信号処理論入門 第3章 §3.5 ★★ エネルギー定理と自己相関の∣X∣2
Fourier 変換版の Parseval(Rayleigh のエネルギー定理)は次の通り。
要点
∫−∞∞∣x(t)∣2dt=2π1∫−∞∞∣X(ω)∣2dω.
導出(一般化版から)。 まず二信号 x,y に対する一般化 Parseval(Plancherel)∫xydt=2π1∫XYdω を示す。左辺の y(t) を逆変換 y(t)=2π1∫Y(ω)e−jωtdωで書き換え、積分順序を交換すると
∫−∞∞x(t)y(t)dt=2π1∫−∞∞Y(ω)=X(ω)[∫−∞∞x(t)e−jωtdt]dω=2π1∫−∞∞X(ω)Y(ω)dω.
急所は、内側の t 積分がちょうど X(ω) の定義になっている点である。ここで y=x(したがって Y=X)とおけば ∫∣x∣2dt=2π1∫∣X∣2dω、すなわち上のエネルギー等式を得る(係数 1/2π は逆変換の規格化がそのまま残ったもので、f=ω/2π で書く流儀では消える)。左辺は信号の全エネルギー、∣X(ω)∣2 はエネルギースペクトル密度である。さらに、自己相関関数 rxx(τ) の Fourier 変換が ∣X(ω)∣2 に等しい(決定論版 Wiener–Khinchin)。実際
F[rxx](ω)=F[x∗x(−⋅)](ω)=X(ω)⋅X(ω)=∣X(ω)∣2
であり、第1章で「自己相関の Fourier 変換はパワースペクトル」と述べた事実が畳み込み定理から一行で出る。位相情報が失われる(∣X∣2 しか残らない)ため、自己相関はパワーの分布だけを見る道具だと理解しておくとよい。
上の導出は暗記ではなく三行の型にできる。一般化 Parseval の等式の証明は、この三行を順に書けば済む。
要点
定石:一般化 Parseval(内積保存)の三行証明
示すべき等式は∫−∞∞x(t)y(t)dt=2π1∫−∞∞X(ω)Y(ω)dω である。
- y だけを逆変換で書き換える(x には触らない):y(t)=2π1∫Y(ω)e−jωtdω。逆変換 y=2π1∫Ye+jωtdω の両辺の共役を取っただけで、共役により指数の符号が − に変わる点が次の段で鍵になる。
- 積分順序を交換して t 積分を内側に出す:∫x(t)y(t)dt=2π1∫Y(ω)[∫x(t)e−jωtdt]dω。
- 内側の t 積分が X(ω) の定義そのものであることを指摘して終わる。
要点:手順1で y を選ぶのは、共役が指数を e−jωt に変え、それが順変換の核と一致するからである。x の側を書き換えると指数が e+jωt となり定義に合わない。
特別化:y=x(したがって Y=X)と置けば∫∣x∣2dt=2π1∫∣X∣2dω で、Rayleigh のエネルギー定理は一般化版のひとつの場合にすぎない。答案では「一般化版を示し、最後に y=x とする」と書くと二つの等式を一度に片付けられる。
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