量子力学入門 第6部 第1章 §6.1.9 ★ Hellmann–Feynman・Virial(発展)
摂動論・変分法の実務を支える2つの万能定理を、本文の道具として整えておく。
Hellmann–Feynman の定理.
ハミルトニアンがパラメータ λ を含む(H^(λ))とき、規格化された固有状態 ∣ψ(λ)⟩(H^∣ψ⟩=E(λ)∣ψ⟩)に対して
dλdE=⟨ψ(λ)∣∂λ∂H^∣ψ(λ)⟩
証明は2行:E=⟨ψ∣H^∣ψ⟩ を微分すると、∣ψ⟩ の変化からくる項は dλd⟨ψ∣ψ⟩=0 と固有値方程式により消え(変分法の「1次のずれはエネルギーに効かない」と同じ機構!)、H^ の変化の項だけが残る。波動関数の微分を一切計算せずにエネルギーの微分が取れる——たとえば水素で λ=Z と取れば dEn/dZ=−⟨e2/4πε0r⟩ から ⟨1/r⟩=Z/(a0n2) が即座に出る(λ=ℓ と取る技で ⟨1/r2⟩ も出る)——微細構造の計算(第12部『原子分子光』の第2章)で使う期待値の出どころである。分子物理では λ=核座標と取ると「核に働く力=電子雲が作る古典的な静電力」という帰結(電子構造計算で原子に働く力を求める標準手法)になる。
Virial 定理.
束縛状態では dtd⟨r^⋅p^⟩=0(定常状態の期待値は時間によらない)。Heisenberg 方程式で左辺の交換子を開くと
2⟨T^⟩=⟨r^⋅∇V⟩ V∝rs 2⟨T^⟩=s⟨V^⟩.
Coulomb(s=−1)では ⟨T^⟩=−21⟨V^⟩=−E——水素の基底状態で ⟨T⟩=+13.6 eV、⟨V⟩=−27.2 eV という配分が検算なしで分かる。変分計算の健全性チェック(試行関数が悪いと Virial 比がずれる)、そして「引力系はエネルギーを失うと熱くなる」という重力系(星)の負の比熱の量子版まで、適用範囲は広い。
第1章のまとめ ★★★
- 非縮退:E(1)=Vnn、∣ϕ(1)⟩=∑m=nEn(0)−Em(0)Vmn∣ϕm(0)⟩、E(2)=∑m=nEn(0)−Em(0)∣Vmn∣2。
- 昇降演算子の選択則で行列要素を絞る(x^:Δn=±1、J^±:Δm=±1、パリティ)。
- 縮退があれば縮退空間内で Vab を対角化(永年方程式)。固有値=1次補正、固有ベクトル=正しい0次状態。
- Stark 効果:n=2 が ±3eEa0 に線形分裂。縮退が「分極した状態」を許すため。
- 磁気異方性:横磁場は(j≥1 で)2次から。j=21 は厳密に解けて対比できる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com