Born–Oppenheimer 近似:核と電子の分業
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量子力学入門 第12部 第4章 §12.4.1 ★ Born–Oppenheimer 近似(断熱定理の分子版)
「なぜ2つの水素原子は結合して H になるのか」——古典物理はこの問いに答えられなかった。本章では最小の分子 H を変分法で解き、共有結合=波動関数の重なりがもたらすエネルギー利得という化学の中心原理を、積分をすべて閉形式で出す完全計算として示す。その前提となるBorn–Oppenheimer 近似、そして分子の振動・回転スペクトルまで進めば、化学と分光学の量子力学的な骨格が一通り揃う。
分子は核と電子の多体系だが、質量比 が劇的な単純化を許す。電子は核より桁違いに速いので、電子は「止まった核」の配置 を見て瞬時に基底状態に落ち着き、核は電子のエネルギー をポテンシャルとしてゆっくり動く:
これは断熱定理(第8部『時間依存摂動論とダイナミクス』の第1章)の分子版であり、「速い自由度を先に解いて、遅い自由度の有効ポテンシャルを作る」という物理学の万能戦略(第7部の断熱不変量とも同族)の代表例である。誤差は 程度の展開で制御され、以後「分子を解く」=「ポテンシャル曲線 を求め、その上の核の運動(振動・回転)を解く」の2段になる。
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