。
  2. mi=∞m_i=\infty のとき、零再帰的であるという。

過渡的な状態では Pi(Ti=∞)>0P_i(T_i=\infty)>0 なので mi=∞m_i=\infty である。

定理 15.19(定常分布の存在と一意性 ★★★)

既約な連鎖について、次の3つは同値である。

  1. すべての状態が正再帰的である。
  2. ある状態が正再帰的である。
  3. 定常分布が存在する。

これらが成り立つとき、定常分布はただ1つで、

πi=1mi(i∈S)(15.25)\pi_i=\frac1{m_i}\qquad(i\in S)\tag{15.25}

である。

証明

(1) ⇒ (2) は明らかである。

(2) ⇒ (3):kk が正再帰的なら再帰的で、定理 15.4 から連鎖全体が再帰的である。定理 15.16 の不変測度の総和は

∑iγik=Ek[Tk]=mk<∞\sum_i\gamma^k_i=E_k[T_k]=m_k<\infty

なので、π=γk/mk\pi=\gamma^k/m_k は定常分布である。

(3) ⇒ (1):π\pi を定常分布とする。πj>0\pi_j>0 となる状態 jj がある。既約なので、どの状態 kk に対しても、ある時刻で pjk(n)>0p^{(n)}_{jk}>0 となる。よって

πk=∑iπipik(n)≥πjpjk(n)>0\pi_k=\sum_i\pi_ip^{(n)}_{ik}\ge\pi_jp^{(n)}_{jk}>0

である。ν=π/πk\nu=\pi/\pi_k は νk=1\nu_k=1 の不変測度である。定理 15.17 の前半から ν≥γk\nu\ge\gamma^k なので

mk=∑iγik≤∑iπiπk=1πk<∞m_k=\sum_i\gamma^k_i\le\sum_i\frac{\pi_i}{\pi_k}=\frac{1}{\pi_k}<\infty

となる。よって kk は正再帰的である。mk<∞m_k<\infty なら Tk<∞T_k<\infty a.s. なので、再帰的でもある。

最後に一意性と (15.25) を示す。連鎖は再帰的なので、定理 15.17 の後半から π/πk=γk\pi/\pi_k=\gamma^k である。総和をとると 1/πk=mk1/\pi_k=m_k を得る。これはどの定常分布にも成り立つので、定常分布はただ1つである。

(15.25) は「平均して mim_i ステップに1回訪れるので、その状態にいる時間の割合は 1/mi1/m_i である」と読める。この読み方は §15.4 のエルゴード定理で正当化される。定理の証明からは、次の関係も分かる。

γik=πiπk\gamma^k_i=\frac{\pi_i}{\pi_k}

つまり、2つの状態に滞在する割合の比は、kk からの1周期のあいだに ii を訪れる平均回数に等しい。

系 15.20(有限の既約な連鎖 ★★★)

状態空間が有限の既約な連鎖は正再帰的で、定常分布がただ1つ存在する。

証明

系 15.6 から再帰的である。定理 15.16 の γk\gamma^k は有限個の有限な値をもつので、和 mk=∑iγikm_k=\sum_i\gamma^k_i も有限である。

整数の上の対称なランダムウォークは再帰的である。このとき定数 νi≡1\nu_i\equiv1 が不変測度になる。実際

∑iνipij=12+12=1\sum_i\nu_ip_{ij}=\frac12+\frac12=1

である。定理 15.17 から、不変測度は定数倍を除いてこれに限られる。総和が無限大なので、定常分布は存在しない。

定理 15.19 から零再帰的で、m0=∞m_0=\infty である。これは定理 15.8 の E0[T1]=∞E_0[T_1]=\infty と整合する。1歩目で左右どちらに出ても、戻るまでの平均は 1+E0[T1]1+E_0[T_1] だからである。

極限定理

定常分布があっても、周期が 2 以上なら pij(n)p^{(n)}_{ij} は収束しない(2状態の往復の例)。非周期的なら収束する。

第14章 §14.5 で示した次の事実を使う。既約で非周期的な連鎖では、各状態に対し、ある n0(i)n_0(i) から先のすべての時刻で pii(n)>0p^{(n)}_{ii}>0 である。これと pij(a)>0p^{(a)}_{ij}>0 となる aa を組み合わせる。n≥n0(i)+an\ge n_0(i)+a なら

pij(n)≥pii(n−a) pij(a)>0p^{(n)}_{ij}\ge p^{(n-a)}_{ii}\,p^{(a)}_{ij}>0

となる。すなわち、どの2状態についても、十分大きなすべての nn で pij(n)>0p^{(n)}_{ij}>0 である。

定理 15.21(収束定理 ★★★)

連鎖が既約・非周期的で、定常分布 π\pi をもつとする。初期分布 μ\mu によらず

dTV(Pμ(Xn∈⋅ ), π)=12∑j∣Pμ(Xn=j)−πj∣ ⟶ 0(n→∞)(15.26)d_{\mathrm{TV}}\bigl(P_\mu(X_n\in\cdot\,),\ \pi\bigr)=\frac12\sum_j\bigl\lvert P_\mu(X_n=j)-\pi_j\bigr\rvert\ \longrightarrow\ 0\qquad(n\to\infty)\tag{15.26}

が成り立つ。とくに、すべての i,ji,j について

pij(n)→πj=1mjp^{(n)}_{ij}\to\pi_j=\frac1{m_j}

である。

証明

結合(カップリング)の構成。 初期分布 μ\mu の連鎖 (Xn)(X_n) を用意する。これと独立に、定常分布から出発する連鎖 (Yn)(Y_n) を走らせる。組 Wn=(Xn,Yn)W_n=(X_n,Y_n) は、状態空間 S×SS\times S 上のマルコフ連鎖で、遷移確率は

p~(i,k)(j,l)=pij pkl\tilde p_{(i,k)(j,l)}=p_{ij}\,p_{kl}

である。

WW は既約で正再帰的。 上で述べた事実から、十分大きなすべての nn で

p~(i,k)(j,l)(n)=pij(n) pkl(n)>0\tilde p^{(n)}_{(i,k)(j,l)}=p^{(n)}_{ij}\,p^{(n)}_{kl}>0

となる。よって WW は既約である(ここで非周期性を使った)。積 π~(i,k)=πiπk\tilde\pi_{(i,k)}=\pi_i\pi_k は、次を満たすので定常分布である。

∑i,kπiπk pij pkl=πjπl\sum_{i,k}\pi_i\pi_k\,p_{ij}\,p_{kl}=\pi_j\pi_l

定理 15.19 から WW は正再帰的で、とくに再帰的である。

出会う時刻は有限。 状態 bb を1つ固め、2つの連鎖が出会う時刻を T=inf⁡{n≥0:Xn=Yn}T=\inf\{n\ge0:X_n=Y_n\} と置く。

出会う時刻 TT は、組の連鎖が (b,b)(b,b) に達する時刻以下である。WW は既約で再帰的なので、命題 15.5 からその点に確率 1 で達する。よって P(T<∞)=1P(T<\infty)=1 である。

出会ったあとは同じ法則。 TT は WW の停止時刻である。T≤nT\le n の上では XT=YTX_T=Y_T である。強マルコフ性(第14章 §14.4)を組の連鎖に使い、出会った時刻 mm と場所 ii で分けると

P(Xn=j, T≤n)=∑m=0n∑iP(T=m, Xm=i) pij(n−m)=P(Yn=j, T≤n)P(X_n=j,\ T\le n)=\sum_{m=0}^n\sum_iP(T=m,\ X_m=i)\,p^{(n-m)}_{ij}=P(Y_n=j,\ T\le n)

となる(真ん中の式は XX と YY について対称である)。

評価。 YnY_n の分布は π\pi なので、

∣Pμ(Xn=j)−πj∣=∣P(Xn=j, T>n)−P(Yn=j, T>n)∣≤P(Xn=j, T>n)+P(Yn=j, T>n)\bigl\lvert P_\mu(X_n=j)-\pi_j\bigr\rvert=\bigl\lvert P(X_n=j,\ T>n)-P(Y_n=j,\ T>n)\bigr\rvert\le P(X_n=j,\ T>n)+P(Y_n=j,\ T>n)

である。jj について足すと

∑j∣Pμ(Xn=j)−πj∣≤2P(T>n)→0\sum_j\bigl\lvert P_\mu(X_n=j)-\pi_j\bigr\rvert\le2P(T>n)\to0

となる。初期分布を μ=δi\mu=\delta_i とすれば pij(n)→πjp^{(n)}_{ij}\to\pi_j を得る。πj=1/mj\pi_j=1/m_j は定理 15.19 による。

証明の最後の評価は、第5章 §5.5 のカップリング不等式 dTV≤P(X≠Y)d_{\mathrm{TV}}\le P(X\ne Y) と同じ考え方である。収束の速さは、2つの連鎖が出会うまでの時間 TT の裾 P(T>n)P(T>n) で抑えられる。

定常分布が無い場合と周期がある場合

  • 過渡的な場合。 §15.1 の注意から pij(n)→0p^{(n)}_{ij}\to0 である。
  • 零再帰的な場合。 やはり pij(n)→0p^{(n)}_{ij}\to0 である。mj=∞m_j=\infty なので、1/mj=01/m_j=0 と読めば (15.26) と同じ形である。証明は結合の議論を精密にする必要があり、ここでは主張だけを述べる。Cesàro 平均の形 1n∑k<npij(k)→0\frac1n\sum_{k<n}p^{(k)}_{ij}\to0 は、§15.4 のエルゴード定理から出る。
  • 周期 d≥2d\ge2 の場合。 既約・正再帰的なら pjj(nd)→d/mjp^{(nd)}_{jj}\to d/m_j で、pij(n)p^{(n)}_{ij} そのものは収束しない。それでも Cesàro 平均は収束し、1n∑k<npij(k)→1/mj\frac1n\sum_{k<n}p^{(k)}_{ij}\to1/m_j を満たす(確認テスト 15.4-4)。

例題 15.5 グラフ上のランダムウォーク ★★

オリジナル頂点 1,2,3,41,2,3,4 と辺 {1,2},{1,3},{2,3},{3,4}\{1,2\},\{1,3\},\{2,3\},\{3,4\} からなるグラフの上で、各時刻に今いる頂点の隣の頂点を等確率で選んで移る連鎖を考える。

  1. 頂点 ii の次数(隣の頂点の数)を deg⁡i\deg i と書く。辺の数を EE と書く。一般のグラフについて、次が定常分布であることを示せ。

πi=deg⁡i2E\pi_i=\frac{\deg i}{2E} 2. この連鎖の定常分布と m4m_4 を求めよ。また、4 から出て 4 に戻るまでに頂点 3 を訪れる回数の期待値を求めよ。3. この連鎖は非周期的であることを示し、p44(n)p^{(n)}_{44} の極限を答えよ。

解答

(1) 遷移確率は、隣どうしなら pij=1/deg⁡ip_{ij}=1/\deg i で、そうでなければ 0 である。よって

∑iπipij=∑i: i∼jdeg⁡i2E⋅1deg⁡i=deg⁡j2E=πj\sum_i\pi_ip_{ij}=\sum_{i:\,i\sim j}\frac{\deg i}{2E}\cdot\frac1{\deg i}=\frac{\deg j}{2E}=\pi_j

である(i∼ji\sim j は隣どうしを表す)。各辺は両端の次数に1ずつ数えられるので、∑ideg⁡i=2E\sum_i\deg i=2E である。よって総和は 1 である。

(2) 次数と辺の数は

(deg⁡1,deg⁡2,deg⁡3,deg⁡4)=(2,2,3,1),E=4(\deg1,\deg2,\deg3,\deg4)=(2,2,3,1),\qquad E=4

なので、π=(28,28,38,18)\pi=(\frac28,\frac28,\frac38,\frac18) である。グラフは連結なので連鎖は既約で、定理 15.19 から m4=1/π4=8m_4=1/\pi_4=8 である。1周期のあいだの頂点 3 への平均滞在回数は γ34=π3/π4=3\gamma^4_3=\pi_3/\pi_4=3 である。

直接確かめる。4 から出ると必ず 3 に行き、3 を訪れるたびに確率 13\frac13 で 4 に戻る。よって、4 に戻るまでの 3 への訪問回数は成功確率 13\frac13 の幾何分布に従い、平均は 3 である。

(3) 頂点1を通る閉路として、長さ 3 の 1→2→3→11\to2\to3\to1 と、長さ 2 の 1→2→11\to2\to1 がある。よって p11(2)>0p^{(2)}_{11}>0 かつ p11(3)>0p^{(3)}_{11}>0 である。周期 d(1)d(1) は gcd⁡(2,3)=1\gcd(2,3)=1 を割り切る。

周期はクラスの性質なので、連鎖は非周期的である。定理 15.21 から p44(n)→π4=18p^{(n)}_{44}\to\pi_4=\frac18 である。図 15.3 に p44(n)p^{(n)}_{44} と p11(n)p^{(n)}_{11} の値を示す。最初は p44(1)=0p^{(1)}_{44}=0 のように振動するが、振れ幅は小さくなっていく。

図

図 15.3 例題 15.5 の連鎖の p44(n)p^{(n)}_{44}(丸)と p11(n)p^{(n)}_{11}(四角)。破線は極限 π4=18\pi_4=\frac18 と π1=14\pi_1=\frac14。

確認テスト

オリジナル

  1. 15.3-1 S={1,2}S=\{1,2\} で遷移確率行列が単位行列 P=IP=I のとき、すべての分布が定常分布になる。これが定理 15.19 の一意性と矛盾しない理由を1行で述べよ。
  2. 15.3-2 2状態の連鎖で a=0.3a=0.3、b=0.1b=0.1 とする。定常分布と m1m_1 を求めよ。また、次を満たす最小の nn を求めよ。

∣p11(n)−π1∣<0.01\lvert p^{(n)}_{11}-\pi_1\rvert<0.01 3. 15.3-3 {0,1,2,… }\{0,1,2,\dots\} 上の連鎖を、p<qp<q として次で定める。

pi,i+1=p(i≥0),pi,i−1=q(i≥1),p00=qp_{i,i+1}=p\quad(i\ge0),\qquad p_{i,i-1}=q\quad(i\ge1),\qquad p_{00}=q

πP=π\pi P=\pi を解いて定常分布を求めよ。また勝率が3分の1のときの π0\pi_0 と m0m_0 を求めよ。4. 15.3-4 有限の既約な連鎖で、各列の和も 1 である(二重確率行列)とする。定常分布は一様分布で、mi=∣S∣m_i=\left\vert S\right\vert であることを示せ。5. 15.3-5 整数の上の対称な単純ランダムウォークに、定常分布が存在しないことを示せ。ただし定理 15.17 は使わず、次の2つから示せ。

p0j(n)→0,πj=∑iπipij(n)p^{(n)}_{0j}\to0,\qquad \pi_j=\sum_i\pi_ip^{(n)}_{ij}

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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