作用変数と断熱不変量: はなぜ特別か
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量子力学入門 第7部 第2章 §7.2.7 ★★ Bohr–Sommerfeld 量子化条件の土台
1次元の束縛運動(位相空間の閉軌道)に対して、作用変数
を定義する。これはエネルギー の関数であり、逆に と見ると、運動の角振動数が
で与えられる(作用・角変数の一般論の帰結)。調和振動子で確かめると:楕円の面積は (第5章例題5.1で計算する)だから 、よって ——確かに振動数が出る。
作用変数が特別なのは、次の性質による:
断熱不変性. 系のパラメータ(ばね定数・井戸の幅など)を、運動の周期より十分ゆっくり変化させるとき、エネルギー は変わるが、作用変数 はほとんど変わらない(変化がパラメータの変化率のあらゆるべきより小さい)。
直感的な例:振り子の糸をゆっくり短くすると、振動数 も振幅もエネルギーも変わるが、比 は一定に保たれる。
図 2.1:調和振動子の位相空間。量子化された軌道()は面積 ずつ離れた楕円になる(Bohr–Sommerfeld、第5章)。
この性質は前期量子論で決定的な役割を果たした。量子条件を課すべき量は何か?——ゆっくりした外的変化で値が飛べない量、すなわち断熱不変量でなければ、パラメータを少し動かしただけで「量子数が非整数になる」矛盾が起きる(Ehrenfest の断熱仮説)。1次元でその資格をもつのが であり、こうして
が要請された。WKB 法(第5章)はこの条件を Schrödinger 方程式から導出し、しかも零点補正を付けて に精密化する。歴史の順序(量子条件が先、波動方程式が後)と論理の順序(波動方程式が先、量子条件は近似として従う)が逆転しているところに、前期量子論が「なぜあれほど当たったか」の答えがある——彼らは知らずに WKB の最下次を使っていたのである。なお断熱不変量の量子版が「ゆっくりした変化では量子数 が保存する」という量子断熱定理であり、第8部『時間依存摂動論とダイナミクス』の第1章(Berry 位相)で主役になる。
解析力学 量子力学の辞書
| 解析力学 | 量子力学 |
| 作用 、最小作用の原理 | 経路積分の位相 、停留位相=古典極限(第1章) |
| 正準運動量 | 演算子 (正準量子化) |
| Poisson 括弧 、 | 、Heisenberg 方程式 |
| 正準変換( 保存=面積保存) | ユニタリ変換(交換子保存=確率保存) |
| 作用・角変数 | 対角化 |
| H–J: | WKB の0次 (第3章)、定常状態の位相 |
| 作用変数 (断熱不変量) | Bohr–Sommerfeld (第5章)、量子断熱定理 |
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