統計熱力学入門 第7章 §7.5 ★★ TF∼3.8×104K。室温が「極低温」である数値実感。単位換算の練習。
Na は常温・常圧で格子定数 a=4.23A˚ の体心立方(bcc)構造をとる。bcc の単位胞には原子が 2 個あり、各 Na 原子が自由電子を 1 個供給するので、伝導電子の数密度は
VN=a32=(4.23×10−10m)32≃2.64×1028m−3.
これを前に求めた Fermi エネルギー εF の式に代入する。ℏ=1.055×10−34Js、m=9.11×10−31kg、kB=1.381×10−23J/K を用いると
εF=2mℏ2(3π2VN)2/3≃5.18×10−19J≃3.24eV.
Fermi 温度の定義と意味。εF をエネルギーではなく温度の単位で測り直したものが Fermi 温度 TF≡εF/kB である(kBTF=εF)。これは「熱エネルギー kBT が Fermi エネルギーに肩を並べる温度」で、気体が量子的か古典的かの境目を与える。T≪TF なら熱ゆらぎ kBT は Fermi 海の深さ εF より小さく、海はほとんど乱されない(強く縮退した量子的状態)。逆に T≫TF なら熱エネルギーが勝って古典(Maxwell–Boltzmann)気体になる。比 T/TF が「どれだけ量子的か」の目安で、熱的に励起される電子の割合もこの ∼T/TF である。数値は
★★ 結果:Na の Fermi 温度
TF=kBεF≃3.75×104K (≈3.8×104K).
この数の気持ち。TF∼4×104K は室温 300K の 100 倍以上、金属の融点よりもはるかに高い。つまり金属中の伝導電子は、室温でも T/TF∼10−2 しかなく、常温がすでに「極低温」なのである。だから「T→0 の Fermi 気体」という一見理想化された描像(Fermi 面・C∝T・Pauli常磁性)が、現実の金属に室温でそのまま当てはまる。TF を計算する意味は、この「抽象的な低温極限が身のまわりの金属で実際に効いている」ことを数値で確かめる点にある。電子比熱が古典値 23NkBより ∼T/TF だけ小さいのも、Pauli 常磁性が温度に鈍いのも、すべてこの大きな TF の帰結である。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com