tecktom.com

相変化への応用:GG の幾何学

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第2章 熱力学ポテンシャル
目次
  1. 相の選択: の低い方が勝つ
  2. 共存条件と Clausius–Clapeyron 式
  3. van der Waals 気体と Maxwell 構成
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

統計熱力学入門 第2章 §2.5 ★★★ 極小原理の第一の応用。相の選択・共存・Clausius–Clapeyron・Maxwell 構成。

相の選択:GG の低い方が勝つ

T,pT,p を固定したとき平衡では GG が最小になるから、同じ物質に複数の相(固体・液体・気体)がありうるとき、実現するのは1粒子あたりの Gibbs 自由エネルギー g=G/N=μg=G/N=\mu が最も低い相である。図2.3のように、圧力を固定して gg を温度の関数として描くと、各相の曲線の傾きは∂g/∂T=−s\partial g/\partial T = -s(1粒子あたりエントロピーの符号反転)で与えられる。液体は固体よりエントロピーが大きいから曲線の傾きはより急な右下がりであり、低温では固相の曲線が下、高温では液相の曲線が下になって、交点が融点 TmT_{\mathrm m} である。

図

図 2.3 圧力固定での2相の G(T)G(T)(模式図)。交点で実現する相が乗り換わり、乗り換え点では GG は連続だが傾き −S-S が跳ぶ。この一階微分の跳びが「一次相転移」の名前の由来である。

交点では GG 自体は連続だが、傾き −S-S が不連続に跳ぶ。エントロピーの跳び ΔS\Delta S は転移点で系に出入りする熱、すなわち潜熱 L=TΔSL=T\Delta S に対応する。同様に pp 方向の傾き ∂G/∂p=V\partial G/\partial p=V の跳びが体積変化 ΔV\Delta V である。一階微分が跳ぶ転移を一次相転移と呼ぶ。

共存条件と Clausius–Clapeyron 式

2相が共存する(どちらも消えずに混ざって釣り合う)条件は、粒子がどちらの相に居てもGG が変わらないこと、すなわち

μ1(T,p)=μ2(T,p)(2.9)\mu_1(T,p) = \mu_2(T,p)\tag{2.9}

である。これは (T,p)(T,p) 平面上の1本の曲線(共存線)を定める。共存線に沿って微小に (T,p)(T,p) を動かすと、式(2.9)は動かした先でも保たれるから、両辺の全微分が等しい。1粒子あたりの Gibbs–Duhem 関係式 dμ=−s dT+v dp\mathrm{d}\mu=-s\,\mathrm{d} T+v\,\mathrm{d} p(s,vs,v は1粒子あたりのエントロピーと体積)を両相に使うと

−s1 dT+v1 dp=−s2 dT+v2 dp-s_1\,\mathrm{d} T + v_1\,\mathrm{d} p = -s_2\,\mathrm{d} T + v_2\,\mathrm{d} p

となり、整理して

title=★★★ Clausius–Clapeyron 式

  dpdT∣共存=ΔsΔv=LT Δv  (2.10)\boxed{\;\frac{\mathrm{d} p}{\mathrm{d} T}\bigg|_{\text{共存}} = \frac{\Delta s}{\Delta v} = \frac{L}{T\,\Delta v}\;}\tag{2.10}

Δs=s2−s1\Delta s=s_2-s_1、Δv=v2−v1\Delta v=v_2-v_1 は相1から相2への跳び、L=TΔsL=T\Delta s は1粒子(または1モル)あたりの潜熱。共存線の傾きが、2相のエントロピー差と体積差の比だけで決まる。

この式は測定可能な量だけでできており、適用範囲が広い。たとえば氷は水より体積が大きい(Δv<0\Delta v<0)のに融解でエントロピーは増える(Δs>0\Delta s>0)から、氷と水の共存線は左に傾く。圧力をかけると氷が融ける(融点降下)という日常の事実が、式(2.10)の符号だけから読み取れる。van der Waals 気体の共存線について、式(2.10)の右辺と共存圧力の数値微分が一致することを確かめたのが検算 [6] である(還元温度 t=0.9t=0.9 で両者とも dpr/dt=3.071\mathrm{d} p_{\mathrm r}/\mathrm{d} t=3.071)。

例題(label=ex:fuji)

富士山頂で米が生煮えになる理由オリジナル水の蒸発の潜熱を L=40.7 kJ/molL=40.7\,\mathrm{kJ/mol}(温度依存は無視)、蒸気は理想気体とみなし、液体の体積は蒸気に比べて無視できるとする。

  1. (1) Clausius–Clapeyron 式(2.10)を積分し、飽和蒸気圧 p(T)p(T) の式を導け。
  2. (2) 富士山頂の気圧を 0.63 atm0.63\,\mathrm{atm} として、山頂での水の沸点を求めよ(海面での沸点は T0=373.15 KT_0=373.15\,\mathrm K、R=8.314 J/(mol K)R=8.314\,\mathrm{J/(mol\,K)})。
解答

(1) 蒸気1モルの体積を理想気体の状態方程式で vg=RT/pv_g=RT/p と書き、液体の体積を落とすとΔv≃RT/p\Delta v\simeq RT/p。式(2.10)に入れて

dpdT=LT⋅RT/p=LpRT2  ⟹  dpp=LR dTT2.\frac{\mathrm{d} p}{\mathrm{d} T} = \frac{L}{T\cdot RT/p} = \frac{Lp}{RT^2} \;\Longrightarrow\; \frac{\mathrm{d} p}{p} = \frac{L}{R}\,\frac{\mathrm{d} T}{T^2}.

両辺を (T0,p0)(T_0,p_0) から (T,p)(T,p) まで積分すると

ln⁡pp0=−LR(1T−1T0).\ln\frac{p}{p_0} = -\frac{L}{R}\Bigl(\frac{1}{T}-\frac{1}{T_0}\Bigr).

飽和蒸気圧は 1/T1/T に対して指数的に立ち上がる。これが積分形の Clausius–Clapeyron 式である。

(2) 沸騰は飽和蒸気圧が外圧に達したときに起こるから、p/p0=0.63p/p_0=0.63 を代入して TT について解く:

1T=1T0−RLln⁡pp0=1373.15−8.31440660×ln⁡0.63=2.680×10−3+9.45×10−5 K−1,\frac{1}{T} = \frac{1}{T_0} - \frac{R}{L}\ln\frac{p}{p_0} = \frac{1}{373.15} - \frac{8.314}{40660}\times\ln 0.63 = 2.680\times10^{-3} + 9.45\times10^{-5}\ \mathrm{K^{-1}},

よって T=360.4 K=87.3 ∘CT=360.4\,\mathrm K = 87.3\,^\circ\mathrm{C}(検算 [7])。沸点が 13 度下がるため、山頂では沸騰水でも米の澱粉が糊化しきらない。

van der Waals 気体と Maxwell 構成

★★★ 凸性の破れた等温線を極小原理が修復する仕組み。等面積則と二重接線の等価性。

相転移を状態方程式のレベルで見るために、van der Waals 気体を還元変数(臨界点の値で規格化した v=V/Vcv=V/V_{\mathrm c}、t=T/Tct=T/T_{\mathrm c}、p/pcp/p_{\mathrm c})で書く:

p(v,t)=8t3v−1−3v2.(2.11)p(v,t) = \frac{8t}{3v-1} - \frac{3}{v^2}.\tag{2.11}

t<1t<1 の等温線は図2.5のように S 字を描き、中央の区間では ∂p/∂v>0\partial p/\partial v>0 となる。体積を増やすと圧力が上がる状態は力学的に不安定であり(わずかな膨張が膨張を加速する)、実現しない。この不健全な区間を、FF 極小の原理が次のように修復する。

1粒子あたりの Helmholtz 自由エネルギー f(v)f(v) は p=−∂f/∂vp=-\partial f/\partial v を満たすから、等温線の情報は f(v)f(v) の傾きの情報である(式(2.11)の還元単位ではf(v)=−8t3ln⁡(3v−1)−3/vf(v)=-\tfrac{8t}{3}\ln(3v-1)-3/v に温度だけの定数を足したもの)。∂p/∂v>0\partial p/\partial v>0 の区間は ff が上に凸(f′′<0f''<0)の区間に対応する。ここで、与えられた平均体積 vv の系が一様である必要はないことに気づくのが本質である。系は体積 vℓv_\ell の液相と体積 vgv_g の気相に分離し、割合 λ:(1−λ)\lambda:(1-\lambda) で混ざることができる。このとき自由エネルギーは2点を結ぶ弦の上の値 λf(vℓ)+(1−λ)f(vg)\lambda f(v_\ell)+(1-\lambda)f(v_g) になるから、ff の凹んだ(上に凸の)区間では、曲線上の一様状態よりも弦の方が必ず低い。FF 極小の原理により系は自発的に相分離し、実現する自由エネルギーは曲線を下から支える共通接線(二重接線)に置き換わる(図2.4)。

図

図 2.4 van der Waals 気体の f(v)f(v)(t=0.9t=0.9)と二重接線。接点の間では、一様状態(曲線)より2相の混合(接線上の点)の方が ff が低いので、系は相分離する。接線の傾きが共存圧力 −ps-p_{\mathrm s} を与える。

二重接線の条件を数式にする。接点 vℓ,vgv_\ell,v_g で傾きが等しく、かつ弦の傾きとも等しいから

f′(vℓ)=f′(vg)=−ps,f(vg)−f(vℓ)=−ps (vg−vℓ).(2.12)f'(v_\ell)=f'(v_g)=-p_{\mathrm s},\qquad f(v_g)-f(v_\ell) = -p_{\mathrm s}\,(v_g-v_\ell).\tag{2.12}

第1式は「両相の圧力が等しい」である。第2式を移項するとf(vℓ)+psvℓ=f(vg)+psvgf(v_\ell)+p_{\mathrm s}v_\ell = f(v_g)+p_{\mathrm s}v_g、左右はそれぞれ両相の1粒子あたり Gibbs 自由エネルギー g=f+pvg=f+pv だから、これは化学ポテンシャルの相等 μℓ=μg\mu_\ell=\mu_g(式(2.9))に他ならない。さらに p=−f′p=-f' を積分すると

∫vℓvgp(v) dv=f(vℓ)−f(vg)=ps(vg−vℓ),\int_{v_\ell}^{v_g} p(v)\,\mathrm{d} v = f(v_\ell)-f(v_g) = p_{\mathrm s}(v_g-v_\ell),

左辺は等温線の下の面積、右辺は高さ psp_{\mathrm s} の長方形の面積である。両者が等しいことは、図2.5の水平線が等温線から切り取る2つの面積 A1,A2A_1,A_2 が等しいことと同値であり、これがMaxwell の等面積則である。すなわち

二重接線  ⟺  μℓ=μg  ⟺  等面積則\text{二重接線}\;\Longleftrightarrow\;\mu_\ell=\mu_g\;\Longleftrightarrow\;\text{等面積則}

の3つは同じ条件の3通りの表現である。t=0.9t=0.9 でこの3条件が同じ値ps=0.6470p_{\mathrm s}=0.6470、vℓ=0.6034v_\ell=0.6034、vg=2.3488v_g=2.3488 を与えることを数値で確かめたのが検算 [5] である。

図

図 2.5 van der Waals 等温線(t=0.9t=0.9)と Maxwell 構成。A1=A2A_1=A_2 となる高さ psp_{\mathrm s} が共存圧力であり、vℓ<v<vgv_\ell<v<v_g では系は水平線上(2相共存)を通る。数値は検算 [5] による。

準安定状態

図2.4で接線より上に浮く区間のうち、f′′>0f''>0 が保たれている両端の部分(vℓv_\ell と極小圧力点の間、および極大圧力点と vgv_g の間)は、局所的には安定である。これが過熱液体・過冷却蒸気などの準安定状態であり、核生成のきっかけがあると本当の平衡(相分離)へ落ちる。f′′<0f''<0 の中央区間(スピノーダル領域)は微小な揺らぎに対しても不安定で、待ち時間なしに分離する。「極小」には大域的極小(真の平衡)と局所的極小(準安定)の区別があることを、この例は示している。

例題(label=ex:maxwell)

Maxwell 構成の実行オリジナル還元 van der Waals 気体(式(2.11))について、以下に答えよ。

  1. (1) 共存圧力 psp_{\mathrm s} と共存体積 vℓ,vgv_\ell,v_g を決める連立条件を書き下せ。
  2. (2) t=0.9t=0.9 における数値解を用いて、等面積則が満たされていることを確認する検算の手順を述べよ。
  3. (3) 温度を臨界温度に近づける(t→1−t\to1^-)とき、vℓ,vg,psv_\ell,v_g,p_{\mathrm s} はどう振る舞うか、等温線の形から定性的に述べよ。
解答

(1) 未知数は vℓ,vg,psv_\ell,v_g,p_{\mathrm s} の3つ。条件は、両接点が等温線上にあること2式と等面積則1式:

p(vℓ,t)=ps,p(vg,t)=ps,∫vℓvgp(v,t) dv=ps (vg−vℓ).p(v_\ell,t)=p_{\mathrm s},\qquad p(v_g,t)=p_{\mathrm s},\qquad \int_{v_\ell}^{v_g}p(v,t)\,\mathrm{d} v = p_{\mathrm s}\,(v_g-v_\ell).

第3式の代わりに二重接線の第2条件(式(2.12))を使ってもよい。本文で示したとおり両者は同値だからである。

(2) t=0.9t=0.9 の数値解は (ps,vℓ,vg)=(0.6470, 0.6034, 2.3488)(p_{\mathrm s},v_\ell,v_g)=(0.6470,\ 0.6034,\ 2.3488) である。検算は、(i)p(vℓ)p(v_\ell) と p(vg)p(v_g) がともに psp_{\mathrm s} に一致すること、(ii)積分 ∫vℓvgp dv\int_{v_\ell}^{v_g}p\,\mathrm{d} v と長方形面積 ps(vg−vℓ)p_{\mathrm s}(v_g-v_\ell) の差が数値誤差の範囲で 0 であること、(iii)独立に、f(vg)−f(vℓ)+ps(vg−vℓ)f(v_g)-f(v_\ell)+p_{\mathrm s}(v_g-v_\ell) が 0 であること(μ\mu の相等)、の3点を確認すればよい。実装と実行結果は検算 [5](3条件とも誤差 10−910^{-9} 以下で成立)。

(3) t→1−t\to1^- では等温線の S 字のくびれが浅くなり、極大圧力点と極小圧力点が近づく。それに挟まれる vℓ,vgv_\ell,v_g も互いに近づき、t=1t=1 で臨界点 v=1v=1、p=1p=1 に合流してΔv=vg−vℓ→0\Delta v=v_g-v_\ell\to0 となる。潜熱 L=TΔsL=T\Delta s も 0 に向かい、一次相転移は臨界点で連続転移に変わる。臨界点の条件が ∂p/∂v=∂2p/∂v2=0\partial p/\partial v=\partial^2p/\partial v^2=0(変曲点で水平)であることも、この合流の言い換えである。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『基礎理論』の記事一覧へ