制御工学入門 第9章 §9.1
ナイキストは安定か否かの二択だが、実際には「どれだけ余裕をもって安定か」を知りたい。−1 点からの隔たりを測るのがゲイン余裕・位相余裕である。
定義 (ゲイン交差・位相交差周波数)
- ゲイン交差周波数 ωgc:∣L(jωgc)∣=1(0 dB)となる周波数。
- 位相交差周波数 ωpc:∠L(jωpc)=−180∘ となる周波数。
要点
安定余裕
位相余裕 PMゲイン余裕 GM=180∘+∠L(jωgc),=∣L(jωpc)∣1([dB] では −20log10∣L(jωpc)∣).
開ループが安定なら、PM >0 かつ GM >0 で閉ループ安定(−1 を囲まない)。
気持ち
位相余裕は「ゲインが 1 の周波数で、位相があと何度回れば −180∘(発振)に届くか」の余白。ゲイン余裕は「位相が −180∘ の周波数で、ゲインをあと何倍上げれば 1(発振)に届くか」の余白。どちらも「危険点 −1 まであとどれくらいか」を、位相方向・ゲイン方向から測ったものである。使いどころは二つ。①安定性の頑健さの指標(PM が小さい系はモデル誤差や遅れで簡単に発振する)。②過渡応答の予測:2次系では PM≈100ζ[度](ζ≲0.6)が成り立ち、PM から行き過ぎ量が読める。実用の目安はPM =30–60∘、GM =6–12 dB。遅れ要素や積分器は位相を食う(PM を減らす)ので、進み補償で位相を稼ぐ(第10章)。
手順:安定余裕の計算
- PM:∣L(jω)∣=1 を解いて ωgc を求め、∠L(jωgc) を計算、180∘ を足す。
- GM:∠L(jω)=−180∘ を解いて ωpc を求め、1/∣L(jωpc)∣ を計算。
- ボード線図上では、0 dB 線とゲイン曲線の交点で位相を読んで PM、−180∘ 線と位相曲線の交点でゲインを読んで GM。
例題 9.1(演習9.1(位相余裕の計算))
オリジナルL(s)=s(s+1)1 の位相余裕を求め、対応する減衰比を概算せよ。
解答
ゲイン交差:∣L∣=ωω2+11=1 より ω4+ω2−1=0、ωgc2=25−1、ωgc≈0.786。位相 ∠L=−90∘−arctanωgc=−90∘−38.2∘=−128.2∘。よって
PM=180∘−128.2∘=51.8∘.
(検算スクリプト で ωgc≈0.786、PM≈51.8∘ を確認。)PM≈100ζ より ζ≈0.52、行き過ぎ量 Mp≈15% 程度と予測できる。この系は積分器 1/s で −90∘ を常に食っているため、ゲイン余裕は ∞(位相が −180∘ に達しない)だが位相余裕が有限、という1型系の典型である。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com