信号処理論入門 第3章 §3.4 ★★ 実虚×偶奇の4通り分類
信号が実数値か純虚数値か、偶関数か奇関数かで、スペクトルの実虚と偶奇も決まってしまう。この対応は答えの妥当性をその場で検算する道具になる。覚えるのではなく、次の一行から毎回作れるようにしておくのがよい。
出発点は定義に Euler の公式 e−jωt=cosωt−jsinωt を入れた形である:
X(ω)=∫−∞∞x(t)cos(ωt)dt−j∫−∞∞x(t)sin(ωt)dt.(3.3)
積分区間 (−∞,∞) は原点対称だから、被積分関数が t の奇関数であればその積分は 0 になる。cos は t の偶関数、sin は t の奇関数なので、x の偶奇を決めれば式(3.3)の二項のうち片方が必ず落ちる。残った項が実数か純虚数かは、x の値が実数か純虚数かで決まる。これだけで四通りが全部出る。
具体的に二つだけ書き下しておく。x が実数値の偶関数なら、x(t)sinωt が t の奇関数なので第2項が消え、X(ω)=∫x(t)cos(ωt)dt は実数である。さらに cos(−ωt)=cos(ωt) だから X(−ω)=X(ω) で、X は ω の偶関数になる。次に x が純虚数値の奇関数の場合は、実数値関数 h を用いて x(t)=jh(t)(h は奇関数)と書ける。j を積分の外に出すと h(t)cosωt が奇関数で第1項が消え、
X(ω)=j⋅(−j∫−∞∞h(t)sin(ωt)dt)=∫−∞∞h(t)sin(ωt)dt
となる。x に掛かる j と sin 積分から出る −j が相殺するので、純虚数値の信号なのにスペクトルは実数値である。sin(−ωt)=−sin(ωt) より X(−ω)=−X(ω) で、X は奇関数になる。
要点
実虚 × 偶奇の四通り対称表
| 時間領域 x(t) | スペクトル X(ω) |
| 値 | 対称性 | 値 | 対称性 |
| 実数値 | 偶関数 | 実数値 | 偶関数 |
| 実数値 | 奇関数 | 純虚数値 | 奇関数 |
| 純虚数値 | 偶関数 | 純虚数値 | 偶関数 |
| 純虚数値 | 奇関数 | 実数値 | 奇関数 |
読み方:偶奇はそのまま保存される(表の右列は左列と同じ)。実虚は、
x が奇関数のときだけ入れ替わる(実
→虚、虚
→実)。覚える量はこの二行だけで、四行の表はここから復元できる。
同じ表が Fourier 級数係数
ck と DFT の
X[k] にもそのまま成り立つ。導出で使ったのは「原点対称区間での奇関数の積分は
0」だけで、和でも同じ議論(
n と
−n の項が相殺する)が通るからである。
落とし穴
引っかかるのは第4行だけ
第1行(実偶→実偶)と第2行(実奇→虚奇)は実信号の話なのでよく知られている。落とし穴は第4行の「純虚数値かつ奇関数 → 実数値の奇関数」で、「虚の信号だからスペクトルも虚だろう」と早合点すると間違える。実際に起きているのは j×(−j)=1 という虚数単位の相殺で、x=jh の j と、奇関数だけが残す −j∫hsin の −j が打ち消し合う。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com