信号処理論入門 第10章 §10.2 ★ 最大平坦・全極型。IIR設計の出発点(背景)
低い周波数だけを通す理想 LPF(矩形の振幅特性)は実現できないので、有理関数で近似する。最も基本的な近似が Butterworth フィルタ:
∣H(jω)∣=1+(ωcω)2M1
である(M:次数、ωc:遮断周波数)。ω=0 で 1、ω=ωc で 1/2(−3dB)、ω→∞ で(ω/ωc)−M で減衰する。ω=0 での微分係数が 2M−1 階まで 0 になる最大平坦特性を持ち、通過域にも阻止域にもリップルがなく単調である。その代償として遮断特性(切れ味)は同じ次数の他のフィルタ(Chebyshev、楕円など)より緩い。
伝達関数 H(s) は次の手順で構成する。∣H(jω)∣2=H(jω)H∗(jω)=H(s)H(−s)s=jω(実係数を仮定)に注意して
H(s)H(−s)=1+(−1)M(ωcs)2M1
と s の関数に延長し、分母 =0 から極を求めると
s=⎩⎨⎧ωcexp(j2M(2m+1)π)ωcexp(jMmπ)(M 偶数)(M 奇数)m=0,1,…,2M−1
となる。つまり極は半径 ωc の円周上に等間隔に 2M 個並び、虚軸上には現れず、虚軸に関して対称に配置される(M 奇数のときだけ実軸上に極がある)。2M 個のうち左半平面にある M 個を H(s) に割り当てれば(右半平面の M 個は H(−s) の取り分)、因果的で BIBO 安定な伝達関数が得られる。共役対 ωce±j(π−θ) をまとめると実係数の2次因子s2+2ωccosθs+ωc2 になるから、
H(s)=⎩⎨⎧ωcMm=0∏M/2−1s2+2ωccosθms+ωc21,s+ωcωcMm=1∏(M−1)/2s2+2ωccosθms+ωc21,θm=2M(2m+1)π(M 偶数)θm=Mmπ(M 奇数)
と書ける(M=2,3,4,5 について、この積形式が確かに∣H(jω)∣2=1/(1+(ω/ωc)2M) を再現することを数値検証済み:検算スクリプト [A1])。分子は定数 ωcM のみ、すなわち零点を持たない全極型である。
例題10.1(2次 Butterworth フィルタ)★
オリジナルM=2 の Butterworth LPF の伝達関数を求めよ。
解答
M=2(偶数)だから、極は
s=ωcej(2m+1)π/4 (m=0,1,2,3)=ωce±jπ/4, ωce±j3π/4
の4個。左半平面にあるのは ωce±j3π/4 の共役対で、これをまとめると θ0=π/4 として
H(s)=s2+2ωccos4πs+ωc2ωc2=s2+2ωcs+ωc2ωc2.
検算:s=jω を代入すると∣H∣2=ωc4/((ωc2−ω2)2+2ωc2ω2)=ωc4/(ωc4+ω4)=1/(1+(ω/ωc)4) で定義と一致する。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com