量子力学入門 第12部 第2章 §12.2.2 ★★ n と j だけで決まる微細構造・Lamb シフト
3つの補正はどれも α4mc2 のオーダーで、同時に1次摂動として足す。水素の標準的な期待値 ⟨1/r⟩、⟨1/r2⟩、⟨1/r3⟩ と ∣ψ(0)∣2 を代入して整理すると、ℓ 依存が奇跡的に打ち消し合い、
Enj=En[1+n2α2(j+21n−43)] (12.2.1)
——エネルギーはn と j だけに依存する(Dirac 方程式の厳密解の α2 展開と一致する;打ち消しは偶然でなく、Dirac 理論の対称性の名残である)。帰結:
- n=2 は 2s1/2,2p1/2(j=21、縮退のまま)と 2p3/2(j=23)の2グループに割れ、間隔は ∼4.5×10−5 eV(10.9 GHz)。ナトリウム D 線が2本(589.0/589.6 nm)に見えるのも同じ機構(3p1/2 と 3p3/2)である。
- 式 (12.2.1) が残す 2s1/2–2p1/2 の縮退は、実際には 1058 MHz だけ割れている(Lamb シフト、1947)——電磁場の零点振動による補正で、QED の精密検証の出発点になった。
例題 2.1(n=2 の微細構造を数値で ★★)
オリジナル公式 (12.2.1) から、水素 n=2 の 2p3/2 と 2p1/2(=2s1/2)の分裂幅を求めよ。
解答
E2=−3.40 eV、j=23 で j+1/2n=1、j=21 で 2。差をとると
ΔE=E2⋅4α2(1−2)=−E24α2≃4.5×10−5 eV (10.9 GHz)
(数値独立計算で 4.53×10−5 eV =10.9 GHz を確認済み)。粗い構造 10.2 eV との比はほぼ α2/4∼1.3×10−5——「微細」構造定数の名の由来である。2s1/2–2p1/2 に残るはずのゼロが実際は Lamb シフト 1.06 GHz だけ割れており、これは上の j 分裂のさらに 1/10——分光の階段(粗い構造→微細→Lamb→超微細)を1本の n=2 準位が全部見せてくれる。■

図 2.1:水素 n=2 の構造の階層。Bohr の縮退 → 微細構造(j で分裂)→ Lamb シフト(QED)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com