量子力学入門 第4部 第1章 §4.1.3 ★ 背景:2重被覆と 2π 回転で符号が反転する理由
回転角の式 U^(n,θ)=e−iθn⋅s^/ℏ に θ=2π を入れてみる。スピン 21 では n⋅s^ の固有値が ±ℏ/2 だから
U^(n,2π)=e∓iπ=−1^
——一回転しても元に戻らず、符号 −1 が付く(4π 回転で初めて恒等)。一般に、角運動量 j が整数なら 2π 回転は +1^、半整数なら −1^ である。「たかが全体位相」と思うかもしれないが、干渉計の片方の腕だけを 2π 回転させれば相対位相 −1 として観測できる——中性子干渉実験(1975)で実際に確認された物理的な符号である。
この ± の起源は群論の言葉で明快になる。3次元の回転の集合は
SO(3)={R∈R3×3∣RTR=1, detR=1}
で、整数 j の表現はこの群の表現になっている。一方スピン 21 を回すユニタリの集合は
SU(2)={U^∈C2×2∣U^†U^=1, detU^=1}={e−iθn⋅s^/ℏ}
である。回転演算子が演算子ベクトル s^ を n 軸まわりに角 θ 回すという結果(U^m⋅s^U^†=k⋅s^、k は m を回した単位ベクトル)は「U^(n,θ) が空間回転 R(n,θ) を引き起こす」こと、すなわち対応 SU(2)→SO(3) を与えるが、この対応は2対1である:U^ と −U^ は同じ空間回転を与える(U^m⋅s^U^† は符号に依らない)。つまり
SO(3)≅SU(2)/Z2
——SU(2) は SO(3) の「2倍大きい」被覆群であり、2π 回転の −1 はまさにこの2倍分の巻き数を検出している。半整数スピンとは「SO(3) ではなく SU(2) の表現でしか実現できない自由度」のことであり、電子スピンが剛体の自転(=SO(3) の運動)では絶対に説明できない点粒子の内部自由度であることの、最も深い理由がここにある(スピンの回転群論的な位置づけは第9部『同種粒子と第二量子化』の第0章§0.1 の議論を補完する)。
第1章のまとめ
- 回転演算子 U^(n,θ)=e−iθn⋅s^/ℏ は s^ を本当に空間回転させる(CBH で証明)。
- Bloch 球の状態=「∣↑⟩ を回した状態」。z 磁場下では da/dt=ωez×a の歳差運動——スピンが角運動量である力学的証拠。
- 2π 回転で −1(4π で恒等):SU(2) は SO(3) の2重被覆。半整数スピン=SU(2) でしか書けない内部自由度。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com