量子力学入門 第1部 第5章 §1.5.1 ★★ 観測されるのは期待値と確率だけ。
描像の話が分かりにくいのは、「状態が動く」「演算子が動く」という言葉が何の記述の話なのかが曖昧なまま進むからだ。原点に立ち返ろう。実験で得られるのは測定値の統計、すなわち確率と期待値だけである。時刻 t での観測量 A^ の期待値を、時間発展演算子 U^(t)=e−iH^t/ℏ で書くと
⟨A^⟩(t)=⟨ψ(t)∣A^∣ψ(t)⟩=⟨ψ(0)∣U^†(t)A^U^(t)∣ψ(0)⟩.
真ん中の式は「動く状態 ∣ψ(t)⟩ に固定した A^ を挟む」と読める。右の式は「固定した状態 ∣ψ(0)⟩ に動く演算子 U^†A^U^ を挟む」と読める。同じ数を二通りに読んだだけ——時間依存性という「荷物」を状態に背負わせるか演算子に背負わせるか、その簿記の流儀が描像である。
二つの描像の定義
Schrödinger 描像:状態が動き ∣ψ(t)⟩=U^(t)∣ψ(0)⟩、演算子 A^ は(あらわな時間依存がなければ)固定。これまで波動関数 ψ(x,t) を解いてきた流儀。
Heisenberg 描像:状態を ∣ψ⟩H=∣ψ(0)⟩ に固定し、演算子が動く:
A^H(t)=U^†(t)A^U^(t)=eiH^t/ℏA^e−iH^t/ℏ
定義から明らかに、両描像は同一の期待値・確率を与える。物理は描像に依らない。
古典力学との対応が腑に落ちる近道だ。古典力学では「粒子の位置 x(t) が時間の関数として動く」と考える——Heisenberg 描像はこれの量子版で、演算子 x^H(t) が古典軌道 x(t) に対応する。一方 Schrödinger 描像では、時間変化を担うのは確率の雲 ψ(x,t) で、物差しの目盛りにあたる演算子 x^ は固定されている。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com