量子力学入門 第12部 第1章 §12.1.3 ★★★ 選択則 Δℓ=±1, Δm=0,±1=遷移の可否を決める核
dfi=0 なら(双極子近似の範囲で)遷移は起きない。行列要素 ⟨n′ℓ′m′∣r^∣nℓm⟩ がゼロにならない条件を対称性で読む。
パリティ. r^ は奇。水素の状態のパリティは (−1)ℓ だから、行列要素が生き残るには始・終状態のパリティが逆、すなわち Δℓ が奇数でなければならない(第2部『対称性と結晶バンド』の第2章の選択則の議論そのもの)。
角運動量(Wigner–Eckart). r^ はランク1の球面テンソル(成分 rq∝rY1q)である。第4部『スピンと角運動量合成』の合成則により、Y1qYℓm を展開すると ℓ′=ℓ±1,ℓ の成分しか現れず(1⊗ℓ=(ℓ+1)⊕ℓ⊕(ℓ−1))、m′=m+q。パリティが ℓ′=ℓ を殺すので、まとめて
Δℓ=±1,Δm=0,±1 (12.1.2)
(スピンは r^ に触られないので Δs=0、Δms=0)。物理の言葉では:光子はスピン1を持ち去る——角運動量保存が Δℓ=±1 の正体であり、Δm は光の偏光(q=0:直線偏光 π、q=±1:円偏光 σ±)に対応する。
選択則に反する遷移は「禁制」だが、絶対に起きないのではない:双極子近似の次の項(磁気双極子 M1・電気四重極 E2)が (a0/λ)∼α の因子だけ抑制されたレートで拾う。極端な例が水素 2s 状態——1s への E1 は Δℓ=0 で禁制、M1 もほぼ消え、結局2光子放出で落ちるため寿命は 0.12 秒(2p の1億倍)。「禁制線」は低密度プラズマ(星雲・オーロラ)の診断に使われる——衝突で壊される前に光れる環境でだけ見えるからである。
第1章のまとめ ★★★
双極子近似 V^=−d^⋅E(a0/λ∼10−4)。Einstein:熱力学(Planck 分布との整合)が B12=B21 と A=π2c3ℏω3B を強制——自然放出は零点振動による誘導放出。A=ω3∣d∣2/3πε0ℏc3、水素 2p で τ=1.6 ns(計算と実測一致)。選択則 Δℓ=±1(パリティ+光子スピン1)、Δm=0,±1(偏光)。禁制遷移は M1/E2/2光子で細々と起こり、禁制線は希薄プラズマの指紋になる。
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