量子力学入門 第10部 第1章 §10.1.2 ★ 発展:位相空間表示。密度行列の直観を補強する読み物
密度行列のもう一つの顔として、状態を位相空間の「準確率分布」で表す方法を紹介する。定義(1次元):
W(x,p):=πℏ1∫−∞∞dy ⟨x+y∣ρ^∣x−y⟩e−2ipy/ℏ.
実関数であり、周辺分布が正しい:∫Wdp=⟨x∣ρ^∣x⟩(位置分布)、∫Wdx=⟨p∣ρ^∣p⟩(運動量分布)。期待値も古典力学と同じ顔で ⟨A^⟩=∫W(x,p)AW(x,p)dxdp と書ける(AW:対応する位相空間関数)。ここまで見ると「量子力学は位相空間の確率論だった」と言いたくなるが——
W は負になれる. 調和振動子の基底状態(ガウス波束)の W は至るところ正のガウス分布だが、第1励起状態 ∣1⟩ では原点で W(0,0)=−1/πℏ(一般に Wn(0,0)=(−1)n/πℏ)。負値は「x と p を同時に持つ古典的な実在」が存在しないことの現れで、干渉・非古典性の指標として使われる(量子光学では W の負値の直接観測が「量子性の証明書」になる)。不確定性原理は「W が ℏ より細かい構造だけでできた分布にはなれない」という形で刻まれている。
半古典との接続も美しい:ℏ→0 で W は古典位相空間分布に近づき、その時間発展方程式は Poisson 括弧の流れ(Liouville 方程式)+O(ℏ2) の量子補正になる——第7部の第2章の「古典力学=位相空間の流れ」の絵に、量子状態がそのまま重ね描きできる。Bohr–Sommerfeld の「面積 h に1状態」も、W の言葉では「1状態は位相空間で最低 h の面積を占める」と読める。
第1章のまとめ
- 密度行列 ρ^=∑kpk∣ψk⟩⟨ψk∣、⟨A^⟩=Tr(ρ^A^)。重ね合わせと混合の違いは非対角(コヒーレンス)に現れ、別基底の測定で区別される。
- 純粋 ⟺Trρ^2=1(純粋度)。1量子ビットでは ρ^=21(1^+r⋅σ^)、∣r∣≤1(Bloch ボール):球面=純粋、内部=混合。
- von Neumann エントロピー S=−Trρ^lnρ^ は無知の量:純粋で0、完全混合で ln2(最大)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com