量子力学入門 第8部 第0章 §8.0.2 ★★★ 時間発展は Rabi・時間依存摂動の心臓部。
公理4(時間発展):測定していない間、状態は時間依存 Schrödinger 方程式
iℏdtd∣ψ(t)⟩=H^∣ψ(t)⟩
に従って連続的・決定論的に発展する(確率的なのは測定だけで、発展そのものは決定論的であることに注意)。
H^ が時間に依らなければ形式解は
∣ψ(t)⟩=U^(t)∣ψ(0)⟩,U^(t)=e−iH^t/ℏ
で、U^ はユニタリ(U^†U^=1^)ゆえノルム=全確率を保存する。演算子の指数関数は級数 eX^=∑kX^k/k! で定義され、エネルギー固有基底 H^∣n⟩=En∣n⟩ では固有値がそのまま肩に乗る:
U^(t)∣n⟩=k∑k!1(−ℏit)kH^k∣n⟩=k∑k!1(−ℏiEnt)k∣n⟩=e−iEnt/ℏ∣n⟩.
つまり固有基底で対角的に作用する。一般の状態はまず固有基底に展開してから各成分の位相を回せばよい:
∣ψ(0)⟩=n∑cn∣n⟩⟹ ∣ψ(t)⟩=n∑cne−iEnt/ℏ∣n⟩
この一行が「時間発展の解き方」のすべてである(H^ が時間に依らない限り)。
定常状態:global phase は観測にかからない
★★ 定常状態は全体位相のみ。
単一の固有状態 ∣ψ(0)⟩=∣n⟩ では、∣ψ(t)⟩=e−iEnt/ℏ∣n⟩ と全体に一様な位相(global phase)が掛かるだけ。観測量は期待値・確率の形でしか現れず、ブラ側の複素共役と打ち消し合う:
⟨A^⟩(t)=e+iEnt/ℏe−iEnt/ℏ⟨n∣A∣n⟩=⟨n∣A∣n⟩.
どんな観測量の期待値も確率分布も時間に依らない——この意味で定常状態という。状態ベクトルは回っているのに物理は完全に静止している。
相対位相が時間変化を生む
★★★ 相対位相の回転=Larmor/Rabi 歳差の起源。
二つ以上の固有状態が重ね合わさると事情が一変する。各成分が異なる速さ En/ℏ で回るため、相対位相(relative phase)が時間とともにずれ、これが観測にかかる。
例題 0.1
オリジナル★★★ 2準位の相対位相振動=Rabi の原型。2準位系 H^∣0⟩=E0∣0⟩, H^∣1⟩=E1∣1⟩ で、初期状態 ∣ψ(0)⟩=21(∣0⟩+∣1⟩) とする。時刻 t に同じ状態 ∣ψ(0)⟩ に見出される確率を求めよ。
解答
∣ψ(t)⟩=21(e−iE0t/ℏ∣0⟩+e−iE1t/ℏ∣1⟩)。Born 則より
P(t)=⟨ψ(0)∣ψ(t)⟩2=2e−iE0t/ℏ+e−iE1t/ℏ2= cos22ℏ(E1−E0)t
確率が準位間隔で決まる振動数 ω10=(E1−E0)/ℏ で振動する。第1章の Rabi 振動も、本質はこの「2成分の相対位相の回転」である。
時間発展の要点
単一固有状態 ⇒ global phase のみ ⇒ 定常。重ね合わせ ⇒ relative phase が動く ⇒ 時間変化。量子ダイナミクスの時間変化はすべて相対位相の運動であり、その速さは常にエネルギー差で決まる(エネルギーの原点は global phase にしか効かない)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com