量子力学入門 第10部 第4章 §10.4.2 ★ 発展:もつれを生む2キュービットゲート。テレポートの部品
テレポーテーションの手順に入る前に、その主役であるCNOT(controlled-NOT)ゲートを紹介する。2量子ビット系(制御ビット・標的ビット)に作用するユニタリで、動作は「制御ビットが ∣1⟩ のときだけ標的ビットを反転する」:
U^CNOT∣00⟩=∣00⟩,U^CNOT∣01⟩=∣01⟩,U^CNOT∣10⟩=∣11⟩,U^CNOT∣11⟩=∣10⟩.
基底 {∣00⟩,∣01⟩,∣10⟩,∣11⟩} での行列は
U^CNOT=1000010000010010=∣0⟩⟨0∣⊗1^+∣1⟩⟨1∣⊗σ^x
(右端の書き方が本質を語る:制御ビットの値で場合分けして、標的に 1^ か σ^x を当てる)。行列から直ちに
U^CNOT†=U^CNOT,U^CNOT2=1^
——エルミートかつユニタリ(実対称な置換行列)であり、2回当てると元に戻る。
CNOT の重要性は2つある。第一に、これは A^⊗B^ の形に書けない演算子の代表例である(もし A^⊗B^ なら標的への作用は制御の状態に依存できない)。局所操作の積では作れない「本物の2体ゲート」であり、だからこそ第二の性質——エンタングルメントを生成できる——が従う:
U^CNOT[21(∣0⟩+∣1⟩)⊗∣0⟩]=21(∣00⟩+∣11⟩)
——直積状態(Hadamard で作った重ね合わせ ⊗ ∣0⟩)が一発で Bell 状態に化ける。制御の ∣0⟩ 成分は標的を動かさず、∣1⟩ 成分だけが標的を反転する——「重ね合わせのまま場合分けが実行される」ことがもつれの源である。逆に(CNOT はエルミートで U^2=1^ だから)同じゲートをもう一度当てれば Bell 状態を直積に戻せる——次節のテレポーテーションで Alice が行う「Bell 測定」は、この逆変換+Hadamard+z 測定に分解できる。実際、任意の1量子ビットゲートと CNOT があれば任意の量子計算が組める(万能ゲート集合)ことが知られており、CNOT は量子回路の最小にして最強の2体部品である。
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