信号処理論入門 第1章 §1.6 ★★ 自己相関のパワースペクトル(Wiener–Khinchin)
畳み込みと形が似ているが意味の異なる操作に相関関数がある。二信号の相互相関関数と、自分自身との自己相関関数を次で定義する(連続系)。
rxy(τ)rxx(τ)=∫−∞∞x(t)y(t−τ)dt(相互相関),=∫−∞∞x(t)x(t−τ)dt(自己相関).
相互相関 rxy(τ) は「y を τ だけずらして x と内積を取る」操作であり、τ を動かしたとき値が最大になる位置が「二信号が最もよく重なるずれ量」を与える。超音波探傷でパルスの反射位置から傷の位置を推定したり、レーダ・ソナーで往復時間を測ったりするのはこの原理である。
自己相関 rxx(τ) は信号自身の「周期性・記憶」を測る量で、第3章で見るようにその Fourier 変換がパワースペクトルになる(Wiener–Khinchin の関係の決定論版)。畳み込みとの違いは「h(t−τ) ではなく y(t−τ) を使い、時間反転を伴わない」点にある。記号で言えば rxy(τ)=(x∗y(−⋅))(τ) であり、相互相関は「一方を時間反転・共役した相手との畳み込み」に等しい。
例題1.1(畳み込みの基本計算)★★
オリジナル連続時間信号 x(t)=e−atu(t)(a>0、u は単位ステップ)とh(t)=e−btu(t)(b>0、a=b)の畳み込み y=x∗h を求めよ。
解答
定義より y(t)=∫−∞∞x(τ)h(t−τ)dτ。被積分関数が 0 でないのは τ≥0 かつ t−τ≥0、すなわち 0≤τ≤t のときで、これには t≥0 が必要である。したがって t≥0 で
y(t)=∫0te−aτe−b(t−τ)dτ=e−bt∫0te−(a−b)τdτ=e−bt⋅a−b1−e−(a−b)t=a−be−bt−e−at.
t<0 では y(t)=0。まとめると
y(t)=a−be−bt−e−atu(t).
検算として b→a の極限をとると、L'Hôpital より y(t)→te−atu(t) となり、これは重根の場合(x=h)の畳み込みとして妥当である。また y(t) は t=0 で 0 から立ち上がり、x,h 単独より緩やかに減衰する—畳み込みが信号を「なまらせる(平滑化する)」という直観とも合致する。
この章の道具はすべて、次章以降で「信号を複素正弦波へ展開する」ために使われる。とくに§1.3の内積と§1.5の畳み込み定理は、Fourier 解析全体を貫く二本の柱である。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com