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スタビライザー符号

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第2章 量子誤り訂正とフォールトトレラント計算
目次
  1. 定義と論理演算子
  2. 誤りの三分類と訂正条件
  3. 症候と回復の処方箋
  4. 符号の距離
  5. 例
  6. 3量子ビットビット反転符号 ( 誤りに対しては距離3)
  7. Shorの9量子ビット符号
  8. 5量子ビット符号
  9. CSS符号とSteane符号
  10. 演算子測定の回路——位相推定との再会
  11. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子情報入門 第2章 §2.8

定義と論理演算子

定義

−I∉S-I\notin S かつ n−kn-k 個の独立で可換な生成元を持つ S=⟨g1,…,gn−k⟩⊂GnS=\langle g_1,\ldots,g_{n-k}\rangle\subset G_n に対し、VSV_S を[n,k][n,k] スタビライザー符号と呼び、C(S)C(S) と書く。

前章の次元定理により C(S)C(S) は 2k2^k 次元で、kk 量子ビットを符号化できる。論理基底は原理的にはどう取ってもよいが、系統的な方法は論理Pauli演算子を先に決めることである。生成元 g1,…,gn−kg_1,\ldots,g_{n-k} に Zˉ1,…,Zˉk\bar Z_1,\ldots,\bar Z_k を加えた集合が独立かつ可換になるよう Zˉj∈Gn\bar Z_j\in G_n を選ぶと、論理計算基底 ∣x1,…,xk⟩L\ket{x_1,\ldots,x_k}_L は

⟨g1,…,gn−k, (−1)x1Zˉ1,…,(−1)xkZˉk⟩\langle g_1,\ldots,g_{n-k},\ (-1)^{x_1}\bar Z_1,\ldots,(-1)^{x_k}\bar Z_k\rangle

にスタビライズされる状態として定義できる(nn 個の独立生成元なので1次元に確定する)。Xˉj\bar X_j は「共役で Zˉj\bar Z_j を −Zˉj-\bar Z_j に反転し、他の Zˉi\bar Z_i と全生成元を保つ」Pauli演算子として選ぶ(命題2.4により存在)。Xˉj\bar X_j は全生成元と可換、Zˉj\bar Z_j とだけ反可換——物理Pauli行列の関係 {X,Z}=0\{X,Z\}=0 を、符号化されたレベルで再現している。

誤りの三分類と訂正条件

符号語に誤り E∈GnE\in G_n が作用したときの運命は、EE とスタビライザーの関係で三つに分類される。

  1. EE がある生成元と反可換:g∣ψ⟩=∣ψ⟩g\ket\psi=\ket\psi なら g(E∣ψ⟩)=−Eg∣ψ⟩=−E∣ψ⟩g(E\ket\psi) = -Eg\ket\psi = -E\ket\psi。すなわち EE は符号空間を(gg の固有値 −1-1 側の)直交部分空間へ丸ごと移す。生成元の測定で検出でき、原理的に訂正できる。
  2. E∈SE\in S:符号語を全く動かさない。「誤り」ですらなく、心配無用。
  3. EE が全生成元と可換だが E∉SE\notin S:検出にかからないのに符号語を非自明に変える——検出不能な論理誤りである。SS の全元と可換な GnG_n の元の集合は SS の正規化群 N(S)N(S)(EgE†∈SEgE^\dagger\in S なる元の集合;−I∉S-I\notin S のとき中心化群と一致する)なので、危険な誤りの集合はちょうど N(S)−SN(S)-S である。論理演算子 Xˉj,Zˉj\bar X_j,\bar Z_j 自身がまさにここに属する:「検出されずに符号化情報を書き換える演算子」とは、論理演算そのものにほかならない。

この分類を第12章の量子誤り訂正条件に翻訳したのが次の定理である。

定理 (スタビライザー符号の誤り訂正条件)

SS をスタビライザー、{Ej}⊂Gn\{E_j\}\subset G_n を

Ej†Ek∉N(S)−S(∀j,k)E_j^\dagger E_k\notin N(S)-S\qquad(\forall j,k)

を満たす集合とすると、{Ej}\{E_j\} は C(S)C(S) の訂正可能な誤り集合である。

証明

PP を符号空間への射影子とする。仮定より各ペア (j,k)(j,k) について Ej†Ek∈SE_j^\dagger E_k\in S か Ej†Ek∈Gn−N(S)E_j^\dagger E_k\in G_n-N(S) のいずれかである。前者なら PP は SS の元の掛け算で不変なので PEj†EkP=PPE_j^\dagger E_kP=P。後者なら Ej†EkE_j^\dagger E_k はある生成元 g1g_1 と反可換であり、射影子の明示式 P=∏lI+gl2P=\prod_l\frac{I+g_l}{2} を使うと

Ej†Ek P=(I−g1) Ej†Ek∏l≥2I+gl2E_j^\dagger E_k\,P = (I-g_1)\,E_j^\dagger E_k\prod_{l\ge2}\frac{I+g_l}{2}

(Ej†EkE_j^\dagger E_k を I+g12\frac{I+g_1}{2} の左へ通すと反可換性で g1g_1 の符号が反転する)。ところが P(I−g1)=0P(I-g_1)=0((I+g1)(I−g1)=I−g12=0(I+g_1)(I-g_1)=I-g_1^2=0)なので PEj†EkP=0PE_j^\dagger E_kP=0。まとめると PEj†EkP=αjkPPE_j^\dagger E_kP=\alpha_{jk}P(αjk∈{0,1}\alpha_{jk}\in\{0,1\})——第12章の量子誤り訂正条件がHermite行列 α\alpha 込みで成立している。

症候と回復の処方箋

実際の誤り訂正は、生成元 g1,…,gn−kg_1,\ldots,g_{n-k} を順に測定して症候 β1,…,βn−k∈{±1}\beta_1,\ldots,\beta_{n-k}\in\{\pm1\}(EjglEj†=βlglE_jg_lE_j^\dagger = \beta_lg_l の符号)を得ることで行う。症候から誤り EjE_j が一意に特定できれば Ej†E_j^\dagger を適用すればよい。同じ症候を持つ2つの誤り Ej,Ej′E_j,E_{j'} があっても心配は要らない:このとき Ej†Ej′∈SE_j^\dagger E_{j'}\in S が示せるので、Ej′E_{j'} が起きたのに Ej†E_j^\dagger を適用しても、差はスタビライザーの元=符号語に作用しない演算子であり、回復は成功する。同じ症候の誤りたちを区別せずに済ませられる——これが縮退(degenerate)符号の仕組みで、古典符号にはない量子特有の柔軟性である。

符号の距離

誤り E∈GnE\in G_n の重みを、テンソル積の中で恒等でない因子の数と定義する(例:X1Z4Y8X_1Z_4Y_8 の重みは3)。C(S)C(S) の距離 dd を N(S)−SN(S)-S の元の最小重みと定義し、距離 dd の [n,k][n,k] 符号を [n,k,d][n,k,d] 符号と書く。上の定理より、d≥2t+1d\ge2t+1 の符号は任意の tt 量子ビット上の誤りを訂正できる(重み tt 以下の誤り2つの積は重み 2t≤d−12t\le d-1 以下なので N(S)−SN(S)-S に入れない)——古典符号の距離とまったく同じ勘定である。

例

3量子ビットビット反転符号 [3,1,1][3,1,1](XX 誤りに対しては距離3)

S=⟨Z1Z2,Z2Z3⟩S=\langle Z_1Z_2, Z_2Z_3\rangle である。誤り集合を {I,X1,X2,X3}\{I,X_1,X_2,X_3\} とすると、任意のペア積は SS に入るか、どちらかの生成元と反可換になるので、訂正可能である。症候はそのまま多数決に翻訳できる:

Z1Z2Z_1Z_2Z2Z3Z_2Z_3誤り回復
+1+1+1+1なし何もしない
+1+1−1-1X3X_3第3ビットに XX
−1-1+1+1X1X_1第1ビットに XX
−1-1−1-1X2X_2第2ビットに XX

第10章の手続きの完全な再現だが、群論の言葉に載せ替えたことの利益は次の例から現れる。

Shorの9量子ビット符号 [9,1,3][9,1,3]

生成元は8個:

g1=Z1Z2,g2=Z2Z3,g3=Z4Z5,g4=Z5Z6,g5=Z7Z8,g6=Z8Z9,g7=X1X2X3X4X5X6,g8=X4X5X6X7X8X9.\begin{array}{ll} g_1=Z_1Z_2,\quad g_2=Z_2Z_3,\quad g_3=Z_4Z_5,\quad g_4=Z_5Z_6,\quad g_5=Z_7Z_8,\quad g_6=Z_8Z_9,&\\ g_7=X_1X_2X_3X_4X_5X_6,\qquad g_8=X_4X_5X_6X_7X_8X_9.& \end{array}

ZZ 型の6個が各3量子ビットブロック内のビット反転を、XX 型の2個がブロック間の位相反転を見張る——入れ子構造が生成元の形にそのまま写っている(8生成元の可換性と dim⁡VS=2\dim V_S=2 を数値確認済み)。単一量子ビット誤りの訂正可能性は定理の条件を確かめるだけでよい:たとえば X1Y4X_1Y_4 は Z1Z2Z_1Z_2 と反可換なので N(S)N(S) に入らない、という具合に、全ペアが SS に入るか反可換になる。論理演算子は

Zˉ=X1X2⋯X9,Xˉ=Z1Z2⋯Z9\bar Z = X_1X_2\cdots X_9,\qquad \bar X = Z_1Z_2\cdots Z_9

——素朴な予想と X↔ZX\leftrightarrow Z が逆である(可換性・反可換性を数値確認済み)。これは偶然ではない:Shor符号は外側が位相反転符号(∣±⟩\ket\pm ベース)なので、論理ビット値の反転(Xˉ\bar X)は各ブロックの ∣+⟩↔∣−⟩\ket+\leftrightarrow\ket- 反転、すなわち ZZ 型の操作で実現されるのである。

5量子ビット符号 [5,1,3][5,1,3]

1量子ビットを守る最小の符号は5量子ビットである(第12章の量子Hamming限界 n≥5n\ge5 を、実際に飽和する)。生成元は

g1=XZZXI,g2=IXZZX,g3=XIXZZ,g4=ZXIXZg_1=XZZXI,\quad g_2=IXZZX,\quad g_3=XIXZZ,\quad g_4=ZXIXZ

——g1g_1 を1つずつ右巡回シフトした美しい構造を持つ(g2,g3,g4g_2,g_3,g_4 は g1g_1 の巡回)。Zˉ=Z⊗5\bar Z=Z^{\otimes5}, Xˉ=X⊗5\bar X=X^{\otimes5}。4生成元の可換性、dim⁡VS=2\dim V_S=2、論理演算子の(反)可換関係はすべて数値確認済みである。XX と ZZ が同じ生成元に混在するため CSS 符号ではなく、横断的ゲートの扱いにくさから実用ではSteane符号の方が好まれることが多い。

CSS符号とSteane符号

第13章のCSS構成 CSS(C1,C2)\mathrm{CSS}(C_1,C_2) は、検査行列

(H(C2⊥)00H(C1))\begin{pmatrix} H(C_2^\perp) & 0\\ 0 & H(C_1)\end{pmatrix}

を持つスタビライザー符号にほかならない。可換性条件 rΛr′T=0r\Lambda r'^T=0 は H(C2⊥)H(C1)T=0H(C_2^\perp)H(C_1)^T=0 に帰着し、これは C2⊂C1C_2\subset C_1 から従う。XX 型生成元と ZZ 型生成元が完全に分離しているのがCSS符号の目印であり、Steane符号(第14.2節の生成元表)はその代表例である。「ビット反転は C1C_1 で、位相反転は C2⊥C_2^\perp で独立に守る」という第13章の記述が、検査行列のブロック対角構造として可視化されている。

演算子測定の回路——位相推定との再会

符号化・症候測定・読み出しはすべて「Pauli演算子(固有値 ±1\pm1)の測定」に帰着する。その標準回路は:補助ビットを ∣0⟩→H∣+⟩\ket0\xrightarrow{H}\ket+ とし、補助を制御として制御 MM を作用させ、再び HH をかけて補助を測る。位相キックバックにより、補助の状態は MM の固有値 ±1\pm1 に応じて ∣±⟩\ket\pm になり、HH 後の測定値がそのまま固有値を与える。

要点

これは第5章の位相推定の t=1t=1 の場合そのものである。固有値 e2πiφe^{2\pi i\varphi} が ±1\pm1(φ∈{0,12}\varphi\in\{0,\tfrac12\})に限られるので、補助1ビット・「逆QFT」=H=H で位相が1ビット読み切れる。量子誤り訂正の症候測定エンジンが、Shorのアルゴリズムと同じ部品(キックバック+QFT)でできている——本書を貫く縦糸がここで結ばれる。

Steane符号の症候測定は、6つの生成元それぞれにこの回路を適用する:補助6ビットを ∣+⟩\ket+ に用意し、検査行列の 11 の位置に従って制御 XX(左ブロック=XX 型生成元)・制御 ZZ(右ブロック=ZZ 型生成元)を張り、HH をかけて測る。測定結果の6ビットが症候であり、古典計算で回復操作 Ej†E_j^\dagger を決めて適用する。符号化も同じ機構でできる:∣0⟩⊗n\ket0^{\otimes n} から出発して全生成元と Zˉ\bar Z を測定し、命題2.4のPauli演算子で符号を +1+1 に揃えれば、論理 ∣0L⟩\ket{0_L} が完成する。復号を陽に行う必要は実はあまりない——次章のフォールトトレラント技術は符号化されたまま論理演算と読み出しを行い、最後まで復号しないからである。

木下の勉強ステータス

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